落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定
「どう、して……」
その光景を私は受け入れることができなかった。私の前に、志乃ちゃんがライカちゃんが陽奈ちゃんが麒麟ちゃんが桜ちゃんがあかりちゃんが。まるで私を守るかのようにドライの前に立ちふさがっていたから。志乃ちゃんは長刀を構え、ライカちゃんはトンファーを握り、陽奈ちゃんも苦無を逆手で持っている。その三人を前面に置き、私の正面にはあかりちゃんが拳を構える。私やあかりちゃんより少し後ろに麒麟ちゃんと桜ちゃんが拳銃をドライに定めていた。
それは知っている陣形だった。
私たちの戦妹チームが考えた基本フォーメーション。
志乃ちゃんとライカちゃんが前衛で、陽奈ちゃんは遊撃。私はその場のタイミングで動き、あかりちゃんがリーダーで後ろ二人がサポート。
そういうのを、私たちは考えていたのだ。
「みんな……」
「水臭いこと言ってんじゃねぇよ。帰ってこないから心配して探してたら、お前がここでやりあってるって聞いたんだ。先生たちがこれない以上、チームメイトのあたしたちが来て当たり前だろうが」
私に背を向けたままにライカちゃんはそんなことをいう。確かに武偵は自己責任が基本で、チームメイトの問題はチーム全体の問題だ。ならばそう、例えば私とドライの接敵を知って教師陣があかりちゃんたちに救援に行かせたのはあり得なくもない。撤退に専念させるために襲撃にきた彼らの仲間たちからステルス装備を奪いさり、隠密行動をスムーズに行わせる為だと考えれば納得だ。
「際どい場面だったから思わず、介入してしまったんですけど」
「まぁ仕方なかろう、あのままでは遙歌殿の頭部はすくらっぷだったで御座ろう」
志乃ちゃんも陽奈ちゃんも軽口を叩いているが、それは当然虚勢にすぎない。実際彼女たちはドライから一瞬たりとも目をはなさい。文化祭のよるに私を一蹴しているのを見たはずだから当然といえば当然だし、それ以前にドライ自身からも尋常ではない覇気を漂わせているのだから。彼女たちからすれば対峙するだけでもきついはず。実際に女子中学生二人は口を開く余裕はない。
「ふむ」
ドライはそんな彼女たちを眺めていた。攻撃をするわけでもなくただ観察しているだけだ。
「よくもまぁ現れたものだ。彼我の実力差が理解できないというわけでもないだろうに。いや、しかしすぐにその化物を抱えて逃げるなんてしなくて正解だったな。その場合は姿が見えていようといなくても俺は周囲を構わずに粉砕していただろう」
ぞっとしないことを当たり前のように言う。
「それで? どうするつもりだ」
「――こうするんだよ!!」
ライカちゃんが飛びかかった。そしてそれは彼女だけではない。トンファーによる打撃を繰り出すのと同時に、志乃ちゃんの鞘無しの抜刀術――燕返しが放たれ、二人の隙間を縫うように陽菜ちゃんが苦無を投擲する。
同時、ライカちゃんが飛びかかったのよりもさらに早く麒麟ちゃんと桜ちゃんは動いた。倒れ伏したままだった私に飛びつき、脇を抱え上げて半ば引きずる。あかりちゃんがそんな私たちの前に。三人を陽動にして、その間に他の三人が私を回収する。
「遙歌さん!」
「逃げますわよ!」
先ほどの陣形と合わせて、実に卒がない教本通りの救出劇。
相手がドライでなければの話だったけれど。
「
一瞬三閃。
それで全ても目論見は砕かれた。
「――!?」
一撃、志乃ちゃんとライカちゃんと陽菜ちゃんが。
二撃、麒麟ちゃんが。
三撃、桜ちゃんが。
たった一瞬で――彼女たちが戦闘不能になっていた。五人が五人とも吹き飛んで、崩れ、動かない。
「みんッ」
「――間宮あかり。何故来た」
「どういう……」
「そのままの意味だよ。どうしてお前はここに来たんだ? 態々俺の仲間の装備も奪って、厳然たる実力差のある俺の前に」
「そんなの友達だからに決まってる」
即答だった。
けれどそれはどうしようもなく私の胸に響く。痛い。苦しい。
「ふむ……そうか。では好きにすればいい」
頷いたドライは
あかりちゃんもそれに戸惑い、躊躇したが
「今のうちに……!」
駆けだした。
