ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~   作:タロー☆マギカ

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展開を考えるのが地味につらい。まさかここまでとは……


悪魔になった翌日です!

 悪魔転生&相談部強制入部事件の翌日、ひらたく言えば昨日の出来事から俺は心身共に疲れ切っていた。

 

 理由は大きく分けて三つある。

 

 

 

 一つ目は単純に寝不足なのである。

 

 

 

 昨日摩耶さんの話を聞いた後、ふと時間が気になって時計を見てみたら、なんと午前一時だったのである。

 

 思えば俺が殺された時間帯は夕方であり、転生させられたにも関わらず、全く起きなかった俺を摩耶さんは無理矢理起こした。

 

 しかし、俺が昏睡状態になっていた時間はさほど長くはなかったらしく、俺が起きた(起こされた)時間は既に午後十時頃だったらしい。

 

 そこからあの信じがたい話を聞かせてもらい、この人の適当ぶりに頭を抱えていたらとっくにあんな時間になっていた、ということだ。

 

 因みに夜遅くに帰ってきた息子のことを、俺の両親は全然心配していなかった。

 

 後から聞いた話によると摩耶さんが遅くなった時のために、ということで親に連絡を入れていたらしい。

 

 あの人は本当なにからなにまでぬかりないよな~。手際がよすぎる。そこら辺の気配りは純粋に尊敬できる。俺のとうぶんの目的はあの人のような男になることだな。

 

 自堕落な所だけは見習いたくないけど……。

 

 それから俺が家に帰る為の用意をしていると、摩耶さんは部室にあるベッドで寝息を立て始めた。なんでも、あの人は偶に部室で寝泊まりしてるらしい。

 

 そこまでになると、もはや住んでいるんじゃないか?と疑いたくなってくるレベルである。

 

 

 

 二つ目はやはり未だ、この現状を素直に受け止め切れていないということ。

 

 

 

 悪魔とか堕天使とかそういう種族がいるということは信じる。実質、俺は今転生悪魔としてこの世に滞在しているのだから。

 

 それに親がいない間に、コッソリ背中から翼を出したりした。その出来事は俺に悪魔となった事実を自覚させるためには、充分すぎる事だった。

 

 

 

 それでもやはり、どうしても、あの時の光景が幻であってほしいと願っていた。

 

 

 

 全部が全部デート前のプレッシャーによって見せられた俺の幻覚、今日からまた夕摩ちゃんと一緒に通学して、学校までの一時を楽しく話しながらすごす。そして帰りも一緒に行動して、別れた所で明日もまたこんな幸せな一日をすごしたいと願う日常。

 

 ーーーーそれらは全て叶わなかった。

 

 頭で理解していても、心がそれを寄せ付けない。そんなジレンマに俺は悩まされていた。

 

 それでも、俺は今こうして生きている。また通学路を歩く事ができている。

 

 隣に夕摩ちゃんがいなくとも、俺は前へ一歩踏み出せている。

 

 彼女の存在は俺にとって、今後の人生の中でかなりまとわりつくかもしれない。新たな恋に一歩踏み出せないかもしれない。

 

 けど今のように、開き直ってまた人生をすごそうとしているように、俺はいつかまた誰かを好きになり、恋人同士になりたいと思う時がくるかもしれない。その時は今度こそ、その子を幸せにしよう。そして俺も同じように幸せになろう。

 

 そう固く決意した。

 

 

 

 さて、以上の理由が俺をナーバスにしている要因である。

 

 え?後一つ足りないだって?おっと失礼した、肝心な事を忘れていたよ。

 

 俺を今こんな状態にしている最大最悪の三つ目の理由はーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「も、もう無理!はじれない!げんがい!」

 

 「ギャーギャー喚くな!後二、三キロちょっとだ、しっかりついてこい!」

 

 

 

 ーーーー今日から始めた摩耶さんとの早朝ランニングである。

 

 

 

 さて、ここで皆さんお気づきになられたであろうか?俺が今疲弊しきっている最大の理由がこのランニングである意味が。

 

 

 

 そう、『早朝』という所だ。

 

 

 

 さっき説明したとおり、俺は午前一時に家に帰ってきた。そこから風呂だのまだ食べていない晩飯を食べるだの歯磨きだのと、色々な事をやっていて俺が最終的に寝た時間はそこから一時間たった午前二時だった。

 

 そして、俺が今までの鬱憤をはらすかのようにでかいいびきをかいて寝ていたら、突然摩耶さんが魔法陣?とかいうヤツで俺の部屋に現れた。

 

 そして例のごとく、俺の眠りを無理矢理妨げジャージに着替えさせた挙げ句、摩耶さんの日課である早朝ランニングにつきあわされるハメになった。

 

 現在の時刻は午前六時。俺達は今の今まで走りつづけて一時間がたとうとしている。つまりだ…俺が今何を言いたいかというとーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「たった三時間しかねでないのに、ごれはキツすぎまずって…」

 

 「喋る余裕があるのならまだやれるってことだ、後少しくらい頑張ってみせろ!」

 

 

 

 そういって摩耶さんはペースを落とさずにただ黙々と走りつづけた。

 

 そう、三時間。たった三時間しか寝てないのだ。

 

 いくら気絶してた分を足したとしても、七時間程度しか俺は寝ていない計算になる。

 

 そんな中いきなり走るっていわれて、さらにはこんなハイペースで走っている俺の気持ちを理解しているのだろうかこの人は?

