ぜひ一度は足を運んでみたいものです。
都会に住まないと辛いですけど。
「穂香ちゃーん!」
「大きな声出すと
「その危険を冒してでも探す価値があるのよ!」
「否定はしないけど…」
嬉々と美嘉がアルツェ内を探索している。
探している対象は蓮と穂香。
美嘉としてはこのどさくさにまぎれて穂香を救出したという事実を残してなついてもらいたい。
正影がどれだけ嫌がろうとも穂香自身がなついてくれれば妥協せざるを得ないだろう。
後は少しずつ進めていけば…
「…こんな時でも煩悩が働く貴方を尊敬するわ」
「はっ!?いけない、こんなことしてるときじゃないのに!」
顔から煩悩が働いてると分かるほどだったらしい。
斧を引きずって歩いているにもかかわらずそっちに頭が働くとはなかなかである。
因みに歩いている風景はどこかバイオ◯ザードの某斧を振り回す敵を彷彿させる。
2人はここに来るまでに6人の人に会ったのだが、みんな知らない人ばかり。
「蓮や穂香を知りませんか?」と訊いても容貌を知らないし、説明しようとすると「時間がない」と逃げ出す。
後ろから死神が近づいて来ているのだ。
この行動は至極当然のものだ。
「一回シェルターを見てこない?」
「もう少し探したい気持ちもあるけれど…じゃあ遠回りしながら行きましょ?」
「それでいいわ、そしたらこっち―――」
刹那、指をさした方角の床から光の柱とでもいうべきものが立ち上る。
熱気がたちこめ近づいてならないというのがすぐに理解できる。
「美嘉!」
「隠れて、早く!」
見つかったら逃げるしかない。
2人の行動は早く、すぐに柱を視界にとらえながらも隠れる。
柱が消えると息をひそめる。
しかし…
「「……………」」
10秒、20秒待っても敵は来ない。
罠でも張っているのかとアイコンタクトを美嘉ととる。
嬉々がゆっくりと、音をたてないようにしながら開いた穴に近寄る。
目の前まで来て息を整える。
そして覗き込んだ。
「………」
敵は見当たらない。
頭をより深くのぞかせる。
だが、敵の影はおろか人の姿すらない。
「美嘉、大丈夫よ」
「いないの?」
「適当に撃っただけだと―――」
再び音がする。
しかし聞こえたのは銃声。
それも連射して撃つだけでなく豪快な音が鳴るような武器。
嬉々と美嘉が顔を見合わせる。
もしかすると新種のプロディターという可能性もある。
だが、人だった場合そこにいるのは3姉妹の誰か。
たとえ無力であると分かっていても見捨ててて行けるほど合理的な人間ではなかった。
無言で頷くと穴を通り音がするほうへ向かう。
穴を降りることなど、ビルの上を日常茶飯事飛び越えているプロトから見ればどうということはない。
「どの階だと思う?」
「聞いてる感じ、ここか1つ下だと思うけど」
プロトになったといえども音を正しく認識してどこから発信されたものか分かるわけではない。
「別れて行動する?」
「いや、通信ができないこの状況でそれは危険よ。上から探さない?もしもの時は床を崩して降りるわ」
「分かった」
嬉々を先頭に2人が音のするほうへ走る。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「こんなのムリゲーじゃない!」
藍がガトリングを撃ちながら叫ぶ。
聞いてくれるのはおそらく目の前にいる敵たちのみだ。
腕はずっと撃ち続けているためだんだん痺れてきた。
それでも集中は切れない。
一瞬でも集中が切れたらおしまいだ。
おそらくエニスたちとはかなり離れた。
ならば後はアルマを置いてでも逃げるべきである。
だが、それは極めて難しい。
「!」
周りが熱くなり始めたのを察知した藍がすぐに移動を開始する。
移動してすぐに元いた場所に高温の熱気が走る。
しかし、休む時間はない。
すぐに目の前に壁を突き破ってプロディターが現れる。
プロディターは藍を視界にとらえるとすぐに突進してきた。
決してよけられないスピードではない。
だが、距離があまりに近すぎた。
「ぐぅ…!」
左腕の一部が抉られた。
まだ機能はするが痛い。
だがのたうち回るほどではない。
アドレナリンだの、腕が痺れているせいだののおかげで多少は緩和されているのだろう。
ガトリングを持ちながらその場を離れる。
「1体ならまだ何とかなるかもしれないのに…!」
藍は逃げ切れる自信があった。
エニスたちに言ったことも出まかせでいったわけではない。
だが、現実は違った。
相手は2体いたのだ。
身体能力が自分たちよりも高い敵。
それだけなら未だしも殺す方法が解明されていないのだ。
ガトリングを撃って穴だらけにしてもわずかな時間稼ぎにしかならない。
だから逃げるという選択をする。
プロディターだって視界があるかはわからないが少なくとも壁があれば見失うことは間違いないはずだ。
だから通路を利用しようとしたのに1体を足止めすればもう1体が追いついてくるのだ。
このままではいずれ弾が切れるかそれよりも先に追いつかれて死ぬ。
命乞いの余地なんてない。
しゃべることはできるらしいが、会話が成り立ったという話は聞かない。
金は意味をなさない、誓いも意味をなさない、誘惑さえも意味をなさない。
そういう敵なのだ。
「いったいどうしたら…」
刹那、先にある壁が崩れプロディターが姿を現す。
「先回りは無しでしょ!」
目の前に現れたのは突進してくるタイプのプロディター。
なにやら光線を撃ってくるプロディターはさっきから姿を現してはこない。
だが後ろにいるのは間違いないだろう。
どちらを相手にするべきか?
一瞬迷ったがすぐに行動に出る。
「(突進してくるタイプなら一回避ければ…)」
前に走る。
距離は約10m.
