ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~   作:タロー☆マギカ

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オリジナルへと突入
うまく出来たかな‥…


番外編1 相談部のお仕事

 ○月○日

 

 今日はテストで百点を取った。それをママに言ったらほめてもらえた。お姉ちゃんからも、お父さんからもほめてもらえた。

 

 ほめてもらうというのはとてもうれしいコトだって気付いた。だからぼくはこれからもテストをがんばろうと思う。

 

 ○月△日

 

 帰りのST(ショートタイム)で、ここ最近不審者が彷徨いていているので注意して下さい、と言われた。なんでもその不審者は出会った人を老若男女関係なしに攫うらしく、攫われた人はまだ帰ってきていないらしい。

 

 その話を帰ってママやお父さんに話すと、二人は既に知っていたらしく、口を揃えて『夜中には出歩くな』と言った。

 

 言われなくても、夜なんかに出歩く理由がない。心配しなくても平気だよ。

 

 ○月□日

 

 今日はいつもより早く起きた。ひんやりと、フローリングの冷たい温度を素足で感じながらリビングに向かったら、ママがテーブルに突っ伏して寝ていた。

 

 何でこんな所でママが寝てるの?

 

 そんなコトを考えていると、お姉ちゃんが起きてきた。お姉ちゃんもママがリビングで寝ていたコトに疑問を感じたのか、リビングに入る手前で足を止めたが、直ぐにママを起こしに行った。

 

 「こんな所で寝てたら風邪ひいちゃうよ?」と語り掛けながら、お姉ちゃんがママの肩を揺らす。

 

 しばらくするとママは閉じていたまぶたを開き、目の前の僕達に気がつくと、「ごめんね。寝坊しちゃった」と言って、僕達の朝ご飯を急いで作り始めた。

 

 僕は早く起きただけだから、そんなに急いでご飯をつくらなくてもいいのに……。

 

 ○月×日

 

 昨日の夜遅くに、トイレに行きたくなったので自分の部屋から出たら、リビングに未だ光が着いているのが見えた。

 

 僕は恐る恐る中を覗き見ると、ママとお父さんが何やら言い合いをしていた。

 

 「もうお終いね」とか、「お前とはもう暮らせない」とか、何だか聞いてて胸が締め付けられるような会話をしていた。

 

 ママとお父さん……ケンカしてるの?

 

 するとお父さんは椅子から立ち上がり、こっちに向かって歩いてきたので、僕は急いで自分の部屋に戻った。

 

 乱暴に部屋のドアを開け、ベッドに飛び込み、布団を頭からかぶる。

 

 もしかしたら、お父さんとママは離婚しちゃうかもしれない。

 

 イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!

 

 お父さんとも、ママとも、まだまだ一緒にいたいのに……どうしてケンカなんかしてるの?

 

 お願いだから止めてよ。二人の言うコトちゃんと聞くから、好き嫌いしないでちゃんとご飯食べるからーーーーほめてくれなくてもいいから、そのかわりに仲直りしてよ。

 

 ママ、お父さん。僕はまだーーーーーーーー

 

 ○月!日

 

 お父さんとママとの間で会話がなくなった。

 

 お父さんはママが用意したご飯を食べた後、何も言わずに自分の部屋に行ってしまうようになった。

 

 ママも何も言わずに、僕達がご飯を食べてる間に家事を済ませようとする。

 

 本来は楽しい空間であろう食卓の場で、ママが食器を洗う音しか聞こえない。

 

 カチャカチャ、と食器同士が触れ合って生じる金属独特の高い音。それだけがこの場を支配していた。

 

 前は家族皆で楽しく会話しながらご飯を食べていて、この瞬間をとても楽しみにしていたのに……今になっては苦痛でしかない。

 

 お姉ちゃんも今の状況を良くないと思っているのか、ママとお父さんを何とか喋らせようと話題を振る。

 

 だけど二人ともそれに応じず、同じような気まずい空気が場を支配するだけ。

 

 どうすれば、二人は仲直り出来るだろう?

