戦う守られるべき存在達   作:tubukko

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遅くなりました。
こんなことがあった後すぐで申し訳ないんですが、近いうちに同じようなことがありそうです。
それでも最後まで書き上げるつもりなのでよろしくです。


お世話になります

正影は今部屋でゴロゴロしている。

先日まで懲罰房に入っていた彼にとって、ふかふかのベッドはありがたい。

初めはひんやりしたあの空間も悪くないかと思ったが、1日でその考えは変わった。

飯は質素だし、なんかジメジメしてたし、暗い。

あの空間はここでの生活を味わった後では劣悪環境もいいところだった。

だから今日は穂香も訓練だし1人で部屋でゆっくりする…はずだった。

 

「ねぇこのココア、飲んでもいいかな?」

「…好きにしろ」

 

なぜか青羽が一緒に部屋にいた。

自分の部屋の如く、自由にしている。

彼女も今日は休日らしいのだが、そんなことはどうでもいい。

懲罰房から正影が出てきたらすぐストーカーをしてきたのだ。

目障りというわけではないが、気になるのでとっ捕まえて理由を聞いたところ「しばらくお世話になりたい…」と言った。

理由を聞いてそれは大変だなと思ったが正影は別にいいとは言っていない。

だがこうして懲罰房から出てきて2日間、暇なときは正影にまとわりついている。

 

初めに同情して奢ってしまったのが間違いだったと少し後悔をしている。

それ以来、猫の如く来るのだ。

飯が食べたいだけならその時間に来ればいいだけで今いる意味はないのでは?と思うが訊くのもめんどくさい。

 

「あなたー、ポットどこだっけ?」

「俺はお前の夫じゃない。ポットは冷蔵庫の上だ」

「いいツッコミだね。でも嬉々ならもう少し面白い反応をしてくれるんだけどなぁ」

 

「あった」と言いながらポットのコンセントを差し込む。

水を入れて温め始める。

 

「そういえば嬉々はどうだ?」

「あと3日もすれば戦線にも復帰できるはずだよ。まったく、意味わかんないケガをするよね」

「まったくだな」

 

 

 

 

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プロディターとの戦いが終わった後、正影たちは嬉々たちと合流し無事帰還した。

民間人300人の誘導があり、正直かなり時間がかかった。

ただでさえ収容人数オーバーしているのだからそれも含めて苦労した。

終わったころには全員疲れたオーラ全開だった。

 

「やっと帰ってこれた…」

「ああ。だけどこの後は懲罰房行きだろ?」

「1日でいいからふかふかのベッドで「嬉々!」」

 

聞き覚えのある声に振り返る。

オペレーターであるはずの真理奈が走ってきていた。

感動の再開というやつだった。

あることを知らない人たちから見れば。

 

「ま、真理奈!待っ―――」

「心配したんだからね!」

 

真理奈が嬉々を抱きしめる。

変だとすぐに思った。

抱きしめているところからミシミシと音がする。

 

「……!!」

 

顔は笑っているが半泣き状態の嬉々。

音がより一層強くなり始める。

ミシッ、メキッ、ボキリ!と骨の砕ける音がする。

 

「本当によかった~!」

 

この言葉を最後に大きくボキリ!と音がした。

嬉々はその時、白目をむいていた。

 

 

 

 

 

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「味方の…、しかもオペレーターからあんな攻撃を受けるとはな」

「真理奈は特殊なタイプのプロトだからね。もしもの時にオペレーターにも戦える人がいたほうがいいっていうことでああなってるんだよ」

 

真理奈はオペレーター兼プロトだ。

しかし、変わっている。

彼女は腕に力のみが異常に向上したのだ。

どういうわけか、足や他の部位には一切プロトとしての手術をしたにも関わらず特徴が見られない。

つまり訓練してもプロトには及ばないのだ。

腕の力を除いて。

腕の力はロスと同等ではないかといわれている。

それくらい強くてもオペレーターとして働いているのは戦闘向きではないからだ。

さっきも書いた通り、腕以外はただの一般人と何ら変わらない。

訓練しても限界値が低いのだ。

そんな中、戦場に投げ出されればオスのいい餌だ。

 

だから配属されたのがオペレーター。

もしも攻め込まれたときの防衛装置としても働きも考えたらいいことずくめ。

腕の力だって、いつもなら思うように操作ができるので物を壊すことはない。

 

だが、この子は涙もろいらしい。

すぐに感極まってしまい、嬉々のように友達が危ない戦地から帰ってきたときには思いっきり抱きしめるという。

これで嬉々は4度目だそうだ。

 

「まぁ、俺はそれに感謝しているがな」

「というと?」

 

嬉々の骨が折れたのはあの場にいただれの目から見ても明白だった。

すぐに担架が運ばれてきて連れていかれた。

結局嬉々は1週間を病室で過ごすことになった。

おかげで穂香をそこに預けることができ、美嘉の手からうまく逃れさせられた。

 

