落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定
新たに家族というかペットというか俺の同僚が増えた翌日。ハイマキと名づけた狼は無事に武偵犬として登録できた。ちなみにあの後は、俺やキンジが神崎にシメられる――ということは実はなかった。
代わりに、
「……そういや、お前。レキの下着姿見てたよな」
「は? いや、不可抗力だろ」
「んー、そっか。そうだよな。――よし、殺す」
「なんでだよ!」
「はぁ? 頭沸いてんのか? 人の嫁の裸姿見てなにも無いわけないだろが」
「ふざけるな、それを言うならお前だってアリアとかの着替え覗いてただろ!」
「なんですかー? 神崎はお前の嫁ですかー? なら告れよ、告ってこいよー根暗くーん。あれー? できないなら言わないでくれるかなー?」
「てめぇ……!」
「あれ? あれれ? 怒ったの? 怒ったんですかー? やりますか? やるってのかぁ、このやろう」
「ふ、ふふ、ふふふふ。上等だぁ、落ちこぼれぇ!」
「わはははは! その落ちこぼれに負けてお前は超落ちこぼれになるんだよ!」
「この桜吹雪、散らせるものなら散らせてみやがれ!」
という感じで、神崎たちが引くくらいの喧嘩をして、どっちとボロボロになってそのまま流すことができた。みんなドン引きしてたね。その後、潜入捜査の訓練ということで峰の部屋に呼び出されていた。それにしても、メイドをするって一応神崎はお嬢様だし、レキに至ってはガチのお姫様だ。
そんな二人がメイドなんてできるのか?
「あー、なんか楽しそうだなぁ」
「いや、アリアが叫んで理子が変態でレキは気配すらないんだが」
「ははは」
「なんだその笑い」
とりあえずは制服の上からエプロンだけを着ることにしたらしい。制服エプロンか………。裸エプロンと裸ワイシャツとどれがエロいだろうか。
「そこんとこ、どう思う?」
「……………………俺は、裸エプロン、が」
「おーい、峰ー、アリアは裸エプロンで連れてこーい!」
「りょーかーい!」
「な、なななに言ってんのよ!」
「その時は蒼一さん目潰しますよ」
怖えーよ。因みに俺は裸ワイシャツ派なんだよね。いつかレキにやってほしい。そんな感じで、準備できたらしい。そして、三人が出てきた。
「お、お……」
「ひゅー」
流石というか、レキも神崎も似合っていた。神崎は胸がハート型で腰もハートマークのポケットがあるエプロン。レキは飾り気のないシンプルなデザインの青いエプロン。実に目の保養になる。
「はい、じゃあアリア、レキ、まずはご主人さまにご用件をお伺いしてみましょう!」
「……なに、それ……」
「ほほう」
神崎は理解不能の顔だが、レキは興味深そうだ。
「じゃあ、『ご主人様、ご用件はなんですか?』言ってみよー! きーくんとそーくんがご主人様ね!」
「え!」
「ふむ」
まるでおままごとだ。大丈夫か?
正直、レキにご主人様と呼ばれるのは……………なんというか。
「では」
なんというか、変な気分だ。実際は俺が従僕で、レキが主なんだけど。
なんだけど、
「――ご主人様、ご用件はなんですか?」
コレハヤバイ。いや、コレはヤバい。だって、レキがエプロンつけて身長故の上目づかい。ついでに、腕の裾を掴んでくる。
スゲー可愛い。
ヤベ、発狂しそう。
「……えっと、そうだな。うん、じゃあ、掃除とか?」
「掃除ですね、わかりました――ご主人様」
ちぇりおー! バリバリバリバリッ! ずしゃあっ!
説明するなら、最初は俺のレキの可愛さに発狂して叫んだ音。神崎が峰に発砲した音。そして、キンジがひっくり返った音だった。、
大丈夫か…………?
●
「ああ、あんたか。……いや、あんま驚かないぜ。峰だって戻って来たからな。アンタもそうだと思ったよ。
それで? どいうつもりだ? ブラドについてでも教えてくれるのか? ……そうかい、ならちゃんとキンジに伝えてくれ。
んで? 俺には何を教えてくれるんだ?
…………………………………ああ。
そうか。そうだよな、……いや、聞きたくないわけじゃないぜ?
流石に俺もその話題にはシリアスにならざるを得ない。
鬼門なんだよ、その話は。
その話は結局俺の失敗談だから。
ああ、悪い。
聞くよ。聞くって。
さぁ、教えてくれ。
俺の妹。
極端の化け物、異端の天才、例外の人外。
那須家最高傑作の――那須遙歌の話をよ」
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「そう、か。
はは、なんだろうな。別におどろかねぇよ。寧ろ驚く。アイツがイ・ウーで頭張れてないなんて。
いくらさ、イ・ウーがすごいところでも。
アイツが勝てない存在かいるとはな。
ん? その人は例外? そりゃあウチの妹だって例外だよ。
だから、驚かない。
アイツが――イ・ウーの