バックステップしながら再び崩れ落ちていた私の下へ。
「遙歌ちゃん!」
私の手首を掴んで、引き上げて、連れ出そうとして。
「――ぇ?」
――私はその手を振り払って、彼女を突き飛ばしていた。
「まぁ」
それを予見していたかのように再び振りかったドライは嘲りの笑みを浮かべていた。
「その化物がお前に応えられたらの話だがな」
突き飛ばし、それでも崩れ落ちたのは私の方だ。反発された力に足は持たずにそのまま尻餅をついた。
「……よう、かちゃん……?」
「だ、だめです……だめなんです……」
体は震えていた。歯はガチガチと音を立てて、見っともないことに鼻水や涙だって垂れている。そしてそんなことが気にならなくなるくらいに私はあかりちゃんを拒絶しなければならなかった。
だって、できるはずがない。
「遙歌ちゃんなにを」
「来ないでください!」
「っ」
頭を抱えて、視線を落として、その上で目をつぶって。瞼が痛くなるくらいに閉じた。それでも足りないくらい。
「ダメなんですよ……私は、貴女に助けてもらえる資格なんて……っ」
「何を言ってるのさっ」
「決まってるだろう――その女がお前の故郷を滅ぼした張本人で今更そんなこと全部忘れててぬくぬくとお前と一緒にゆるふわ日常生活送って生き恥晒していたなんてことを今更ながらに思い出して合わせる顔がないなんて、な」
「……え?」
「――っ!」
漏れたあかりちゃんの吐息が全身に響く。より一層瞼を強く閉じ、これ以上ないくらいに頭を抱える。合わせる顔があるわけがない。応える口があるわけがない。目なんか開けられない。耳なんて聞いてられない。
ドライの言葉は全くその通りで、否定できることなんて何一つないのだから。
吐き気がする。死にたくて死にたくてしょうがない。こんなにもスキルがないことを恨んだことはない。今スキルがどんなくだらないものでもあればそれを使って自殺していたのに。
「……ほんと、なの?」
「っ――」
「本当だ。実は戯言でしたなんて結果はない。あとで夾竹桃にでも聞いてみろ」
ドライの横槍も満足に聞いてられない。ただ、今あかりちゃんがどんな顔をしているのか、どんな思いをしているのか、考えたくなくて。
「ごめんなさい」
そんな言葉が出ていた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい、故郷を壊してごめんなさい。大事な人を傷つけてごめんなさい。人生を台無しにしてごめんなさい。人生を滅茶苦茶にしてごめんなさい。のうのうと貴女の隣で笑っていてごめんなさい。友達面してごめんなさい。日常を楽しんでいてごめんなさい。生きていてごめんなさい。死んでなくてごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――!」
そしてなにより――
「何一つ思い出せなくてごめんなさい――!」
なんて、酷い話だ。
酷過ぎて笑ってしまいそうだ。
私は親友だと思っていた女の子の人生を台無しにして、それなのにそんな女の子の友達気取りで日常を愉しんでいた。
そして私はここまで来て滅ぼした彼女の故郷を思い出すことができなかった。
いっそ喜劇と言ってさえいい。
こんな話なんてない。
「……遙歌ちゃん」
「私なんて生まれてこなければよかったんだ。生まれてこなければよかった。死んでればよかった」
「遙歌ちゃん」
「やっぱりあの時兄さんに殺されてれば、あの時自殺すれば、違う、兄さんに殺されたいなんてわがまま言わずにさっさと自分で自分を殺してれば」
「遙歌ちゃん」
「違う違う違う。あの時、あの日、あそこで火に包まれた屋敷の中で死に切ってれば――」
「こっちを向け那須遙歌!」
「!!」
初めて聞く彼女の鋭い言葉だった。強い叫びだった。その言葉に今の私が逆らえることができるはずもなく、言われたとおりに牛歩のような速度で腕をほどき、頭を開けて、目を開いて、
「ぅ……っ」
あかりちゃんと目が合う。逆光と髪で彼女の表情はよく見ることができなかった。
私の前にしゃご見込む。
そして彼女は言った。
「――私、知ってたよ」
●
「――――ぇえ?」
「なに……?」
今、あかりちゃんは何と言った?
