シノンと共にガンゲイル・オンライン   作:ヴィヴィオ

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第36話

 

 

 暖かな温もりに包まれて、目覚める。腹の上には詩乃が俺の首に両手を回して抱き着いた状態で眠っている。左右を確認すると、ユウキと藍子が俺に抱き着くようにして眠っている。足の方にはシリカと直葉が足を枕にして眠っている。

 全員、裸なので昨日は爛れた一夜を過ごした。理由は簡単だ。一度、夜に一人ずつ全員とした後、反省会が行われて詩乃とシリカによる技術提供が俺の居ない所で決定された。そして、それは最終日の空いている日に行われたのだ。

 

「んっ、おはようございます。旦那様」

「おはよう」

 

 藍子が起きたようで、軽く口付けをしてくる。詩乃はまだ眠っているのか、俺に頬っぺたや頭を擦りつけてくる。

 

「詩乃さん、可愛いですね」

「だろ?」

「はい。ユウキも負けていませんけど」

 

 二人でユウキの方を見ると、寝ながら涙を流していた。

 

「……お父さん……お母さん……行かないで……」

「あの時の夢を見ているのですね」

「そうだな……」

 

 なんだか、俺まで泣きたくなる。俺の両親も死んでいて、桐ケ谷の家に引き取られた。でも、ユウキ達の親戚はろくでもない連中が多い。

 

「そんな顔をしないでください。私達は旦那様のお蔭で救われました。あの時、私の命は残り微かでユウキとはお別れしなくてはならなかったんです。でも、今ではこうして二人一緒に過ごせてます」

「そっか、そうだよね」

「はい。それよりも、皆さんを起こしましょうか」

「そうだね」

「じゃあ、まだ目を瞑っていてください」

「ん?」

「その、着替えとかを見られるのは恥ずかしいですから……」

「わかった」

 

 目を瞑って少しすると段々と温もりが消えていく。少し残念な気持ちになる。わいわいと服を着ていく音が聞こえてくる。

 

「もういいよ~」

 

 目を空けると、白いシャツにスパッツをつけた皆の姿がある。

 

「ほら、こっちこっち」

「ああ」

 

 起き上がった俺に詩乃達が服を着せてくれる。ランニングウェアに着替えたら、皆で一緒に家に鍵を閉めて走り出す。俺とシリカ、直葉、詩乃には錘を付けてだ。だいたい、20キロ、走ったら桐ケ谷の家に到着し、そこで胴着に着替えて朝練を行う。それが終れば順番にシャワーで汗を流してから着替えて朝食を食べる。これは日課だ。

 基本は直葉の部屋で着替えたりしている。しかし、直葉の事を母さんに話したら、驚かれたな。直葉の粘り勝ちかという言葉で。どうやら、母さんは直葉と俺をくっつけるのに賛成だったみたいだ。話を聞く限り、詩乃を毛嫌いしていた直葉が直ぐに打ち解けたのは、母さんが詩乃を味方に入れて、俺を説得すればいいと言ったかららしい。実際、詩乃にユウキ達の事を話したら、直葉も迎え入れるように言われてそのようにした。妹である直葉をそんな風には見れなかったが、身体を重ねたせいか、だんだんと変ってきている気がする。始めての時も詩乃と一緒にだったからこそ出来た。そうじゃなければ、色々と言って誤魔化していただろう。そんな風に思いながら直葉を見ると、幸せそうに笑いながら詩乃を手伝っている。まるで本当の姉妹みたいだ。これ、直葉も受け入れていなかったら、恐ろしい事になったんだろうな。

 

 

 

 さて、朝食が終わると女性陣が反省会をするそうなので、俺はGGOをする事にする。流石に連日は持たないので、逃げる。

 

「旦那様、私もそっちに行きますね」

「いいの?」

「はい、大丈夫です」

「わかった。じゃあ、連絡をくれ」

「わかりました」

 

