こういうこと、これからもあると思いますのでその時はすみません。
今回も楽しんでってください!
朝10時。
正影は起床する。
「ん…?」
隣に置いてある時計が10時を指していた。
いつもはこんなに遅くない。
昨日の麻酔のせいであろう。
眠気が無く、すっきりとした目覚めだ。
「…これだけ深い眠いにつかせる麻酔って…」
昨日、あっちに呼び出されたのは午後1時ごろ。
甘く見積もっても2時にはすでに麻酔をかけられていたはず。
そこから今までぐっする眠るなんてどれだけ強力な麻酔なんだと少し怖くなる。
隣を見れば穂香が寝ている。
安心した子供の寝顔。
思わず撫でたくなる。
頭を撫でる。
すると起きた。
「パパ?」
「すまん。起こしてしまったか」
「ううん。なんだかいい目覚めのような気がする」
目をこすりながら起き上がる。
布団から出た穂香は裸だった。
「…何で裸なんだ?」
「パパも人のこと言えないよ?」
言われて気づいた。
正影も裸だ。
「あの女…」と、心の中で舌を打つ。
「穂香、とりあえず服を着るぞ。ここで嬉々が来ようものならどんな濡れ衣「正兄おはよー!」」
タイミングを計ったがのごとく、嬉々が入ってくる。
鍵がかかっているはずなのだがどういうことなのか?
「今日は初の討伐任務なんだってね?私、一緒に行きた…」
裸でベットの脇に立っている穂香とベッドの中にいる正影を見て思考が止まる。
元気に穂香が「おはよー」と手を振っているが嬉々はそんなの関係ない。
「正兄…」
「そんな目をするな。確実に誤解だ」
嬉々が考えていることは分かる。
ロリコンだと変な確信を持たれてしまっては後で困る。
しかし、ここで焦らないのが正影だ。
彼が焦ったり、感情の起伏を激しくできる相手はただ一人だ。
「じゃ、じゃあ正兄は穂香ちゃんを裸で毎日寝かせてるの?」
「…俺がそんな変態行為をする理由を聞かせてもらいたいな」
「ロリコンだから?」
「俺のロリコンは何度も言うが欲情などの変態の類ではない。守りたいという意志だ」
「…っていうか正兄も裸…」
「青羽に尋ねればすべてわかる」
その言葉を聞いて嬉々の顔が疑っている顔から、納得した顔に変わる。
「ああ、青羽さんが関わってるのね?それなら納得」
「…話が早くて助かるが、青羽と聞いてそう簡単に信じるのか?」
「あの人は面白いこと好きだもん。私のことを狙ったんだと思うよ」
…。
青羽はおそらくラグフィート直属の部下。
そんな人がこんなんでよくここが成り立ってるなと疑問を持つ。
「嬉々、とりあえず俺はこれから服を着る。話はそのあとでいいか?」
「分かった。じゃ、外で待ってるから着替えたら教えてね」
嬉々が外に出て行った。
「ねぇパパ」
「なんだ?」
「嬉々さんは何を考えてさっきまでパパのこと悪く言ってたの?」
「お前が知ることはない。とりあえず今は服を着ろ」
「はーい」
――――――――――――――――――――――――――――――
「―――っていう話を聞いたから、私も同行したいなって」
正影たちの着替えが終わり、本題に戻る。
今日嬉々がここに来た理由は正影のアルツェの討伐任務に同行したいということだそうだ。
「構わないが、お前の仕事はいいのか?」
「正兄、仕事の内容知ってるの?」
「紙はもらったけどまだ読んでない」
ラグフィートからもらった紙をひらひら見せる。
「かみ砕いて言えば、同行できる人数は最大6人。討伐対象は自分で選べるの。もちろん強い相手を相手にするほど報酬は多くなるよ」
「働いた分だけもらえる金額が大きくなるのか」
「もっとも、それで死んだら元も子もないから慎重に、と言いたいところだけど正兄にはいらない心配だよね」
「…そうでもないさ」
ここに来る途中で会った巨大なイモムシを思い出す。
正影はその名称は知らないが、姿形が完璧に頭に焼き付いている。
「そう?まぁ正兄が心配するならそれに越したことはないけど」
「今回の討伐対象は分かるか?」
