ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~   作:タロー☆マギカ

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執筆スピードが上がらない。これもホームワークのせいだ。サブタイトルがそろそろ限界。




修羅を見ます!

 「ヒャハハ!おいおいどうした~?まさかもうへばったなんて言うんじゃねえだろうなぁ?」

 

 勝負は一瞬だった。いや、最早勝負とは言い難い惨劇が目の前で繰り広げられていた。

 

 プロモーション時の俺とは比べ物にならない程の身体能力。

 

 それが周りの神父逹に余すことなく尽くされ、マンガでしか見たことがないような速度で吹っ飛んでいくはぐれエクソシスト集団。

 

 正直いって悲惨すぎる。敵である俺ですら可哀想に思えてくる程だ。隣にいるアーシアなんて顔を真っ青にして事の一部始終を目撃している。

 

 何より一番印象的なのがこの現象を起こしている張本人ーーーー摩耶さんが笑いながら戦闘を行っている事だ。

 

 摩耶さんの身体の至る所に付いている斑点模様は、全て神父逹の返り血で形成された物だ。その姿を見るだけで、どれだけ大勢の神父逹を殴り倒したのかは想像に難くない。

 

 次々と襲いかかってくる神父逹を的確に、鮮やかに捌いていく摩耶さん。極めつけはしなくてもよい攻撃をわざわざ相手にかまし、両拳を血で滴らせていた事だ。オーバーキルという奴である。

 

 改めて言おう…………怖ぇぇぇぇえええええ!!

 

 恐ろしい!恐ろしいよ!あの人が味方でホントによかったよ!目の前で繰り広げられている残虐行為を見物するごとにその気持ちが増していく。……決してあの人には逆らうまい。

 

 などと考えていたのも束の間、俺のすぐ横を神速と呼べるスピードで通り過ぎていった神父が最後の砦だったらしく、戦いを終えた摩耶さんが天を仰ぎながら呟いた。

 

 「あー、物足りねぇな。もっと骨のある奴はいないのか?少なくともフリードはお前らよりかは骨があったぞ」

 

 そう言うと摩耶さんは壁や床、さらには天井までにもめり込んでいる神父逹を一瞥した。

 

 因みに摩耶さんの足下には数々のクレーターを作ることになった人物逹の血で出来た水溜まりが

いたる所にあった。

 

  …………もう何も言うまい。

 

 「う、嘘でしょ。いくらあなたが強すぎるからといってその強さは反則でしょ!あなた一体なんなのよ!?化け物なの!?」

 

 「何でそんなにビビってる?アイツらが俺より弱かったから負けた。それだけの事だろ?」

 

 それだけではないと思う。決してそれだけではないと思う。

 

 レイナーレはこの世の終わりを予期したような顔になっており、肉付きのいい身体を震えさせ、二歩三歩後ずさる。

 

 気持ちは痛いほど分かる。俺もさっきから身体がガタガタ震えてるのを必死で抑えてたりしてる。アーシアが近くにいるのに、情けない姿は見せられないからな。

 

 「さてイッセー。次はお前のターンだ。何度も言われてウザったいだろうがもう一度言っておく。ーーーーやれるな?」

 

 「やれます……アーシアの事頼めますか?」

 

 俺は摩耶さんからの最後の決意確認を即答で返し、さっきから痙攣している足を支えながら立ち上がる。

 

 だって目の前であんな無惨な暴力事件見せられたら誰だってこうなるだろう。そのテの現象を見慣れた奴なら大丈夫だろうが生憎俺は未だに慣れていない。摩耶さんからの言葉に返答出来てることすら奇跡に近い。

 

 だけど俺はそれをしなくちゃならない。奇跡を起こさなければならない。眼前で立ち尽くしている憧れの人に、カッコイい姿を見せなければならないから。そして、

 

 

 

 惚れた女の子とこれからも一緒に歩んでいくためにも。

 

 

 

 

 「……イッセーさん」

 

 アーシアが俺を心配するような素振りを見せる。その双眸にはうっすらと涙を浮かべており、胸の前で両手を強く握りしめていた。

 

 本当に優しいな……この子は。初めて会った時からそうだった。聖職者と呼ぶに相応しいオーラを醸し出し、たちまち癒されたような気分になる。それこそが彼女の魅力なのだろう。実質俺もその部分に惚れ込んだのだから。一番の魅力は笑顔だがな。

 

