シノンと共にガンゲイル・オンライン   作:ヴィヴィオ

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最後の部分を修正させていただきました。
普通に他人の力を利用する事にしました。


第6話

 

 

 授業を受けながら修行を行い、映画のシナリオ(転生前のアニメや映画)などを書き上げていく。先生からすればいい感情はないだろうが、成績優秀なので無視する。まあ、体育の授業はどうしようもないけどな。そして、次の時間は体育になっているので着替えてグラウンドへと向かう。この学校では女子と男子は別れずに体育を行う。もちろん、プールなど一部の授業を除いてだが。今回はグラウンドなので、男子がサッカー、女子がテニスだ。

 この学校はスポーツも強いので設備が揃っている為、広さも問題ない。むしろ、体育館が二つあったりするのだ。その割に授業料は安くて来るもの拒まずである。出るのは難しいなんて事もない。学校の特色として優秀な生徒には色々と特典が与えられるくらいだ。より高度な授業も受けられるし、単位の融通なども芸能人やモデルなどの仕事で開けても単位が問題なくもらえる。代わりに宣伝などに協力させられるのだが。施設の貸し出しなども可能で優秀な者ほど幸せになれる学校だ。

 

「今日はサッカーか」

「桐ヶ谷は初めてだっけ?」

「まあ、仕事を入れまくってたし、参加するなとか言われてたからな」

「大丈夫なのかよ?」

「平気平気。今は仕事そこまで多くないしね」

「そっか。おっ、終わったみたいだ」

 

 サッカー部の奴等が別れて取り合っている。しかもかなり真剣だ。それもその筈で、景品があるのだ。先生から食堂で使える200円の金券がチーム全員に貰えるのだ。4クラス合同な為、かなりの人数が揃い、チームはクラスなど関係なくバラバラで選ばれる。

 

「今から呼ぶぞ!」

 

 先生がコールしていくので、チーム分けがされていく。そして、俺が選ばれたのは弱そうなチームだった。まあ、この容姿だから強そうには見えないし、何やら殺気も感じるから予想は出来ていた。それにモデルなんかしていると女子に人気あるから、女子の前でコテンパンにしようとしているのだろう。

 

「……」

 

 適当に流そうかとも思ったが、こちらを見ていた詩乃に口パクで“頑張って”と言われれば仕方ない。ちょっと遊ぶとしようか。

 

「へっ、先行は譲ってやるよ」

「どうせ俺達の勝ちだろうけどな」

 

 フィールドの真ん中に立って、ボールをどちらからか選ぶのだが、そのような言葉を貰った。ふむ。ならば、ありがたく先行を貰って、その幻想をぶっ壊してやろう。髪の毛を片手で後ろに流しながらチームメイトにこちらにボールを最初に渡すようにお願いする。

 

「ボール、渡してくれ」

「わかった」

 

 簡単に渡してくれたので、とりあえず足で止めてから前を見る。直ぐに二人が近づいてくるので、ボールを身体で隠して蹴り上げて相手の上を運ぶ。その直後に身体を揺らしてマークを外してしゃがんでさっさと抜く。大きい二人からしたら視界から消えたように見えるだろう。抜いたあとで、落下して来たボールを蹴ってドリブルする。

 

「おりゃぁぁぁぁっ!!」

「遅い」

 

 スライディングをジャンプして避けてそのまま敵陣に切り込む。群がってくる敵を漫画で見たφトリックやウィッチターンなどを駆使して特攻する。身体能力はこちらの方が上なのだ。6人抜いたらさっさとシュートを決める。だが、残念ながらゴールキーパーに弾かれる。

 

「まあ、予想済みっと」

 

 弾かれたボールをオーバーヘッドシュートで決める。唖然としている奴等を無視して真ん中まで戻る。観察すればだいたい分かるので簡単にボールを奪ってシュートの繰り返しを行う。ボールの反射角度などを計算して精密操作で相手の足を利用してパスをすればシュートコースやスペースが生まれて容易く決められる。終わる頃には一人で大差をつけていた。

 

「ふぅ」

 

 汗をうっすらとかいた程度で試合が終わり、軽くストレッチをして休憩に入る。そのついでに一人でいる詩乃の所に行く。女の子がキャーキャー言ってるが知ったことじゃない。

 

「どうだった?」

「やり過ぎでしょ」

「あっ、非道い。頑張れって言われたから頑張ったんだがな」

「読唇術まで使えるとか……大概ね。はい」

「ありがと」

 

