落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定
プロローグ「きひっ」
強襲系チーム『バスカービル』。
リーダー全方位戦術師遠山キンジ。
副リーダー近接武術師神崎・H・アリア。
五行師星伽白雪。
後方技術師峰理子
全方位全行師那須遙歌。
遠隔砲撃手レキ。
そして近接格闘師那須蒼一。
九月一日、武偵高の始業式が始まってすぐに
と、言うものこのチーム編成は何気に重要である。二年次の九月末までに二人から八人のチームを組むことになるのだが、これは国際武偵連盟にも登録される。将来武偵になるにしろならないにしろその繋がりがあって損ということはないし、チーム関係は組織の枠組みすらも超えて最優先にしてもいいと武偵法で定められているくらいだ。
だからこれは非常に、割かしガチで人生を左右しかねない選択である。
そんなのだから大体夏休みかそれ以前に話し合い、夏休み中に盛大にもめておじゃんになるということは毎年あるらしいのだが、
「すっげーあっさり決まったなぁ、怖いくらいだ」
俺たち『バスカービル』のチーム編成はあっさり受理された。これといって問題もなく、夏休み中にいざこざもなく、寧ろいろいろ騒いだり馬鹿やった分、仲良くなったと思う。遙歌にしたって俺の
「てっきり、チーム編成にもひと悶着あるかと思ったぜ」
「確かにな」
「ぶっちゃけ川神から戻ったくらいから、いつ何か起きるか心配でしたね」
「まさか、そうそうそんな展開になるわけ……ありそうね」
始業式も終わり、何時もの面子というか登録したばかりの『バスカービル』の面子での帰路である。七人で雁首揃えて写真を撮った後。俺的には恐ろしいことに撮影はダークスーツ、『
「いやー、それにしても傑作だったね、蘭豹先生の顔。チーム編成書いた紙提出した時の!」
「あぁ、あれね……」
そう、登録そのものは滞りなく行われ完遂されたが、それでも提出した時の蘭豹の顔は印象的だった。
有体に言って、
「ドン引きしてたね……」
「まぁ、私たち七人が揃ってるわけですからしょうがないと思いますけどね」
さもありなん。
『拳士最強』である俺に最近性的興奮云々だけでなく感情の高ぶりだけでも異常を発動するお前それキャラ的にどうなんだ突っ込みたくなるキンジ。実質Sランク相当の俺たちに本物のSランクのアリア、レキ、そして遙歌。我が妹ながら途中入学してランク考査で、全科の試験を受けて全部Sランク判定だったという頭のおかしさ。結局今は超能力捜査研究科に所属している。それにAランクの白雪と理子。この二人も最近なにやら隠れていろいろ新しいスキルなり必殺技なりを取得しているらしく気を抜けない。
いや、新技とかは全員それぞれあるのだが。
特にレキとアリアはやばい。
遙歌をして戦いたくないと言わせるほどだ。
ともあれそんな七人だ。蘭豹がドン引きするのも頷ける。かなり攻撃力過多だし、遙歌がいる時点でもうどうにでもなる。どうにも我が妹は万能すぎる。
「ですが、本当にもめなかったのが不思議ですね。てっきり私とアリアさんとかが喧嘩したりして『
「うわ、ありそうだなおい」
「というか、レキ? な、なにか私に言いたいことでもあるの……?」
「いいえ? そんなこともあるのかなーと思っただけです。むしろアリアさんは親友ですから」
「れ、レキ……!」
アリアが軽く感動して顔を真っ赤に。いやぁこういうことを言えるようになったレキはすげぇ。夏休み始まってすぐに半年前の話したけど、それとは完全に別人だ。俺も変わったとは思うけどこいつほどじゃあない。
「それにアリアさんとは協力してなんとしても蒼一さん×キンジを阻止せねば」
「そ、そうね!」
「ちなみに薄い本的には?」
「バッチ来い、です」
「やめろお前らぁー!」
ふざけた会話をしだしたレキたちにキンジに同時に割り込んだ。
やはりこの嫁よくない方向に変わりすぎだ。いろいろ電波受信するようになっていたが、それでも腐方向には変わってほしくなかった!