 そんなアーシアの不安を取り除く為に、俺は彼女の吸い込まれそうになる瞳を覗き込み、心のそこから思ってる言葉を掛けた。

 

 「アーシア。何度も言うけど……俺はお前の事が好きだ」

 

 「ふ、ふぇ!?いいいいったい何を言ってるんですか!?」

 

 「何って、俺の気持ちを素直に伝えただけなんだが?」

 

 「~~~~~~!!」

 

 俺の場違いな発言にアーシアは目に見える程顔を赤くし、何やらブツブツと呟きながら狼狽えていた。

 

 いや俺だってこの状況で何言ってんだよって思うよ?でもアーシアにそんな陰がさしたような顔をしてほしくなくて、せめて俺が一番好きな笑顔を見せて欲しかったからあの一言を言ったんだが、思うようにいかなかったようだ。

 

 後ろで『惚気てんじゃねえよ、さっさと逝けよ、早くしろよ、そこで押し倒せよ』という恐ろしい独り言が聞こえてきた。二番目の台詞はどこかおかしい気がするし、最後にいたっては何を言っておられるのかまったく理解できない。これを支離滅裂と言うのだろうか。相変わらず恐ろしい人だ。

 

 「とにかくアーシア、俺がお前に惚れたっていうことには嘘偽りは無い。いきなりこんな事言われて気が動転してるって事も理解してる。ただ……この戦いが終わったら、返事をくれないか?」

 

 「イッセーそれ死亡フラグ」

 

 空気を壊すなぁぁぁあああああああああ!!

 

 さっきから何なんだよアンタは!?自分のやるべき事が終わったからって自由すぎるだろ!コッチは真剣にアーシアとこれからの事をーーーー

 

 「うだうだ言ってねーでとっとと行け。それとも俺が直々に逝かせてやろうか?」 

 

 「兵藤一誠、行って参ります!」

 

 未だビビっていながらも(大半は摩耶さんのせい)、俺は俺のけじめをつけるために元カノの方へ向かった。アーシアとは後でゆっくり話し合うとして、今は目の前の問題を片づけますか。そうしなければ俺の身が危ない。

 

 「あ、そうだイッセー。一つアドバイスをやろう」

 

 不意に摩耶さんがそんな事を口にし、皆の視線が思わず摩耶さんの方に惹かれる。誰だってどんな状況下でもアドバイスなんて物があれば耳に入れたいモノである。ていうかレイナーレにも聞かれてるけど大丈夫なのか?

 

 「大丈夫大丈夫。今から言うことがあのクソビッチに聞かれたからって支障をきたすことはねえよ」

  

 「な!誰がクソビッチよ誰が!」

 

 ビッチ呼ばわりされたレイナーレが思わず声を荒げ否定する。

 

 「いやだってそんな恰好してる女にビッチじゃないって言われてもなぁ……」

 

 確かに説得力が感じられない。今回ばかりは摩耶さんに激しく同意する。この人と感性が一致するなんてめったなことではないだろう。そのめったなことをレイナーレは引き出したのだ。ある意味恐ろしい相手だ。ていうか摩耶さんまた俺の心読んだな……いい加減驚かなくなってきた。

 

 「さて、横やりが入ったが話を続けるぞ」

 

 先程から『無視するな!コッチ見なさい!』などと叫んでいるレイナーレに耳を傾けず、摩耶さんが俺の方に向かって歩いてきた。そしてすれ違いさま、俺の肩に手を置くと同時に美形な顔を俺の頭部近くに接近させてきた。

 

 「金髪シスターちゃんの事を強く思い描け」

 

 「へ?」

 

 戦闘についての助言が飛んでくるかと思いきや、いきなり精神論を言い渡されたので思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。ていうかアーシアの事を想えって……普通諦めるなとかじゃないんですか?

 

 「神器はお前の想いに応えて進化する。お前が本当に金髪シスターちゃんを想ってるなら……神器はお前に力を分けてくれるさ」

 

 そう言って摩耶さんはアーシアの方まで歩いていき、『さっさと終わらせてくれよ~。こちとら早く寝たいんだ』と手を振りながら呟いた。

 

 欠伸をしている姿はさっきまで修羅を彷彿とさせた人物とは到底思えなかった。だが、今の摩耶さんの後ろ姿はどこか安心出来るような不思議な感覚があった。

 

 まるで兄貴がいたらこういう気持ちになるのかな……。

 

 「イッセーさん!」

 

 摩耶さんの向かう先にいる俺の想い人から名を呼ばれ、視線を思わずそちらに移す。

 

 アーシアは一瞬何かを言おうとしたが寸前でそれを噛み殺し、両手を強く握り締めて俯いた。そして彼女が顔を上げると、俺が彼女に惚れた一番の要因がそこにあった。

 

 「……絶対帰ってきて下さいね。私はまだ返事をしていないんですから」

 

 その一言と極めて可憐な笑顔は、俺のこの戦闘に対する思い入れを助長するには十分な物だった。いや……十分すぎる!

