ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~   作:タロー☆マギカ

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デュラララ!面白かった
ついつい夜更かしして観てしまった。


番外編1 相談部のお仕事 その4

 「そらぁぁぁああああ!」

 

 ボルドランが放つ威圧的な一撃を、上半身を反らすコトによって紙一重で回避する。

 

 そのまま重心を後ろに持って行き、小猫ちゃんの蹴りをかわした時と同じように体を九十度ぐらいに折り曲げる。

 

 このままでは頭が地面にゴッツンコしてしまうので、両足の力を地面に伝導させ、後方宙返りと同じ要領で体制を立て直す。

 

 反撃もせずにただ避けるだけだと、ボルドランのペースになってしまうので宙返りすると同時に蹴りでボルドランの顎をカチ上げる。

 

 この技って何ていうんだっけ……確かサマーソルトキックだったような気がする。

 

 「ぐっ……!」

 

 呻き声を上げたボルドランはゆっくりと後退し、片膝を地面に着けた。

 

 顎を蹴り上げたんだから脳が揺れて軽い脳震盪みたいなのが起きてるはずだ。いくら悪魔であろうとなんだろうと、内臓を鍛えるコトなんて出来っこないからな。

 

 ……あれ?脳って内臓だっけ?まあ、どっちでもいいや。

 

 再びボルドランと俺との間に距離ができる。

 

 ボルドランは手数が多いし、しかもその一発一発がスゲー重いから勢いに乗せたら忽ち面倒になる。この状況ははっきり言ってありがたい。

 

 流石『戦車』。小猫ちゃん並みの戦闘力だと思ってたが、多分実力は小猫ちゃんより上だ。

 

 ……何か腹立つな~。自分の弟子的存在が同じ土俵で実力が劣っているというコトを思い知らされると。

 

 この戦いが終わったら小猫ちゃんをかなり育ててあげよう。絶対そうしよう、うん決めた!

 

 ……あれ?これって死亡フラグじゃね?

 

 などとバカなコトを考えていると、もう体が回復したのか、ボルドランが地面にクレーターを作るほどの脚力で俺に接近してきた。

 

 凄まじいダッシュの勢いが乗った拳が容赦なく俺に向かってき、何とかかわそうとするが時すでに遅し。

 

 ボルドランの攻撃は俺のボディに突き刺さった。なんと見事なフラグ回収♪

 

 「ごほっ!」

 

 肺から空気が一気に排出され、呼吸をするコトを体が拒否する。

 

 しかし俺も只ではやられない。ボルドランのボディブローがヒットする瞬間、即座にバックステップを取るコトによって威力を軽減したのと距離を取るのを同時に行うコトが出来た。

 

 なのにこの破壊力……。アイツあんな細い体のどこに化け物級の膂力を隠し持ってるんだよ。いくら『戦車』だからってこの怪力はおかしいだろ。

 

 ……さっき俺が言ってたコトと矛盾しているような気がするが、気にしないでおこう。

 

 「摩耶さん大丈夫っすか!?」

 

 戦闘の余波が届かない安全圏の方から俺の名を呼ぶ声が聞こえる。我が『兵士』、兵藤一誠君ことイッセーだ。

 

 「小猫ちゃんのコト考えてたらさっきの攻撃もらった。……俺さ、帰ったら小猫ちゃんにーーーーー」

 

 「それフラグーーーーーーーーーー!」

 

 イッセーが魂からの叫びをかますコトによって、何とか俺の死亡フラグ建設は阻止された。

 

 ……さて、フラグ回避も出来たコトだし、そろそろおふざけなしの真剣勝負と行きますか。

 

 「その目……」

 

 「あ?」

 

 「アナタの目は、まるで『白い龍』に似ています。しかも私が『白い龍』の名を口にした瞬間、アナタは人が変わったように好戦的になった。……アナタは『白い龍』と何か関わりが?」

 

 「ああ……まあ、弟みたいなもんだよ」

 

 『アイツ』の話題が出てきたからか、自然と笑みを作ってしまう。俺がいなくなっても『アイツ』はうまくやれてるのか……まあ、『アイツ』は寂しがるようなタイプじゃないからな。

 

 ていうかボルドランから見て、今の俺って好戦的なんだ。別にこの戦いが楽しい訳でもないのに……訳わかんねえや。

 

