落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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エピローグ 「──関係ありませんよね?」

 後日談というか 今回のオチ。

 まず、何から話すかというと言うとやはりハイジャック事件についてのことだろう。乗客には目立った怪我は無し。空き島に緊急着陸した飛行機は現在解体中だ。空き島自体は風力発電の風車が一本ひん曲がってるという、美観的には非常に残念なことになっている。

 そして、犯人ついて。結局峰・理子・リュパン・4世は逃亡。足取りは掴めなかった。と言うか、生死すら不明だ。いくら高度を下げてパラシュートを使ったとしていたとはいえ、丸裸同然で飛行機から飛び降りたのだ。それでも、間違いなく生きているだろう。俺もキンジも神崎もそう信じている。ああいうやつは生き汚いと、相場が決まっている。

 それから、遠山キンジと神崎・H・アリアについて。この二人についての顛末は正直俺はあまりよく知らない。ただ、結局神崎は日本に残ったことは知っている。わざわざ俺の所に来て、二人でそう報告してきたからだ。それを、まるで友人への結婚報告のようだと思ったことは秘密だ。

 そして俺、那須蒼一の話。

 ハイジャック事件の2日後、目が覚めて待っていたのは──説教地獄だった。まず、病院の看護士さんに怒られ、医者に叱られ、救護科(アンピュラス)の知りあいからは呆れられた。右手は傷口が開いてさらに悪化。右足は二度の宙弾きにより重度の筋肉断裂。左足は右足よりもましだが、『支蒼滅裂』による負担でやっぱり重度の筋肉断裂だった。

 全治3ヶ月。

 俺でもってもう3週間はかかる大怪我である。 

 不覚、といえば不覚だった。というよりも、平和ボケしていたのであろう。思えば4ヶ月前の戦いを越えて、拳士最強を襲名してから初めての事件だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞いた話によれば古巣に帰ろうとしたアリアさんを絶叫キンジさんが引き止めて、ロンドンの武偵の方々から逃げるために女子寮の屋上からヒャッハーダイブかっこBGM宣言つきかっこ閉じるで文字通り逃避行したらしいです」

 

「ふうん。結局ハッピーエンドってとこか?」

 

「概ね、そういうことでいいんではないでしょうか」

 

 ハイジャック事件の3日後。俺は病室でレキに例の2人のことを聞いていた。俺はベッドで上体を起こし、レキは隣で椅子に座って。あいつら、神崎が日本に残ると来ても詳細は言わなかったからだ。

 

「蒼一さんは気づいていたんですか?」

 

「まあな、最も恋人とかそういう関係を望んでいると思ったんだけど……パートナー、で終わってるもんなぁ」

 

 そう、あの2人はもうしばらくパーティーを組んでいくらしいがあくまでパートナーという関係らしい。

 ……本人達的には。

 

「まぁ、そこらへんの話は本人達次第だなぁ……」

 

「それしかないでしょうね」

 

 そうだなぁ。

 それ以外にできることは、

 

「面白おかしく弄るしかないか……」

 

「ナチュラル外道発言はやめましょう」

 

 はいはい。キンジも身を固める時が来たと思ったんだけどなぁ。しかし、まぁ。これでこの武偵殺しに関する事件はこれで終わりか。まったくいろいろ大変だったぜ。

 …………

 …………

 

「……………」

 

「……………ん?」

 

 ちょっと待て。

 なんか忘れてね?

 

「……なぁ、レキ?」

 

「はい?」 

 

「……ご褒美とやらはどうなった?」

 

「無しに決まってるでしょう」

 

「…………」

 

「無傷で帰って来たら、という話しでしたよね? それなのにそんな大怪我をして。無しに決まってるでしょう」

 

「…………はい」

 

「では、私はこれからくーちゃんに新しいアニソンCDを借りる約束があるので失礼します」

 

「……………はぃ……」

 

 そうして、彼女は病室を出て行った。

 

「嗚呼……鬱だ……」

 

 怒ってるかなぁ……。失望してるかなぁ……。がっかりしてるかなぁ……。

 と。俺が落ち込んでいたら、

 

「忘れものをしました」

 

 レキが戻ってきた。まさか……追い討ち!?

 俺が戦慄していたら、

 

「お帰りなさい。蒼一さん」

 

 ちゅう。

 俺の唇とレキの唇が重なった。

 ……………………………………………………………………………………………………!?

 それは数秒続き、離れた。

 

「……レ、レキさん? ご褒美は無しじゃなかったんですか?」

 

「ええ、無しですよ」

 

 ですが、と仄かにはにかんで。わずかに首を傾げて、

 

「――恋人同士がキスする分には関係ありませんよね?」

 

 では、と言って彼女は出て行った。

 

「…………………っ」

 

 ……どうしようか。

 にやけが、止まらない。俺は彼女に一生勝てないのではないかと、ふと思う。惚れた弱みとは──よく言ったものだ。まさしく、その通り。とりあえず、急上昇したテンションをどうするか。

 ……そうだな、うん。

 とりあえずキンジと神崎を弄ろう。キンジは言うに及ばず、神崎も恋愛事には弱いだろう。それなら面白いはずた。それはきっとキンジだけよりも。

 

 なぜなら――一人よりも二人の方がいいに決まってるんだから。

 


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