あとで真理奈にお礼でも言っておこうと思っているくらいである。

 

「なら恭二にでも言っておきなよ。あの人ならすぐ会えるんじゃないかな?」

「なんで恭二なんだ?」

「真理奈は恭二にとって彼女であり、タイプAのメディアトールでもあるんだよ」

「そんな密接な関係なのか?」

「どちらもまだアツアツだよ」

 

笑いながら青羽が言う。

 

しかし、面白いと正影は何度も思っていた。

真理奈が彼氏を持っていることではなく、真理奈がタイプAだということだ。

ある意味不完全であるにも関わらず、タイプAと珍しいタイプだ。

これのおかげで恭二は腕の力以外、ほとんど上がっていない。

だから、手を主体にして戦っているのだろう。

 

「正影には誰かいい人はいないの?」

 

ココアを入れたコップを差し出してきた。

断る理由なんてないので受け取る。

 

「付き合っている人ということか?」

「冗談でなら穂香って言いたいところだけど、今は真剣で」

「…」

 

想っていた人ならいた。

だが、それも昔の話。

 

「いない…な」

「正影、それは今の話じゃないの?昔も含めなよ」

「よくわかったな。だが、昔のことを話すつもりはない」

「女の勘ってやつだよ。でもなぁ…、伴侶作ってもらいたいんだけどなぁ」

 

こいつは何を言ってるんだ?と思いながらココアを飲む。

 

「…あっ、伴侶じゃなくてもいいか。子供さえできれば」

「子供の体をいじくりまわす気か?」

「生憎、私はそこまで趣味が悪くないんだ。ただ、かわいいだろうしロスの子供ってどんな力を持っているのか周りから観察できるしね」

 

別に青羽は研究員のような役職には就いていない。

だが、このアルツェの中ではかなり高い位置に就いている。

そうなると必然的にいろいろな責任なりなんだりを押し付けられるのだ。

例えば研究対象の実験許可を最終的に出すのは青羽になっている。

そうなると研究の風景はよく見るようになるのだ。

穂香をプロトにするとき、青羽が指揮をとっていたから正影は少し警戒した。

だが、彼女はただそういうのに携わっているだけ。

興味も関心もほとんど人並みで、子供が見たいと言ったのは本当に上の2つの理由が原因である。

 

「もしやりたくなったらいつでも言ってよ。君ならOKだから」

「前向きに検討しておこう」

「…本当に女性に興味がないんだね。本当はロリコンなんじゃ?」

「違う」

「じゃあ、まさかのホモ!?それだと子供が出来ないから困るんだ―――」

「お前らは本当に変なレッテルを俺に貼るのが好きだな」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

時間が経ち3日後。

 

「嬉々さん退院おめでとー」

「ありがとう、穂香ちゃん」

 

無事、復活した嬉々を穂香が祝いながら歩いている。

他に人はいない。

他の人は4度目にもなってくると死ぬ瀬戸際に立っていたわけでもない以上、祝いには来ない。

今日は祝いに穂香が嬉々に飯を奢るそうだ。

本当はもっと違ったことがしたかったようだが、子供であるが故制限がいろいろとかかってしまい1人では難しかった。

それに無駄にやることも豪華にしようとしていたので、美嘉も慌てて止めに入ったという。

 

「ごめんなさい、こんなことしかできなくて…」

「何言ってるのよ。気持ちだけで十分だったのに奢ってもらえて嬉しいよ」

「本当?」

「本当よ」

 

それを聞いて笑顔になる穂香。

自然と足取りが早くなった。

 

食堂に着く。

 

「嬉々さん、何が食べたい?遠慮しないで言って」

「じゃあ麺類を貰おうかな。うどん」

「もっと高いものだっていいんだよ?」

「病室だと麺類が出なかったの。だから食べたくてね」

「そう?わかった」

 

子ども相手に馬鹿みたいに高いものは頼めない(別にそこまで高いものはここにはない)。

麺類が食べたいのも事実だったのでそれで手を打つ。

 

食券を買ったらあとは席を見つける。

周りを見ると面白いペアの2人がいた。

 

「あれ…、正兄と一緒にいるのは青羽さん?」

 

嬉々が困惑する中、穂香は何事もないかのように「パパ!」と言って嬉々の手を引っ張る。

 

「穂香。おお、嬉々。退院したのか」

「う、うん。そうなんだけど…」

「どうした?」

 

何の違和感もなく、隣にいる青羽が気になって仕方がない。

正影たちに背を向け、穂香に顔を近づける。

 

「穂香ちゃん、あれ何?青羽さんと正兄、付き合ってるの?」

「詳しくは知らないけど…、お世話になるとか」

「え?」

「今は私たちの部屋に寝泊まりしちゃってるし」

「ウッソ!?ロリコンの正兄が青羽さんに興味を?」

 