 「弟……まさか『白い龍』をそんな風に呼ぶ人物がこの世にいるとは思いませんでしたよ!ならーーーーー」

 

 ボルドランは頭に被っていた帽子を外すと、もう何度目か分からない投擲行動へと動作を移す。

 

 「アナタを倒せば、『白い龍』が私ともう一度戦ってくれるというコトが確立された、というコトですね!」

 

 結構強引な結論に至ったボルドランがシルクハットを投げてくる。もう救いようがない程戦闘にハマってるじゃないですか、ボルドラン君よぉ。

 

 飛んできたシルクハットを上に跳んでかわしても、神器の力で止めても、ボルドランはいつの間にか俺のすぐ後ろに回っている。

 

 帽子に気を取られている間に接近してくるなんて嫌らしいコトしやがって。そっちがその気ならーーーーー

 

 「そらよっ!」

 

 俺はボルドランとシルクハットを視野に入れつつ、サッカーボールを蹴るような感覚で足を振る。

 

 すると何というコトでしょう。俺に接近してきた帽子は綺麗に俺の足の甲を捉えたではありませんか。

 

 ……ていうか、俺が狙ってそうしたんだけどな。

 

 「お、おぉおお……ッ!」 

 

 電柱を折る程の威力を持っている帽子は、そのまま俺の足をへし折ろうとする為に前進を続ける。

 

 骨が軋むような痛みが全身を走り、気を抜けば足が一気に千切れそうな感覚に陥る。

 

 しかし残念ながらシルクハットが相手にしてるのは電柱ではなく、この俺天童摩耶様だ。スナック菓子を潰すように簡単にいくと思ったら大間違いだぜ。

 

 「あぁ、らぁああ!」

 

 痛みを堪えながら足を振り抜き、驚異的な破壊力を持つ帽子をエセ紳士にお返しする。

 

 「何!?」

 

 ボルドランは俺がシルクハットを蹴り返して来るとは思ってなかったのか、表情に驚愕の色を滲ませた。

 

 けれどもボルドランの戦闘経験も伊達ではなく、自分に向かってきたシルクハットを跳躍するコトによってこの危機的状況を瞬時に切り抜けた。

 

 だが、

 

 「駄目でしょうが、俺から目を離したらさ~」 

 

 「なっ!?」

 

 ボルドランがシルクハットに気を取られていた一瞬の間に、俺はボルドランより上の空間を支配した。

 

 さっきまでコイツが俺にやってきた戦法だ。シンプルで分かりやすいぶん、シルクハットを跳ね返せる程の実力を持っている奴なら誰でも真似るコトが出来る。

 

 まあでも、俺の場合は足を神器の力で強化したから簡単に蹴り返すコトが出来たんだけどな。……いや、強化と言うより武装かな?

 

 「お返しだクソ野郎が!」

 

 ボルドランが披露した華麗なるかかと落としとは遠くかけ離れた、喧嘩屋が使うようなただ足を振り下ろしたようなかかと落としを放つ。

 

 「がっ……ッ!」

 

 綺麗にボルドランの腹を捉え、何かが壊れていくような嫌な音が聞こえてくる。

 

 直後、ボルドランが口から赤い液体を吐き出し、その液体が俺の頬を濡らす。

 

 ヌメリとした感触がするこの液体を血だと理解したのは、ボルドランが地面に衝突した後のコトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「化け物ですか………アナタは」

 

 「最近は特に言われるコトはない……いや、少し前にナイスバディの堕天使に言われたっけな」

 

 戦いが終わり、ボルドランは脇腹を抱えながら道路に出来上がったクレーターの真ん中に寝そべっていた。因みに俺はボルドランのすぐ近くに座り込んでます。

 

 さっき血を吐いていたコトもあり、内臓が逝ってしまったか、と思われたが幸いアバラだけで済んだらしい。

 

 それにしても、キック一発でオチるなんて思ってもみなかった。この俺の右腕をぶち折るくらいの実力を持ってる奴なら尚更だ。

 

 もう少し戦わなければいけないと思っていたのに、こんな簡単に決着が着くなんておかしい。何か理由でもあんのか……?