 

 「シャー!見てろよアーシア!今からあのクソビッチぶっ飛ばして俺に惚れさせてみせるからな!」

 

 遠くで『誰がクソビッチよ誰が!』なんて怒鳴り声が聞こえるが生憎今の俺はアーシアの事で頭がいっぱいなのだ。悪いがお前の為に割く頭は一ミリたりとも無い!

 

 そんな事を考えていた直後、俺の左手から眩い光が発生し、手のひらサイズでしかなかった『龍の手』は肘まで強固な鉄で包む立派な篭手になった。

 

 直後、『Boost!』という機械音が篭手から響き渡り、手の甲に着いている宝石が一際強い光を放つ。

 

 何だか分からないけど……不思議と力が上がっていくような気がする。これなら行ける!

 

 レイナーレ、元カノのお前を吹っ飛ばすのに迷いなんか微塵もねえ!速攻でケリつけてアーシアから告白の返事もらうんだからなー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何だアイツ。俺の助言より金髪シスターちゃんの返事の方が大事なのか?何か腹立つわ~」

 

 イッセーとレイナーレから少し離れた所で、摩耶とアーシアは二人の行く末を観ていた。

 

 先程から摩耶はイッセーの気合いの入りようが気に入らないと言ったように、ときたま怒りを孕んだ声で静かに呟いていた。

 

 しかし羨望の対象である男からのアドバイスより、惹かれている女からの返答どちらをとる?と問われたら断然後者を選ぶだろう。それが性欲の強いイッセーなら尚更だ。

 

 摩耶はイラついている態度を取りながらも、その表情には憂いに似た感情を浮かび上がらせている。

 

 彼はイッセーの左手に装備されている篭手を一瞥し、口角を段々と上げていく。それは摩耶の憂いを増幅させている事を意味していた。

 

 「あ、あの……」

 

 文字通り悪魔の笑みを浮かべている摩耶に、アーシアが恐る恐る声を掛ける。人一倍優しい心を持っている反面、人一倍気が弱い彼女にとって今の摩耶に声を掛ける事は中々出来た事ではなかった。

 

 「ん?何?」 

 

 しかし彼女は声を掛けた。理由は明白単純である。

 

 「イッセーさんは、勝てますか?」

 

 そう、眼前で戦っている悪魔の男の子を気にかけているが故にだ。

 

 初めて自分に出来た友達。そして自分の事を好きだと言ってくれた初めての男の人。

 

 初めに出会った時からアーシアは彼の事で頭がいっぱいだった。

 

 遠く離れた異国の地で自分の言語が通じないという絶望的な状況でありながらも、自分の使命を全うするために右往左往していた自分に手を差し伸べてくれた彼。教会の近くまで案内してもらい彼は学校があるため別れたが、その時からずっと彼の事を考えていた。

 

 また会えたらいいな。そんな事を考えながら彼女は自分の目的地へと歩を進めた。

 

 そして二人はそれ程時を待たずして再び邂逅した。最も、その場の状況はそれに見合った物ではなかったが。

 

 自分がフリードに暴力をふられ、その上操を強奪されそうになるまでの事態に陥ったとき、彼は一目散に自分を助けてくれた。

 

 その後ろ姿にアーシアは何故だか分からないが目を奪われ、イッセーの事を見つめる彼女の顔つきは恋する乙女のソレだった。

 

 そして彼が戦線から離脱し、彼の主である男がフリードと堕天使達を圧倒した。予想外の事態に陥った敵軍は一時撤退を図り、その隙に黄土色の髪を持つ男に逃げる事を催促され、ひとまず身を隠す事にした。

 

 再び途方に迷っていた時、彼女はまたもや彼の事を考えていた。自分の事を助けてくれた彼。一度ならず二度までも、彼は自分の事を助けてくれた。自分の身を省みずにだ。

 