 GGOにログインした俺はまず身体を確認する。特に異常も無いので藍子からメッセージが来るのを待つ。少しすると連絡が来て、待ち合わせの場所へと向かうと三つ編みの金髪美少女が居た。何やら、数人の男性に言い寄られている。

 

「あっ、旦那様っ」

「旦那?」

 

 直ぐに俺に気付いてこちらに走り寄ってきて、俺の後ろに隠れる。名前はラン。そのアバターは明らかにとある前世のゲームの物にそっくりだ。

 

「なんだ、男連れ……って、黒騎士かよ」

「駄目だこりゃ。おい、行くぞ」

「くそう、シノンちゃんやリーファちゃんに続いて……」

 

 男達は愚痴をいいながら、去っていく。

 

「旦那様って有名なんですか?」

「そうだよ。BOBで優勝もしてるしね。それより、そのアバターは?」

「天使様が用意してくださいました。なんでも、聖女様らしいですよ。全てのゲームでこれになります。ユウキも同じです」

「なるほどね」

「似合っていませんか?」

「いや、凄く似合っているよ」

「ありがとうございます。それで、服とか装備のコーディネートを頼みたいのですが……」

「いいよ。じゃあ、行こうか」

「はい」

 

 藍子、ランを連れてガンショップを見て回る。どうせならと、聖女様に似せた装備にしてみたら、本当に似合う。

 

「チュートリアルはしてないんだよね?」

「はい。なので、どんな銃がいいのかはわかりません」

「じゃあ、ちょっと射撃場で試してみようか」

「わかりました」

 

 射撃場に移動し、ハンドガン、サブマシンガン、ライフルなどを試して貰う。撃ち方とかは身体をくっつけて、丁寧に教えていく。

 

「ん~別のゲームで主に何を使っていた?」

「槍ですね」

「だったら、いいのがあるよ」

「なんですか、これ。無茶苦茶重いのですが……」

 

 俺がストレージから取り出したのは銃槍(ガンランス)と呼ばれる武器だ。全長一メートル五十センチ。先端には槍があり、その少し上には単発式グレネードランチャーが装着されている。

 

「……これ、槍なんですか?」

「一応。グレネードランチャーをパージできるから、範囲攻撃した後は完全に槍としても使えるよ」

「後は盾を持ってくれるありがたいかも。それで詩乃、シノンを守ってほしいから」

「なるほど。わかりました」

「後はハンドガンも装備しておこう」

 

 腰の後ろに二丁のデザートイーグルを装備して貰う。

 

「ステータスは筋力重視にしましょう。防御力を鍛えます」

「お願い」

「任せてください」

 

 さて、装備が整ったので外に出てみる。場所は砂漠のフィールドだ。今回は移動に普通に歩いていく。ランにレクチャーをしながら進んでいくと、不思議な気配がした。

 

「ラン」

「どうしましたか?」

「うん。このまま話しながら進むよ。でも、敵が潜んでる」

「わかりました」

 

 それから、()()()では存在しない敵を気配で察知し、ゆっくりと話しながら近づく。岩陰の近くに進むと小さな人影が飛び出してきて、速攻でランのデザートイーグル二丁が火を吹く。しかし、AGIが高いのか直に避けてこちらへとサブマシンガンを乱射しながら突き進んでくる。俺は光剣で弾丸を斬り伏せ、近付いて来た彼女の銃を切断し、そのまま近付いて首を掴んで持ち上げる。

 

「うそっ!」

 

 直ぐに違う武器を取り出そうとする彼女を、首を持った状態で岩に叩き付けて黙らさせる。それから直に大人しくなった。

 

「さて、どうしようか?」

「旦那様、やりすぎでは……」

「いや、でも危険だし」

 

 こんな話をしていると、向こうから人が沢山やってきた。

 

「ここで姿を見せずにPKをしている奴が居るんだよな……」

「おい、あいつらじゃないか?」

「あれって黒騎士じゃないか。まさか、アイツがPKか!」

「なら、納得だな」

 

