落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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第6拳 「フラグですねぇ」

 強襲科(アサルト)でパーティーを組む。それが神崎・H・アリアの遠山キンジへの依頼だった。以下、その時の二人の会話。

 

「キンジ、あんたあたしとパーティー組みなさい」

 

「……まさかそれ言うために来たのか?」

 

「ええ、何か文句あるの?」

 

「いや、それなら学校で十分だろ」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……何よ」

 

「……別に。それにいきなり言われてもこま──」

 

「風穴」

 

「は?」

 

「受けなきゃ、風穴」

 

「いやだから──」

 

「風穴二連」

 

「──」

 

「風穴五──」

 

「よろしくなアリア!」

 

 以上である。

 暴君かっ。

 まぁ、それはともかく。こうして、遠山キンジと神崎・H・アリアのパーティーは誕生した。後の世にその名を轟かせることになる緋色の主従はこうしてなし崩し的に誕生したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強襲科(アサルト)

 通称、『明日なき学科』。奇人変人変態外道のバーゲンセールの如き武偵高においても命の危険性においてはダントツのトップ。生存率、97.1%。100人に3人は卒業出来ずに命を落とすことになるまさしく死と隣合わせの場所だ。武偵、即ち武装探偵で真っ先に思い浮かばれるスタイルだ。 故に4ヶ月前。武偵高の学園島とそれに隣接する空き地島が。そのどちらもが、とある戦闘の余波により半壊した時も。優先的に修復された校舎のひとつである。最も4月現在では、完全に学園島も空き地島も修復されているのだが。

 閑話休題(そんなことはともかく)

 基本的には強襲科(アサルト)任務(クエスト)は荒事ばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キンジ、そっち行ったぞ!」

 

「応!」

 

 俺は街の路地裏をキンジと共に走っていた。

 

「く、来るなぁー!」

 

 帽子を目深にかぶった男。そいつを追跡中だった。

 

「来るなと言われて来ない馬鹿がいるかぁー!」

 

「俺は悪いことはしてない! ただ、愛に生きているだけだ! そう、即ち愛の戦士!」

 

 入り組んだ路地裏を迷いなく男は走っていく。速ぇな、おい。

 ギャグ補正か!

 

「なにが愛の戦士だ! そういうのを世間一般様ではなぁ、こういうんだよ!」

 

 俺とキンジが、追っている男。そいつに指差し、

 

「このストーカァー!」

 

「違う! 愛の戦士だ!」  

 

 違わねぇよ。強襲科(アサルト)に持ち込まれた任務(クエスト)で、数多い一つ。ストーカー対策である。まぁ、対策というのは方便で実際は退治である。中には示談で済ませる武偵もいるのだが、俺の場合。

 

「面倒だから、とりあえずぶん殴る!」

 

「ぶっちゃけすぎだ、馬鹿!」

 

 そう言いつつ、キンジも殴るくせに。

 

 

 

 

 

 

 神崎・H・アリアは見下ろしていた。街を、ではない。 街を走っている遠山キンジをである。ビルの屋上の端に腕を組みながら、昨日パーティーを組んだばかりの男を見下ろしていた。ストーカーを居っているキンジを見て思うことは、

 

「──なんか違うわねぇ」

 

 先日、自分に見せてくれた。魅せつけられたあの時の彼とは違う。

 

「キンジさんにもいろいろあるということですよ」

 

 レキだ。自分の横、同じくビルの端で腰掛けいる。視線の先は恐らく、那須蒼一だろう。それはともかく。

 

「あんたはそれを知ってるわけ?」

 

「ええ、まぁ。成り行きでですが」

 

 いろいろねぇ。誰にでも事情があるのは当然か。那須蒼一も。レキも。遠山キンジ。そしてもちろん、自分だって──。

 

「それと、アリアさん。一つ言っておきたいことがあるんです」

 

「なによ」

 

「気をつけてくださいね」

 

「な、なにによ」

 

「惚れないように──」

 

「──は、はぁ?」

 

「キンジさんにですよ」

 

 惚れないように。気をつけてください。

 

「い、言ったでしょう。あたしはそういうには……!」

 

 顔を林檎のごとく赤く染めながら反論するが。 レキはそれを横目で見て。

 やれやれ。

 

「──フラグですねぇ」

 


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