ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~   作:タロー☆マギカ

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ちょっとフラグ立ててみたりしました。
テストやっぱばりツライ。


教会乗り込みます!

 「それにしてもよくここに来れたよなー。俺って奴は」

 

 日は既に沈み、代わりに月明かりがこの場を照らす。普通の人ならとっくに寝てる時間帯だろうが、俺にはどうしてもやらなければならない事があった。

 

 故に俺は今、リアス先輩には今後近づくなと忠告されたはずの教会の前にいた。悪魔にとって聖なる物は害があると聞いていたが、こうして眼前にあるだけでここまで悪い気分になるなんて思ってもみなかった。

 

 アーシアに教会の場所まで案内した時感じた物とは天と地の差だ。

 

 だけど俺はあの建物の中に足を踏み入れなければならない。俺の気分がどれだけ悪くなろうと、後で悪魔界や他の勢力をも巻き込もうと、たった一人でケンカを売ることになったとしてもだ。何故ならここには俺の想い人がいるはずだから。

 

 「絶対に助け出してやるからな。……アーシア」

 

 気合いを入れるためにわざわざ俺の目的であるアーシア救出を声に出し、教会の入口まで歩を進める。

 

 あの子は何があっても絶対に助ける。もう一度会って、あの時伝えられなかった俺の心情を吐露する。あの笑顔をもう一度、いや何度も見るために。

 

 そして胸の奥に潜めるもう一つの目的。それはーーーー

 

 「ーーーーケジメつけてやる。レイナーレ……お前をぶっ飛ばして!!」

 

 教会の扉の前まで辿り着いた俺は左腕を引き、思いっきり目の前にある木製の扉に目掛けて突進させる。

 

 この教会が長い間放置されていたせいだろうか扉はいたる所が傷んでおり、呆気なくバラバラに砕けた。

 

 今ので敵に俺が侵入して来た事がバレたかも知れないが知ったところではない。元よりここにいる者全員を叩きのめすつもりだったんだ。どうってことはない。

 

 地面に散らばっている木片を蹴飛ばしながら教会の中に入る。周りから見れば、今の俺はどんな風に見えるのだろうか?自分の力の無さにイラつき、物にあたっている惨めな男だろうか?それとも、

 

 

 

 「気負いすぎじゃね?俺から言わせれば憎悪に支配された復讐者に見えるけどぉ?まあ、そこんところは悪魔なんだからしょうがねぇかあー。キャハハ!」

 

 

 

 突如教会に響いたふざけたような口調に、俺は思わず耳を疑った。

 

 ……何でアイツの声が聞こえる?アイツがここにいるっていうのか?そんな訳ない。あるはずがない。だってアイツは摩耶さんが……。

 

 いくつもの思考が頭の中を駆け巡っていたその時、剣と銃を持った白髪の神父が俺の前に立ちふさがった。

 

 「グッドイブニィィィィィング!!誰かと思ったら俺のハンサム顔に一発ぶち込んでくれた奴じゃ~ん。お前もいつか斬り刻んでやりたいとおもってたんだよね~。キャハハ!」

 

 「フリード……!!」

 

 二度と顔を合わせたくなかったはぐれ神父、フリード・セルゼンが高らかに笑った。

 

 「つーかお前もよく懲りずにここまで来たねぇ。誰かに止められたりしなかったの?もしかして心配してくれる友達すらいないの!?」

 

 「……それぐらいいるさ。聞き分けが悪いからひっぱたかれたりしたよ」

 

 そう言って俺はあの時の痛みを思い出し、叩かれた頬にソッと手を添える。

 

 実はここに来るまでに学校をサボっていたことがオカ研の連中にばれ、捜索活動を行っていた木場に発見され、そのままオカ研部室に連れ込まれ説教に近い説得を受けたのだか、聞く耳を持たない俺にリアス先輩がビンタをかました。

 

 正直あれはめっちゃ効いた。ただの平手打ちがあんなに痛いとは思わなかった。それほどリアス先輩の想いがあの一撃に籠もっていたのだろう。

 

 だが俺はそれでも諦めきれず、その場は適当に相槌を打ち、部室を出た後に一目散に教会目掛けて突っ走った。バレたら怒られるだろうなぁ。

 

 だが思いの外収穫はあった。それは目の前のクソ神父を叩きのめせるという事。だがその前に、

 

 「オイ……摩耶さんはどうした?」

 

 「あ?マヤサン?誰だよソイツ?」

 

 「お前をこてんぱんにぶちのめした人だ!覚えてないなんて言わせねぇぞ!」

 

 恫喝じみた問い掛けが教会に木霊する。あの人がこんな奴に負ける訳がない。そんな事あってはならないんだ!