見てから避けようと考えていては間に合わない。
敵が突進の構えをする。
何回も見ていた藍にはその構えが分かった。
ガトリングを手放し、滑り込むような形で回避をする。
突進中に進行方向を変えられるわけはない。
たとえプロディターであったとしても。
確証なんてない。
だがそれに賭けるしかなかった。
地面に胸が当たると同時に真上をプロディターが通り過ぎる。
「(よし!)」
心の中でギリギリとはいえ助かったことにガッツポーズをとる。
しかし、体は行動をやめない。
すぐに態勢を立て直しながらガトリングを手に戻す。
時間にしてわずか2秒。
おそらく次はもう無理だ。
会話が成り立たなくても頭はいい。
これも考慮したうえで突進してくるにきまってる。
これ以上、あいつを10m圏内に近づけてはならない。
ならないはずだった。
態勢を立て直した藍の目に映ったものが、絶望を煽る。
「……」
目に入ったのはこちらを見るプロディター。
突進をして奥の壁にぶつかっていると踏んでいたはずのプロディター。
自分と敵の位置はただ逆転しただけ。
つまり10m圏内である。
「(どうするまた避ける?でも同じ作戦は二度も通用しないさっきの今じゃなおのことだわでもそれ以外に避ける方法なんてあるのいやいっそのことこのまま逃げて距離を延ばせば突進してきてもいやそれじゃ後ろを見ながら走らないといけないしでもそれじゃ避けるにも走るにもどちらとも中途半端になって殺られるしでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでもでも…)」
後がない藍の頭の中が文字で埋め尽くされる。
だがこの文字に意味はない。
ただ羅列されているだけで考えとは言えないだろう。
それだけ彼女は追い詰められていた。
というか限界が来ていた。
プロディターがゆっくり構える。
藍が絶望に近い何かを持っているのを感じているのかもしれない。
その構えに藍も気づく。
だが藍に手立ては残っていない。
だが諦めるわけにはいかない。
一か八か左の壁に体を寄せる。
考えたって相手がどう動くかなんて絶対分かる訳がない。
「やってみろよ!」
自分を鼓舞するため、大声をあげる。
プロディターもそれと同時に動く…はずだった。
突如、天井の壁が崩れ落ちる。
藍の真上の天井にもひびが入り始めるのを理解する。
すぐに藍は回避行動をとったがプロディターは気づくのが遅すぎた。
藍が背中を見せた瞬間、プロディターの真上の天井が崩れ落ちる。
潰されたプロディターの姿が見えなくなった。
何が起きたかわからない藍の前に天井を崩した張本人たちが姿を現す。
「藍!」
「…嬉々と美嘉?」
「大丈夫?」
2人を見た瞬間、藍がその場に崩れる。
危険であることに変わりはないが、見知った顔が目の前に現れたことに安心を覚えた。
「ちょ、ちょっと!本当に大丈夫!?」
「ええ…大丈夫。少し力が抜けただけだから」
「敵は近くにいないわよね?」
「…!そうだ、早くしないと!あなたたちが崩した天井の下敷きになったプロディターがいるの」
「私の攻撃がプロディターに届いたってことね」
「斧をただ地面にたたきつけただけのくせに。なんならここで足止めしてよ」
「私はまだ死ぬわけにはいかないわ、穂香ちゃんのためにも!」
「ためにもっていう点では死ぬべきだと思うんだけど…ん?」
自分の周りの空気が熱きなっていることに気づく嬉々。
時間さえあれば美嘉にも嬉々にも理由が分かっただろうがそんな時間はない。
いち早く藍が何が起こるか理解する。
「2人とも避けて!」
T字の通路だったのが幸いし、藍が嬉々と美嘉を横に突き飛ばす。
藍も続いて無我夢中で通路に滑り込む。
アルマを持ち出す暇なんてなかった。
藍が避けてすぐ通路が光に包まれる。
藍のガトリングが一瞬にして消える。
「嬉々、藍。大丈夫!?」
「私たちは平気よ!そっちは?」
「私は…ちょっとやばいわ」
高温の光線が消えていく。
床が消えてそれぞれを分断するがプロトにとって障害になるような距離ではなかった。
だが、障害となるものがいた。
美嘉1人、嬉々と藍2人の状態になった3人。
美嘉の方にはどういうわけかプロディターがたっている。
距離が近い。
だが、幸いだったのがそこにいたプロディターは接近戦タイプの方ではないということ。
危険であることに変わりはないが。
「美嘉、今―――」
嬉々が助けに向かおうとしたのをもう1体のプロディターが止めに入る。
「え?」
「プロディターが…2体?」
「嘘でしょ!?」
「嘘じゃないわ。美嘉、あなたの方にいるのは熱気の光線を出してきた方よ。撒こうと思えば撒けるはずだわ」
「……分かったわ。嬉々、藍。シェルターで落ち合いましょ」
「美嘉?!」
嬉々の言葉など聞くことなく美嘉はその場を走って後にする。
賢明な判断かは分からないが間違った判断ではないだろう。
「嬉々、大丈夫よ美嘉なら。それより問題はこっちよ」
「………分かった、美嘉のことは信じるわ。で、こいつは?」
「肉弾戦ばっかりよ。主に突進、当たれば肉が容赦なく抉れるわ」
「了解、藍は下がってて」
嬉々は刀を構えた。
武器が槍だが、リリィとは違い大きな一撃を狙うのではなく小さな攻撃を数多く加えていく。
美姫とは犬猿の仲だと口では言っているが、行動を見る限りとてもそうは見えない。
明季の指示さえあれば、彼女たちほど良い連携をする2人はいない。
バイオ◯ザードは4の映画に出てくる奴の方が一致するかな…。