落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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第4拳「ご主人様、ご用件はなんですか?」

 

 新たに家族というかペットというか俺の同僚が増えた翌日。ハイマキと名づけた狼は無事に武偵犬として登録できた。ちなみにあの後は、俺やキンジが神崎にシメられる――ということは実はなかった。

 代わりに、

 

「……そういや、お前。レキの下着姿見てたよな」

 

「は? いや、不可抗力だろ」

 

「んー、そっか。そうだよな。――よし、殺す」

 

「なんでだよ!」

 

「はぁ? 頭沸いてんのか? 人の嫁の裸姿見てなにも無いわけないだろが」

 

「ふざけるな、それを言うならお前だってアリアとかの着替え覗いてただろ!」

 

「なんですかー? 神崎はお前の嫁ですかー? なら告れよ、告ってこいよー根暗くーん。あれー? できないなら言わないでくれるかなー?」

 

「てめぇ……!」

 

「あれ? あれれ? 怒ったの? 怒ったんですかー? やりますか? やるってのかぁ、このやろう」

 

「ふ、ふふ、ふふふふ。上等だぁ、落ちこぼれぇ!」

 

「わはははは! その落ちこぼれに負けてお前は超落ちこぼれになるんだよ!」

 

「この桜吹雪、散らせるものなら散らせてみやがれ!」

 

 という感じで、神崎たちが引くくらいの喧嘩をして、どっちとボロボロになってそのまま流すことができた。みんなドン引きしてたね。その後、潜入捜査の訓練ということで峰の部屋に呼び出されていた。それにしても、メイドをするって一応神崎はお嬢様だし、レキに至ってはガチのお姫様だ。

 そんな二人がメイドなんてできるのか?

 

「あー、なんか楽しそうだなぁ」

 

「いや、アリアが叫んで理子が変態でレキは気配すらないんだが」

 

「ははは」

 

「なんだその笑い」

 

 とりあえずは制服の上からエプロンだけを着ることにしたらしい。制服エプロンか………。裸エプロンと裸ワイシャツとどれがエロいだろうか。

 

「そこんとこ、どう思う?」

 

「……………………俺は、裸エプロン、が」

 

「おーい、峰ー、アリアは裸エプロンで連れてこーい!」

 

「りょーかーい!」

 

「な、なななに言ってんのよ!」

 

「その時は蒼一さん目潰しますよ」

 

 怖えーよ。因みに俺は裸ワイシャツ派なんだよね。いつかレキにやってほしい。そんな感じで、準備できたらしい。そして、三人が出てきた。

 

「お、お……」

 

「ひゅー」

 

 流石というか、レキも神崎も似合っていた。神崎は胸がハート型で腰もハートマークのポケットがあるエプロン。レキは飾り気のないシンプルなデザインの青いエプロン。実に目の保養になる。

 

「はい、じゃあアリア、レキ、まずはご主人さまにご用件をお伺いしてみましょう!」

 

「……なに、それ……」

  

「ほほう」

 

 神崎は理解不能の顔だが、レキは興味深そうだ。

 

「じゃあ、『ご主人様、ご用件はなんですか?』言ってみよー! きーくんとそーくんがご主人様ね!」

 

「え!」

 

「ふむ」 

 

 まるでおままごとだ。大丈夫か?

 正直、レキにご主人様と呼ばれるのは……………なんというか。

 

「では」

 

 なんというか、変な気分だ。実際は俺が従僕で、レキが主なんだけど。

 なんだけど、

 

「――ご主人様、ご用件はなんですか?」

 

 コレハヤバイ。いや、コレはヤバい。だって、レキがエプロンつけて身長故の上目づかい。ついでに、腕の裾を掴んでくる。

 

 スゲー可愛い。 

 

 ヤベ、発狂しそう。

 

「……えっと、そうだな。うん、じゃあ、掃除とか?」

 

「掃除ですね、わかりました――ご主人様」

 

 ちぇりおー! バリバリバリバリッ! ずしゃあっ!

 説明するなら、最初は俺のレキの可愛さに発狂して叫んだ音。神崎が峰に発砲した音。そして、キンジがひっくり返った音だった。、

 

 大丈夫か…………?

 

 

 

 

 

 

「ああ、あんたか。……いや、あんま驚かないぜ。峰だって戻って来たからな。アンタもそうだと思ったよ。

 それで? どいうつもりだ? ブラドについてでも教えてくれるのか? ……そうかい、ならちゃんとキンジに伝えてくれ。 

 

 んで? 俺には何を教えてくれるんだ?

 …………………………………ああ。

 そうか。そうだよな、……いや、聞きたくないわけじゃないぜ? 

 流石に俺もその話題にはシリアスにならざるを得ない。

 鬼門なんだよ、その話は。

 その話は結局俺の失敗談だから。

 

 ああ、悪い。

 聞くよ。聞くって。

 さぁ、教えてくれ。

 

 俺の妹。

 極端の化け物、異端の天才、例外の人外。 

 那須家最高傑作の――那須遙歌の話をよ」

 

 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。

 

「そう、か。

 

 はは、なんだろうな。別におどろかねぇよ。寧ろ驚く。アイツがイ・ウーで頭張れてないなんて。

 

 いくらさ、イ・ウーがすごいところでも。

 アイツが勝てない存在かいるとはな。

 

 ん? その人は例外? そりゃあウチの妹だって例外だよ。

 だから、驚かない。

 

 アイツが――イ・ウーのナンバー2(・・・・・)だなんて」


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