 

 今まで俺の発したセリフを思い出してみて下さいよ……変な所で濁音がついているでしょが。それ程疲れ切っているんですよ俺は!今までずっと帰宅部だった俺が陸上部かと思いたくなるようなハードメニューをこなせるわけ無いでしょうに!

 

 などと、摩耶さんの背中を怨念のこもった目で睨みつけながら考えているとーーーー

 

 「お、そろそろゴール地点が見えてきたぞ」

 

 「!!?」

 

 その幸せな言葉を聞きたいために、俺はどれだけ頑張ったのだろうか……。

 

 俺は摩耶さんの目線の先にあるものを確認した。確かにそこには、このランニングのゴール地点に設定されている公園が視界に飛び込んできた。

 

 子どもたちにとってあの場所は居心地のよい遊び場なのかもしれないが、俺にとっては救いの手を差し伸べてくる女神様のように感じた。

 

 ああ、両手を広げて待っている……女神様が俺を待ってて下さっている。これほど嬉しいことはない!今の俺は音にだって勝てる自信があるね!

 

 「は~い、早朝ランニング終了~」

 

 ……すいません、最後のは調子に乗りすぎました。正直結構、いやかなり辛いです。このまま残りの時間、全部睡眠に使いたいぐらいです。

 

 俺はやっと終わったこの地獄のようなトレーニングに耐えきった達成感を感じ取ったと同時に、

地面に寝転がった。

 

 微かに冷たいコンクリートが心地よく、空を仰ぎながらいつもより早い呼吸を繰り返していた。

 

 今思えば摩耶さんも俺と同じ条件なのに、息を切らさないどころか汗もあまり出ていない。

 

 あの人にとってこの特訓は当たり前でしかないのか……そう思うと摩耶さんはすごい人なんだなということを改めて感じた。

 

 「あの……ハア、ハア、……摩耶さん」

 

 「ん?なに?」

 

 「何で俺を摩耶さんの日課である早朝ランニングに、ハア……誘ったりしてくれたんですか?殆ど、ハア……めんどくさいと言っているあなたが」

 

 「へ?あ~、えっと……」

 

 いつもキッパリと喋る摩耶さんが、今回に限って珍しく言葉を濁していた。

 

 「その、なんだ…お前はまだ悪魔に転生したばっかりだからな。今のお前に出きることは愚直に体を鍛えることしか無いわけで、どんな事をすればいいのか分からないお前にさっさと教えておこうと思ってだな…」

 

 「……え?」

 

 俺は摩耶さんの言っていたことがよくわからなく、情けない応え方をしてしまった。

 

 あの摩耶さんが……めんどくさいばっかり言ってた摩耶さんが俺のために?自分のやっているトレーニングメニューにつき合わせたってことか?

 

 きっとこの人のことだから、頭で覚えるより体で覚えろって言ってくるタイプなんだろうな…。

 

 だから俺と一緒にランニングするために、わざわざ家にまで来てくれて…。

 

 ハハ、まったく…………この人は本当にいい人なんだな。

 

 大抵の確率でめんどくさいとか、負のオーラを感じさせるほどだらしない言葉を発しているが、やる時はちゃんとやるんだな。

 

 その結果がこのランニングが終わった後の様子を見るだけで手に取るように分かる。きっとかなり走り込んできたんだろう。俺みたいな奴じゃ全然想像出来ないほどの量を、距離を。

 

 やっぱりどんな事があってもこの人は俺の目標にしよう。この人が出来ることは、俺も全部出きるようになろう。この人の背中を見続けて、追い続けて、そして追い抜いて、この人に俺の背中がどれほど偉大な物になったかを見せつけよう。

 

 俺は新たな決意を胸に秘めた。

 

 「さ~てと、残った時間は部室のベッドで惰眠でも貪ろうかね。ついでに一時間目の授業もサボろう。うん、それがいい」

 

 …………あんな所は出来るようになりたくないけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーー駒王学園ーーーー

 

 それが俺の通っている学校の名前である。

 

 元女子校であるせいか、この学園にいる生徒総数は女子生徒の方が圧倒的に多い。今頃の男子生徒は女子が多いから、という理由で居場所が無いと思う者が多々いると思う。

 

 しかし俺はその女子が多いという理由で、この学園に入ることを決めた。

 

 だって女の子がいっぱいいるんだぞ!周りが女の子ばかりで囲まれてるなんて最高じゃないか!

