ピンクの悪魔、凄いです。あれ、暗殺教室の渚がイメージとして浮かぶのは駄目なのだろうかw
姉の藍子と合流するという事で、一旦ユウキと別れてシリカと一緒に買い物を行う。彼女の服を色々と買わないといけない。なので、シリカを連れてレディースショップへと入る。店員は俺と顔を赤らめながら手を繋いでいるシリカを見るが、普通に作業に戻った。俺は帽子を被って三つ編みをしているだけだ。ズボンもしっかりと履いている。たぶん、仲の良い女友達ぐらいにしか思われていない。
「“?”」
「っと、なんでもない。それより色々と買うよ」
「“いいの? 高いよ”」
「ああ、大丈夫。シリカは大人しく着せ替え人形になってね」
「“はい”」
女性物の服を選んで、隣のシリカに合わせる。選んだ服をどんどん試着させていく。モデルとかやってるだけあって、かなり勉強になっている。シリカは動きやすい服装や可愛らしい服装が似合うので、そちらを重点的に揃えていく。寝間着はネタで猫の着ぐるみでも用意しよう。後はシノンの服も買おう。サイズは何度も身体を重ねているので把握している。ユウキ達のサイズもある程度、歩く姿や立ち姿を見ただけでわかるので、買っておく。買っておかないと後が怖いからな。シリカにはリボンも買っておく。
似合っている服を数十着、買って会計を行う。金額が五桁を超えたがまあいい。一着はそのまま着て貰って、残りは配送して貰う。携帯に詩乃から住所が送られてきたので、そちらの場所を書いておく。
「じゃあ、次だ」
「“何処ですか?”」
「宝石屋さん」
「“?”」
宝石屋さんで五人分の、指輪を買っておく。一つはネックレスでも良かったのだが、前にそれにしたら
「さて、出ようか」
「“はい”」
楽しそうに色々と見ていたシリカを連れて、映画を一緒に見たり、店をブラブラしたりして、一緒に過ごしていく。シリカは終始、楽しそうな雰囲気を出しているが、表情は無表情なままだ。まあ、これは時間で解決するしかないだろう。
「楽しかったか?」
ユウキ達と待ち合わせの駅前広場のベンチに二人で座って話す。
「“楽しかったです。物を何も壊さずに色々と見てまわれました”」
シリカは今まで、少し触れるだけでも物が壊れていたんだから、街で遊ぶなんて出来なかった。でも、今は普通の女の子みたいに遊ぶ事が出来る。後は心のケアが必要だろう。そこは頑張ってカウンセリングの勉強をして、ゆっくりと治していってあげよう。
「そうだね。制御は問題ないみたいだ」
「“はい”」
「また一緒にデートしようか」
「っ⁉ “デート!?”」
「これはデートでしょ」
「!?!??!?!?」
思いっきり、顔を赤らめてあたふたするシリカ。どうやら、こっち方面で攻めていくのがいいのかも知れない。しかし、直ぐに涙がぽろぽろと流れ落ちて来た。
「ちょっ、どうしたの?」
「“デート、初めて……嬉しい”」
更に続けて書こうとしていたとんでもない文字に、慌ててシリカの手を止めて抱き寄せて、顔を胸に埋める。その後はゆっくりと撫でてあげる。
「大丈夫だから。これからいくらでもしてあげるから、したい事はどんどん言ってね」
こくこくと頷くシリカをしばらく撫でていると、ふと回りに目を向けるとかなり注目を集めていた。だが、仕方ないので帽子を目深に被ってしばらく撫でている。つけホクロやいろんなアイテムで変装しているのでばれないだろう。
しばらくして、シリカの寝息が聞こえて来た。そして、遠くからユウキが同じくらいの少女の手を掴んで走ってくる。隣には三つ編みにしたユウキに似た少女。
「お初にお目にかかります、我がある……」
「待った!」
跪いて祈りだそうとする彼女を慌てて止める。
「ほら、止められたじゃない」
「ですが……」
「えっと、ユウキ?」
「姉ちゃんはボクよりもクリスチャンしてるからね」
「そうなんだ。でも、これからはそういう事、止めてね」
「それが主の命ならば……」
「お願い」
「かしこまりました」
「取り敢えず、移動しよう。視線が痛い」
「シリカはどうするの? 寝ちゃってるけど」
「抱いていくよ」
「おお、お姫様抱っこ!」
シリカをお姫様抱っこで運ぼうとしたが、視線がかなり集まってきた。仕方ないので、おんぶに変える。そのまま、荷物をユウキ達に渡して、ついてきて貰う。
