落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定
「あー、暇だ」
神崎が退院して、数日後。俺はものすごく暇だった。レキは学校、キンジは顔すら出さない。神崎とは上手くいっているのかも謎だ。今の俺は大人しくアニメでも見るしかない。
「三発殴って倒せ、か……うぅむ。かっけぇなぁ」
決め台詞か……。最近全く使ってない。ここ最近は平和……かといえば疑問だが言う機会は無かったなぁ。
「ふぁ、なんかないかね? おもしろいこと」
電話がなった。表示は、遠山キンジ。
ふむ。
「おーう、どうした? 白状者」
『蒼一! 今何してる!?』
「ああ? レキは学校だし、お前も全然見舞い来ないから一人でアニメ鑑賞だせ」
『……っ! 無理を承知で頼みたいことがある!』
「----いいぜ、何をすればいいんだ?」
『7時前までに羽田空港に来てくれ!』
「分かった。待ってろ」
『……蒼一』
「ん?」
『……ありがとな』
は。
「感謝しろ」
電話を切る。時間は6時過ぎ。走れば、間に合うだろう。ベッドから出て、部屋に備え付けのクローゼットから防弾制服を取り出す。
着替えるが、
「……ネクタイは……」
右手が未だギブスに覆われているのでネクタイが結べない。迷い、ノーネクタイで行こうかと思って、
「やりますよ」
レキが、いつの間にかいた。ネクタイを手に取り、結んでくれる。
「……悪いな」
「いえ」
病室に布ずれの音が響いた。
「私もついて行きましょうか?」
彼女は行くのかと、問わないし何処へとも問わない。まったく、いい女だせ。
「んー、まぁ大丈夫だろ、俺一人で」
「そうですか」
きゅっ、とネクタイが結び終わった。
「なら、ちゃんと帰ってきてくださいね、待ってますから」
「おう」
靴を履き、病室を出ようとし、
「あ、待ってください」
「ん? どうし----」
「ちゅう」
レキの唇と俺の唇が重なっていた。十秒か二十秒そのままで。
「……ん」
離れた。
「無傷で帰ってきたら続きをしてあげます」
「………………………………………おう、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
レキを置いて病室を出る。病院も出て、
「ふ、ふふふ」
ふふふふふ、ハハハハハハハ。
さすがはレキだぜ。 さすが我が嫁!
「やる気にさせるのが上手いなぁ!」
走った。そりゃもう走った。
「わははははは!」
笑いまくりながら走った。
・・・・・・・・・・・・
そのあと空港にて、キンジと合流。話を、聞けば神崎が英国に帰ろうとし、その飛行機に武偵殺しがハイジャックをしかけるらしい。
まず、感想は、
「お前、俺にあそこまで言わせて玉の輿逃したのか!」
「そういう話じゃないだろ!」
叫び合いながら、飛行機に乗り込み、
「武偵だ! 今すぐこの飛行機を止めろ!」
「お前がハイジャック犯か!」
そして、神崎と合流し人の事そっちのけで痴話喧嘩。おまけに雷にビビった神崎をキンジが慰めだした辺り、あれ? 俺って必要? なんて思いだした瞬間だった。
銃声が飛行機内に響いたのは。