 

 「うるせーなぁ。もう夜なんだぜぇ、そんな大声で怒鳴るなよ、近所迷惑だろが。つーか一々殺した奴覚えてるほど俺も暇人じゃないの。キャハハ!」

 

 ………………は?今、何て言ったコイツ?殺した奴を覚えない?摩耶さんを覚えてない?じゃあコイツはあの剣で、あの拳銃で摩耶さんをーーーー

 

 「ーーーーウソだ」

 

 「あ?」

 

 震えた声が漏れる。手に自然と力が入る。

 

 イラつきが前にもまして強くなる。目の前にいる男を立てなくなるまで殴り倒したい。そんな感情が徐々に俺の身体を支配していった。そして、

 

 「お前みたいな奴に摩耶さんがやられるわけないだろうが!!」

 

 左手に赤色の篭手を発現させ、一直線にフリードに向かって走り出した。死闘を繰り広げるために……。

 

 「キャハハハハ!俺とやりあおうってか!?いいねぇいいねぇ最高だねぇ!お前みたいな単細胞を痛めつけて殺るのが一番楽しいんだよなぁ!!」

 

 フリードはそう言うと銃口をこちらに向け、何の躊躇いも無く引き金を引いた。

 

 コイツに躊躇なんて生易しい感覚があるなんて思ってはいない。たがフリードのとった行動は、瞬時に俺の過ちを理解させた。

 

 それは拳銃という遠距離武器をもっている相手に、バカ正直に特攻したことだ。相手の攻撃が始まってから避けるなんて芸等は、摩耶さんぐらいのレベルじゃなければ出来ない。ましてや発射された銃弾を避けるなんて事、相手の行動を読んでいない限り荒唐無稽の出来事だ。

 

 銃弾は無慈悲にも俺の脳天を貫こうとただ一直線に飛行してくる。俺にはこの状況をどうこうする技術を持ち合わせてはいない。飛んできた銃弾は吸い込まれるように俺の方に向かっていきーーーー

 

 

 

 ーーーー着弾こそしたものの、身体を貫通するまではいたらなかった。

 

 

 

 「………………マジ?」

  

 フリードから間の抜けた声が聞こえてくる。

 

 それもそのはずだ。銃弾が貫通しない人間なんて、この世の中探しまくっても見つかるわけがない。

 

 そう、普通の人間には不可能な行動だ。

 

 だが俺はなんだ?人間には違いないが、その前に俺は今悪魔なのだ。人間にはやれない事を平然とやってのける事が出来る。

 

 俺はフリードが銃を構え、必殺の一撃を叩き込もうとする前に、悪魔の能力を既に使っていた。故に無傷で済んだのだ。済んだのだが、あくまで貫通させないための措置を行っただけであり、衝撃時の痛みはダイレクトに伝わってくる。

 

 「っ、てぇぇなあぁぁぁぁ!」

 

 叫び声を上げながら尚もフリードに突貫する。

 

 だって痛いんだもん!銃弾でやられたのはこれで二度目だけど、やっぱ馴れないわ!というか馴れたら馴れたで恐ろしいけど……。

 

 そんな事を考えていたのも束の間、フリードとの距離を詰めた俺はすぐさま篭手を装着してある左腕に全体重を乗せ、フリードの顔面にめり込ませる。

 

 「ふぶぉ!」 

 

 どこかで聞いたことがあるような情けない声を出し、そのまま後ろへ吹っ飛んでいく。今の俺の一撃は初めに会った時とは違う。

 

 何故なら俺は今、『戦車』の力を持っている。

小猫ちゃんと同じような桁違いの攻撃力と防御力を今俺は司っている。

 

