落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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第15拳「──ご存じの通り、『武偵殺し《ワタクシ 》』は爆弾使いですから」

 

 

「理子・峰・リュパン・4世……殺人未遂の現行犯で----」

 

「逮捕するわ!」

 

 キンジと神崎が峰に銃を突きつけて宣言する。なんというか……。

 相変わらず恙ないなぁ。そう思いながら俺はシャワールームから一連の出来事を覗いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キンジが立てた策はダブルブラフだった。ベッドにいると見せかけて、シャワールームにいると見せかけて、どっちもブラフ。ベッドは丸めた布団が。シャワールームには俺がいた。本命の神崎はキャビネットに。シャワールームの人影に気を取られた峰に神崎が奇襲をかけてチェックメイト。初めは大丈夫かと思ったが、上手くいった。そのあたりはさすがと言った所だ。しかし、俺はシャワールームから出ながら思う。

 

「キンジ、今の流れで峰がシャワールームに発砲したらどうするつもりだった?」

 

「……? お前、拳銃の弾くらいで怪我するのか?」

 

 いやいやいやいや。

 そりゃあ、気で防御しておけば直撃したって傷ひとつかないけどよ。なんか違うんじゃね?

 

「くふっ、お前は空気だったな。蒼一」

 

「うるせー!」

 

 ちょっとだって思ってないからな!

 ホントだぞ! 

 ていうか、ここまで追いつめられていて酷い事言ってんじゃねぇよ! 

 思ったその時、

 

「ぶわぁーーか」

 

 峰の髪(・・・)が蠢いた。それをキンジが止めようとしたが──遅かった。

 

「──!」

 

 床が大きく揺れた。飛行機が急降下しているのだ。全員の姿勢が大きく揺れた。ただ一人を除いては。

 

「ばいばいきーん」

 

 腹の立つ捨て台詞を残して行く峰は姿勢が乱れることなくしっかりと走っている。俺の脳裏に先ほど峰を捕まえようとした瞬間のことがフラッシュバックする。これは!

 

「キンジ、あいつ!」

 

「ああ! 髪にコントローラーか何かを仕込んでたんだ!」

 

 いくらなんでも、あいつにばかり有利に揺れすぎだったのだ。機体がどんどん高度を、下げていく。俺とキンジは峰を追い、神崎はコックピットへ。

 ……いい加減、この追いかけっこにも飽きてきたぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 峰は下の階のバーの窓に背中を押しつけて、立っていた。否、待っていたのだ。

 

「狭い飛行機の中----どこへ行こうっていうんだい、仔リスちゃん?」

 

「は、こいつには女狐か女狸がいいだろ」

 

「くふっ、キンジ。近づかないほうがいいよー? ----蒼一はいいけど」

 

 誰が行くか。怪しさ爆発じゃねえか。峰の背後の壁際、細い粘土状のもの、まぁ、十中八九爆弾が貼り付けられていた。そして、峰はスカートの端をちょこんと摘み、軽くお辞儀して、

 

 

 

 

 

「----ご存じの通り、『武偵殺し(ワタクシ)』は爆弾使いですから」

 

 

 

 

 

 それは、正直ムカつくくらい様になっていた。

 

「ねえ、キンジ。キンジもイ・ウーに来ない? この世の天国にさ。なにより----お兄さんもいるよ?」

 

「黙ってくれよ、理子。これ以上に兄さんの話をされると俺は衝動的に武偵憲章第9条を破ってしまうだろう、俺にとっても君にとってもいいことではないだろう?」

 

 それに、理子はからからと笑い、

 

「そっかー。それは困るなぁー。じゃあ蒼一は?」

 

「あ? さっきも言ったけどよぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「-----------遙歌《ようか》もいるよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「----は?」

 

 ちょっと待て。何故。どうして。なんだって、今この場所で。今更----アイツの名前が出てくる?どうして----7年前にも死んだアイツが。当時、十歳だった俺の唯一の家族。たった一人の妹。

 那須家の最高傑作。

 例外的な天才であるアイツの名がーーーーー!

 

「理子・峰・リュパン・4世ーーーー!」

 

 俺は、衝動的に足を踏み出した。踏み出さずにはいられなかった。瞬間。

 

 

 

「----安心しなよ。いつでも歓迎するからね?」

 

 

 

 峰の背後が爆発。出来上がった風穴に峰は自ら飛び込み、

 俺は、

 

「あ」

 

 なすすべもなく、空中に放り投げられた。

 


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