落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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第12拳「無傷で帰ってきたら続きをしてあげます」

 

「あー、暇だ」

 

 神崎が退院して、数日後。俺はものすごく暇だった。レキは学校、キンジは顔すら出さない。神崎とは上手くいっているのかも謎だ。今の俺は大人しくアニメでも見るしかない。

 

「三発殴って倒せ、か……うぅむ。かっけぇなぁ」

 

 決め台詞か……。最近全く使ってない。ここ最近は平和……かといえば疑問だが言う機会は無かったなぁ。

 

「ふぁ、なんかないかね? おもしろいこと」

 

 電話がなった。表示は、遠山キンジ。

 ふむ。

 

「おーう、どうした? 白状者」

 

『蒼一! 今何してる!?』

 

「ああ? レキは学校だし、お前も全然見舞い来ないから一人でアニメ鑑賞だせ」

 

『……っ! 無理を承知で頼みたいことがある!』

 

「----いいぜ、何をすればいいんだ?」

 

『7時前までに羽田空港に来てくれ!』

 

「分かった。待ってろ」

 

『……蒼一』

 

「ん?」

 

『……ありがとな』

 

 は。

 

「感謝しろ」

 

 電話を切る。時間は6時過ぎ。走れば、間に合うだろう。ベッドから出て、部屋に備え付けのクローゼットから防弾制服を取り出す。

 着替えるが、

 

「……ネクタイは……」

 

 右手が未だギブスに覆われているのでネクタイが結べない。迷い、ノーネクタイで行こうかと思って、

 

「やりますよ」

 

 レキが、いつの間にかいた。ネクタイを手に取り、結んでくれる。

 

「……悪いな」

 

「いえ」

 

 病室に布ずれの音が響いた。

 

「私もついて行きましょうか?」

 

 彼女は行くのかと、問わないし何処へとも問わない。まったく、いい女だせ。

 

「んー、まぁ大丈夫だろ、俺一人で」

 

「そうですか」

 

 きゅっ、とネクタイが結び終わった。

 

「なら、ちゃんと帰ってきてくださいね、待ってますから」

 

「おう」

 

 靴を履き、病室を出ようとし、

 

「あ、待ってください」

 

「ん? どうし----」

 

「ちゅう」

 

 レキの唇と俺の唇が重なっていた。十秒か二十秒そのままで。

 

「……ん」

 

 離れた。

 

「無傷で帰ってきたら続きをしてあげます」

 

「………………………………………おう、行ってくる」

 

「はい、行ってらっしゃい」

 

 レキを置いて病室を出る。病院も出て、

 

「ふ、ふふふ」

 

 ふふふふふ、ハハハハハハハ。

 さすがはレキだぜ。 さすが我が嫁!

 

「やる気にさせるのが上手いなぁ!」

 

 走った。そりゃもう走った。

 

「わははははは!」

 

 笑いまくりながら走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのあと空港にて、キンジと合流。話を、聞けば神崎が英国に帰ろうとし、その飛行機に武偵殺しがハイジャックをしかけるらしい。

 まず、感想は、

 

「お前、俺にあそこまで言わせて玉の輿逃したのか!」

 

「そういう話じゃないだろ!」

 

 叫び合いながら、飛行機に乗り込み、

 

「武偵だ! 今すぐこの飛行機を止めろ!」

 

「お前がハイジャック犯か!」

 

 そして、神崎と合流し人の事そっちのけで痴話喧嘩。おまけに雷にビビった神崎をキンジが慰めだした辺り、あれ? 俺って必要? なんて思いだした瞬間だった。

 

 銃声が飛行機内に響いたのは。

 

 

 

 

 


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