これからも読んでくいってくれれば幸いでーす!
今日は昭和の日?だったかな。
ともかく休日最高です!
正影たちは歩き続けている。
永遠と続くのではないかと考えられるようなこの砂漠地帯を。
生物はこの2人以外見当たらない。
オゥステムもだ。
「…パパ、暑いよ」
「知ってる。だがどうすることもできねぇよ」
ここがもともと暑い場所なのか、はたまた運悪く今日が暑いのかは分からない。
太陽がじりじりと照りつけているとはこのことを言うのだろう。
服は汗びっしょりでどこかで水浴びがしたいところだ。
「ここってどこら辺?」
「レアさんが言ってた、危険地帯まであと20キロってところかな。このままのペースで歩き続ければおそらく今日中にそこまで行けると思うが…」
「私水が飲みたい」
「同感だな。どこかに飲み水はないものか」
アクリス細胞によって強化されていてものどの渇きはある。
もともと大半の生物とは水なしに生きていけない。
それが人間となればなおさらだ。
もともと日本にこんな場所はなかったのだが、オゥステムに荒らされて人が住めずにこうなってしまった。
しかし、いくらなんでも草一つ生えてないのはおかしいのではないかと正影は思う。
「見た感じは…何も見えないよ」
「そりゃ危険地帯の近くだ。住んでいる奴のほうがおかしいさ」
「お水もしばらくおあずけ?」
「いや、調達できないこともないんだが」
「本当?」
「お前はおしっこをろ過したもの飲めるか?」
「ぜっっったい無理!」
命の危険となればこれを飲むのは仕方ないことなのだが、今はそれほどまでじゃない。
正影自身も言ってはみたものの、ろ過してきれいになったからといって確かに飲みたくはない。
「なら、辛抱だな。あの地帯を越えるのは明日だ。我慢するしかないだろ」
「はぁ…。こんなことなら水をたくさん持ってくるべきだったなぁ」
「重いから沢山は無理だったろうよ。まぁ、きゅうりとかの野菜でも食べて水分補給するしかないな」
「じゃあ今食べる」
「一本しかないぞ?」
「喉乾いたの!」
ねだってきたので上げることにした。
夜食べたほうがいいのにと思うがおそらく穂香はそんなことは聞かないだろう。
貰ったとたん、すごい勢いで食べ始める。
あっという間になくなった。
「はぁ、少し生き返った…」
「なら歩くぞ。さすがにここで止まると明日面倒だからな」
「はぁい。じゃあパパ、おんぶして」
「お前、パパと呼ぶようになってから図々しくなってないか?」
「だって甘えたいじゃん」
正影としてはしてあげたいのはやまやまだが、ここでそんなことをしてはオスに備えられない。
突然の強襲があれば命を落としかねないのだ。
「ダメだ。ここじゃ危険すぎる」
「ぶ~…」
「それもあっちについたらやってやる」
「本当?」
「ああ」
「じゃあ早く行こうよ!」
穂香が走り始める。
よほどうれしいことなのか体がうずいているのだろう。
「そんな走ると喉乾くぞ?」
「大丈夫だよ!早く早く!」
穂香は今は仲介者《メディアトール》だ。
メディアトールになれば肉体強化ができる。
それぞれが強ければ強いほど上がる能力値も高い。
ただの一般市民だった穂香もこれのおかげで身体能力が上がっている。
しかも、相手がロスである正影なのだから能力の上り具合が半端ない。
1が100以上に一気に上がったようなものだ。
穂香の身体能力の上昇具合は本当に極端だった。
だが、正影の身体能力の上昇値は微々たるものだった。
100が101になったようなものだ。
確実に上がってはいるがほとんど変わりがないのも事実。
だから穂香が走り始めると正影も捕まえるのが一苦労なのだ。
無視するというわけにもいかず毎回追っかけて捕まえる。
「後が大変だぞ、頼むから走るのやめてく…れ?」
しかし、今は違った。
疑問が浮き上がるほど穂香の走るスピードが遅い。
簡単に捕まえられた。
「きゃ!パパ速くなったね?」
「…お前、加減してたんじゃないのか?」
しかし、穂香はそんなわけないじゃんと言う。
顔からしておそらく嘘はついていない。
ならなぜ足が遅くなったのか?