 数十人規模のそいつらは銃を構える。

 

「だ、旦那様……」

「やれやれ……ランはこいつを確保しておいて。こいつがそのPKだろうから」

「わかりました。旦那様は……」

「決まってる。敵は殲滅する」

「わかりました」

 

 ピンクの少女をランに預けて、隠れさせる。BOBの訓練相手には丁度いいだろう。ついでに組んでいるランにも経験値を入れよう。

 

「参る」

 

 瞬時に加速して、突撃する。銃弾の雨が俺を歓迎するが、その全ての軌道を計算し、当たらない物は放置。自分と後ろに居る二人に命中する弾丸だけは落として、突き進む。

 

「こいつを殺せば6000万クレジットだ! やるぞ!」

「絶対に殺してやる!」

 

 俺には高い懸賞金が掛けられている。このシステムは一度キルされると、その人に全額が振り込まれる。しかし、キルされなければどんどん金額が増えていく。色んな奴等が賞金首に金額を上乗せしていくからだ。俺の場合、シノンやリーファの事もあってかなり妬まれて金額が増加していたりする。

 

「その程度じゃ、やられないな」

 

 腕を振るってワイヤーを放ち、サブマシンガンなどの銃を切断する。慌てだした連中に突っ込んで、斬り殺していくと遠くから狙撃の音が聞こえて次々と敵が撃ち殺されていく。

 

「なんでだ、なんで弾道予測線が出ねえ!」

「ちくしょうっ、待ち伏せか!」

「残念、違うんだな」

 

 だが、相手にとっては更に地獄だろう。何せ、急激にこちらに近付いてくるバイクがある。そこにはリーファとユウキ、シリカが乗っている。もはや、相手になる事もなく瞬殺されていく相手。後にはクレジットや大量の武器がドロップしていた。

 

「ランが呼んだのか」

「はい。いけませんでしたか?」

「いや、早く終わるならそれにこした事はないからいいさ。それよりも……」

「お、おたすけ~出来心だったんです……」

「奇襲の仕方は悪くないよ。でも、気配の消し方が全然なってない」

「そっちっ!?」

「うん。システム外スキルで簡単に見つけられるよ。やるならもっと徹底的にね」

「ねえねえ、この人は何?」

「PKだよ。もっとも、この世界じゃ普通の事なんだけど」

「そうなんだ。ボク、ユウキ。始めたばっかりなんだ。君は?」

「私も、そうだけど……」

「じゃあ、ボク達と一緒に遊ばない? 三人を除いて、このゲーム初めたばっかなんだ。戦い方、教えて貰えるよ」

「いいの?」

「いいよね?」

「ああ、いいぞ。どのゲームでも初心者には優しくしないとそのゲームは廃れるからな」

「だって」

「じゃあ、よろしく。私はレン」

 

 どうせ人数が増えたんだから、スコードロンでも立てるか。名前は妖精騎士(フェアリーナイツ)でいいか。ランとユウキが参加していたスリーピング・ナイツとALOからとって。

 

「BOB参加する予定のメンバーは徹底的に鍛えるとする。取り敢えず、シノンを迎えに行くぞ」

 

 シノンに合流して、スコードロンを立ち上げてから訓練を開始する。レンはBoBには出ないつもりのようだ。しかし、ユウキ達と付き合って、どんどん実力をあげていっている。二つ名がピンクの悪魔になる可能性がある。

 

「ところで、シノン」

「何?」

「バレットサークルだしてた?」

「出してないわよ。自分で計算したら必要無いもの」

「そっか。じゃあ、それを皆に教え込まないとね」

「そうね。一番の強化方法よね」

 

 これこそが、最初のBoBでアメリカのプレイヤーが圧勝した理由の一つだろう。自らの能力で弾道を予測させずに銃撃を放って倒す。これが一番ベストだ。

 

 

 

 

 

 




ガンゲイルオンライン1を読みました。レンちゃん、いいね!

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