戦う守られるべき存在達   作:tubukko

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読んでくださってる方々どうもで~す。
今日は少し遅れて次の日になってしまいました。
でも、土日だから夜遅く経って問題なし!




目の前にいる30m級のオス。

 

「型は…サイか?」

 

30m級のサイ。

もともとのサイの特性を生かしているのか体当たり。

おそらく正影一人でもこれくらいなら問題ないだろう。

早ければ1分、長くても3分あれば簡単に倒せる。

だが今は守らなければならない非戦闘員が6人。

しかも1人は車いすに乗った大人。

気にして戦うとなるとかなり厳しい。

 

「お前ら!今すぐここを離れろ!」

「なっ、無理です!こんな大きな相手を一人でなんて!早くこの子たちの仲介者《メディアトール》になってください!」

「俺がAだとは決まってないだろ、それに問題ない。俺一人ならあいつは簡単に倒せる。だがお前らがいると邪魔だ」

「何言ってるんですか!プロトであの大きさの相手を、しかも1人でなんて無理です。勝てるわけ…」

「だから、問題ないと言っているんだ」

 

正影が刀を作り出す。

子供達にはただ武器を取り出したようにしか見えなかったがレアには分かった。

さっきまで建物に体当たりをしていたオスが正影達に、ターゲットを変更する。

 

「それは…!」

「もう一度言うぞ。ここから離れろ。できる限り。もしかしたらもう会うことはないかもしれないが今回のことはありがとうな」

「待っ…」

 

正影がレアの言葉を聞き終わる前にオスに向かって走り出した。

残された子供たちは…

 

「…ロスト・チルドレン」

「何を言ってるの、レアさん。あそこは正影さんに任せて早く逃げよう?」

「…」

「レアさん!」

「はっ、ええ。分かったわ、行きましょう。穂香、押してくれる?」

「もちろん!」

 

レアたちはその場を後にした。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「行ったか?」

 

相手の攻撃を自分に集中させながらレアたちが移動したのを確認した正影。

この状況でなら簡単に殺せる。

 

「始めるか…」

 

オゥステムとはアクリス細胞の集合体。

そして基本細胞とは核が存在する。

もちろんアクリス細胞にも核は存在する。

が、オゥステムを形成したアクリス細胞の場合、1つ1つの細胞にある核のほかに大きな核が存在する。

人でいうところの脳や心臓と考えればいい。

これを壊すことができればオゥステムは死ぬ。

しかし、この核は個体によって場所が変わってくるので探すのが難しい。

だから基本として、大きなオゥステムを相手にする場合もう一つの殺す方法で殺す。

それは、ひたすら攻撃を与え続けるということ。

これも個体によって変わってくるが、攻撃を続ければいつかは力尽きる。

 

「おおおおおおおっ!」

 

サイ型のオスに対して容赦ない攻撃を加える。

斬って斬って斬って斬って斬って斬りまくる。

建物を使い、うまく飛び跳ね、後ろに回り相手の攻撃を許さない。

 

(これなら余裕か…?)

 

しかし、攻撃されてばかりではオスも黙っていない。

突然オスが思いっきり飛び跳ねる。

距離は軽く50mは上に飛ぶ。

 

「サイにそんな跳躍力あったのか!?」

 

とりあえず全速力で建物の上に乗っかる。

サイが地面に降りてくると同時にどんな力が地面に働くか想像がつかないからだ。

あれだけの巨体で重さもかなりなはず。

被害はひどいはず。

飛び上がっていたサイが落ちてくる。

 

「よぅし、お前の奥の手?うまく受け流してやるよ」

 

サイが地面に落ちる。

本来なら落ちてきたオスだってただでは済まないだろう。

 

地面がすごい勢いで盛り上がる。

地面が波打っているというのはまさにこのことだろう。

コンクリートでできた地面にヒビが入り建物が崩れていく。

 

「これはすごい」

 

どのくらいレアたちが離れたのかわからないがあのままここに残っていれば命はなかっただろう。

正影が乗っていた建物も崩れ始める。

だが、正影は悠々と建物を飛び移り危険を回避する。

オスの体はこの跳躍力に対応しているのかこれに対しての傷はなかった。

揺れが収まり始めると正影は再びオスに攻撃を始める。

 