 これこそが『兵士』の俺が持っている唯一の能力ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ーーーー『昇格(プロモーション)』だ。よく覚えとけよ」

 

 不意に摩耶さんと交わした会話が脳裏によぎる。

 

 俺は小猫ちゃんと摩耶さんの戦闘が終わった後、相談部部室に帰ってきた直後摩耶さんに質問をした。

 

 内容は俺達転生悪魔の駒の特性だ。

 

 『戦車』である小猫ちゃんの特性はさっきの戦闘を見る限り、桁外れの攻撃力を保有しているということは分かった。だが、肝心の俺の特性についてはまだ分かってはいなかった。

 

 やむなく俺は摩耶さんにこの事を打ち明け、『兵士』についての事を根掘り葉掘り訊くことにした。

 

 「『昇格』……ですか」

 

 「そうだ。実際のチェスにもあるルールでな。相手の陣地に『兵士』が入った時点で『王』以外の何かになれるってやつだ」 

 

 因みに摩耶さんの話によると、『騎士』はスピードの上昇。『僧侶』は魔力量の増加。そして『女王』は『王』以外の全ての能力を兼ね備えてるらしい。

 

 それって朱野さんチートばりに強いんじゃないですか?無想できたりするんじゃないですか?

 

 「条件はさっき言ったとおり敵の陣地内に入ることでな。これについては『王』である俺が敵地だと判断すれば簡単なんだが……一々その判断を下すのが面倒くさいから、ある一定の条件を満たせばいつでも使って構わない。」

 

 「条件……?」

 

 すると摩耶さんは俺に顔を思いっきり近付けてきた。吐息が掛かるほど密着しており、摩耶さんの美形な容姿が目と鼻の先にあるため、顔が自然と熱を持ってしまう。

 

 ていうか面倒くさいって……俺にとって重大な事なのに、それを面倒くさいなんて言われると少しムッと来るな。だが何時でも使えるようにしてくれるのはありがたい。

 

 そして摩耶さんはゆっくりと口を開き、

 

 「お前の『昇格』時に課す条件とはーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ーーーー使いたい時こそ使え、ですよね」

 

 誰にも聞こえないであろう声量で静かに呟く。

 

 正直いったい何を言っているのか分からなかった。あの後俺は状況を把握するべく、摩耶さんに言われたことを何度も脳内で再生した。しかし何度再生しても、辿り着く結論は一つしかなかった。

 

 ーーーー絶対単に面倒くさいだけだ!!

 

 ……いや、実際そうなのであろう。その会話が終わった後、摩耶さんはおれの言葉に何も返さず、ベッドに潜り込んでしまった。

 

 俺はそのいい加減さにイライラしていたが、寝る前の摩耶さんから一つの言葉が発せられた時、不思議とその感情は消え失せた。

 

 ーーーーまあ、その時は精々頑張れやーーーー

 

 「……頑張りましたよ摩耶さん。見てくれてますか?」

 

 視線を上の方に向け、天井で遮られている世界に声を投げ掛ける。

 

 届きそうで、届かない場所。

 

 「……本当に、負けたんすか?」

 

 自然と頬に温かい液体が走り、思わずそれを制服の袖で拭き取る。

 

 ……まだ俺には、やらなきゃいけない事がある。それをやり遂げるまでにはあの人に顔向け出来ない。胸を張ることが出来ない。

 

 アーシアを助けるまでは。

 

 俺はそのまま歩を進め、辺りを散策していると地下室への階段を見つけた。見るからに怪しく、その先にアーシアがいると確信した。隠し階段、って時点で怪しすぎだしな。

 

 そして階段を降りようとした刹那、

 

 「オイオイオイ……このまま素直に行かせると思ってんのかクソ悪魔ぁぁあ!!」

 

 「な!?」

 

 先程ぶっ飛ばしたはずのフリードが既に立ち上がっており、怒りの形相でこちらを睨んでいた。

 

 「許さねぇ……絶対に許さねぇぞテメェだげは!一度ならず二度までも俺に拳当てやがって!生きて帰れると思うなよタコがぁぁぁぁぁ!!」

 