 

 どうしたら、もう一度家族皆で楽しい生活を過ごせるようになるだろう。

 

 僕はーーーーどうしたらいいんだろう。 

 

 もう、分からないーーーー

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それで?これが二、三日前に家出した弟君の日記?中身だけ見てみると、中々シビアな状況になってるんだな」

 

 「…………はい」

 

 駒王学園新校舎の隅っこにある元保健室ーーーー相談部部室にまさかの客人が現れた。しかも裕斗のように悪魔の力を持っている奴じゃなく、ただの一般人が。

 

 一応ここの部長として籍を置いている俺ーーーー天童摩耶は目の前のソファーに腰掛けるいる女の子の相談にのっている。まあ、簡単に言ってしまえばカウンセリングなんだか……。

 

 相談の内容は弟君の日記に書いてある両親の離婚問題。確かにどんな相談でも受け付けるが、僅か十八歳である俺様にこのテの相談はかなり荷が重すぎるのではなかろうか。人生経験まだまだのヒヨッ子だぞ?

 

 「あ、あの……遅くなってしまったんですけど、お茶をお入れしました」

 

 お盆に乗せていた二つの湯のみを恐る恐るテーブルの上に置く金髪の少女ーーーーアーシア・アルジェントことアーシアちゃん。……あれ?言い直せてなくね?まあ、いっか。

 

 アーシアちゃんがこの部活に入って少したったある日、『自分に出来るコトを探します!』とか大声で叫び、紆余曲折を経て見つけた仕事が茶を淹れるコトらしい。

 

 以来アーシアちゃんは俺が望むといつも茶を淹れてくれるようになった。相談部にあるのが日本茶というコトもあってか、外国人のアーシアちゃんが淹れる茶はまだ少し味に違和感があるものの、何故か心を落ち着かせてくれる不思議な効果がある。

 

 もしかしたら彼女の心遣いが茶にまで影響しているのかもしれない。何でか分からないがそう思わせられるほど、俺はアーシアちゃんの淹れる茶を気に入った。

 

 「それで……家出した弟は今どこにいるんだ?」

 

 そんなコトを訊いてきたのは我が『兵士』であり、赤龍帝でもあるーーーー本人はまだ知らないのだがーーーー兵藤一誠である。

 

 悪魔になって日が浅いが、その経験不足を帳消しに出来るほどの能力と根性を兼ね備えているコイツを、俺は心底気に入っている。

 

 自分の気持ちにバカ正直になれる奴なんざ、今時珍しいからな。コイツがどこまで行けるか見てみたいと思う。

 

 ついでにこの部活の紅一点、アーシアちゃんの彼氏でもあるのだが……ケッ!

 

 「……摩耶さん?一体何故こちらを睨むのですか?鬼のような形相をして……」

 

 「気にするなイッセー。お前が気にするコトではない」

 

 イッセーからの言及をさりげなく受け流し、アーシアちゃんが淹れてくれた茶を一口すする。……あぁ、やっぱりうめぇ。

 

 俺がアーシアちゃんの淹れてくれた茶に感銘を受けていると、イッセーの質問に女生徒が律儀に答えた。

 

 「弟は……祥吾(しょうご)は今、あの子の友人の家で寝泊まりしています。私がそれを知ったのは今朝で、両親はまだ弟の居場所を知りません」

 

 どうやら弟君の名前は祥吾と言うらしい。昨日今日知り合った俺達の前で、つい弟の名前を出してしまうくらいに、彼女は滅入ってしまってるのだろう。

 

 「でもさ、何で君の親は弟君の居場所を知らないんだよ。そういう情報は普通先に親に行くもんでしょう?」

 

 恐らく相談部メンバー全員が思っているであろう疑問を部長である俺が代弁する。親である以上は、子供のコトを誰よりも分かってやらなきゃならんからな。

 

 「実は、母が今祖母の家に帰ってまして……ご飯は私が作ってるんですけど、父はそれを食べた後直ぐに部屋に籠もってしまって……」

 

 「……どういうコト?」

 

 俺は中々真相を話さない彼女にしびれを切らし、さっさと話させようと催促するが、

 

 「その……両親はまだ、祥吾が家出したコトに気付いてないんです」

 

 「………………は?」

 

 返ってきたのは到底理解出来ず、そしてこれ以上ないくらい(はらわた)が煮えくり返る応えだった。

 

 実の息子が家出したコトを知らない?なんだそりゃ、ふざけてんのか?