「鈍重なデカ物に負けるわけないだろ」

 

プロトとロスには大きな力の差がある。

腕力、跳躍力、視力、聴力などどれをとってもよほどのことがない限り負けることはない。

しかし、そんな弱いと思われるプロトだが実は40m級くらいのオスなら勝てないこともないはずなのだ。

ならなぜ勝つのが難しいのか。

理由は武器が使えないからだ。

ロスのみが使える武器はオゥステムに対して恐ろしい殺傷能力を誇る。

これのおかげで長期戦になることなく倒すことができる。

プロトが負ける理由は長期戦に持ち込まれ(もちろん身体能力が低いのも否定できない)疲れ切ったところを一撃で殺されるからだ。

つまり集中力が、体力が続けば理論上なら勝つことができるのだ(死人を出すことなく)。

 

「オッ…オオオオオオオオオオオォ!」

「黙れ」

 

雄たけびを上げるオスに対して辛辣な言葉を浴びせ攻撃を続ける。

本当に突進馬鹿なのか(さっき跳んだけど)ただ回ることしかできない。

だんだん動きが鈍くなり始める。

痛みを感じるのかは2020年では分かっていなかったが、細胞が死んでいるのだ。

鈍るのも当然だろう。

 

(あと1分くらいか…)

 

攻撃を始めて5分。

ものすごい跳躍力によって時間をとられてしまった。

とそこに斬りかかった瞬間、硬いものの感触がする。

もしやと思い、おもいっきり力を込めそこの肉を剥ぎ落とす。

と、青色の結晶のようなものがあらわになる。

核だ。

思わず笑みがこぼれる。

 

「ラッキーだな。しかし、こんな表面の近くにあるとは」

 

危機を感じ取ったのかオスがおもいっきり突進を始める。

建物なんて一切おかまいない無しだ。

 

「成長したな。恐怖心か?」

 

2020年の頃は逃げるなんて行動をとるオスは見たことがなかった。

プロトが全滅し、逃げられることはあったがその場合、傷が回復していることが多く面倒になる。

正影がすぐに追いつく。

降り注ぐ建物の破片なんてお構いなしだ。

 

「死ね」

 

正影が刀を核に突き刺す。

オゥステムがバランスを崩し横倒れになりながらしばらく突き進む。

80mほど倒れながら進みやがて止まった。

 

「ったく、手間かけさせやがって…」

 

刀を引き抜き、しまった(消したのほうが正しいのか)。

 

「…」

 

今回の敵は比較的楽なほうだった。

 

大きさに比例して強さが大きくなるといったが、もちろん相性もある。

例えば以前戦った蚊の形をしたオスは正影から見ると面倒な相手だ。

飛んでいるうえに口から変な液体まで出してきた。

さらにあの時は荒野で戦っていた。

何度も跳ばなければならないので時間がかかる。

今回のサイ型のオスは地上しか走らない(跳んだけど)上に、周りに建物があった。

上下左右自由に動けたので攻撃の機会も多く余裕だった。

 

「…そういえば、レアさん達、大丈夫だったかな?」

 

分かれる直前には、もう会わないかも的なことを言っていたがいざとなると心配である。

少し、探してみようかなと思いレア達が逃げた方向へ戻り始めた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

10分ほど探した。

だが、見つからない。

それならそれでいいかもしれないと思っていた。

見つからない、つまりそれは死んでいないということだ。

もし、会うことがあればまた子守をお願いされるかもしれないし死体が見つからないのならばそれでもいいと思っていた。

が、ここで一つ問題が発生する。

 

「…ここどこ?」

 

自分のいる場所が分からない。

つまり政府がいるであろう場所に行く、行き方が分からないということ。

 

「…レアさーーーーーーーん!」

 

大きな声でおもいっきり叫んでみる。

が、返事は帰ってこない。

手掛かりはない。

やみくもにでも探すしかないと、探そうとしたその時ひび割れている地面の上に赤い物体が乗っかっているのが見えた。

 