知っていた? なにを? 何を彼女は知っていた? 馬鹿が、何がなんて言うまでもない。
「夾竹桃さんが、あの人の知ってる間宮の技を教えてもらったときに聞いたの。物理的に私の故郷を壊したのは私と同じ年の女の子だって。貴女の名前も容姿も。だから、一目見た時遙歌がそうだって気づいた。記憶にも少しあったしね」
「……う、うそ、です! だったらどうして何も言わないで……!」
「最初、遙歌ちゃんが転校してくるって聞いた時、私もどんな顔をすればいいか解らなかった。貴女の顔を見れば感情に身を任せて飛びかかってしまうんじゃないかとか好きになれそうにないとか。嫌いになるだろうとか。嫌がらせとかするんじゃないかとか、そういうこと沢山考えたよ」
「だったら……!」
「私たちが最初あった時のことを覚えてる?」
「っ」
覚えている。それは忘れていない。多分私は何があっても、例え死んでもあの日のことを忘れない。六月の終わり。私が武偵高の転入手続きなどを終えた夜遅く。初めて自分の家の鍵を持って、兄さんとレキさんに見送られながら部屋に入った直後のこと。
溢れたのは噎せるような火薬の匂いと破裂音。最初銃撃かなにかと思ったそれはパーティー用のクラッカーだった。部屋の中には遅い時間にも関わらず並べられた色とりどりの料理やケーキ。バスカービルの皆さんがいて、同じようにあかりちゃんたちもいたのだ。
それが私たちの出会いだった。
出会いだと思っていた。
そこで私たちは友達になったと思っていた。
「あの時遙歌ちゃんさ、泣いてたよね」
「ぁ……」
泣いていた。確かにそうだ。あの時、あの場所で。全員の自己紹介を聞き終わって、皆に囲まれながら、私は気づいたら泣いていたのだ。あんなにも暖かくて優しい場所を私は知らなかったから。だから勝手に私は涙を流していた。
「思ったんだよね、私。あぁ、この子は今まですごく大変だったんだなぁって。そう思ったらさ、なんかどうでもよくなっちゃったんだよ」
「そんなのって……」
「だってさ。敵の一人だと思っていた相手はこんなにも弱そうで泣き虫の女の子だったから」
あかりちゃんの手が私の頬に触れた。
涙と血に塗れた私の頬に。暖かい手だった。
「恨んでなんかないよ。確かに私は故郷を追われて大変だったけど、それでも私は遙歌ちゃんを恨んでなんかいない。遙歌ちゃんのせいで私の人生が不幸なったなんてことは全くないんだから」
「でも……でもぉ……っぁ」
「ののかやアリア先輩や志乃ちゃんやライカちゃんや陽菜ちゃんや麒麟ちゃんや桜ちゃん、それに星伽先輩や理子先輩にレキ先輩、高千穂さんとか夾竹桃さんも。それにかなめちゃんだってそうだし一応遠山先輩とか那須先輩も。……大好きな友達がいるんだから私の人生は台無しになんかなってない。勿論遙歌ちゃんもね、だからさっきのごめんさいっていうのは違うんだ」
頬に当てた手が首の後ろへと回る。あかりちゃんに抱きしめられる。
暖かくて、優しい温もり。それが私に染み渡ってくる。ダメなのに、こんな温もり、私には過ぎたものなのに。今更なんて図々しすぎるだけなのに。
それなのに――その温もりが堪らなく愛おしい。
「ありがとう」
「っ」
「私の隣で笑っていてくれてありがとう。友達になってくれてありがとう。一緒に日常を楽しんでくれてありがとう。ありがとう。ありがとう。――生まれてきてくれてありがとう」
「――」
「恨んでなかったわけじゃないけど、それ以上に私は遙歌ちゃんのことが大好きだから。生まれてこなければよかったなんて、二度と言わないで」
「あかり、ちゃん」
