ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~ 作:タロー☆マギカ
では、どうぞ
俺はバカだ。
初めて彼女が出来たからっていい気になって、最高のデートにしようと何度も何度もプランを練り直した。
彼女の喜ぶ顔が見たかったから、心の底から楽しかったと、言ってもらいたかったから。
--その結果がこのザマだ。
最終的に俺はその彼女に殺された。幸せにしたいと心から思い、最初で最後に女性として愛したその彼女に……。
今思えばかなり怪しかったよな~~。
一度も見たことの無い女の子から告白されるなんて、一体どこの恋愛マンガだよ。
それを嬉々として受け入れた俺も俺だけど…。
これはきっと報いなのだろう。彼女が出来ただけで……イヤ、彼女じゃなかったのか。それなのにも関わらず松田と元浜にこれ見よがしに自慢して、鼻の下を伸ばしまくっていたのだから。
そんな男の末路としてはピッタリじゃないか……次生まれてくるとしたら今度こそ俺の夢を果たしたいな……そう、俺の…………………………………。
「…………い、……き…………か?」
……あれ?今…何か聞こえたような気が…。
「お~い、起きてっか~?てか、早く起きてくんない?俺もそのふかふかベッドで一刻も早く夢の世界へダイブしたいからさ~」
……まただ、さっきから聞こえてくるこの声は
一体なんなんだ?
ああ、そっか……幻聴か…俺はそんなにも心が病んでいたって事か。
声の主(?)には悪いけど、このまま永遠の眠りにつかせてもらうとしよう。そして転生した世界で俺は次こそ、夢を果たすことにしよう。
そう!俺の夢もとい、野望は!俺の周りを全員ーーーーーーーー
「いつまで寝てる気だテメェーーーーーーーー!!」
瞬間、俺は顔に熱湯がかけられた如く熱気を感じ、日本茶独特の茶葉の香りが俺の鼻腔をくすぐってーーーーーーーーって!
「アッツ!アツい!!冗談とかじゃなくてシンプルにアツい!何これ!?いくら夢の中だからといってやっていいことと悪いことぐらいあるし、
何より感覚がやけに冴え渡ってるしーーーー」
「やかましい!起きたらとっととそのベッドから降りろ!そしていい加減、そのもふもふ枕に顔をうずめさせて俺を安眠に誘わさせてくれ!!」
俺はその声がする方向に顔を向ける。
目の前にいたのは片手にコップを持っていて、
怒りの形相を露わにした男子生徒がーーーー
「コップじゃねぇ!湯のみだ!」
ウオッ!?心を読まれてる!?一体なぜ?
「いいからさっさと降りろ!無駄口叩く暇があったら今の状況を察しやがれ!」
とりあえず俺は目の前の男子生徒の言うとおりにベッドから降り、状況整理をすることにした。
確か俺は彼女(仮)とデートしていて、『あなたの命が欲しい』なんて物騒な事を言われた矢先に殺されてーーーーーー!?
「ま、待ってくれ!」
「あん?なんだよ、まだなんかあんのか?」
俺はとっさに、眠りにつこうとした男子生徒に声をかけた。当の本人は子どものように枕に顔を
うずめ、幸せの一時を俺みたいな奴に邪魔された
せいか、少し不機嫌な感じで返事をしてくる。
一瞬悪いことをしてしまったか、と罪悪感を感じたがすぐさまその感情を振り払い、自分の今一番に思っている疑問をぶつける。
「俺は確か……死んだはずじゃ…?」
「ああ、そのことか」
そういうと男子生徒はムクッと体を起こし、あくびをすると『じゃあ、まずはその疑問に答えてやることが先決か……』と呟き、俺に真実を教えてくれる素振りをみせた。
ものすごく面倒くさそうにしながらーーーーーー
「お前の彼女は実は堕天使で、そいつの作った光の槍で貫かれてお前はお陀仏になった。ところが、偶然その堕天使の気配をいち早く感じた俺が現場に駆けつけ、もう息をしてなかったお前を悪魔の駒《イーヴィル・ピース》で兵士《ポーン》として覚醒させ、俺の眷属になったにも関わらず未だ目を覚まさなかったお前をここまで運び、介抱してやったという訳だ」
「なる程………って、イヤイヤイヤイヤイヤ!!」
俺はその男子生徒からサラリと告げられた真実を未だに理解できないでいた。
悪魔の駒って何!?兵士ってどういう事!?トドメは彼女(仮)が堕天使だったって!?