 

 母親がそのコトを知らないのはまだ許せる。なんせその場にいないんだからな。だが、

 

 「何で親父さんがそのコトを知らないんだよ?」 

 

 俺の感情を怒り一色にしている張本人のコトを訊いた。

 

 「……さっき言った通り、父はご飯を食べたら直ぐに自室に籠もってしまって……。家の現状すら知ろうとしないんです」

 

 腹の底からどす黒い何かが駆け上がってきて、思わず俺は手に持っていた湯のみを握り潰した。

 

 部室内で女性二人の怯えたような声が聞こえたが、俺は気にせず眼前にいる女の子に話し掛ける。

 

 「じゃあなにか?君の親は息子そっちのけで自分達の我を通してるってわけか?」 

 

 「…………」

 

 目の前にいる女の子は俯いてばかりで何も言わず、俺はその沈黙を肯定と取った。

 

 「なら結論を言ってやる。君の両親は弟君が危惧したように間違いなく離婚する。そして君達姉弟もどっちかに付いてってお別れするハメになるのさ」

 

 「ちょ、ちょっと摩耶さん!」

 

 「それはあまりにも言いすぎですよ!」

 

 我が『兵士』と『僧侶』が女生徒を擁護する。生憎だが、俺はお前らみたいに相手のご機嫌を気にしながら発言なんてしない。思ったコトはズバズバ言うタイプなんでな。

 

 「……どうしようも、ないんでしょうか?」

 

 ようやく女生徒は口を開いたが、声に僅かに嗚咽が混じっていた。

 

 次第に女生徒は肩を小刻みに震えさせ、目から水滴が滴っていき、それがテーブルを叩く音が聞こえてくる。 

 

 「私も、お父さんとお母さんと離れたくない!皆ずっと一緒にいたい!家族皆でまた一緒に楽しくご飯食べて、笑って……暮らしたい……」

 

 とうとう女生徒は顔を両手で覆い、俺らが見てるにも関わらずにわんわん泣き始めた。なんだか俺らがいじめてるように見えるんだが……あと、アーシアちゃんがつられて泣き始めちゃってるし。

 

 さすがの俺も、目の前で女の子に泣かれては気分が悪い。

 

 俺は溜め息を吐きつつ、目の前で号泣している女生徒に声をーーーーアドバイスを投げかけた。

 

 ……ご機嫌取ろうとか、そんなコト考えてないんだからね!

 

 「……君がそうしたいんなら、素直にその気持ちを親にぶつけるべきだと思うよ。こんな所で泣いてたって、どうにもならないでしょう?」

 

 「……ッ!」

 

 女生徒は顔から手を離すと、服の袖で涙を拭き取った。

 

 「……そう、ですよね。やっぱりそれが……一番手っ取り早い解決方法なんですよね……」

 

 そう彼女は呟くと、ソファーから立ち上がり、弟君の日記を持って部室から立ち去ろうとする。

 

 「お、おい!ちょっとーーーー」

 

 イッセーが女生徒を呼び止めようとするがそれは失敗に終わり、扉の開閉音が部室に響いた時には、もう既にいつものメンバーしか居なかった。

 

 俺はテーブルの近くに置いてあった回覧板のような物を開き、そこに必要事項を記入していく。

 

 「あれでよかったんですか、摩耶さん!」 

 

 「あ?あれって……なにが?」

 

 イッセーからの糾弾を受けながらも、俺は筆記作業を続ける。視線は当然回覧板ーーーー報告書に向けたままでだ。

 

