落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定
「ふわぁ……あー、眠っ。なぁエヴァンジェリン、眠いし今日の授業全部休みにしね? そしたら楽だし」
「あほか貴様は。いいわけなかろう」
「麻帆良ならいける」
「いけんわ!」
「がっぐぇ!」
朝っぱらがエヴァンジェリンに後頭部をぶん殴られ、石畳に顔面を激突させた。
鼻の骨とか折れた気がする。一秒で治るのだからいいといえばいいのだが、しかし血が出て気持ち悪い。血を拭いながら立ち上がり、先に進んでいたエヴァンジェリンを追いかける。
「ロリコンせんせーおはよー。今日もまた痴話喧嘩ー?」
「ロリコン紳士さんグッモーニン!」
「ロリコン先生おはようございます。今朝もよくやりますね」
「おーう、お前らおはよー。けど一々ロリコンとか言わなくていいから」
「はははは!」
「あいつら……」
周りの登校している生徒たちが口をそろえてロリコンロリコン言う。登校ラッシュの時間で、向かう先が女子中等部の校舎なので大量の女子中学生が人のことを実に心外な呼び方をしながら走り去っていく。
「エヴァはロリではなくて合法ロリババアだというのに……」
「だからロリとかババアとか言うなぁー!」
「ぐはぁ!」
戻って来たエヴァンジェリンに跳び蹴りを喰らう。
あ、パンツ見えた。黒の紐パンだ。
「覗くなぁっ!」
ゲシゲシと踏み潰すように蹴られる。まぁこれくらいなら痛くないし。ある意味ご褒美だ。たまにピンヒールが当たると痛いのだが。
「でもなんだかんだ戻ってくるあたりエヴァは優しいよなぁ」
「お前いいこと言えば許されると思ってるのか」
「ちっ」
汚れを振り払いながら立ち上がる。黒いスーツだから地味に土とかは目立つ。別に気にするわけではないのだが。その点エヴァは目玉が飛び出るような高額な黒のゴシックロリータだ。見た目が十歳なので外見だけ見れば西洋人形だ。
これで先生が通るのも麻帆良学園だけだろう。
立ち上がって、
「おっと」
一歩ずれて、
「ほわ!」
真後ろから古菲が跳び蹴りで通り過ぎた。つまりそのまま俺の正面にいたエヴァに行って、
「邪魔だ」
「にょわー!?」
足を片手で払われて大の字で回転しながら投げ飛ばされて道端の梢に突っ込んだ。すぐに復活したが。頭を回しながら戻ってくる。
「あちゃぁ……エヴァちゃんのが喰らったから師父にも当たると思たんだけどナ」
「甘いぞ古、俺を不意打ちしたかったら楓の目の前でコサックダンス踊れるくらいに気配消さなきゃな」
「それはちょっと無理アルヨ……」
「それより貴様教師をちゃん付けて呼ぶな」
「アハハ、ゴメンアルエヴァちゃん」
「このバカイエローが……!」
「どうどう」
飛び出しかけたエヴァの頭を押さえつけて動きを止めておく。何時のもノリで古菲に飛びかかったら多分死ぬし。そのあたり解っているが、それでも一応。
基本ノリだ。
「なんだ、今朝は一人か? 超とかさつきとはどうした」
「お仕事中に二人を見かけたから奇襲するために抜けてきたネ」
酷い理由だ。恐らく超は笑って見送って、さつきは苦笑気味だっただろう。
「そういうそっちは茶々丸さんは今日はいないのかネ?」
「あれは今日葉加瀬のとこでメンテナンスだ。二人とも二限目から来ると連絡が来ている」
「なるほど。それで師父、今日も放課後は空いてるカ?」
「えっとどうだっけ?」
「知らん。茶々丸に聞け」
「それでよく教師とかやってるアルなぁ」
学校でのスケジュールは完全に茶々丸任せなのでぶっちゃけそういうの知らない。数年前にチャチャゼロの妹分として生み出された茶々丸だが、あれがびっくりするくらいハイスペックな少女だった。あれでもう少し人間身が生まれれば面白いんだけど。あれは自分に魂があることを自覚すればもっとノリが良くなるはずだ。いや、ノリ自体はいいか。エヴァを弄る時は楽しそうだし。
「ま、茶々丸登校してきたら声かけとけよ。なんにもなかったら相手してやろう」
「楓や刹那も読んでいいアルか?」
「好きにしてくれ」
「諒解アル。んじゃ先行くヨー」