 詩乃がタオルを渡してくれたので軽くそれで汗を拭く。そのタオルは直ぐに詩乃に奪い返されたけど。

 

「そういえば、テニスは?」

「まだ順番じゃない」

「詩乃は運動神経悪くないし、やればできるんじゃないか?」

「まあ、和人みたいにはできないけど……」

「簡単だって。相手の癖や力の入り方、身体の位置から予測すれば」

「それが難しいんだけど……」

「相手は誰?」

「えっと、今第3コートに入ってる子で、手前の方」

 

 あの子か。ふむふむ。

 

「よ~し、今から俺がいう事を覚えるんだ」

「へぇ……」

 

 詩乃に色々と教えて、楽しげに見ていると見事に勝った。詩乃がタオルで汗を拭いている横で勝利をお祝いする。

 

「癖とかコースがわかっていれば結構簡単ね」

「まあね。っと、こっちの番だ」

「いってらっしゃい」

「行って来る」

 

 今度の試合はあちらからでしょっぱなからマークが付きまくって居たが、武術の応用で軽く触れて倒したり、動きまくってマークを外したりしてボールを奪ってシュートをしてゴールを決める。全試合を勝利して得点から考えてトップは取れるので問題なく食券をゲット。これでデザートや飲み物を用意するか。そう思って詩乃の所に行くと女の子に囲まれて困ってた。

 

「詩乃、終わった」

「うん、お疲れ様。じゃあ、呼ばれたからいくね」

「うっ、うん」

 

 抜け出してくると、疲れた表情をしていた。

 

「どうした?」

「はぁ……何でもないわよ」

「何かあっ」

「そんなのじゃないから気にしないで。ただ質問攻めをされたり、サイン貰ってきてとか言われただけだから」

「ああ、そっちか。ごめん」

「まあいいわ。で、サインだけど……」

「四日後、商業誌が発売されるんで、そちらの限定版をご入手くださいと言っておいて」

「金落とせと」

「イグザクトリー」

 

 それから、少しして体育の授業が終わり、着替えてから詩乃と合流する。今日からは一緒に食べるし。

 

「でだ、とりあえず食券でデザートと飲み物を買っていこう」

「そうね。今からなら空いているはずだし」

 

 体育の授業は早めに終わるので助かる。なので、食堂に一緒に行って列に並び、たわいない会話をしながら順番を待って購入した物を持ち、近道の建物と建物の隙間に入って進んでいく。入学から一ヶ月経とうとしている時期なのでおれなりに地理は理解できている。ガンゲイル・オンラインが4月後半からスタートだった事も多少は助かっている。

 

「ほら、いいからよこせって」

「そうだぜ」

「やっ、やめて下さいっ」

 

 前方にある曲がり角から声が聞こえてくる。

 

「……」

 

 無言で詩乃が俺を見上げてくる。

 

「どっちでもいいよ。男みたいだし」

「和人……」

「女の子には出来る限り優しくしろとは習ったけど、男は習ってない。それに詩乃を助けたのは友達が欲しかったって理由もあるしね」

「そうだったわね。まあ、私もへんな事に巻き込まれるのは……」

 

 詩乃はひょっこりと壁から顔を出して覗くと、いきなり飛び出していった。だから、仕方ないと思って懐に入れてあるICレコーダーの電源を入れる。

 

「やめなさいっ!」

「なんだ?」

「女じゃねえか。お前には関係ないだろ!」

「朝田さん!? 逃げて、早く!」

「知り合いを置いて逃げるほど落ちぶれていないつもりよ」

「っ!?」

「そうかよ、だったらその身にたっぷり味あわせてやるよ」

「それによく見たら可愛いじゃねえか……」

 

 やれやれ、面倒だな。でも、詩乃の知り合いじゃ仕方ないか。それに詩乃を襲おうとしているなら、お仕置きしてやらないとな。

 

「朝田さん、後ろっ!!」

「っ」

 

 俺が曲がると、隠れていたのか、建物の影から男が出て来て、詩乃に襲いかかろうとしていた。だから、とりあえず飛び蹴りをかまして詩乃を引っ張って抱きしめながら下がる。蹴った男はバランスを崩して取り囲んでいた男にぶつかって隙ができる。

 

「なっ、なんだてめえっ!?」

「何って……そうだな。この子の彼氏って所かな」

「「え?」」

 

 詩乃も驚いた顔をしながら赤くなってる。可愛いね。

 

