野にその災神あり   作:てんぞー

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柒話

 背中をだらだら冷や汗が流れる。

 

 この展開は予想できなかった。

 

 場所は変わって部屋の中にいる。ただの部屋ではない、豪華な装飾なされた部屋だ。一目見るだけでどこかの権力者が所有する家だということが解る。だが豪華な家だったら魔界であればどこでも見る事が出来る。基本的に能力とか魔法とか、そういうのに頼れば好きな家をつくるのには全く問題がない。

 

 問題は自分をここまで連れてきた人物の存在、そしてこの屋敷の主の存在だ。

 

 まさかあの少女、アリスが魔界神・神綺の娘だとはこの禍津日神の目でも見えなかったわぁ……体の中に神力が流れていたんだから気づけばいいのになぁ……。

 

 他にも神力を宿す少女はいるが、あそこまで過保護にされているのだからかなり偉い神の所の子だというのを気づくべきだった。ともあれ、

 

 禍津日神ちゃん超ピンチ……!

 

 椅子に座らせられ、目の前には業かなテーブルがある。そして後ろにはアリスを迎えにきたメイドがいる。アリスがかなり懐いていたことからかなり面倒を見てもらっているのだろうと思う。そしてアリスの面倒を見れる存在は必然的に信頼されている存在だ。つまり怒らせるとヤバイ。アリスがどこかへと連れていかれ、こうやって1時間ほど無言でテーブルの前で座っているが、まるで処刑前の死刑囚の様な気分だ。このままあと数年待たせられればマゾに目覚める自信を持っている。つまり何か会話をください。

 

「……」

 

「……」

 

 無駄な祈りだった。叶えてくれる神様はいない。いや、俺が神だ。俺が俺に祈ってどうする。

 

 背後のメイドの無言が怖い。最強の魔界人夢子は恐ろしい程に悪意等といった感情が感じられない。中身がないわけではないが、あのアリス同様に中身がかなり善人よりの存在だ。それでいてあれだけの力を持って仕えているのだ。正直凄いと思う。そして襲われたら絶対に勝てない。男なのに女に勝てない。

 

 もう落ち込むのにも慣れたなぁ……。

 

 ともあれできることなどビクビクしながら待つこと更に30分。処刑はまだかまだかと怯えながらいると、

 

「おにいちゃん!」

 

 声がして、部屋に入る入り口の扉が開く。そこから弾丸の様な勢いで飛び出し、向かってくる姿がある。すぐさまにそれが誰だかを把握し、椅子を横に動かして場所を開けると、

 

「オフゥ!」

 

「えへへへへ」

 

 腹に突撃をかましてきた幼女は突撃を食らった俺がそれで瀕死になっている事をお構いなしに抱きついて顔を摺り寄せてくる。数秒かけて復帰に成功すると、何かをする前に扉の奥から声がする。

 

「ごめんなさいね、アリスちゃんが世話になったみたいでー」

 

 その声でフリーズする。その隙にアリスが体をよじ登り、膝の上に座るが今はそんな事は大事ではない。問題なのは今、扉を潜って表れた人物、いやお方だ。長い白髪に赤いローブ風の衣装からはとても威厳らしい威厳は見られないが、その人物が魔性とも呼べる美貌の持ち主だという事は解る。全ての権力と親交を放棄していながら圧倒的支持を得ているこの魔界の創造者―――神綺の姿がそこにある。

 

 サリエルと一緒にあったらサイン貰おうなんて話をしていたが、そんな場合じゃない。

 

 ふいに有名人とあったら割とフリーズするものだと今学習した。

 

「私も久しぶりの散歩で少し気が浮かれていたの。アリスちゃんを見つけてくれてありがとう」

 

 ペコリ、と頭を下げるそこにいるのは魔界の髪ではなく、アリスの母としての姿だ。魔界神としてではなく、アリスの母として目の前にいる人物に対して、

 

 ……変に敬うのは失礼だろうな。

 

 もはや失礼だとかそういう概念からは遠くに存在しているが、あぶれものが平和に暮らせるこの魔界は一種のユートピアであり、神綺は住まうものからほぼ無条件の感謝と信仰を受けている。

 

「あ、いやいやー、困っている娘さんを見つけたら助けるのは当たり前ですよ? そう気にしないでください」

 

 うむ。こんな感じがいいだろう。そう思ったが胸に抱きついていたアリスが顔を持ち上げる。

 

「おにいちゃん、ことばへん!」

 

「ソンナコトナイデスヨー?」

 

「おにいちゃんのことばへん!」

 

「ワタシハイツモドオリデスヨォー?」

 

「へーん! あははははー!」

 

「ふふふ、どうやらアリスちゃんに懐かれたようね、お・兄・ちゃん」

 

 その姿とボイスでお兄ちゃんと言われると色々とヤバイので自重して欲しい。が、それを顔に異彩見せずにさわやかスマイルで乗り切るとする。

 

「いえいえ、自分でも解りませんけど何故か懐かれちゃいまして……此方こそ私の様にあまり良くない神格に拾われちゃって心配した事でしょう」

 

「そんなことないわよー?」

 

 神綺が近づいてくる。そして膝の上で胸に頬を摺り寄せるアリスの頭をなでる。気持ちよさそうに目を細め、神綺の手の気持ちよさを確かめるアリスの姿がそこにある。

 

「アリスちゃんは私にとても似ていて、邪念だとか悪意とか、そういう事に人一倍敏感な子なのよ? だから貴方に懐いたという事はそれだけ貴方が信用できる人物、っていうことなのよー」

 

 個人的には自分がとてもだがそんな真っ当な存在だとは思えないが、神綺の声にはどこか強い説得力がある。と、顔を寄せてくる。反射的に仰け反るが、椅子に座っているために逃げ場がない。

 

「あと敬語は禁止よ? アリスちゃんも変だって言っているし」

 

「あ、はい、そうです―――」

 

「禁止っ!」

 

「きんしー!」

 

 頬を膨らませて如何にも”怒ってますよ?”的なアピールしてくる神綺が可愛い。そして顔も近い。便乗してくるアリスはアリスで多分事態を理解していない。

 

「あ、うん、解った」

 

「うん、そうそう。素直なのはいい事よー」

 

「ことよー!」

 

「じゃあご飯にしましょうか。夢子ちゃんー! ご飯運んできてー、今日は三人で食べるわよー!」

 

 なんとぉー!?





正直地の文とかはそっちのけ

ロリスをprprするだけのSSです。あざとくていいんだよ

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