「恐らくあの女狙いは、お前の体の奥底に眠っている神器《セイクリッド・ギア》が原因とみていいと思う」
また知らない単語が出てきた……せいくりっど・ぎあ?何それ?今海外で流行になってるバンドとか?それとも単なる英単語?俺、そんなに英語の成績よくないからな~~
などと、軽く現実逃避に陥ってきた俺は出されているお茶を一口すすることにした。
取りあえず落ち着こうっと…
そして俺はコップ……じゃなくて、湯のみに口を付け、そのまま中にある薄緑色の液体を喉に流し込む。
「あ、…おいしい」
思わず声に出してしまった。たまらずもう一口いただいてみる……うん、やっぱりうまい。
「だろ?日本人はやっぱり日本茶だぜ。ウーロン茶とか紅茶とかは邪道だ邪道」
そういうと目の前にいる男子生徒も俺と同じように日本茶をすすっていた。一見だらしなさそうな人に見えたけども、飲み方は一級品だ。人は見かけによらないって言葉があるけど、まさにその通りだな。今度見習うことにしよう。
ーーーーーーーーさて、と。
「あの……訊きたいことがあるんですけど…」
「うん?なに?」
「もう少し詳細に教えてくれませんか?」
「……いる?」
「いりますよ!!」
おもわず声を荒げ、目の前にいる男子生徒に再び説明を要求した。
それから、この人にはこれから敬語を使おう。
雰囲気からして恐らくは上級生、先輩だ。それに気分をそこねて説明しない、なんてへそを曲げられたりしたら余計困惑しちまう。俺には知らなければならないことがたくさんあるんだ。いや、ありすぎる。
だからこそ、全てを知っていてそうな人に訊けるだけ訊いておけば、少しは気分が楽になるかもしれない。
そして俺、兵藤一誠は不意に俺を殺した張本人、天野夕摩の事を頭の隅で思い出していた。
分かりやすくまとめると、悪魔だの堕天使だの神だのと、フィクションの中しかいないと思っていた存在は本当にいるらしく、昔その三大勢力で派手なドンパチ騒ぎ、簡単に言えば戦争をしていたらしい。だけど、その戦争のさなか二天龍と呼ばれる二匹の龍が、周りの事などお構いなしに大ゲンカを始めたらしい。
てゆーか、ドラゴンなんて存在もいたんだな。もう何が出てきても驚かない自信が出てきた。
そして、そのバカな二匹のドラゴンを止めるために三大勢力は一時休戦し、そのドラゴンを仕留めにかかった。その後、いずれの勢力もこれ以上戦いを続けても不易だということに気づき、現在は硬直状態が続いているらしい
その戦争で、悪魔陣営は多大な被害を出し、特に重要視されているのが悪魔総数の減少、特に純血悪魔の枯渇問題らしい。悪魔は妊娠率、出生率がきわめて低く、悪魔の数自体を減少させないために、人間と交わる悪魔も少ない無いだとか。しかし、悪魔同士の子どもは前述のような理由でなかなか生まれないらしく、最近は人間との間に生まれた混血悪魔の数の方が多いらしい。
その問題を解決するために出された案が、色んな種族を悪魔に転生させることができるシステム、悪魔の駒らしい。
これを使えば、どんな種族でも例外なく悪魔に転生させる事ができ、死んでいる者に使用すれば
命さえ吹き返す事も出きるらしい。そのおかげで俺は今、天国に行く、いや逝くはずがこの世にとどまり続け優雅にお茶を飲んでいる、ということだ。
ちなみにこの要領で悪魔になった者は転生悪魔と呼ばれ、俺はそこに分類されるとのことだ。
「それにしてもよくこんな話信じる気になったな」
「まあ……信じないと先に進めない気がしますし、それが真実なら俺はそれを知ることから始めないといけないんです」
「ふ~ん、……そっか」
そういうと先輩(恐らく)はどこか安心したような声をだし、中身を飲みきった湯のみを目の前の高さが低いテーブルの上に置いた。
ーーーーーーそういえば、よく考えたら……。
「一体どこなんすか?今俺らのいる場所って?」
「……気付いてなかったのか?まあ、あまり顔を見てないからここには来たことがない奴だな、お前は」
そして先輩(恐らく)は俺の目を真正面から見据え……。
「ーーーーーーーー今お前がいるこの場所は、新校舎の使われなくなった元保健室を改良して作られた相談部部室。そして俺はその相談部部長である天童摩耶(てんどうまや)だ。因みにクラスは3ーBだ」
俺は二、三回まばたきをした後話の内容を理解しようと試みた。てゆーか、やっぱり先輩だったんだ。これからは失礼のないように心がけよう。
命の恩人でもあるわけだし。
因みに俺が理解に苦しんでいる理由は相談部なんて部活自体聞いたことがないからだ。恐らくは地味な部活だったんだろう。学校にカウンセリング室なんてあったとしてもよっぽどな事がない限り、入る事なんてないしな。
「あ、それからお前今日から相談部の部員になれ。お前は一応俺の下僕悪魔な訳だし、その方が色々とやりやすいからな。」
「ああ、はい…………え?」
俺は適当に言葉を返したことを一瞬後悔した。
今何て言ったんだこの人?部活に入れ?今まで帰宅部だったこの俺に、周りの人間が存在すら認識しないほど影の薄いこの部活に?