 

 「実を言いますと……」

 

 ボルドランは俺の思考内容を察したのか、

 

 「私は『戦車』の特徴である、鉄壁と呼べるほどの防御力を備えていないのです」

 

 俺の考えを補完する一言を発した。

 

 「……は?一体何で?」

 

 が、正直俺はボルドランが告げた真実を理解できないでいた。

 

 悪魔界のシステムを管理、及び開発したのは他でもない現魔王の一人だ。悪魔の駒もそれの一つに入る。

 

 あれほどの人が生み出したシステムに不具合が出るなんて考えにくい。だとしたら、一体何がボルドランを生半可な『戦車』として覚醒させてしまったのか。

 

 「私の主は上級悪魔になりたてで、浮ついていたんでしょう。眷属にした下僕悪魔にありとあらゆる嫌がらせを実行し、逆らえば力でねじ伏せる。そんな人だったんです」

 

 ボルドランは自分の過去を眈々と語り出した。

 

 確かに上級悪魔でそんな奴はゴロゴロいる。自らの権力を好き勝手に振りかざし、下僕悪魔だからという理由だけで何をしてもいいと思ってる奴が。

 

 だがそれは案外的を射抜いており、そのような下劣な行為は一切罪には問われない。ただ、聞いてて不愉快になるのは違いない。

 

 現に俺は、右腕が折れているにも関わらず、握り拳を作っているんだからな。

 

 怒りのせいかアドレナリンが大量分泌されてるせいか、痛みは一切感じなかった。

 

 「そして私を転生悪魔にする時に、主は『戦車』の駒を半分に折って私に使役しました。理由は単純、どうなるのか知りたかったからだそうです」

 

 「何だよそれ!ふざけんなよ!」

 

 隣からかなりの轟音が響いてくる。いつの間にか近くにいたイッセーが耐えきれなくなり、怒りを露わにしたのだろう。

 

 俺と同じように拳を握り、ギリギリと音が聞こえる程歯を食いしばっていた。

 

 俺はそんなイッセーを一瞥し、ボルドランが再び語り出したので視線を戻す。

 

 「結果私は『戦車』もどきになってしまい、主から受ける嫌がらせは他の者より過激な物となりました」

 

 「駒半分になっただけで性能がそこまで変化するのか?」

 

 「現に私がそうなっているでしょう。もっとも、それに気付いた上層部はシステムを改変したらしいですが、私が『戦車』本来の力を取り戻すコトはありませんでした」

 

 ボルドランは腕を地面に叩きつけ、抑え込んでいた感情を吐き出すように、天に向かって叫んだ。

 

 「私はーーーーー悔しかった!上司だからという理由だけで自分を好き勝手にされ、自分こそが絶対だとでも誇っている主の顔を見るのが!私を唯一庇ってくれた仲間を……麻里を救えなかった自分自身に!」 

 

 『麻里』という人がボルドランにとってどれだけ大切な人だったのかが、嫌と言うほど理解できた。

 

 その人の名前を口にした途端、ボルドランが目から涙を溢れさせたからだ。夕日で涙が照り帰り、ボルドランの顔がほんの少し輝く。

 

 「だから私はあの時手に入れた力をーーーーー『凶気の紳士(ブラック・ジェントル)』を使って主を殺した!私は間違っていない!だから負けるはずがない!麻里の為にも、最強であり続けなければならないのだ!それが彼女との約束だから……なのに」

 

 「甘えてんじゃないよ、ったく」

 

 俺は重い腰を起こし、尻を何回か叩いた後背伸びをした。

 

 ポキポキと音がなり、刹那の間に浮遊感に似たものを感じ取る。

 

 「負けを認めるのも一種の強さなんじゃないの?実質、お前と戦ったコトがある『白い龍』さんは俺が何度も叩きのめしたコトがあるしさ」

 

 「あの……『白い龍』が!?」

 

 「ああ。『アイツ』は自分の負けを認めて何が足りないのかを自覚した後、それを補うための修行を自分に課してたぜ。そういう心の強さがお前には足りないんじゃないの?」

 

 まあどれだけ強くなろうが俺も強くなっていったから差が縮まるコトはなかったけど♪

 

 「心の強さなど……ただの詭弁だ!誰もが強靭な精神を宿していたら強くなれるとでも?決して諦めない根性を持つ者だけが強くなれるとでも言いたいのか!?」

 

 「誰もそんなコト言ってないだろ。何を目指して、何を心の支えにするのかは人それぞれだしよ」

 

