落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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すっかりジャンヌの夜這いイベント抜けてたの忘れてた。
いやまぁ他の面子いるから流石にやらないだろうけど。


第5曲「今夜くらいは許してくれ」

 

「……ふう」

 

 新キャラのいきなりの頭のねじのいかれた発言に、しかし今の俺は馬鹿みたいに大きな声で突っ込むほど子供ではなかった。この手の頭のおかしい発言は誠に遺憾ではあるが、全くもって忸怩たる思いがあるが、それにしたって慣れたものである。

 エキセントリックとかクレイジーとかバイオレンスとか、そういう単語とはちょっと距離置きたいくらいに本当に仲がいいのだ。そもそも武偵高に入って出会ったルームメイトが当時絶賛コミュ症中二病の那須蒼一で、その蒼一と半年近く壁を作られてようやく喋ったかと思ったら人形女レキ――今思うと今のレキには欠片も合っていない――との結婚報告で、しばらくしてから兄さんが失踪して蒼一と思い切り殴り合った結果入院してたら蒼一の師匠に自殺志願を語られて、そのあたりの一連の事件が終わってやっと落ち着いた思ったらアリアが出現し奴隷になれとかいう命令をされて、理子から死んだと思っていたはずの兄さんが生きていると聞かされて、その理子だっていきなり泥棒しようとか言われたり、兄さん帰って来て選択肢云々突き付けられて、一件落着したかと思ったらイ・ウー原潜にシャーロック・ホームズご本人様と対談どころか決戦して、おまけにそれら全部が序章でしかなくて、『宣戦会議』なんかでアリアがぶっ倒れて、夏明けに修学旅行ウハウハで行ったらいきなり曹操に絡まれて、京都から戻ってきたら戻ってきたでアリアの婚約者とか円卓の騎士なんか出てきてまた絡まれて、さらにさらにまさかのクローンの兄弟なんかが現れて、潜入捜査で一般高に突っ込んだら初日から不良に絡まれて仕方ないので締め上げたりして、香港まで赴いて超常大決戦なんかして、それで新年を堪能しようと思ったらRランク認定と一緒にフランスに送り込まれて、今こうして見知らぬショタからお兄様とか兄上とか言われている。

 

「……ぶわっ」

 

「あ、あの……何故そんないきなり涙を……?」

 

「あ、ああ。気にしないでくれ。ちょっと自分の人生の辛さを振り返ってただけだから……それで、なんだって?」

 

「えぇ、私は遠山卿のことを、兄様、お兄ちゃん、兄上のどれで呼べばいいのデスか?」

 

「どれでも呼ばなくていいから」

 

「しかし……日本では年下の者が年上へ呼びかける時こう呼びかけるといいと言われたのデスが」

 

「そういうことをいう奴に俺は一人非常に良く知っているんだけど、えっとノックスだったか? 教えてくれないかそういうこと言った奴」

 

「理子デス」

 

「はいだと思ったァー!」

 

 場所故に大声で叫ぶことはできなかったから小声で全力で絶叫する俺だった。そんなこという奴なんてやはり理子しかいない。元々こっち出身なんだから繋がりがあってもおかしくない。

 

「いいか、ノックス。あのアーパーから教えてもらったことは基本全部忘れろ。特に日本文化に関することはほとんど出鱈目だ。普通の日本人男子同士は兄様とかお兄ちゃんとか兄上なんて呼び合ったりはしない」

 

「はぁ……ならば何とお呼びすればよろしいのデスか?」

 

「遠山でもキンジでもいいけど兄様辺りは止めてくれ」

 

「では、遠山卿と。遠山卿も私のことはロナルドで構いまセン」

 

「そうか」

 

 ちょっと卿とか背中が痒いが兄様とかやりはずっといい。とりあえず日本に帰ったら理子は一日くらい無視だ。下手にお仕置きとかすると喜びそうだし。

 

