戦う守られるべき存在達   作:tubukko

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もうすぐ9月も終わり…早いものです。

この物語もそろそろ終盤入り始めたいなぁ…(自分自身どのくらい続くか不明)。


他を想う

「もうすぐです、しっかりしてください!」

「う…ん」

 

肩を貸している2人の女性に声をかけながらできる限り早く歩くリム。

藍が囮になった後、リムたちは敵に会うことなくシェルターに進んでいた。

道がふさがっていたことも多々あったが無事、もうすぐのところまで来ていた。

 

「…」

 

そんな中、未だに後悔しているのかエニスは浮かない顔をして進んでいた。

絶対帰ってくることを条件に行かせたがやはり間違っていると思う。

藍を信用できないわけではない。

ただ心配なのだ。

 

「…リリィ」

 

前を進んでいた梓が口を開く。

奥からリリィが歩いてきた。

その顔はどこか疲れていて、余裕ぶっているように見せているが間違いない。

 

「なんだ、変わったメンツの集まりだな」

「この状況に決まったメンツが集まるなんてそうそうないと思うわよ?あなただって1人じゃない、いつも一緒にいた人が見えないけど」

「死んだよ」

 

つい言ってしまったことに「しまった」と真理奈が思うが遅い。

口走ってしまったことを消すことはできない。

こんな状況で周りにいつもの人がいなければもしものことを考えて言わないようにするべきだった。

 

「…ごめん」

「気にするな。あいつらの力不足だった、それだけのことだ」

「ということはプロディターに?」

「顔も見てないけどな、突然周りの気温が上がったと思ったら避ける間もなく死んだよ。エリア22の教訓を忘れてなくて助かった」

「…冷たいですね」

「そうした方が生き残れる」

 

仲間が死んで何も思わない人間は存在しない。

もし、何も思わない場合はそいつを仲間とは思っていなかったということだ。

リリィは死んだ人たちをどう思っていたのか。

 

「ところでお前ら、穂香を知らないか?」

 

突然かけられた意外な質問に全員が目を丸くする。

 

「リム、真理奈。お前らオペレーターなら知ってるだろ?」

「いくらオペレーターでも施設内での行動は知りませんよ」

「…このアルツェ内にはいないわ」

 

リムは知らなかった事実に真理奈のほうを向いて驚く。

訊いた本人であるリリィはむしろ「やっぱり」といわんばかりにため息をつく。

だが、真理奈にはそのため息には安心が含まれているのが分かった。

 

「生きてるのか?」

「もちろん、元気にしてるわ」

「ここにいないということはオクォロスの討伐にでも向かったんだろ?それでも元気だと?」

「リアルタイムである程度なら分かるわよ。保証するわ」

「……なるほど、あの男も哀れだな」

 

あらかた理解したリリィが恭二に同情する。

もちろん口先のみだが。

少しとんだ話にリムや梓はついていけず疑問符を頭に浮かべている。

 

「リリィ」

 

突然口を開いたエニス。

面識はあるが2人は知り合いというほどでもない。

 

「なんだ?」

「私の名前はエニス。いきなりだけどこの2人をお願いできる?」

「何故?」

「私は戻らないといけない」

 

その言葉に顔をしかめるリリィ。

おそらく彼にとっては理解が及ばないことだからだろう。

このまま少し進めばシェルターにつくのにわざわざ危険を顧みずに戻る。

 

「シェルターも危険なのか?」

「藍を助けに戻る」

「…馬鹿の類か」

「何とでもいえばいいわ。でも私は戻って藍を助けたい」

「エニス…!」

「梓、あなたはみんなと一緒に先にシェルターに行って。藍を見つけたらすぐ戻るから」

「それが死体でもか?」

 

リリィの言葉にエニスの目つきが鋭くなる。

 

「ふざけたこと言わないで」

「別にお前がどこに行こうと勝手だ。俺にはその行動が理解できないが勝手だ、だけどたまにいるんだよ。見つけた時にはすでに死んでいて、そこからすぐにでも逃げればよかったにもかかわらず座り込んでいたせいで死ぬってやつがな」

「藍は死んでない」

「みんなそう言う」

「死んでない」

「…好きにしろ」

 

リリィに決定権なんてない。

だが誰にもエニスを止める権利すらない。

エニスが2人をリリィに預ける。

 

「エニスさん、藍さんを信じませんか?」

「リム、私は信じてるわ。でもあの子だけに苦労させるわけにはいかない」

「………」

「私も…!」

「梓、あなたは残って」

「そんな…!」

「今ここをあなたが離れたら瞬時に動ける人がいなくなるわ。それはマズい」

「でも…!」

「お願いね」

 

それだけ言うとエニスは来た道を戻っていった。

だれも止める人はいない。

梓でさえ、それは同じことだった。

 

「さっさと行くぞ」

 

リリィだけがいつもと変わらず、その時を過ごしていた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「あああああぁぁ!」

 

雄たけびともいえる声を上げながら嬉々がプロディターと競り合う。

便利な体なのか何回か斬りつけているうちに相手の腕が刀の形に変形したのだ。

その刀は腕からそのまま生えているようで鍔も柄すらもありはしない。

もっというなら色すら違いが見当たらず、どれだけの長さなのかすらよくわからない。

 

しかし、やはり雄たけびだけでは力の差を埋めることは叶わない。

嬉々が上から斬りかかっていたとしても押し返されてしまう。

それだけ身体能力にも差があった。

 