青羽は別にロリ体型ではない。

身長普通、胸も普通にある、顔だって別に童顔というほどではない女性だ。

嬉々にとって衝撃としか言いようがない。

 

アルツェ内でロリコンと言われている正影。

9割がたが冗談だと思っているのだが、1割は思っていない。

その1割には嬉々が入っていた。

いや、正確には完璧にロリコンだと思っているわけではない。

だが、可能性が捨てきれずそうなっているのだ。

 

「青羽さんと正兄かぁ…」

「…勘違いしてるような気がするから言っておくが、別にこいつとは付き合ってないぞ」

「同じ部屋で寝てるのに?」

「同じベッドじゃない。こいつはソファだ」

「あれ、狭いからベッドで寝かせてほしいんだけど…」

「なら自分の部屋に戻ればいい」

「そうすると朝早く起きないといけないから私には辛いんだよ」

「朝飯くらい抜けばいいだろう。お前のせいで一部で付き合ってるっていう噂がたってるんだぞ」

「私にとっては名誉だね。相手がロスだし」

 

正影が懲罰房から出て5日目までのうち後の3日間は寝泊まりしている。

穂香は気軽な人が来たと喜んでいる。

 

「俺にとっては不名誉だ」

「私だって結構上の人なんだけどな…。それに上はTシャツに下はボクサーパンツっていうサービス付きなのに」

「目に毒だ」

「…ここまで言われたのは初めてだよ」

 

穂香には甘いくせに、他の女性のアプローチには冷たい。

こんなことだから正影のロリコン疑惑が完璧には消えないということを彼は知らない。

 

「付き合ってるわけじゃないんですね」

「ごめんね、嬉々。もし正影とやることになったらその時は嬉々も誘うから」

「やること?。……な、何口走ってるんですか!?」

「何のことだと思ったの?」

「え?…………」

「嬉々エッチー。やっぱりイジリがいがあるなぁ」

 

嬉々は顔を赤くして縮こまってしまった。

穂香が頭を傾けて「何の話?」と訊きた気だが訊いても誰も答えないだろう。

しかし嬉々が縮こまった時、何かを思い出したかのように「あっ!」というと一枚紙を取り出した。

 

「なんだそれは?」

「ラグフィートさんから次の指令だって」

 

紙にはオスが写し出されている。

ランクは4。

見た感じは…

 

「…羊か?」

 

体全体が毛のようなものでおおわれているのが分かる。

どういうわけか顔に目らしきものが4つ、ついているがそこはどうでもいい。

別に珍しいことじゃない。

 

「あー、それ?」

「知ってるのか?」

「こちらから攻撃しない限り何もしてこない珍しいやつだったよ。なぜか似たようなのが多いから名前もついてるよ。『ミーク』だって」

 

自分から攻撃しないオス。

ならば討伐する理由は何か。

 

「おそらく穂香も参加するでしょ?」

「うん」

「どういう意味だ?」

「簡単に言えば昇格…かな。ここの討伐部隊、明季を隊長にしているあれはどうやって人を選抜してるか知ってる?」

「さぁ?」

「戦わせて力を見るんだよ。最初はランク2から始まるんだけど穂香は特別かな。同じレベルの人を集めて敵と戦わせる。勝てば昇格、負ければ死ぬかそのまんま。まぁ、昇格しても部隊に入る権利がもらえるだけで何も変わらないんだけどね」

 

正影には分からない。

あの部隊は確かに強い。

だが、それだけではだめなのだろうか?

強いというだけではだめなのだろうか。

個人が強ければ、部隊なんて作らなくていいはずだ。

それをラグフィート直属の部下である青羽に聞くのはあれなので後で美嘉にでも聞こうと考えておく。

 

「頑張ってね。1人1人が強ければここのアルツェも安心だから」

「うん、パパも頑張ろうね」

「…俺もやるのか」

「いや、正影は監督じゃないかな。君が戦ったら他の人の実力が分からないよ」

「監督?」

「いつもは明季がやるんだけど…たぶんめんどくさがってたから」

 

それは俺も同じだと反論したい。

だが、これは穂香の訓練の成果を見るいい任務でもある。

どこまで強くなったか見ておきたい。

 

「…はぁ」

「初めての授業参観だね、保護者さん」

「そうだな。穂香、楽しみにしてるぞ」

「任せて!」

 

顔を輝かせて返事をする穂香。

 

「…で、嬉々。お前はいつまでそうやってるんだ?」

「……あと37分」

「なんだ、その説得力のない具体的な数字は?」




夏前はいろいろやることが出来て大変です…。
そして暑くて大変です…。
なんで夏ってあんなに暑いんだろう?

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