落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定
「なぁ、カナ」
「なにかしら?」
「キンジと神崎がチュッチュッすればなんとかなるんだよな?」
「ええ、そうね」
「ふうん、そうか。ならさ」
殴りかかってきた犬人間を殴り返しつつ、
「キンジと神崎が流砂にのみこまれて行ったけど、なんか対策あるのか?」
先程までキンジと神崎が入った棺があった場所----今はなにもない場所を指していった。カナがそれをちら見してから、飛びかかってきた犬人間どもをなぎ倒し、
「おっと危ないわね蒼一、戦闘中によそ見はいけないわよ?」
ドヤ顔で話を逸らした。
「なにも考えてないならそう言えや」
後ろから来たヤツを蹴り飛ばす。一緒に近くにいた犬人間、今更だけどゴーレム、或いは式神ってやつらしい、を巻き込むが、
「減らねー」
そう、全く数が減らないのだ。俺もカナも、かなりの数を倒して砂に返しているはずなのに、それでも広間を埋め尽くすゴーレムは消えない。多分、遙歌が余分に作っていた分だろうけどさすがに面倒くさい。もっと言えばさっき、というかキンジたちが落ちてから直ぐにパトラも姿を消した。
追いかけて行ったと思うけど。
「そうね、多分キンジたちは下の階でしょう。パトラもそれを追って二人を殺るつもりでしょうね。彼女プライド高いから」
「それは拙いだろ。どうすんだ? 『支蒼滅裂』使えば速いだろうけど、この部屋ぶっ壊れるぜ?」
というか、もう一回使ったからもう一度やれば船自体が沈んでもおかしくない。
「ん……、まあ、しょうがないわね」
「? どうした?」
「蒼一。船を壊さずに床を壊して下へいけるかしら?」
「そりゃいけるけど、なんか策あんのか?」
「ええ、とりあえず一網打尽にするからそうしたら床壊して頂戴」
「できんのか? なんかいい能力《スキル》あんのかよ」
「ないわ」
「は?」
「だから私は
「……ああ、そうか」
言われてみればカナが
基本例外を覗いて
「なら……どうすんだよ」
「
「
なんだそれ。聞いたことは、ない。
「ふ、あなたも
「いや、んなこと言われてもなぁ」
そりゃあ、確かに『蒼の一撃』シリーズは言葉遊びみたいなものだけど。
いきなりそんなこと言われてもねぇ。
「まあ、いいわ----跳びなさい。最低10秒」
「あいあい」
言われた通り、跳んだ。広間自体かなりデカいので跳躍しながら、空中で体制を整えながら天井に着地する。
そして、見た。
カナの三つ編みからサソリの尾の如き処刑鎌が現れるのを。
●
「対象、視界内ゴーレム。罪状………そうね、私が私の弟とその最有力お嫁さん候補を助けに行くのを邪魔したこと」
突然現れたの処刑鎌をカナは頭上で高速で回し始める。
「判決----満場一致、異論反論一切無視----
回すことに格段に速度を上げて、刃先が音速を越えていきーーカナの頭上に氷の蕾が生まれた。
「目には目を、歯には歯を、悪には正義の鉄槌、咎人には断罪の一閃を------エイメン」
蕾が開き、氷の花か咲き誇る。それは局地的な吹雪だった。 ある奴は鎌に切り裂かれ、または鎌の風圧で裂かれそれ以外は氷の飛礫が打ち抜きゴーレムを砂返していく。それでも、天井に張り付いてる俺には影響はない。
なんだこれ。
いくらなんでも無双しすぎだろ。
「
「あほか」
いきなり鎌出して、回し出したら氷出てきたと思ったら、犬人間どもが、その氷に切り刻まれた?
なんだこれ。理解できるかよ。
「ま、それはいいから。あなたはあなたのすることがあるでしょう? 任せたわよ」
言うやいなや、カナが先ほどの俺と同じように跳んだ。どうも腑に落ちないが、とりあえずやることをやるとしよう。天井から落ちる最中、つまり今は空中だ。
だから、使うべき『蒼の一撃』は決まっている。
腰を大きく捻って、右肩を大きく開き、右腕を後ろへ振りかぶる。左腕は前へ突きだす。 手はどちらも軽く広げた。右手を大きく振りかぶる動の構え。
「『蒼の一撃』第六番」
足場がない空中だが、元々空中で放つ為に開発したのだからむしろ望むところ。
「----『天蒼行空』!」
張り手ごと風を床に叩きつける!
まず膨大な威力の風の塊が床に亀裂を入れ、張り手が完全に砕いた!
「うおっと!」
「さすがね」
床が崩れ落ちていく。
それに逆らわず、姿勢を整えながら下へ----。
待ってろ、兄弟。
●
そして、下の階にたどり着き俺達が見たのは、馬鹿馬鹿しいまでの緋色の光だった。