落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定
「ちょっと、どこ行くのよ! キンジ!」
「どこだっていいだろ! ついて来んな!」
「言わないと風穴ーー!」
「ゲーセンだよ!」
「あたしも連れてきなさいよ、そこに!」
「なんでだよ!」
放課後、叫び合いながら走っていくキンジと神崎を見た。仲良いなぁ。
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二人がパーティー組んでから数日しか経ってないが随分仲良くなっているようだ。
「やっぱり、ああいうツンデレの類は落ちるのが早い」
「世界中のツンデレに土下座してください」
レキがツンデレの擁護に回ってしまった。
「いや、別にツンデレが嫌いなわけじゃないぜ?」
「そ、そんなことを言う蒼一さんのためにやってるんじゃないですからねっ」
ツンデレだ……。しかし、完全無表情なので迫力がない。
「蒼一さんキンジさんやアリアさんにばっかり構ってると全身の骨砕いて標本にしますよ?」
ヤンデレだ……。無表情なのでかなり怖い。
「私はただ蒼一さんが構ってくれないのが寂しいだけです」
クーデレだ……。ていうか素だろ。
「悪い悪い、なんか放っておけなくてなぁ」
「なんだかんだでお人好しですね」
「欲望に忠実なだけだぜ?」
いいんですよ、それで。と、レキは言う。
「それでこそ、蒼一さんです」
ほんの少しだけ微笑んだ。
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寮の部屋に帰る。基本的にレキは夜遅くまでこっちにいて夜遅くなったら女子寮に戻っている。する事は基本、アニメ鑑賞。今日見たのは、
「……私もバカン
この一言で理解できるだろう。ていうか止めてくれ。ただでさえ百発百中の魔弾はおっかないんだから。そして、キンジが帰ってきて、やたら疲れていたので。
「どうしたんだよ、キンジ。まるで――」
「いや、別に――」
「まるでゲームセンターを知らなかった神崎を連れて行ったら神崎がクレーンゲームのストラップのレオポンを取ろうとムキになってしまって見かねて取ってやったら二個取れちゃって思わずハイタッチしちゃってどっちが先に携帯に付けれるか競争までして予想以上に嬉しがってる姿にときめいちゃったみたいじゃないか」
「お前どっかで見てたろー!」
「知るかー!」
乱闘になった。何故だ。携帯についていたストラップを地味に狙ってやったらさらにキレた。その時レキは、
「今季のアニソンは豊作ですね……ヘッドホンに入れておかないと」
自由すぎだろお前。のんきにパソコン触ってんな。
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俺とキンジの乱闘とレキのヘッドホンに曲を入れ終わり。夕食時。
「アリアがリアル貴族だった」
なん、だと……!
レキも目を見開いている。
「玉の輿狙いか……!」
「なんと――最低な発想ですね、キンジさん」
「最低なのはお前らだ……!」
レキを下がらせて再び乱闘。五分後。お互いの顔を腫らして椅子に座り直した。
「それで? 他に新しく分かったことは」
「14歳からロンドンの武偵局に所属、ヨーロッパで活躍してたんだが──驚くなよ?」
「誰が驚くか、さっさと言え」
「狙った犯罪者を逃がした事はなく、99回一発逮捕」
「なにぃ!?」
「尋常じゃないほど驚いてますね」
いや、驚ろくなというのが無理だろ。それよりも、
「それ、ホントか……? 」
「ああ、理子からの情報だからな。間違いないだろ」
んん?
神崎がキンジに求めていることは何となく分かる。分かるからこそその業績は予想外だった。武偵としてそこまでの能力がありながら、どうしてキンジを求める……?
そこまでの能力があるなら必要ないだろう。
「あと、実家とはあまり仲が良くないらしい」
「その貴族のお家とですか?」
「ああ」
ふうん。そこらへんに理由があるということか?
「おいおい……困ったなぁ」
家族関係で問題あるとか。放っておけねぇじゃねぇか。家族は大事にというのが、俺のモットーだ。最も、今はレキとキンジ以外の家族なんて二人しかいないんだが。まぁ、だからこそキンジには一つ忠告しておこう。
「キンジ」
「なんだよ」
「玉の輿狙いはいいが──ロリコンの罵りは覚悟しとけよ」
三度目の乱闘が始まった。