穂香自身はまだ気づいていないようだ。
「穂香、お前―――」
突然、正影の言葉を遮るかのように地響きが起きる。
地面がズシンと下がったかのような錯覚に襲われる。
「なっ、なんだ?」
あたりを見渡すが何も見当たらない。
しかし、何かが地面を走ってきているような地響きはする。
なのに何も見当たらない。
(カメレオン型のオスでもでたっていうのか?でも足跡のような何かも見当たらない。いったい何が?)
「ま、正影さん。これは一体…?」
「黙ってろ。敵がいるのは間違いない」
穂香も何が起きているのか分からず、正影をパパと言わないで正影さんと言っている。
音ではなく地響きであるため、どこが発生源なのか分かりずらい。
だが、地響きはだんだん大きくなりつつあるのは分かる。
確実に敵が近づきつつある。
(くそ!だめだ、全然分からない!)
1秒が1分にも1時間にも感じる。
地響きはする。
だが、相手は見えない。
絶体絶命と言っても過言ではない。
と、地響きがぴたりと止まる。
奇妙な静けさが砂漠に漂う。
「正影さん、これは…?」
「いなくなったと思いたいが、警戒し―――」
ドドドドドドドッ!と直線的にすごいスピードで動く音がする。
真下から。
その瞬間正影は敵の場所を理解する。
「穂香!」
「えっ?」
穂香の手を引っ張り、正影がその場を離れる。
すると1秒という間も空けず、地面が盛り上がる。
そこからワーム型のオゥステムが出現する。
口には牙が生えており、どこかのゲームや漫画で見たことあるような姿。
ワームは宙に上り5秒ほど空中でうねる。
大きさ…いや、長さは30mほど。
それほどの巨体が宙を舞ったのだ。
身体能力が計り知れない。
「穂香!逃げるぞ!走れ!」
「う、うん!」
おそらくこの砂漠に生命が一つも芽生えない原因がこいつだと理解する。
地上に現れる生き物をむさぼりつくしているのだ。
正影は草を食べるオスなんて聞いたこともないのだが、雑食ならありなのだろう。
いつもなら全速力で逃げるところなのだがここで問題が発生する。
穂香の足の速さが遅いのだ。
「穂香!もっと速く走れ!」
「分かってるけど、なんでか、これが限界で…!」
正影は穂香をおんぶする。
この状態では満足に戦うことはできないが、穂香に合わせるより速く走れる。
オスはすでに地上にはいなくて地響きが聞こえる。
少なくとも諦めてくれたわけではないようだ。
正影はただ走るしかなかった。
穂香をおんぶした状態で無敵時間がある敵に勝つのは不可能だ。
しかし、相手の方が速度が速かった。
5mほど離れたところから飛び出て正影たちを食べようとする。
「うおぉぉぉぉ!」
前に飛び込む形で何とか相手の攻撃をよける。
その攻撃はかわすことはできたがこれではいくつ命があっても足りない。
型はおそらくミミズ。
しかし、ミミズにあれほど危ない牙なんて存在しない。
進化していく過程で狂暴になったのだろう。
(たいてい目が退化してる場合、音で判別するはず…)
正影はジェスチャーで穂香にしゃべらないよう合図をする。
そしてカバンの中からきゅうりを取り出し地面に音が鳴るように投げる。
正影の腕でなら結構な音が鳴る。
黙って待っているとすぐにきゅうりがあったところにワームが垂直に飛び跳ねる。
まじまじとオスを見る。
そして驚いた。
色は茶色。
見た感じはワームのくせにかたそうな皮膚をしている。
足や羽が生えてるわけではなく、普通に見えた。
一つのことを除けば。
それは目。
ワームの体に一定距離ごとに点在する大人の握りこぶしほどある大きな目。
体中に存在し、それぞれが違う方向を向いている。
正影は攻撃するつもりだったがその目に驚かされ出遅れてしまった。
一つの目が正影たちをとらえる。
すると無数に点在する目がすべて、正影たちの方を向く。
正影が再び逃げに転じようとする。
「穂香、逃げ―――」
銃声が響き、跳んでいるワームを的にする。
バチュっと弾ける音がし、オスの目が1つ潰れる。
それと同時にオスがバランスを崩した。