「最初だから指定されてると思うけど…私は知ら「それは私が答えよう」」
扉の方から明季が堂々と入ってきた。
確かこの部屋の鍵は指紋認証で俺以外まだ登録されてないはずなのだが…。
「私は以上のクラスになると基本はこの施設のどの部屋も入れるのよ。そこの2人は親族ということで既に登録済み」
「…おはようエスパー。で、今日の討伐任務の対象は?」
「こいつよ」
紙を見せてくる。
紙には「ブロッグニモヌス」と書いてあり、隣に画像がある。
「〇型のオス、じゃなくて名前がついているのか?」
「こいつはそこらへんのプロトでは倒せないと判断されたランク5の敵よ。オスにはランクがあって、1~8まである内の1~4は基本プロトが、5、6は私たち討伐部隊が、7以上は手を出してはならないということになっているのよ。それで、5以上のオスには名称が与えられるの」
「…つまり俺は初戦から普通のプロトが相手できないような相手とやりあえと?」
「あれだけのオスを瞬殺してよくそんなこと言えるわね。これはあくまでウォーミングアップよ」
明季が言ったのはペリコラムでの敵との戦闘。
穂香を降ろした正影は無双した。
「あれはあくまで俺が本気を出した時の話だ。あれをした後は反動が強くて滅多に使わない」
「何はともあれ、あなたのおかげで少しは私たちの出番も減りそうで助かるわ」
明季が話し終えたところでピピピ!、と音がした。
明季が腕時計を確認する。
「時間だ。後聞きたければヘリの中で聞いてあげるわ」
「まだ10時30分だが?」
「できる限り早くに行動するに越したことはないわ」
「そうか。まぁ構わないが」
「あ、あの!」
正影が立ち上がり、行こうとして嬉々が呼び止める。
「嬉々…、だったわね。来たいなら来て構わないわ。好きにしなさい」
「また、質問する前に答えやがった…」
「あ、ありがとうございます!」
「行くわよ」
――――――――――――――――――――――――――――――
ヘリの搭乗して「ブロッグニモヌス」のいる場所へ向かている。
乗っているのは明季、恭二、穂香、正影、嬉々の5人だ。
いくら相手がランク5のプロトでは倒せない強敵とはいえ、このメンツではおそらく歯が立たない(オスが)。
これから狩られるこのオスのことを思うと少し心が痛いほどだ。
「隊長、目的地到着まであと5分切りました」
「そうか」
このヘリ、今回乗るときはじめて気づいたのだがガトリングやミサイルなど武装していた。
一応、対オゥステム仕様になっているらしく、これでも戦えないこともない。
いや、戦える。
ただ知っての通りガトリングやミサイルは消耗品だ。
接近戦用の武器ならば欠けても補強するだけで済むのでアルツェとしてはこれをあまり使いたくないらしい。
「正影」
明季が正影に呼びかける。
「なんだ?」
「今回の戦闘はお前1人に任せる。我々は後ろから後方支援を行う。それでいいな?」
「構わないさ。あれくらい問題ない」
先ほど見せてもらったデータによれば相手は20m級のオス。
型はウミウシ、あるいはナメクジ?だそうだ。
「ただ、1つ質問だ」
「相手はそこらへんのオスと違って分裂するの。死の間際にね」
なんでたかが20m級がプロトに倒せないんだ?と質問しようとして先に答えられる。
「分裂?」
「倒す方法はおそらくコアの破壊のみ。ただ…、こいつのコア未だに見つかってないの」
「コアが?」
「戦闘能力自体は低いからプロトでも倒せるの。でも不死身を相手じゃ無理な話。そこであなたの出番ってわけよ」
「丁寧な解説どうも、エスパーさん」
ヘリの高度が下がり始める。
「そろそろ着くわね…。みんな準備しなさい」
それぞれが自分の武器を持つ。
ヘリが建物の屋上に降りる。
「降りるわよ」
明季を先頭にして正影たちが降りていく。
「ここも、ラフネシム?とかいうところと似てるな」
「ここももともとは建物がたくさん立つ予定だったらしいからね。さっ、とっとと敵を倒して帰るわよ」