「ふふふ、早速仲良くなれたなようで何よりですわ。最もトオヤマさんのことですからそのあたりのことは心配していませんでしたけれど。一応私から紹介させていただきますわ。最も肩書に関しては自ら言ってくれましたので、客観的な話を。彼は私と同じバチカンの代表戦士の一人ですわ」

 

 代表戦士。

 極東戦役の盟約の一つに雑兵は用いず、精鋭同士のみの戦いを認めることにするというものがある。実際これまで俺たちの戦いはそういうものだった。総長なんて呼ばれてるけれど俺だってそうだし、一緒に戦っていた味方も相手もそうだ。このあたりどこからその資格があるのか明確な区切りは知らないが、目安として何かしらのスキルが武偵高のSランク以上は必要だと思う。思うというだけで実際そんな区切りがあるわけではないけど。

 ともあれ代表戦士と呼ばれる以上、確かな強度は持っているのだろう。

 なんとなく、解る。

 

「有体に言えば魔女狩りのプロ。封印術の専門家ですわね。『魔女狩り』の他にも『十の楔』、『死刑宣告』等とも呼ばれていますよ。イスカリオテと大法院の主席異端審問を掛け持ちしているのは彼女が歴史上初めてなのですよ?」

 

「へぇ。そりゃすごい。何がすごいのかいまいち理解できないから悪いが」

 

「くすっ、大した話ではありまセン。所詮受け継いできたものの力が大半であり、今だ経験不足の若輩者デス」

 

「さっき四年って言ってたけど、お前飛び級か?」

 

「えぇ。今年で十二にデス」

 

「……すっげぇよ」

 

 十二って五つも下ということ。いや俺の十二歳ってどんなのだっただろうか。多分親父に遠山家の技しごかれてひぃひぃ言ってた時期だったような気がする。あんま思い出したくないし、殺し技ばかりで矯正するのがホント大変だったのだ。

 

「トオヤマ! っと、此処にいたのかメーヤもロナルドも。探したぞ」

 

「おお、ジャンヌ」

 

「ジャンヌ、お久しぶりです」

 

「ですわね、ジャンヌさん」

 

「あぁ、久しいな二人とも。よろしく頼むぞ」

 

「そいや、こっちの協力者ってこの二人だけなのか?」

 

「Yesであり、Noでもありマス」

 

「このパリにいる代表戦士は此処にいる私たちだけですが、ヨーロッパ全域ではリバディー・メイソンの情報収集力を借り受けることができますので。戦闘力という意味では私たちのみですが、戦力という意味ではプラスアルファと言った感じですわね。無論パリを出れば他の代表戦士もいますよ」

 

 なるほどむしろ俺としてはそのあたり非常に有り難い。不得手なのは今更言うまでもないけれど、日本から遠く離れた地で、おまけに言語も碌に通じないのだからで困り所だ。

 いやほんとこの面子とはぐれたらどうしよう。

 中学生英語でちゃんとコミュニケーションできるのかな。

 できるとは噂だが、海外二回目の身としては不安なのは不安なのである。

 

「敵の方は……って、今更だけどこんな所でこんな話しててもいいのか?」

 

「大丈夫ですよ。運良く(・・・)誰も聞いていないでしょうから」

 

 運良く。

 楽観的な言い方のように聞こえるが、しかし彼女の場合は楽観ではなく現実だ。正直運に頼るのは主義じゃないのが、メーヤの運関係発言は信用できる。

 

「それに加え簡単な結界の式を張っていマス。盗み聞き防止デスね。そのあたりそれなりに得手デスのでご安心くだサイ」

 

「式、式、(コード)ね。俺はそのあたりジャンヌから昨日簡単な説明受けたばっかだからあんま理解してないんだけどな。いや、話が逸れた。盗み聞きが大丈夫っていうなら俺らがこっちで戦う連中に対して教えてほしいね。触りだけは聞いてるんだけどさ。畢竟ここ出てからいきなり襲われるってのもあるかもしれないしさ」

 

「そう、デスね。しかしそれを語るには些か長い話になりマス。仮にも舞踏の場。そういった剣呑な話題は無粋と思われマスよ?」

 