夏休み前くらいから転入してきた夾竹桃――通称桃子――の影響であることは想像に難くない。
とか、例によっていつも通りのやりとりをしていたら、
「きひっ!」
その少女は現れた。
●
変な少女だった。幼い、幼児体型のアリアとそう変わらないくらいの小ささ。校門にある木から飛び降りたのだろうが、中々の身のこなしだった。着地に音を生じさせないところから何かしらに武術の素養を感じる。
中華風の民族衣装のアレンジだろうか、ちんまいというかキョンシーみたいな恰好。金髪のツインテールに体型通りの幼い顔立ち。
アリアと変わらない所ではなく、アリアにそっくりの少女だった。
いや、ある意味では――アリアよりも気配が剣呑だった。
唐突な少女の出現に俺たちは思わず身構える。それに彼女は、
「きひっ」
嗤う。
「いいネ。日本の武偵なんて碌な者いない思てたけど、良い武人いるネ」
きひっ、きひっ。
なにが面白いのか少女は笑う。たぶん訛りからして香港からの交換留学生なのだろうが。
武偵というには気配が激しすぎる。
「お前……何もんだ?」
「ココ。『万人の王』ココ言うネ、覚えておくがいいヨ」
ココ、ココ、ココ。その名に聞き覚えはない。ないが、
「ココさん!?」
「なぜ貴様がここに……!」
知っている者がいた。遙歌と理子だ。遙歌はらしくなく冷やせを流し、理子もいつもの
「久しいネ、息災だたか? 遙歌、理子。あぁ、会えてうれしいヨ」
焦る二人とは対照的な落ち着きを払ったココの態度。両腕を軽く広げながら彼女は二人だけではなく俺たち全員を見まわし、
「巫女、八十点」
「へ?」
唐突に何の関わりもないはずの白雪が呼ばれた。巫女といえば彼女だろうが、それで終わらず、
「理子、マイナス八十四点、プラスは七十点。遙歌は変わらず百点ネ。ウルスの姫と緋色の姫は共に九十点。あぁあとウルスの姫の飼い犬は六十五点ネ」
「おいおい……」
飼い犬、というのはハイマキのことだろう。武偵犬として登録され今では我が家の一員となってる彼だが、大きさ故に気軽に連れて歩けるわけではない。今日とて、ケルベロスよろしく門番のように校門の前で待機しているはずなのだが、まだそれなりに距離はある。ハイマキの嗅覚ならば突如現れた存在を警戒して遠くから様子をうかがって、レキの合図があればすぐに飛び出そうとしているのだろう。
それにしたってここにいるココが気づくというのはふざけている。
「……ふむ」
そしてココは俺とキンジを品定めするように、いや、実際に点数をつけるために見て、
「きひっ」
変わらず嗤う。ゾッとするような、しかしどこか人をひきつけるような笑み。
「那須蒼一、遠山キン
言うだけ言って、衣装の裾とツインテールを翻しながら背中を向ける。
「
こちらの答えなど最初から聞いていない。もう聞くことはないと言わんばかりに威風堂々と去っていく。最後の一言で完全にこちらから意識を切ったのか、気軽に、まるで散歩でもするように、しかしその動作の端々に何かを滲ませながら去っていく。誰も何も言うことはなく、そしてココも振り返らずに消え去って、
「なんだよ、アレ……」
深く息を吐きながらキンジが言う。実に同感だった。なんだあの女。アレはヤバイ。
隙が全く無いとかそういうレベルじゃなく、全体的な威圧感が半端ない。あの人やシャーロックですら感じなかったレベル。只者じゃない、なんて言葉で片付けられない。
冷や汗を拭いながら知り合いのようだった遙歌と理子を見る。
この二人だ。どういう関係なのかは言うまでもないだろうけど、それでも二人の言葉を待って、
「イ・ウーでは
唐突に理子は語りだした。
「と言っても、これは一定じゃない。イ・ウーといっても入学や退学の時期は者によってバラバラ……、実際パトラさんは一度退学になっているし、私やジャンヌもそれぞれの一件で退学扱いだった。だからこの序列は一定というわけではない。……そしてココは極短い間だがイ・ウーにいた」
「じゃ、じゃあ、その短い間にココはイ・ウーのトップクラスにでもなったっていうのかよ?」
「いいや、違う」
理子は首を振って、遙歌が続ける。
「序列から外れていたんです」
「は?」
「
なんだそれ。あきれて言葉も出ない。俺だけでなく、他の四人も。シャーロックの強度は実際に戦った俺やキンジは解りきっている。そのシャーロックがそこまで言うだなんて。
なんだそれは。
「
「……!」
絶句。つまり彼女は――
「私の知る限り――今世紀最大の王の器だ」
いろいろココ設定は変わります。全然違う。難易度ベリーハード。あんなかませにならない。
ぶっちゃけ王の素質というか覇道適正は作中一、二位。現段階では断トツトップの無敵ココさん。
http://novel.syosetu.org/10198/
番外編まとめ作りました。なんかいろいろうまくいかないので明日には全部動かします。
現在Fate/extraなう。
サーヴァント化した蒼一とエクストラ仕様という名のカレンのお話