 「あの子をあのまま帰してよかったのかってコトですよ!せめて俺らもこの問題に一緒に取り組むとかしてーーーー」

 

 「おいおいイッセー、お前何筋違いなコト言ってんだよ」

 

 「え?」

 

 俺はイッセーの台詞を遮り、持論にも似た極論をぶつける。視線は尚も、下を向いたままで。

 

 「俺らは『相談』部なんだ。依頼主の相談に乗ってやった時点で、俺らの仕事は既に終わっている。それなのに依頼主の事情に首を突っ込むのは、俺達のするべきコトじゃない」

 

 「だけど……!」

 

 「だいたいあの子(女生徒)の家庭事情に首を突っ込める程、俺達はあの子と懇意にしてるか?例え懇意にしてたとしても、家族内の問題には他人が簡単に干渉しちゃいけないんだよ」

 

 「ぐ……」

 

 イッセーは何も言えない悔しさに身を焦がしているのか、血が出るんじゃないか、と思うぐらい拳を強く握っていた。

 

 思わず視線がソッチに行ってしまうぐらいの気迫だからな……。ぎゅぅ、て何かを凝縮するような音すら聞こえたもん。

 

 「で、でも!私達にも何か出来るコトがあるんじゃないでしょうか?」

 

 「ないね」

 

 アーシアちゃんの思いやりを軽くあしらい、筆記作業を終えた俺はソファーから立ち上がり、この部室を後にしようとする。

 

 「つまづいた奴に必ずしも手を差し伸べなくちゃならない、なんて理由はないし、つまづいた奴も自分で起き上がらないといけない時があるんだよ」

 

 最後にそう言い残すと、俺は『ちゃんと部室の鍵閉めてから帰ってね~』と告げ、目的の場所へと歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前にある木製の扉を少し控え目に叩く。

 

 コンコンコン、と渇いた音が響く。

 

 「どうぞ」

 

 扉の先から入室を促す声が聞こえてきたので、俺は一切の躊躇も無しに扉を開ける。

 

 「よう。今日は珍しく来てやったぜ」

 

 「…………本当に珍しいですね。まさかアナタからここに来るだなんて」

 

 俺の目の前にいる彼女はその言葉通り、目を丸くさせて俺の方を凝視している。作業中だったのか、手にはシャーペンが握られていた。

 

 「ほい、とりあえずこれが今月の活動報告書で~す、会長♪」

 

 「……何でアナタはそんなに上機嫌なんですか?」

 

 「べっつに~」

 

 この部屋の主であり、この駒王学園の生徒代表でもある彼女ーーーー支取蒼那ことソーナ・シトリーに報告書を提出する。

 

 言うまでもなく、この部屋は生徒会室だ。

 

 何故俺がこんな所にいるのかというと、相談部創立時にソーナからある条件を提示されたからだ。

 

 『そのようなふざけた部活を存在させるコト自体不本意なのですが……それがアナタの本拠地になるのなら私は目を瞑りましょう。ただし、一ヶ月の間でどんな活動をしたのかを随時記録し、それを生徒会室にまで持ってきて下さい。この条件を呑めないなら、相談部などというふざけた部活は認めません』

 

 とのコトだった。

 

 俺はわざわざ生徒会室まで報告書を持ってこないといけない、という面倒くさいコト極まりない条件を呑むか呑まないかで葛藤していたが、安息の地が手に入るコトとどっちが大事かを比べると、決断は早かった。

 

 ……今更思ったら早すぎたかな。もっと簡易的な条件とかに出来たかもしれないのに。

  

 俺が昔の思い出に浸っていると、目の前で報告書を読み出したソーナは端正な美貌を強ばらせた。

 

 「これは……かなり重い問題ですね」

 

 「重すぎるわ。危うく俺の体が潰れるんじゃないかって思ったもん」

 

 「いや、それはないでしょう」

 

 ソーナが俺の弱ボケを処理し、さっきまで目を通していた報告書を閉じる。

 