 フリードがさっきまでとは比べ物にならない殺気と狂気を撒き散らしながら銃口を俺に向けてくる。

 

 マズい……!さっきの攻撃は不意打ちみたいな物だ。アイツ並の実力者相手に二度同じ手段は恐らく通じねぇ。かといって単純に実力で勝負すればこっちが負ける可能性が高すぎる!勝ったとしてもその後アーシアを救いにいく余力が無いかもしれない……!けれど……

 

 「……やるしかないんだぁ!」

 

 俺は腹をくくり、瞬時に『女王』にプロモーションする。さっきと同じようにフリードに向かって突進しようとした瞬間、

 

 

 

 一振りの剣が俺とフリードの間に投擲された。

 

 

 

 「え!?」

 

 「誰だぁ!?」

 

 俺は驚愕を含んだ声で、フリードは怒気を孕んだ声をあげながら教会の入り口に目を見張る。

 

 そこにはーーーー

 

 

 

 「ーーーー騎士としてこういう剣の使い方はしたくなかったんだけどね」

 

 「……間一髪です」

 

 「木場に小猫ちゃん!?何で……」

 

 「愚問だね、兵藤君。僕達が敵地に単独で向かっていく友達を放っておく連中だと思っているのかい?」

 

 「え……バレてたの?」

 

 「当然です」

 

 突如駆けつけて来てくれた木場と小猫ちゃんに救われたのはよかったが、俺の行動が全て筒抜けだった、と考えると正直自分に不甲斐なさを感じる。

 

 俺の勝手な行動で皆を巻き込んでしまった。もっと俺に力があれば、もっと上手くやっていたら一人でどうにかする事が出来たのに……!

 

 「水くさいじゃないか。僕達は友達なんだよ」 

 

 「……え?」

 

 「一人で何か出来ないようならば僕達を頼ればいい。友達の頼み事ならば喜んで引き受けてあげるっていうのに。……覗きとかなら勘弁だけど」

 

 そう言って木場はいつものイケメンスマイルを俺に向けてきた。

 

 「……あなたが死んだら摩耶先輩はきっと悲しみますからね。あの人のそんな顔は死んでも見たくない」

 

 そう言って小猫ちゃんはいつ見てもみとれてしまう程完璧なファイティングポーズをとる。

 

 二人は、俺を助けようとしてくれている。こんな情けない俺を。

 

 ーーーー頼れる仲間がそこにいる。

 

 それだけで俺はさっきまで沈みかけていた元気をもう一度ひねり出せた。自然と笑みが零れてしまう程。

 

 「行くんだ兵藤君!この場は僕達が引き受ける!」

 

 木場の叫び声で俺は本来の目的を思い出し、後ろにある階段を視線を移した。

 

 そうだ……俺はアーシアを助けに行かなきゃならないんだ!

 

 俺はそのまま脱兎のごとく走り出し、目的の場所に向かって一気に疾走した。

 

 「行かせるか……うおっ!?」

 

 「……摩耶先輩が、アナタみたいな外道にやられる訳がない!」

 

 背中越しにもかかわらず、小猫ちゃんの怒りがどれほどの物か分かる。それだけあの子は腸が煮えくり返っているのだ。

 

 ……ていうかあの子もしかして摩耶さんの事……。

 

 俺は階段を降りようとした足を止め、二人の方に体の向きを変え、声を上げた。

 

 「二人とも!帰ったら……俺のことイッセーって呼んでくれよ!!」

 

 それだけ言うと俺はそのまま薄暗い地下室向かって駆けていった。

 

 あの二人は負けない……絶対に!

 

 だから俺は俺のやるべき事をやりとげる。俺の事を助けに来てくれた二人のためにも。

 

 待ってろよ……アーシア!




小「……ここから先は通しません!」

木「友達に行けって言っちゃったからね」

フ「知るか!んなことどうでもいいんだよ!俺は地下室に行ったアイツを切るんだよぉ!」

小「貴方の相手は私たちです!」

?「いやソイツ俺の獲物だからぁぁぁぁ!!」

 黄土色の髪を持つ男が乱入してきた。

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