「ちなみに今日のこのパーティーはパリの有力者が多く集う場ですので、襲撃されることはまずありませんよ。それぞれのボディガードもいますし」

 

「む……」

 

 確かにそれはそうかもしれない。

 アウェイの地ということで神経過敏だったということか。それにこんな洒落た場所で物騒な話をするのもロナルドの言う通りに無粋極まりない。

 一度深呼吸をして、苦笑と共に肩を竦める。

 

「その通りだな。悪い、ちょっと気にし過ぎだったよ」

 

「いえ、常在戦場。極東のサムライの在り方は聞き及んでいましたが流石デスね。しかしここは華の都パリ。ある程度華と共に戯れるのも一興ではないでショウか」

 

「だな」

 

 しかしこいつこれでも十二歳というからすごい。

 出来過ぎだろこのショタ。

 最初の発言がアレだったが、しかしそれ以降の振る舞いが出来過ぎである。なんだろう、このタイプの普通にいい奴との交流がなさ過ぎるので新鮮極まりない。俺の周りってまともな奴少なかったから。

 数少ない実例といえば。

 いえば。

 いえば――

 

「…………ぶわっ」

 

「と、遠山卿? 何故いきなり泣き出したのですか?」

 

「先ほどもいきなり涙を流していましたが、何か辛いこともでもあったのでしょうか……? あ、なんだったら私が慰めましょうか? ――胸を貸しますので」

 

「よしトオヤマこっち来い。どうせ下らないことだろう。そうだろう。悩みなら私が聞いてやる」

 

 数少ないどころが皆無だったという自分の人間関係に涙を零してらジャンヌに首根っこ掴まれて連行される。ちょうどダンスをしている人たちの辺りまで連れてかれる。

 

「あ、ちょ、だめだ待てジャンヌ。俺はまだロナルドと雅な会話をして癒されたいんだが……!」

 

「黙れトオヤマ。理子が喜びそうなことを言うな。大体お前……」

 

 頬を膨らませて、拗ねるようにジャンヌは言う。

 

「私と踊るのでは、不服か?」

 

「――」

 

 言われて、気づく。仮面の下で彼女の頬が赤く染まっていることに。

 ジャンヌがそんな風に、女の子らしい仕草をするのは珍しい。学校での彼女は女子の中にジャンヌ派閥のようなものを作って皆に懐かれているけれど、それはジャンヌがカッコいいからみたいな理由だったはずだ。普段俺たちと接している間にも凛とした雰囲気を崩さないようにしいてる。

 そんな彼女が、こうして女の子らしい行動にでるのは珍しい。というか俺は初めて見たはずだった。

 それがどういう意味なのか、俺には理解しきれないていないのだろう。考えかもしれないし、ただのジャンヌの気まぐれかもしれない。

 それでも俺は、なんとなく大事なことだと思った。

 

「ははは」

 

 三度笑って、腰を曲げながら彼女に右手を差し出す、

 

「シャルウィーダンス、マドモアゼル?」

 

「……くすっ。なんだそれは。最初は英語だし、まんまカタカナ発音じゃないか」

 

「これが俺の限界だよ。そもそもダンス自体全然やったことないしな。大目に見てくれ」

 

「全く。仕方のない奴だ」

 

 くすくすと苦笑しながらも、ジャンヌは差し出した俺の手を握る。手袋に包まれた、長い修練故に固まった皮膚の、けれど確かに柔らかさを有する少女の手の平。握り返し、手を取り合う。

 

乙女(ラ・ピュセル)なんて柄でもないのは解っているが――今夜くらいは許してくれ」

 

 




ロナルドに対する色物扱いだがしかし落ち拳史上初といっていいほどのまとも枠(

時にまたノリで新しいの始めました。
シンフォギア×仮面ライダーシリーズ。
戦姫絶唱シンフォギアSpirits。
積極的に地雷に突っ込む芸風。
読んでね!!!!!(


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