そして彼女にっこりと笑って私から離れ、立ち上がる。
「そういうことです」
振り返ってドライへと真っ直ぐに。怯みもせずに彼女はドライへと気丈にも睨みつけていた。
「遙歌ちゃんが応えようと応えなかろうと私は大好きな友達を連れて帰りますから」
「……偽善、ではないな。本心だろうな」
「はい」
ふう、とドライは息を吐く。呆れたように或は苦笑するかのようだった。
「女人望、なるほど。どうやら女限定ではないか。見事なカリスマ性だ。友情――あぁ、解るぞ、俺にもそういう感情はな」
「だったら……」
「ダメだな。その化物はここで始末する」
「どうして!」
「それが俺の友情だからな。サードはサラ博士を生き返らせると誓った。ならば、アイツの友として、それを成し遂げる為に手伝うのが俺の役目なのだ。そしてその化物は『バスカービル』における最大戦力だ。ここで潰さなければサードの障害になる」
「だったら……尚のこと私だって引けません。私だって友達の為に命懸けるくらいのことはできるんだから」
「ならば来い。あぁ、お前を殺して今度こそその化物の心を砕こう」
「私の友達を化物って呼ぶなぁー!」
●
「ぁ、ぁ……ぁ」
そして私は見ている。ドライとあかりちゃんの戦いともいえない戦いを。勝負になるはずがないのだ。ただの女子高生と人工天才の人間兵器が戦いになるわけがない。
それはあかりちゃんだって解っていたはずなのに。それなのに、彼女はドライへと駆ける。一撃を喰らえば回避に全力を注ぎ、それでも避けきれず軽くない損傷を負いながら前に出る。けれどそれは何度もこなせるわけじゃない。十も行かないうちにあかりちゃんは殺される。
「――っ」
それなのに――私はなにやっているのだろう。
体はだるくて、見取ったスキルは何一つ使えなくて、自前の異常もなにもかも奪われて、心まで完全に砕かれた。
異能も化物染みた身体能力も回復力も異常も過負荷も超能力も何一つありはしない。
ありえない。こんな状態でなにができるというのだろう。一歩前に踏み出すだけでも、目を開けるだけでも怖い。足元すらも真っ暗なようで、息を吸うのだって不安だ。
怖い、怖い、怖くてたまらない。
あぁでも――これが兄さんが生きてきた世界なのだ。
私の兄は、那須蒼一は。
こんな世界で、ずっと生きてきたのだ。こんな世界で前に出て、目を開けて、駆け抜けているのだ。
すごいなぁと思う。私の兄さんは本当にすごい。こんなことを当たり前のようにできている。強さしか持たなかった私は弱さには絶対勝つことができない。
「……馬鹿みたいだ」
何もかも見取るスキルも人外の回復力や身体能力も数えきれないほどのスキルも何もかも。誇れるものじゃない。
それなのに、私はそんなものに頼って生きてきた。
いいや、生きてすらいなかったのか。
七年前、いやもうすぐ八年前になるであろうあの日。
死んで、死にかけて、死に続けてきた私は。
「……っぁ」
溢れる涙は止まらない。
一瞬だけ、そう、兄さんに帰る場所を貰ってから、友達ができてから。この少しの間だけ私は生きることができた。
それがどれだけ罪深い生なのかも知らずに。
「でも、お前は気づけただろ」
「っ、ライカちゃん」
先ほど吹き飛ばされた彼女は大の字になったまま、血に塗れたまま、それでも私へと語り掛けてきた。
「そりゃやっちゃいけないことをしたのかもしれない。けど、お前はそれに気づけたじゃないか。自分の罪に」
「でも、だからって許されていいわけが」
「いいんだよ許されても」
「で、御座るな」
志乃ちゃんと陽菜ちゃん。