 それと同時に、今まで溜まっていた何かを吐き出すかのように嘆息する。 

 

 「この学校に、これほどの傷を抱えてる生徒がいるなんて……自分が不甲斐ないと感じます」

 

 「は?なんで?」

 

 ソーナが突然わけの分からないコトをしゃべりだし、俺は思わずその真意を問う。

 

 「私は会長であるが故に、この学園を素晴らしい物にしなければなりません。経済的な問題だけでなく、生徒が心からこの学園を素晴らしいと思えるような、そんな居場所にしなければならないのです」

 

 彼女は報告書を俺に手渡した後、窓の方へ視線を傾けた。

 

 空は既に朱く染まっており、少し薄暗くもある日光だけが生徒会室を照らしていた。

 

 「それなのに私は、このような悩みを持つ生徒を出してしまった。そのせいで彼女の家庭が崩壊したりでもすれば、私は自分の不甲斐なさを一生恨むでしょう」

 

 『生徒一人救えないような私には、夢を叶えるコトなんて出来ないでしょうから』と悲哀の表情を浮かべた彼女はそう呟き、それ以降何も口に出さなかった。

 

 生徒会室が異様な空気に包まれ、時計の針の音が聞こえる程静寂な空間になった。

 

 俺はこれ以上ここに居続ける意味も無いので、踵を返して相談部の部室に戻ろうとしたところで、

 

 「別にいいんじゃねえの?救えなくても」

 

 「……え?」

 

 ソーナに背を向けたままで、俺が今思っているコトを口にした。

 

 彼女はそんな言葉が聞こえてくるとは思わなかったのか、唖然としたような声を上げた。

 

 「お前がこの学園の生徒全員の問題を解決するなんてコトは不可能だ……どんな奴が生徒会長でもな。現に自分の問題を自分で解決した奴を俺は知っている。逆に悩み一つすらない学園なんて、俺は奇妙に思うがな」

 

 俺はそう言うと、自分の下僕である『兵士』のコトを思い出す。

 

 アイツは好きな女の子の為に体張って、がむしゃらに戦って、最後には幸せになるコトが出来たんだ。

 

 初めて出来た彼女に殺されるというトラウマを抱えていても尚、アイツはアーシアちゃんと共に居るコトを選んだんだ。

 

 ソーナは俺の持論を反復していたが、自分の考えは曲げない、とばかりに首を振った。

 

 「それでも私は、せめて目の前に助けを請う生徒がいれば……それを救いたいと思います」

 

 「…………そうかい」

 

 それだけ言い残すと、俺は木製の扉を開け、生徒会室を後にした。

 

 俺はその帰り道で、何か煮え切らない感情を抱いていた。

 

 「解せねぇ……」

 

 それはソーナに対してではなく、今日相談に来た女生徒に対してだ。

 

 あの子の両親が弟君の家出を知らないならば、それをあの子の口から両親に知らせてやれば全てが解決する。

 

 だが彼女はそれをしない。そのコトに俺は不可解なモノを感じていた。

 

 極めつけは、女生徒が相談部部室を出て行く時の一言。

 

 彼女はどうすればこの問題が解決するかを理解しているようだった。それなのに、彼女はその方法を実行しようとしない。

 

 そして泣き止んだ後の彼女の顔は、悩んでいるようにも、悲しんでいるようにも見えなかった。

 

 考えることを放棄したーーーーまるで死人のような生気のない表情をしていた。

 

 「……解せねぇ」 

 

 俺はそう呟くが、当然この声を聞いている者は誰一人いない。

 

 夕暮れのせいで朱く染まった廊下を、俺は一人不機嫌になりながらも歩いた。




摩「部室鍵しまってるんだっけ‥……まあ、いつもの場所なら開いてるだろ」 

 「ガチャン」←窓が開かない音

摩「ん?」

 「ガチャガチャガチャ」←何度も試すがやはり開かない

摩「……あいつら窓も閉めていきやがったーーーーーーーー!」

 この日摩耶は久々に家へと帰りましたとさ

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