落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定
「「「ご主人様、お嬢様、お帰りなさいませーー!」」」
扉を開けた瞬間に、甲高い声が耳に届く。秋葉原、言わずと知れた───メイド喫茶。そこに俺、レキ、キンジ、神崎は来ていた。キンジと神崎は頬を引きつらせているが、レキは無表情。そして、俺はというと、
「ぬぅ……」
僅かに顔をしかめていた。周囲で笑顔を浮かべるメイドさんたち。皆さん実に可愛らしいし、メイド服はやたら胸を強調して、ミニスカな人気が高そうな感じだ。だが。だがしかしだ。
実は、俺はメイド服はロング派だ。
そして、露出が多いのも好きではない。それについて、語ろうとすればいつかと同じように5000文字は必要とする
皆可愛いことは可愛いんだけど。まぁ、今日は遊びに来たわけではないので置いておこう。俺たちは個室に案内され、待ち人を待つ。座った途端に神崎はメイド服に対して憤慨し、それをキンジが宥めて、レキは、
「……………貰えるなら一着もらえませんかね」
「まかせろ俺が交渉してこよう」
あ、レキが着たら、ミニだろうがロングだろうが関係ないよ。
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で、ようやく来て、食い物やたら頼んだ理子の話しを纏めると。横浜にある『紅鳴館』とかいう痛い名前の館から峰の母親の
まぁ、ぶっちゃけその内容はどうでもいい。正直もっと面倒なことかと思っていたし、どうせ
だから、とりあえず俺が反応したのは、
「ヴラド? ヴラドっていやぁ、あの」
「ブラドだけどねぇー。ちなみそーくんが考えているようなグラサンかけてあひゃあひゃ笑ってる白いのとか、言葉通じないランサーな狂信者って訳じゃないから」
「あ、そう………」
ちょっと残念。なら一体どういうヤツなのだろうが。………ここで考えすぎて、ジャンヌの時みたいにフラグになると怖いから気をつけよう。ちなみ、本当にトリプルアクセル土下座やりました。
………レキに。
「でも、よ。管理人もその本人もいないんだろ? それならお前一人でなんとかなんないのかよ。マゾゲーとか言ってるけどさ、寧ろお前はそっちの方が”らしい“だろうが」
キンジと神崎が意味が分からなさそうに眉を顰めているが、無視する。
正直、普段ならともかく
「……残念だがな」
峰の気配が変わる。人懐っこい笑みは気持ち悪いヘラヘラとした軽い嗤いに。キンジたちが息をのんだ音が聞こえる。
「私の
「…………なるほど、な」
そういう人種なのだ。
「待ってください」
レキがポツリと口を挟んだ。
「なんだ?」
「キンジさんとアリアさんが実行役で理子さんが伝令役なのだとしたら…………私と蒼一さんの役目はなんですか?」
「保険だ」
保険?
「……保険、ですか?」
「ああ、
「そう、ですか」
「なら、俺らは待機か? キンジたちが侵入して、お前が伝令なんだろ?」
「んー、ふつーに侵入する手も考えたんだけど、それだと失敗しそうなんだよね」
口調がガラッと変わる。裏から表に。裏の
「…………は?」
「……………?」
「せ……潜入?」
「どうすんだよ」
俺たちが尋ねると。
峰はバンザイして、宣言した。
「キークンとそーくんとアリアとレキには紅鳴館の執事くんとメイドちゃんになってもらいまーす!」
…………おいおい。
一応、ウチのレキはお姫様だぜ?