 自分は聖教徒、彼は悪魔。立場は完全に敵対していようとも、彼自身を敵対視してはいない。もう一度彼に会いたい。そうすれば自分の抱える気持ちに気づくかもしれない。

 

 そんな事を考えていると、曲がり角で誰かにぶつかってしまった。彼の事ばかり考えてしまっていて、目の前を注視していなかった。これは明らかに自分の落ち度だ。謝罪の言葉を口にしようと顔を上げた先には、

 

 彼だ。自分の事を二度に渡って助けてくれた男の子。彼も自分とこんな所で会えるとは思っていなかったのか、その表情には驚愕の色が見て取れた。

 

 その後彼と色んな所を見て回り、時には遊んで、時には食事をしてと、何時になく楽しい時間を過ごしていた。

 

 そして休憩がてら公園のベンチで座っていた時、彼が自分の肩を掴んで何かを言おうとしていた時だった。

 

 あの時の彼の表情は真剣そのものでその表情を見たとたん、彼女の中でくすぶっていた感情の正体を悟った。

 

 

 

 自分は、この人の事を好いているのだと。

 

 

 

 目の前の少年に恋心を抱き、そのせいで彼のことをずっと考えていたことにも納得がいった。

 

 だが……だからこそ。彼を危険な目に合わせたくなかった。

 

 だからあの場に現れたレイナーレについていき、彼から離れる事を決めた。

 

 胸が張り裂けるぐらいに痛かった。だが、目の前で彼が痛めつけられるのを目の当たりにするぐらいなら、コッチの方が断然マシだ。

 

 もう二度と会うことはないだろう。そんな事さえ思っていた。だが、人生という物はそんな簡単に決められる物ではなかったようだ。

 

 彼が来た。自分を助けに来た。十字架に磔にされている状態で彼女が見た光景は他でもない意中の男性の姿だ。

 

 別れた時より一層胸の痛みを感じた。ただあの時と違うのはその痛みを伴う原因となった感情が嬉しさによる物だということだ。

 

 それから紆余曲折あったが最終的に自分は助かり、彼は全ての決着をつけるためにレイナーレに向かっていった。心配になるのは当然の事だ。

 

 そして答えを知るであろう彼の主である男は、アーシアからの問いに答えた。

 

 「そーだねー。7:3でイッセーかな?」

 

 「か、かな!?かなって何ですか、かなって!?どうしてそこで疑問系になるんですか!?」

 

 「いやだって正直言って戦闘経験とか力の使い方は断然向こうの方が上だし、イッセーは自分の命が懸かった真剣勝負っていうやつは初めてだしな」

 

 「だったらどうしてイッセーさんが戦わなくちゃいけないんですか!」

 

 期待してたような返答は帰ってこず、寧ろ最悪と言っていい程の答えが帰ってきたことに、アーシアは動揺を隠せなかった。

 

 因みに完全に余談ではあるが、命懸けの戦いなら既にフリードとの対決で経験済みのイッセーである。最も、たった一戦だけなのだが。

 

 「落ち着きなよ。何もイッセーが負けるとは言ってないじゃない」

 

 「それは……そうですけど」

 

 そんな曖昧な答えより、彼の身の安全が保障されているという確約が欲しかった。

 

 そんな彼女とは裏腹に、イッセーの主である摩耶は先程から溢れ出る感情を抑えきる事が出来ず、彼女に聞かれないように声を押し殺して笑っていた。

 

 そしてもう一度、必死の戦闘を行っている我が兵士に装備されている篭手を見て、心の中で呟く。

 

 さあ、俺に見せてくれよイッセー。

 

 

 

 "白"と同等の力を持っていると言われている実力をーーーー!

 

 

 

 明らかに戦闘狂(バトルジャンキー)の思考をしている摩耶は、赤色の篭手から視線を自分の兵士であるイッセーに移す。そして再び獰猛な笑みを浮かべる。

 

 摩耶はこの勝負を7:3と言ったが、それでも控えめに見た方だろう、と密かにイッセーに期待を抱いていた。

 

 

 

 

 




 摩「久しぶりだわ~ここに出てくるの」

 ア「いったい何のことを言ってるんですか?」

 摩「そういや君はここ来るの初めてなんじゃない?」

 ア「へ?」

 摩「いやいやゴメン、何でもないんだ」

 次元をも超越した言葉を吐く摩耶であった。

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