 『アイツ』は負けたくないという意地と、強い奴と戦いたいという欲求がそれだったからな。あるいみ歪んではいるが、非人道的なコトは一切していない。

 

 そういう面では、『アイツ』はボルドランよりはるかに強い。だからそれが実力差に繋がる。そしてーーーーー

 

 「多分コイツの方がお前より強いぞ」

 

 俺はそう言ってもう一人の弟分であるイッセーの頭をポンポン、と叩いた。

 

 「ふぇ!?ま、摩耶さん何言ってんですか!?」

 

 イッセーは自分が会話に混じることがないと思っていたのか、かなり狼狽している。

 

 「私が兵藤君に……負ける?そんなわけないでしょう!」

 

 「俺はそうは思わないけどな。……イッセー、もしお前がコイツと戦って負けたらアーシアちゃんが盗られーーーーー」

 

 「勝ちますね!いや、勝てますね!十秒で血祭りにしてみせますよ!」

 

 早えよ、まだ最後まで言ってないだろうが。それにいくらなんでも十秒で血祭りは無理だと思う。

 

 ボルドランはイッセーの言い分に納得できないのか、イッセーの方を見て問い掛けた。

 

 「どうして君は……そんなにまで真っ直ぐでいられるんです?」

 

 端で聞いていた俺は、その質問は野暮だと思ってしまいつい笑ってしまった。

 

 「どうしてって……好きだからだよ」

 

 イッセーがその問いに答える。

 

 「それだけ……ですか?」

 

 「それだけだよ。ていうか、いつだって俺はそれだけで戦える」

 

 「……好き、だからですか……それだけで強くなれるなんて……」

 

 ボルドランが何時までたっても認めようとしないため、イライラした俺は会話に割り込んだ。

 

 「うるせーなお前はァ!お前がそこまで強くなったのだって『麻里』って人との約束を果たすためだろうが!そこまでその約束に執着してるってコトは、お前も麻里さんが好きだったんだろ!?」 

 

 ボルドランは面を食らったような顔をし、何回か目をしばかせた後、呟いた。

 

 「……私は、彼女を愛していた。彼女との約束を果たそうとするうちに着実に力を付け、主と同じようになってしまった。約束を口実にして、人を傷つけるのを楽しんでしまった……そうか、私は……」

 

 間違っていたのかーーーーー

 

 最後にそう言ったボルドランはゆっくりと体を起こし、ふらつきながら歩を進めた。

 

 「彼女の弟はこの先にある廃倉庫にいます。三日も飲まず食わずなので、かなり空腹なはずです」 

 

 「マジか、それならさっさと助け出してやらんとな」

 

 彼女、というのが女生徒のコトであるのはすぐに理解できた。ていうか、俺はあの子の為に戦ったんだからな。

 

 俺はボルドランの隣を素通りし、倉庫に向かって走る。

 

 「私を……捕らえないのですか?」

 

 後ろから戸惑いの声が聞こえる。

 

 「んなこと言われても、俺にどうしろって言うんだよ。リアスやソーナみたいな権力持ってないんだし、捕まりたいなら自首なり勝手にしてくれ。したくないならしなくてもいいし」

 

 「かまわないのですか?」

 

 「別にいいんじゃね?だってーーーーー」

 

 俺はボルドランに背を向けたまま、

 

 

 

 「目的さえ見誤らなければ、何度でもやり直せるんだからな」

 

 

 

 俺の本音を言った。

 

 『麻里』って人との約束を改めて認識した以上、アイツはもう道を踏み外すコトはないだろう。それぐらい、今のアイツは清々しい。

 

 「やり直せる……ですか。麻里はこんな私を許してくれますかね」

 

 「どうなんだろうな、知らねえ」

 

 「随分勝手ですね、摩耶さん」

 

 我が『兵士』が何か言っているが聞こえない。今俺の鼓膜は、ボルドランの声しか拾っていない。

 

 「麻里が言っていました。……優しい人がタイプなのだと」

 

 「……そうかい」

 

 ボルドランに笑みを向けると、俺は今度こそ倉庫に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イ「結局ボルドランの神器はなんなんですか?」

摩「戦ってみたところ、恐らく創造系だろうな」

イ「へぇ~。ところで摩耶さんのはどんなのですか?」

摩「創造系」

イ「何を創造するんですか?……ちょっと、何でなにも言わないんですか、ちょっと!?」

次回、番外編終了

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