「……えぇ!?マジですか!?」
「マジマジ、大マジ。てゆーかもう新入部員っていう形でお前の名前生徒会に申請したから」
「えええぇぇぇぇぇぇえええ!!??」
この人本人の意見も聞かずに勝手に事を進めてたのか!?信じられん!何ていう人だ!
思えばあの時、俺に『ベッドから降りろ!』って言ったあの人は自分のことしか考えていないような人だった。
この人もしかして基本、自分に関係あることしか積極的に行動しない人なんじゃないのか?
だからあまり活動しない相談部の部長なんてしているのかも……やべ、ありえる。
ーーまあでも、この人がいなければ今俺はここに居ないわけだし、これくらいのワガママは臨機応変に対応するべきだよな…
「……分かりました。入部する事にします」
「ん、そっか。話が早くて助かるわ。ちなみに俺のことは摩耶でいいよ、よろしくなイッセー」
「はい……へ?何で俺の名前しってるんすか?」
「ああ、お前が気絶してる間コッソリ生徒手帳見させてもらったからな。そこら辺はぬかりない」
「な…なるほど。そういうことですか」
そうでもしないと生徒会に申請とか出来ないからな。納得した。
この人……摩耶さんって時々サラッと驚かせること言ってくるよな~。
心臓にわるいぜ、まだバクバクいってやがる。
当の本人は空になった湯のみにまた新しいお茶を注いでる。一体何杯目だ?計り知れない。
ーーーーあ、そういえばまた気になること言ってたな摩耶さん。
「摩耶さん」
「ふぁに?(なに?)」
お茶を飲みながら摩耶さんが返事を返してくる。飲んでから応えて下さいよ……。
俺は摩耶さんに先に飲んでくれ、と手で合図を送ると摩耶さんは一気に茶を飲み干した。もう残り少なかったのか、それは好都合だ。
よし!
「俺が摩耶さんの下僕悪魔ってどういうことですか?」
「うわ……その説明もしなくちゃならないのか、……めんどくせ」
俺は何度目かわからない疑問を摩耶さんにぶつけた。
てか、摩耶さん遂にめんどくさいって口に出したな。うすうすそんな気がしてたけど……
しかしそこは相談部部長、キチンと俺の質問に
答えてくれる。
「俺のおかげでお前は助かったから俺の下僕、眷属。はい、説明終了」
ーーーーただし、すっげー適当にだけど。
この人やる気がある時と無い時の差が激しすぎる!それだけで人はこんなにも変わるものなのか……。
「眷属ってなんすか?」
「チーム」
適当すぎんだろ!なんだそれ!?相談部部長がそんな勝手でいいのか!?簡単な答えだから分かりやすかったけども。
「俺の他にいないんですか?摩耶さんの下僕悪魔って、挨拶しとかないと…」
「いないよ」
「…………………え?」
今、……なんて言った?
いない?いないって言ったのか?俺以外だれも?まさかそんなーーーーーーーー
「現在、天童眷属は『王』である俺と『兵士』であるお前だけだ」
ーーーーーー瞬間、俺はその事実が告げられると同時に硬直した。もう頭が考えることを拒否しているようにも思えた。
そしてーーーーーーーー
「なんっじゃそりゃああぁぁぁぁあああああ!!!」
俺はこの日、いやこの人生で一番大きいであろう奇声を発した。
やっぱこの人適当すぎるーーーーー!!
後にこれが赤龍帝として悪魔界、いや全世界の中でも注目視されることになる兵藤一誠と、その主天童摩耶との出逢いであった。
処女作で結構緊張したりしてなかったり。
これからは出来る限り投稿していこうと思うので、暖かい目で見守ってくれるとありがたいです。
ちなみに、ルビ振りはあまり使いたくないので一度使った文字にはもうルビはふりません。
何て読むか分からない文字があったら読み直してくれるとありがたいです。
感想とかま待ってるんで、とうぞよろしくおねがいします!