「これは…」

 

肉だった。

何の肉かまでは分からないがおそらくイノシシの肉。

穂香がやったものだと思った。

と、同時に疑問が浮かぶ。

あれほど貴重といっていた肉をちぎって置いて行った。

あまりにおかしい。

正影は落ちている肉を辿っていく。

ケチっているのか小さい。

正影の歩行速度が自然と早くなる。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

やがてある建物の前についた。

建物の中に逃げたのかと安どの表情を浮かべる。

しかし、中に入ると人力車のようなものが見つかる(人が乗るところはかなり大きい)。

こんな立派なものがそこら辺に置いてあるはずがない。

つまりこれは誰かの所有物。

 

「…」

 

再び嫌な予感がする。

幸いその建物は地下がなく、上に続く階段のみ。

足音を立てず、しかしできる限り早く上っていく。

 

「いやぁ!!」

 

3階にたどり着いたあたりで声がした。

叫び声。

上に上る。

 

5階から声がしていた。

悲鳴と知らない男たちの声が聞こえる。

物陰に隠れながら様子を見た。

 

正影の目が大きく見開かれる。

 

そこにあったのは、血と死体。

 

さっきまで動いていた、走っていた、そのはずの子供たちの死体。

 

「騒ぐなよ、うるせぇ」

「そうそう、俺たちがこれから飼ってやるっていうんだからむしろ喜べよ」

「ふざけないで変態!」

「変態っていわれたなぁ、お前w」

「いいんだよ、俺はロリコンなのは自負してるからよ」

 

5,6人相手に生きているのは子供2人とレア。

全員女の子だ。

 

「なんで…こんなこと」

「なんでって、そりゃここには男しかいないし」

「そんな理由で…。許されるわけないでしょう!」

「いいんだよ。ここに法律はねぇ。弱肉強食の世界だ。力あるやつが生き残る、牛耳る、支配する」

「だからお前らは黙って俺たちの言うこと聞いてればいいんだよ!」

「…!あなたたち!」

「安心しろよ、お前も後でかわいがってやる。だから今は黙ってろよ。俺も子ども相手は初めてなんだから―――」

「そうか、なら俺がここの支配者だな」

 

正影が一番近くにいいた、男の首を切り落とす。

 

「えっ?」

「何?」

 

突然現れた敵の存在に一瞬戸惑う男たち。

 

「て、てめぇ!なにものだぁぁぁ!」

「正影だ」

 

鉄パイプで殴りかかってきた敵のパイプごと首を切り落とす。

戦闘訓練も受けていない、ましてプロトなど正影の敵ではない。

 

「正影さん!」

「なっ!嘘だろ!?」

「クソガキがぁ!」

「なめんな!」

「馬鹿!お前ら!」

 

2人が同時にかかってくる。

手には何も持っていない。

これにも再び同じ応酬を与える。

一瞬のうちに首が2つとも体から離れる。

 

「…あと2人か?」

「ヒッ、ひぃぃぃぃ!」

「おい!待て!」

 

1人が逃げ出す。

特に追いかけることはしない。

 

「あとは、お前だけか?」

「くそっ!」

 

残った一人が子供をつかむ。

 

「動くな!こいつを殺すぞ!」

「…ゲスが」

「黙れ、その刀を地面に置け!」

 

黙って従う。

この状況では助けるのは不可能だ。

だが、あと5歩近づくことができれば…!

 

「いいぞ…。そのままだ」

 

歩いてくる。

あと、3、2、1…。

 

「あああああああ!」

 

突如後ろから声がした。

後ろを向く前に激痛が走る。

背中にナイフが刺さっている。

 

「なっ…!」

「へっ、思った通りだ。逃げたと思ったのか?甘いんだよ!で、どうするこいつ?」

「決まってんだろ、殺す!」

「はいよ!」

 

ナイフが再び正影に襲い掛かる。

が、ナイフ1つきで動けなくなるほど正影は甘くなかった。

襲ってきたナイフをよけると首に掴みかかる。

 

「えっ?」

「…」

 