こんなチャンス逃すものか、絶対にこの学校に入って俺の夢を果たしてやる!

 

 そんな事を思って壮絶な受験戦争に勝ち抜き、

この学園に通い始めて一年、遂に念願の彼女が出来た。だが………。

 

 

 

 「その彼女に……殺されるんだもんな…」

 

 

 

 俺は誰にも聞こえないような小さな声で呟き、

足を止めた。

 

 ーーーーもし夕摩ちゃんが堕天使じゃなくて普通の女子校生だったら、俺はあの子とまたこの通学路を歩いていたんだろうか……。

 

 もう叶いもしない出来事を頭の中で想像しながら、俺はたそがれていた。 

 

 俺は結局の所、あの子の外面しか見ていなかった訳で内面は見ていなかった。だからあの子の中にあった殺意に気付かずに、デートという名ばかりの行動の後、簡単に殺された。

 

 向こうからしたらよっぽど滑稽だったろうな…。手をつなぐだけで心臓が破裂しそうな程緊張してて、教科書通りのデートプランを実行してたんだからな……。なんだかもう笑えてきた。

 

 彼女にとって俺は……兵藤一誠は一体どんな存在だったのだろうか…。只の殺害対象か、童貞丸出しのケツの青いガキか……どっちにしても悪い意味しか無いな…それ。もしそうだったとしたら、彼女にとって俺はーーーー

 

 

 

 男としてどうでもいい存在だったという事なのだろう。いや、恐らくそれが最有力候補だろうな。…ホントにバカだな、俺は…。

 

 

 

 そんな風に俺はお約束の自虐モードになっていると、突然背中を誰かに叩かれた感覚が走った。

 

 「おっす、イッセー。どうした?何をたそがれてんだよ」

 

 「そうだぞイッセー、いつものお前らしくなかったぞ」

 

 「松田……元浜…」

 

 俺はこの学園で数少ない男子生徒であり、親友である松田と元浜に声をかけられた。

 

 俺達はこの学園に入るために地獄のような受験勉強に耐えきり、そして合格という天国のき切符を手にした同志である。

 

 いつもいつも教室や廊下で変哲のないエロトークで盛り上がっては、着替え中の女子達を覗き見たりしては追いかけられてしばかれる。しかし反省の色を見せたりはせず、懲りずに再び女子の着替えを覗く。そんなバカばっかりしては笑い合い、互いに信頼しあえる最高の友達だ。

 

 「……俺、そんなに元気なかったか?」

 

 「なかったな……まるで彼女に振られた彼氏のごとくしょぼくれてたぞ」

 

 「その例えは間違ってるぞ松田。イッセーみたいな奴なんぞに彼女が出来るわけないだろう」

 

 「酷い言いぐさだな、それ」

 

 俺の事を慰めてくれてるのか、責めて来ているのか分からない友人達と一緒に学校に行こうとしたところでーーーー。

 

 

 

 俺はバカな友人達の発言に違和感を感じた。

 

 

 

 「……松田……元浜……」

 

 『なんだ、イッセー?』

 

 二人同じして、俺の言葉に返事をする。こういう現象を見てみると、改めて二人の仲の良さを感じさせられるな……いや、その中に俺も混じってるんだよな…。

 

 この居心地のいい居場所にしばし歓喜した所で、俺はさきほど感じた違和感を取り除くため、新たな言葉を松田達に向けた。

 

 

 

 

 「お前らさ……天野夕摩ちゃんって……知ってる?」

 

 

 

 

 「……?いったい誰だ、その素敵な名前の女の子は?そんな子学校にいたか?」

 

 「……ッ!?」

 

 松田の『何を言ってるんだ、おまえは?』的な答えを聞き取った瞬間、声にならない疑問が俺の喉まで駆け上がってきた。

 

 あの時、初めてコイツらが彼女を見たとき、隣にいた俺が得意げに現状説明をした。コイツらがあの子を忘れないように、脳内に焼き付けるように自慢げに、得意げに。それをーーーー。

 

 

 

 コイツらはきれいさっぱり、何事も無かったように全てを忘れている……。

 

 

 

 まさか……そんな……。

 

 「ま、まさか!お前が新たに見つけた最高の素材があの学園に存在するというのか!?」 

 

 「なに!?そうなのか、イッセー!?」

 

 「……いや、何でもないんだ。分からないんならいいよ…」

 

 俺は右手で頭を抱えながら、訳が分からないこの事実を理解しようと脳をフル回転させていた。

 

 ……一体何がどうなってやがんだよ!?

 

 俺は隣で叫び続ける松田と元浜の事など気にもせず、胸の中にわだかまりを抱えたまま、学校の校門をくぐったーーーー。

 




自分も女子が学校に多かったりします。

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