「ギィィィィィ、チチチチッチイチチチ!」
叫び声を上げた後、体中から声のような音を鳴らす。
正影は逃げるのをやめ、地面に落ちた無防備なオスを見逃さず追撃する。
刀を取り出し、オスに一太刀入れる。
「ギュウウ、ギギギィイギイギギギ!!」
痛みに悶え、オスが体をうねる。
正影が入れた一太刀は、オスを切り落とすことはできず途中で止まっていたため投げ出される。
うねるだけで、そこらじゅうの砂が飛び散り、軽い砂嵐が起こる。
正影はすぐに体制を立て直し、刀を構える。
穂香は依然、銃を構え撃ち続ける。
的が大きいこともあり、1つも外すことなくオスに命中する。
再びオスが地中に身を隠す。
こうなっては正影たちに攻撃する手段はない。
「穂香!逃げるぞ!」
「なんで!?音を出さなきゃあいつは私たちの場所が分からないはずでしょ!?」
「目があったの見たろ?あれがあるのに使わないはずはない!おそらくここにいれば食われる。音を出さずに移動できれば簡単に逃げ切れるが今は無理だ!」
地中にいるくせに目があった。
つまり外に跳びあがった瞬間に相手の位置を確認しているのだ。
オスには知能があるものもいる。
相手の位置を確認するということは記憶能力があるということ。
そんな奴が行き当たりばったりで攻撃するはずがない。
きゅうりはおそらく一回目だったからうまくいったのだ。
2回目はない。
正影は再び穂香をおんぶする。
身体能力は下がっているが、専用の武器は出せるようだ。
穂香を乗せ、走り続ける。
まだ地響きはする。
近くにいるのだ。
警戒しているのか、傷をいやすため逃げようとしているのかは分からない。
ただ、正影は走り続けた。
逃げるために、生き残るために、妹に会うために。
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1時間ほど走り、正影はようやく足を止めた。
体から汗が吹き出し、体は水を求めている。
「ハッ、ハッ…」
「正影さん、大丈夫!?」
「ああ…。なんとかな」
座り込み、体を休める。
適当に走ってしまったため、今どこにいるのか分からない。
穂香に地図を預け、場所の確認をさせる。
しかし、正影としては想定外だった。
たった30m級。
正影なら、穂香の身体能力が下がっていたとしても一体なら余裕な相手だったはずだ。
だが、今回の相手は確実に分が悪かった。
少なくとも2020年までに、あんな形のオスの出現報告はない。
「オスも、進化しているのか…」
正直絶望していた。
あんな風に進化できるのならどこにも安全地帯はないのではないかと。
正影の感想としては今まで戦ったオスの中で一番強かった。
地中にもぐることでほとんどの攻撃を無効化する。
初めて敗北を実感した。
あいつを2体同時に相手すれば勝てないのではなく、死ぬのが明白だ。
もし危険地帯であのタイプが沢山出現したら…
「ぱぱぁ!場所分かったよ!」
穂香が戻ってきた。
なんだか焦っているように見える。
「どこだった?」
「それが…、ここのあたり」
穂香が地図のある一か所を指す。
正影は信じられずしばらく時間が止まったように感じた。
「…嘘だろ?」
「ううん。あそこの小さい砂丘を登ればすべてわかるよ」
穂香が指さした方の砂丘に向かって歩く。
体は悲鳴を上げていた。
だが、それ以上に確認しなければならないと脳が言っていた。
砂丘を登り、愕然とする。
「…」
そこから見えたのはある建物。
いや、乗り物。
大きな豪華客船だ。
どうやって運ばれたかは不明だが、豪華客船は意味する。
「ここから先は危険地帯だ」と。
正影はオスが必ず出現する危険地帯まで走ってきていたのだ。
逃げるために使った火事場の馬鹿力は悪い方向にも働いていた。
これ、心の中では50話程度で終わりたいなぁと思っています。
でも終わらないんですよね、間違いなく。
どのくらい続くかは分かりませんけど、これからも読んでいただけたらありがたいです。
これからもよろしくでーす!