「あかりちゃんが赦してくれんだから、だったら赦されてもいいよ。あかりちゃんの言うことは絶対なんだから」
「罪を憎んで人を憎まず、昔の人はいいことを言ったもので御座る」
「第一、罪を犯したから死ねばいいっていう考えが甘いですわっ。もっと他にやることがあるでしょう?」
「ですね、遙歌先輩の考えだと世の中の犯罪者は皆死刑ですよ」
少し怒ったような麒麟ちゃんと叱るような口調の桜ちゃん。
私の――友達。
「でも、私は――」
「でももすともねぇよ、お前の兄貴なら、先輩ならこういう時になんていうと思う」
それは――
「好きにすればいい。そういうだろ? だからお前も、そうしろ。安心しろよお前が悪いことやったらあたし達は叱ってやるからさ。だから、胸を張ってくれ。私たちの親友那須遙歌」
「――」
●
「待ってください」
「!」
振るわれていた戟が私の言葉と共に止まった。
「よう、か、ちゃん」
既にあかりちゃんはボロボロだった。骨だって何本も折れているだろうし、かわいい顔が血に塗れて台無しだ。そんな彼女は振るわれる戟が止まったことによって糸が切れたように崩れ落ちる。
そんな彼女を庇うように。震える体を、碌に動かない体を無理矢理引きずって彼女の前に立つ。
「……ありがとう、あかりちゃん」
「え、へへ……うん、その言葉のほうが嬉しいな」
そう笑ってくれる彼女に微笑み、ドライに顔を向ける。
「……まだ壊れないか」
「いいえ、もう滅茶苦茶ですよ。完全に壊れて、壊れすぎて、一周回って空回りしてるだけです。ねぇ、ドライさん。貴方の狙いは私なんですよね」
「そうだ」
「だったら、今度こそ私と戦いましょう。こんな私でよければいくらでも相手になりますから」
「なっ遙歌ちゃん!? 駄目だよ、そんな体で!」
「駄目じゃないです」
背後にて叫ぶあかりちゃんに応える。
そう、駄目じゃない。
大体傷の度合いでいうなら私が一番軽いのだ。確かに私が持つ異常性は全て消え去った。
それでも、つまりそれは、
「兄さんと同じです。だったら頑張れます。私は、あの人の妹ですから」
「遙歌ちゃん!」
「ありがとう、こんな私の友達になってくれて。大好きだよ」
それだけ言いたかった。それだけ言えば満足だ。背後で皆が叫んでいるが気にしない。あの一言で満足だ。
「さぁ、お待たせしましたドライさん。始めましょうか」
「いやそうでもない。お前たちの友情劇は胸を打つものがあった。悪くない。俺とお前になんの因縁もなければ、ここで助けに入ってもいいくらいにな」
「素敵な仮定ですね」
「あぁ、所詮は仮定だ。俺はお前を殺す」
ぶれない人だ。強い人だ。私と違って。
でも、こんな弱い私を好きって言ってくれる友達がいる。だったら、拳を握るくらいはできる。なにもなくても、この身一つしかなくても。
この小さな拳だったら私の砕けた心もでもかき集めれば十分だろう。
それが――人間というものだから。
「死ね化物。俺とサードの為にな」
「私は――私は化物なんかじゃない! 私は人間、那須遙歌だ! 誰がお前たちの為に死ぬもんかっ、私は友達の為に笑って死んでやる!」
「おいおいダメだぜ妹ちゃん。友達の為に死ぬんじゃなくて、友達と一緒に生きなきゃさ。お前が死んだらお兄ちゃんは笑えないよ」
ついに帰って来たアイツ(
「私は――私は化物なんかじゃない! 私は人間、那須遙歌だ! 誰がお前たちの為に死ぬもんかっ、私は友達の為に笑って死んでやる!」
このセリフの為だけに八章は遙歌視点でした。
あかりちゃんマジ天使
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