手を大きく振りながら古菲が走り去っていく。女子中学生にしてはやたらめったらに速いがあれの強度は気の使用を抜けば上位なので別に驚くことではない。
「元気のいいことだ」
「若いっていいねぇ。……なんかこれ年寄りみたいな台詞じゃね」
「……歳食ってるのは否定できん」
違いない。
腕時計を見ればもう八時過ぎだ。八時半から始業で、とりあえず遅くても八時四十分くらいに行けばいいし、最悪九時までに行けばいい。うちのクラスの委員長は優秀なのだ。
「やっぱ休日にしね?」
「だから駄目だと言っているだろうが」
「ちぇー」
●
「ちぃーす」
「ちゃんと挨拶せんか戯け」
職員室に入りながら同僚たちに軽いノリで挨拶をしながら、自分の机に行く。広い職員室の中の奥の方の窓際の席二つ。そこが俺とエヴァンジェリンだ。俺は二十歳手前で、エヴァも見た目十歳程度だが、二人ともこの学園で教師をし始めて二十年近い。結構な古参に入る。二年くらい前までは高等部にいたし、その前は初等部だったり、最初の方は色々転々とていた。
普通だったら色々在りえないが認識阻害結界があるこの麻帆良学園では普通に通る。色々問題の種になっている認識阻害結界だが、便利だし、なかったらなかったで困るような生徒は結構多い。
「やぁ、おはよう。蒼一、エヴァ、ちょっといいかい?」
「あん?」
席に着いたら早くもタカミチがこっちに来た。
「なんだどうした。つーかお前今日は学校来たのか。不登校気味の中学生みたいに来たり来なかったりするのに」
「昨日も会ったよね。あと君中学校行ったことないって前言ってなかったけ」
「忘れたよくそったれ。年食うと記憶力曖昧になっていけねーや」
「それはお前だけだ。私の記憶力はまだ健在だぞ」
「そりゃエヴァはロリババアだからぐふっ」
脇腹に肘が突き刺さった。
「それでなんだタカミチ。昨日の話の続きか?」
「あぁ、いや。今日の夜はいつも通りに世界樹前で集会だからね。昨日のことについてだと思うよ」
「態々そんなことか? ご苦労なことだ」
「ははは、まあ朝見かけた時茶々丸さん見なかったからね。ちゃんと言っておかないとすっぽかされると思ったから」
「アレはちゃんと二時間目には来る。要らん配慮だったな」
「だったらいいんだけどね。そんなことを言いつつ、集会来なかったことが何度会ってか」
「おいおいそんな不届き者がいるのかよ。大変だなぁ我が主様」
「うむうむ、大変だな。我らの様な品行方正な吸血鬼とその眷属には関係のない話だな我が従僕よ」
「君たちみたいなペアが他にいたまるか。あとそういうことあんま言わない方がいいよ。こう、人望的に」
「いいんだよ。そういうプレイで押し通す」
「だからロリコンとか至る所で呼ばれてるんだよ……?」
「かはは」
そのあたり既に吹っ切れた。相手にするだけあほらしいし。寧ろロリコン万歳。ロリっていいよね。この気持ちを誰かと分かち合うことはできないだろう。
「そこら辺どうだタカミチ。姫子ちゃんとか。すげぇ逆タマだぜ」
「君麻帆良じゃなかったら捕まってるよね」
「だから麻帆良にいるんじゃねーか」
実際認識阻害結界のことを抜きにしても麻帆良学園自体居心地がいい。色々混じり者も少なくいるし、魔法世界出身の人間もちょこちょこいる。まぁ大体誰もが自分のそういう非日常性を押し殺して生きているわけなのだが。教師飽きたらそういう連中を集めるのも悪くないかもしれないとか思う。
「おら、そこの馬鹿野郎二人。とっととやることやれ。蒼一、教室に行くぞ」
「えー、まじか」
「ほら、行ってきなよ。僕も行くから。PTAには気を付けてね」
「絵的には老け顔のお前の方が犯罪的だろ」
「豪殺・居合拳……!」
「だが効かねぇ」
短いのは、なんか蒼一をロリコンって呼ばせたら満足して飽きちゃった(
このロリコン編はもっかいくらいバトル書きたいかなぁ。
VSスクナとか?
ちなみに番外編続くのは本編詰まってる証拠。
ラブコメキツイ。
ラブもコメもないんだよ。
私にラブコメなんて書けないし。
つたらん。
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