「という訳で、人の女に手を出そうとした悪い人にはお仕置きが必要だよな?」

「はっ、一年坊主が言ってくれるじゃねえか」

「ふふ、身の程ってのを教えてやるよ」

 

 俺は挑発しながら詩乃の耳元で囁く。

 

「アイツを連れて逃げろ。待ち合わせ場所は俺達の校舎の屋上で」

「わかった。邪魔だしね」

「わかってるじゃん」

「全く。気をつけてね。それとありがと」

「まあ、彼氏って言っちゃったしな。それに大切な友達だしな」

「それについては後で話そうか」

「まあ、理由付けなんでお手柔らかにな」

 

 詩乃を離して近付いていく。相手の男達はバットとかを持ち出してくる。いやに手馴れているね。ちょっとキツめでいいか。

 

「さて、はじめようか」

 

 俺は携帯端末を取り出して録画を開始してよく取れる位置に配置する。この携帯端末、学園の警備員達への緊急用ページに繋げてある。

 

「へっ、やってやる!」

 

 振りかぶってくるバットの前に自ら飛び出して、持ち手を掌で押して軌道を変えると同時に身体の向きを変えさせる。合気道とかの感じで相手の力を利用して押しだす。

 

「ほら、さっさと逃げろ」

「は、はいっ!」

 

 囲まれていた同級生を掴んで後ろにやりながら、男達の前に立つ。ちゃんと映像に映る立ち位置を計算して、映画のような位置取りを行う。

 

「や、やろうっ!!」

「こっち、早く」

「う、うん、ありがと」

 

 詩乃が同級生を連れて行ったのでこっちは問題ない。詩乃もいなくなったし、後は避け続けるだけでいいかね。実際、回避しながらわざと殴られたようなオーバーアクションで飛んだりして相手を適度におちょくったり、調子に乗せる。そのうち、相手が攻撃を失敗して壁を殴ったり蹴ったりして痛がる。

 

「てめえ、手足の一本ぐらい覚悟しろよ……」

「ああ、その綺麗な顔を傷つけてやるよ」

「いや、自滅じゃん」

 

 しかも、何をトチ狂ったかナイフまで持ち出してきた。

 

「まあ、でも……お前らもそれ相応の覚悟ができているんだろうな?」

「何言って……」

「現在、この映像と音声はライブ中継にて全国ネットで配信中でございます。やったね、有名人だ」

「「「っ!?」」」

 

 録画されている携帯端末を指差して教えてやると真っ青になる男達。そのまま斬りかかってくるのを見切って避ける。銃弾を見切れる動体視力と身体に伝える事ができる脳神経反応速度。それにそれに応えられる身体をもってすればこんなのただの遊びだ。

 

「監視カメラがここになくても繋いでしまえば問題ないだろ?」

「ちっ、逃げるぞっ」

「くそっ!?」

「残念、タイムアップだ」

 

 通路を挟むようにして無数の気配が近づいてくる。

 

「お前ら動くなっ!!」

 

 警備の人達が雪崩込んでくる。大人しく手を上げて避けておく。直ぐに俺の横を通り過ぎて男達を囲む。ナイフまで出してるから、アウトだろ。

 

「大人しくナイフを捨てなさい」

「ざけんなっ!? こうなりゃぁっ!」

「致し方ない。制圧する」

 

 暴徒鎮圧用のスタンロッドを取り出した隊員。この時代、警備員には資格さえあればこれらの装備が認められている。警備員は色々と危険だからより安全にという事らしい。SAOで実際人を殺した奴等に対する対策だとも言われているが、本当かどうかは知らない。例の学園も作られたらしいが、あくまでも例外は存在するしな。しかし、詩乃のお弁当は御預けか、ちくしょうめ。

 詩乃、ごめん。先に食べてて。こっちは無事だけど多分昼休みには戻れない。とメールで送っておく。すると、わかった。ありがとう。終わったら連絡して。と書かれたメールがやって来たのでよしとしよう。

 

「すまんが来てもらうぞ」

「わかってますよ。証拠品は大丈夫ですよね?」

「まあな」

 

 もちろん、全国生放送はブラフだ。だけど、警察に引き渡されるか、退学は確実だろう。いや、殺人未遂か。ああ、やっぱ警察行きか。ご愁傷様っと。まあ、詩乃の手料理を駄目にしてくれたんだから、やっぱこれぐらいでいいか。そう考えると本当に徹底的という事で全国生放送も……いや、怒られるか。やめておこう。

 

 

 


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