タクシーに乗って、自宅に帰る。教えて貰った方の家は詩乃のマンションの上の階だった。チャイムを鳴らすと、直ぐに詩乃が扉を開けて迎え入れてくれる。ちなみにシリカはまだ眠っている。
「お帰りなさい」
「ただいま。ほら、皆も」
「あ、そっか。今日からここがボク達のお家になるんだね」
「まあ、一時的にだけどな。一軒家、買ったから今から色々としていって貰うから」
「楽しみだね。っと、ただいま~」
「ただいまです」
「どうぞ。案内するからついてきて」
詩乃の案内で家を探検する。シリカの部屋、ユウキの部屋、藍子の部屋。俺の部屋。そして、リビングとダイニング、キッチン。風呂とトイレ。テラスとあった。シリカはシリカの部屋にあるベッドに寝かせておいた。ちなみに俺の部屋は殆どが巨大なベッドで埋まっていた。というか、完全に寝室だ。
「あれ、詩乃の部屋がないよ?」
「私の部屋はこっち」
そう言って、テラスへと案内する詩乃。そのテラスで非常口を開けて、階段を降ろす。
「まさか……」
「そう、下の階。だから、来る時は電話してからね」
「わかりました」
「凄く楽しそうな移動手段だね!」
「一応、行く?」
「うん!」
楽しそうなユウキと一緒に詩乃が降りていく。俺と藍子はリビングで互いに話して取り決めをしていく。しばらくして、二人が戻ってきた。
「和人、シリカを起こしてきて。他は料理を運んで」
「わかりました」
「りょ~かい!」
言われた通りにシリカを起こしに行く。気持ち良さそうに丸まって寝ているシリカを揺する。
「シリカ、起きろ」
「っ⁉」
ビクゥッと飛び起きて、ガタガタと震えて周りを見る。その姿はあまりに痛々しい。
「大丈夫か?」
俺の姿を見て、ほっとしたのか、恐る恐る服を掴んで来る。俺はびくびくしているシリカの頭を優しく撫でる。頭に手をやる時、ガタガタと震えながら目を瞑っていたが、今はゆっくりと開いて涙を手で拭っていく。
「“だ、大丈夫です……取り乱しました”」
「気にするな。もう誰も暴力なんて振るわないから、安心するんだ」
「“はい”」
シリカをお姫様抱っこで抱き上げて部屋から出る。すると、パンっという音と共にクラッカーが放たれる。それにシリカはビクッとなってまた泣き出した。
「うわぁっ、ごめん、ごめん!」
クラッカーを持っていたユウキがシリカに謝る。理由を聞いてみる。
「お祝いだから、こうやるものだと思ったんだけど……やってみたかったし」
「なるほど」
「妹がすみません」
「“大丈夫です。驚いただけだから、気にしないで。ユウキは悪くない。悪いのは私です”」
「違うからね!」
その後、二人で言い合いが続くが、詩乃の一言で静まった。
「やるなら、食べてからにして」
「う、うん」
「“はい”」
テーブルの上にはお刺身とお寿司が置かれていた。全員が席につくと、ひとつの席が余っている。そんな事を思っていると、どさっという音が扉の方からしてきた。そちらを見ると、持ってきたケーキの箱を床に落とした直葉の姿があった。その瞳からはハイライトが消えていて、肩に担いでいたバットケースを開いていく。
「お兄ちゃん、お義姉ちゃんと私という者がありながら、その雌犬達は何かな? かな?」
バットケースの中身からは木製の長い棒が出て来る。さらに、その中からは光り輝く綺麗な銀色の光を持つ物が……
「「っ⁉」」
ユウキと藍子が震えながらも俺を庇うように立つ。次の瞬間には直葉が頭上に向かって
「やめんか」
「あいたっ!」
俺が投げた小さな箱が、直葉の額に命中して軌道を変える。本来なら瞳を貫くはずだった刃はシリカの頭の隣へと突き刺さった。シリカは無茶苦茶、涙目だった。
「お兄ちゃんが悪いんだから! 浮気なんかするから! だから、こいつらを……」
「そうか、直葉はそれが要らないようだ」
「え? これ……あっ」
直葉は小さな箱を開けると、固まった。
「要らないなら返してくれ」
「やだ。絶対やだ!」
「なら、事情があるから三人も認めろ。だいたい、妹の直葉が血がつながっていないとはいえ、兄である俺と……」
「血がつながってないなら、なんの問題もないよ!」
「もういい、返せ」
「やだ」
「なら、いいな」
「お義姉ちゃんがいいなら……仕方ない」