無言で首を潰した。

しかしそれは、再び面倒な状況を呼ぶ。

生き残った相手が正影を見て一層恐怖を感じ取り、後ろに下がる。

 

「あ、あああ…。お、お前!その、刀で自害しろ!でないとこいつが…!」

 

接近戦で絶対勝てないとわかり、自害を要求し始めた。

後ろに下がってしまったため正影が子供を助けられる確率が下がる。

 

(ど、どうする?こいつはもう近寄ってこない。殺すことは簡単だがそれだとあの子が…)

 

手が残されていない。

おそらくあいつは生き残りたいはず。

そしてあの子を手放せば死ぬというのも分かっている。

だからそう簡単には殺さない。

だが、人質は女の子。

いつ何が起こるかわからない。

 

「早くしろ!こいつを殺すぞ!」

「くそ…!」

 

賭けに出ようと悩んでいた時、子供が動いた。

 

怖かったはず、夢があったはず、生きたかったはず、それなのに―――

 

 

 

 

 

――――彼女は自らナイフに刺さりにいった。

 

 

「え?」

 

男には何が起きたかわからない。

子供が自ら刺さりにいった?

そんなことが起きるなんてありえない。

だが、目の前でそれは起きている。

 

「あ、ああ、ああああああ!」

 

人質を失った男に手はない。

 

「た、頼―――」

 

首が切り落とされる。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「なんで、こんな…」

「…」

 

最後に自ら刺さりにいった女の子は即死だった。

しかし、死んだはずのその顔は微笑んでいた。

 

「ゴフッ…!」

 

突然、レアが血を吐く。

 

「レアさん!?」

「なんだ!」

 

量が尋常じゃない。

 

「…そろそろ限界ね」

「限界ってどういうことだ!?」

「言ったでしょ?近いうちに遠いところに旅立つって」

「まさか…!」

「タロットカードに出てたのよ。限界が近いって。でも、子供たちのことは、何も出てなかった、はずなのに…」

 

再びせき込み血を吐く。

 

「レアさん!」

「穂香…。私はもうだめ。だから、その人と、ね?」

「嫌だ!レアさんも一緒だよ!」

「無理よ…。私の言うこと、聞いてちょうだい。これが最後だから」

「最後なんて言わないで!みんな死んじゃったんだよ!?」

「その人、正影さんがいるじゃない…」

「なんていう病気だ!?できる限りの対処なら…!」

 

首を振るレア。

 

「私のは、解明されてない、新種なの。アクリス細胞が、蝕まれるっていう…」

「な、なんだって?」

「この時計をもらった年に知らされたの。10年以上も生きれただけ上出来ね…」

 

正影に顔を向ける。

 

「お願い。この子を、穂香を連れて行って。あなたなら、できる」

「…」

「初対面でこんなこと言うのはおかしいのは、分かってた。でも、今日、あなたは現れた。これはきっと、運命。だから…」

「…分かった」

「ありがとう」

 

穂香のほうを向く。

 

「穂香…、ごめんね?」

「謝るなら、生きてよ!死なないで!1人にしないで!」

「1人じゃないわよ。いるじゃない、正影さんが」

「でも…!」

「大丈夫。あなたは子供たちのおねぇちゃん的な存在だった。だからきっと…」

「…レアさん?」

 

死なんてそんなものだ。

死の間際にすべてを話きるなんて普通は無理。

レアはもう二度と動かない。

 

「レアさん、レアさん。冗談やめてよ…」

 

穂香の目に涙が溢れ始める。

 

「う…、まだ、何も恩返しできてないよ。まだ、何も返してないよ」

 

この世界でただ一人親のような存在だったレアの死。

正影には穂香の気持ちは計り知れなかった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

死体が溢れるビルの一室で、穂香はレアの亡骸の上で泣き続けた。

文字通り涙が枯れるまで。




…なんか書いててしんみりしてしまいました。
感動もので泣いたことほとんどないんですけど、私自身こういう展開が嫌いです。
まぁ、たいしてうまくもない描写だから皆さんから見れば別にどうってことないですよね?

次は明日。
これからもよろしくで~す。

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