「藍!」

 

嬉々が合図をすると同時に藍が動く。

プロディターに向かって手のひらサイズの小さな物体を投げる。

プロディターの視線がそちらに向かう。

それと同時に爆音とともにプロディターの周辺が爆発に包まれる。

 

決して広くはない通路での手榴弾の使用。

自殺行為である。

戦っているところは1階ではないため、下手をすれば自分たちのいる地面も崩れ落ちそれに対応できなければ最悪死ぬ。

距離だって決してあるわけではない。

ただの手榴弾ではないのだ。

対オゥステム使用になっているため爆発の有効範囲だって広がっている。

最低でも距離は20m以上はほしい。

 

「逃げるわよ!」

 

敵の足場は崩れた。

手榴弾だって見た感じはかなりの至近距離で爆発した。

だが、プロディターは死なない。

良くても一時的に霧散したにすぎない。

すぐに体が再構築される。

 

だが、それでも時間稼ぎにはなる。

プロディターはどういうわけか時間が経つと消える。

最短で10分、最高で30分以上。

以上となっているのは実際にその場で生き残った人間が存在しないから。

 

「これなら―――」

 

相手は1体。

美嘉が心配ではあるが少なくともこちらは2人に対してプロディター1体なのだ。

逃げ切れるはずだった。

 

砂煙激しい空間からプロディターが姿を現す。

嬉々がいち早く反応し突進を刀で抑える。

 

「ぐ…!」

 

刀一本で抑えるとなると腕に対する負担が激しい。

ミシミシと腕の骨が悲鳴を上げるのが分かる。

真理奈とメディアトールになっておけばよかったなと思う。

 

「ゴギィィィィィィィィィィィ……」

「再生速度速すぎじゃない?」

「ヴァギ?」

 

嬉々が競り合っていると後ろから聞こえる音。

すぐに嬉々の顔の真横を小さな何かが通り過ぎる。

プロディターに当たると小さなくぼみができる。

力が弱まったのを確認した嬉々は力いっぱい押し返す。

 

「ちょっと馬鹿なの?!」

「大丈夫よ、ガトリングの反動と比べたらこんな玩具(ハンドガン)どうってことないから」

「心臓に悪いから本当にやめて…まだつば競り合いしてるほうがずっとマシだわ」

「考えとくわ!」

 

再び懐から手榴弾を取り出し投げつける藍。

いつもはこんな武器を持ち歩くことはない藍だが武器庫でアルマを準備していた時に緊急事態に陥ったのだ。

一応のため手榴弾も持ち歩くことにしていた。

それにプラスして嬉々から貰った手榴弾もあるのだ。

嬉々のはリリィが用意したものの中に入っていたのだ。

数は結構ある。

 

しかし予想外のことが起こる。

突如、敵の腕が異様な動きを始めたと思ったら投げた手榴弾を跳ね返したのだ。

 

「ちょ!?」

「わお」

 

範囲内には入らなかったが敵からも離れた位置で爆発する。

視界が悪くなったという結果のみが残る。

 

つまり状況は最悪だ。

 

「藍、下がって」

「でも…!」

「何度も反射的に相手に反応できるとは限らないわ。私が止めるからあなたは先に…」

「…………………………わかった」

 

藍に今アルマはない。

他の武器というのはあくまで補助用だ。

これを主体に戦うのは美姫くらいだろう。

全然これに頼ってこなかった藍は扱いだって慣れてはいない。

手榴弾となれば敵が何かしてきてもすぐに対処ができるわけではない。

 

それを理解していた藍は嬉々の指示に従う。

残って戦いたいという気持ちもあったがこれ以上迷惑はかけられない。

 

藍が後ろに下がったのを確認して構える嬉々。

距離があれば藍でも避けることはできる。

自分のことに集中できればかなりやりやすくなるのは間違いない。

 

だが2人は思い違いをしていた。

相手はプロディター。

異常な身体能力だけでなく、思考回路も持っているということを。

集中が目の前に向かっていた嬉々たちは出遅れてしまった。

 

藍の真上の天井にひびが入る。

藍は先に疑問符が浮かび、嬉々に助けを求めるのを忘れてしまった。

 

天井が崩れてそこからプロディターが現れる。

 

「!」

 

嬉々も天井が崩れた音に反応するが遅い。

距離があまりに離れすぎていた。

走って逃げようとする藍だが天井のがれきは避けられても、プロディターの追撃を免れるには距離があまりに近すぎた。

藍には終わりだと理解する暇もなかった。

だが、その必要はなかった。

 

藍の視界にはプロディターしか入っていなかったに違いない。

しかし、嬉々は違った。

彼女の視界に映ったのは藍とプロディター、そして…

 

「ギィ…グ!?」

 

プロディターの頭にかたい物体が直撃する。

プロディターは嬉々のさらに後方に跳ばされた。

 

「藍、遅くなってごめんね」

「…エニス?」

 

ガトリングを抱えたエニスが立っていた。




正影「なぁ…なんか俺たちが来るまでの部分、長くないか?」

作者「正影がオクォロスと戦ってるところからだもんね、でもまぁ…長いね」

明季「そろそろ出番がほしいわ」

作者「だが断る」

「「何が!?」」

作者「言ってみたかっただけです」



読者のみなさん、今後ともよろしくです。

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