現在、俺は空の上に居る。アメリカから日本に戻る飛行機の中で、ベッドになる椅子まである。そこに寝転がりながら詩乃の膝の上に頭を乗せている。
「何かいる?」
俺の動きに反応していたのか、頭を撫でていた手を止め読んでいた英語の契約書や報告書から視線を外してこちらを伺ってくる。
「いや、いいよ」
「ん、わかった」
直ぐに契約書を読んでいく詩乃。彼女が読んでいるのはハリウッドとの契約内容だ。今回、GGOでのダースベイダーをやった事や様々な映画に出た事であちらとの縁が出来て依頼が入ってきたのだ。俺の身体能力の事もあり、スタントマン以上に動けるのも大きかった。爆発の中から生還したり、銃弾を現実でも避けるのだから。Ninjaとかsamuraiとか向こうで呼ばれたが、気にしない。
「BoB間に合うけど、三人目はどうする?」
「そうだな……」
「はいはい! 私が参加するよ、お兄ちゃん!」
通路を挟んだ隣の席からアメリカに居る俺達の所に遊びに来た直葉が乱入してきた。まあ、直葉もスタントマンとして参加してたりするのだが。ちなみに俺達は六ヶ月ほどアメリカに居て、直葉は二ヶ月間だ。
「お土産の整理はもういいのか?」
「みんなに渡す分を分けてただけだからね」
向こうで様々な人のサインを貰ったり写真を一緒に撮ったりしたので、直葉は機嫌がいい。
「それで私もGGOに行ってBoBに出てみたい」
「しかしな……」
「詩乃お姉ちゃん、いいよね?」
「和人さえ良ければ」
仲良くなっている二人の視線が集中してくる。まあ、直葉なら問題なく戦力になるだろうが……いや、リーファをシノンの護衛とすれば俺が自由に動けるな。もしくは俺とリーファの立ち位置を逆にしてもいい。
「いいだろう。しかし、そうなると装備が必要だな。コンバートもしないといけないだろう」
「え、新キャラでいいじゃない」
「舐めてるだろ、こいつ」
「和人、直葉の身体能力なら普通に戦えそう」
「えっへん」
「人間止めてるな」
「お兄ちゃんに言われたくない」
「ごもっとも」
「ノーコメント」
まあ、仕方ない。しかし、空の上というのも暇だな。
「じゃあ、直葉でいいか」
「やった。よーし、私も参加するよっと」
直葉が携帯で誰かにメールを送った。
「誰だ?」
「友達だよ。参加するらしいから、対戦が楽しみ」
「そうか。詩乃は準備の方はどうだ?」
「問題ない。目ぼしい対戦相手のデータはしっかりと集まっている。まずは……」
詩乃が記憶していたデータを告げてくる。それは詳細まで調べられたデータだった。
「ねえねえ、それって運営からデータを入手したりとか……」
「してない。隠密状態で追っかけ回したり、手伝ったりしたりしただけ」
それだけで集めてくるだけ凄い。
「相手になりそうなのはベヒモスって人と闇風って人くらい? 流石にミニガンは避けれないだろうし」
「そうだな」
後はいってしまえば有象無象だ。ベヒモスのミニガンはさすがに無理だろう。
「キリトならいけそう」
「確かにねー」
「いや、明らかにあれは相手が悪い。まともにやるなら相討覚悟か暗殺くらいだな。だから彼の相手は詩乃に頼む」
拠点で待ち構えられたらどうしようもない。それこそ爆弾を投げ込むとかくらいか? いや、それも破壊されれば意味がないな。なので狙撃が出来るシノンが相手をするのがベストだ。
「暇だからゲームでもしようよ」
「飛行機の中ではネットワークが繋がっていないぞ」
「これこれ」
「昔ながらのゲームか。対戦ゲームか?」
「対戦ゲームだと2対1になるからやだ」
詩乃が絶対に俺を勝たせようとサーポートするからな。
「そんな訳で協力プレイだよ」
「やった事ない」
「大丈夫。データは用意してあるから」
「頑張る」
それから俺と詩乃は同じ体勢で、直葉が隣の椅子に座りながらプレイしていく。