「私はいい」
「なら、仕方ないから認めてあげる」
足を退けてシリカを自由にする直葉。シリカは直に俺に抱き着いて、後ろに隠れて直葉から逃げる。
「悪い。いくらなんでも、マジで殺しにかかるとは思わなかった。対応が遅れてしまった」
「……私も、まさかここまでするなんて……」
「こ、殺す気なんてなかったよ! ちゃんと寸止めのつもりだったし! 本当だよ!」
「う、嘘だっ!」
「殺気が出ていました……」
ユウキと藍子も、そう言っている。確かにあれはマジだ。
「お兄ちゃんのせいだもん! 直は悪くないよ!」
「おい」
「だって、まさかお兄ちゃん以外に刀を折られるなんて思わなかったんだもん。お兄ちゃんは平気で斬ってくるから、ついお兄ちゃんと同じ対応をしたんだよ。お兄ちゃんなら、平気で防いで反撃してくるよね? こないだもそれでボコボコにされたし。だから、つい」
「……判決。和人が悪い」
「詩乃まで!?」
「というか、普通にシリカを相手に制圧できるって時点でおかしいんだけどね~」
「そうですね。見えませんでしたし」
「これが一般人の反応。どう?」
「ごめんなさい」
「よろしい。ほら、直葉も謝る」
「ごめんなさい。これあげるから許して」
そう言って、猫じゃらしを取り出す直葉。そして、左右に振るとシリカが反応して取ろうとしてくる。しかし、超反応であっさりと回避していく。
「ところで、直葉」
「なに?」
「ケーキ」
「あっ……」
青ざめた直葉はぐちゃぐちゃになっているケーキを見て、詩乃の顔を見る。
「買い直してきます!」
即座に逃げていった。
「シリカは先にお風呂ね」
「そうだな」
シリカの背中には箱からはみ出したケーキがべっちゃりとついている。
「……どうせなら、皆で入ろ」
「えっ、それって和人も?」
「もちろん。私と和人は何時も一緒に入ってる」
「わ、わかりました。ユウキもいいですよね」
「う、うん……」
「“は、はい”」
女性陣が納得してしまえば、今更俺が言える事もない。ぶっちゃけると髪の毛の手入れとか、ものすごく面倒なので詩乃に任せているし。詩乃の髪の毛を洗ったりするのは好きなのだが、やはり自分のになるととたんに面倒になる。
恥ずかしがっている女性陣と一緒のお風呂はなんというか、素晴らしかったが、同時に玩具にされて弄り回された。
その後、戻って来た直葉も交え食事をして、皆にプレゼントを配布した。皆はそれぞれ左手の薬指に指輪をつけていった。それからは俺を他所にして話し合いが始まった。
「夜伽の順番はユウキ2、シリカ2、藍子2、直葉1。これで」
「却下だよ」
「駄目ですね」
「“詩乃さんがないです”」
「私は別にいいから」
「うんと、詩乃さん以外は全員一日で、詩乃さんは二日。最後の一日は和人に呼ばれた人か、複数人でいいんじゃない?」
「そうですね」
「ちょっと待った。私は奴隷だから……」
「それは聞いたけど、和人は妻にするって言ってるんだから、なんといわれてもこれだよ」
「そうですね。不和の元ですから、諦めてください。それにその、初めてですから、満足して貰えるとは……」
「“多数決です”」
「三対一で決まりだね」
「まって……」
「家事の分担はどうしますか?」
「えっと、私は家事できないから、藍子さんやユウキちゃん達は?」
「ユウキは無理です」
「だね~」
「“無理です”」
話し合いの結果。詩乃と藍子がメインとなり、残り三人に教えていく事になった。俺は女の聖域という事で家事は一切禁止された。そして、ローテーションの事も口出しなんて出来ずに全てが決まっていく。幸いにして、女性陣の仲がよいのでどうにかなっているので、いいだろう。というか、思えばスケジュールを今では完全に詩乃が管理しているので、今更だったな。もちろん、要望を出せば最優先で叶えてくれるのだが。
「詩乃さんって、なんだか弾幕ゲームに出て来る完璧超人のメイドさんみたい」
「目指している所ではある。時は止められないけれど、似たような事は出来るから」
「え、本当に?」
「うん。和人と複数回交われば、ユウキにもできるよ。訓練空間に入れるから」
「流石は救世主様っ! ボクも強くならないと!」
数日後、ユウキの番になった時は大量に搾り取られた。何がとは言わないが。