「だけど、どうやって探すんだ?」
そう。
何を隠そう、ここは広い。
いくら相手が20mはあるとはいえ建物の陰で見えなければ探すのは一苦労。
レーダーでもこのあたりということしか分かってない。
建物を降りながら話す。
降りると言っても正規のルート(階段)ではなく建物の壁をワイヤーを使って降りているのだが。
「今回の敵はわざわざ痕跡を残してくれるの。こういうね」
降りたところで地面に大量の粘液がついているのが見えた。
その粘液はずっと遠くまで続いている。
「まだ固まってない。近いわね」
そこからは足で索敵を行う。
建物が並ぶここは身を隠すのにはうってつけだ。
こちらにとってもあちらにとっても。
建物を曲がったところで敵を見つける。
「敵発見。討伐対象ではない。10m未満のアリ型の模様」
『了解しました。皆さんなら問題ないですね。撃破をお願いします』
「了解」
耳に着けていた通信機からオペレーターと明季の声が聞き取れた。
『正影さん、聞こえますか?』
「ああ、聞こえる」
『今回の作戦のオペレーターです、リムといいます。よろしくお願いします』
「よろしくな」
『僕は状況を客観的に見て判断する立場にいます。もし、戦況等で悩みが出たときは連絡すればすぐにでますので』
ようはストッパーみたいなものだ。
仲間が死んで逆上したりすると、人は周りが見えなくなる。
そんな時にオペレーターが状況を見直して、助言をするのだ。
「助かる」
『それではご武運を』
回線が切れ、正影の意識が戦場に戻る。
陰から見えるのはアリ型のオス。
あれくらいなら全然穂香でも余裕だろう。
「私もそう思うわ」
「…もはや疑問以外でも読み取れるのか」
「穂香、あなたの力が見たいわ。あいつをお願いできるかしら?」
「任せて!」
「恭二、嬉々、手は出さないでもしもの時に穂香を助けられるようにして頂戴」
「「はい」」
恭二の装備はおそらく手についてるグローブのようなものだろう。
どういう構造かは知らないが、那倉のようにして戦うんだろうなとと思う。
そして嬉々が持っていたのは…
「嬉々、それは…」
「うん。正兄とおそろいだよ」
太刀だ。
嬉々の身長より少し小さいぐらいで見た感じは長い。
「じゃ、パパ。行ってくる!」
穂香がオスの視界に入った。
嬉々と恭二もすぐにでれるように構える。
穂香が距離が50mも離れていないのにスナイパーを取り出す。
「本当にロスのように武器を取り出すのね」
初めて見た明季が感心する。
「なんでスナイパー?」
嬉々はそちらに目が行っている。
確かに50mも離れていれば撃てばスナイパーでも対応できる。
だがそれは本来動かない相手を相手にした場合だ。
オスとなれば50mなんて距離、すぐに縮めてくる。
使うならマシンガンか、ショットガンあたりが妥当なところだ。
「ぎゅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」
オスが迫ってくる。
しかし、穂香は焦らない。
一度、何体もの40m以上に追いかけられたのだ。
たかだか2,3mなど恐怖するにあたいしない。
1発、銃弾がオスに撃ち込まれる。
が、オスは歩みを止めない。
しかし、穂香はもう銃を構えていない。
「穂香ちゃん!?」
出ていこうとする嬉々を正影が止める。
「やめろ」
「なんで!?あのままじゃ!」
「もう勝負はついた。穂香の手柄を横取りする気か?」
「え?」
嬉々が穂香のほうを見る。
するとオスは歩みを止めかけていた。
動きたくても動けない、といった感じのようだ。
やがて完全に停止する。
「コアを壊したの?」
「いや、あいつのスナイパーの付属効果だ。即効性の毒がついていて10分ほど動けなくさせられる」
「…それならどんな敵も余裕じゃないですか?」
「生憎、あいつの毒は大きくて20mが限度なんだ。しかも大きくなればなるほど効果時間が短くなり最短1分だな」
「パパー!やったよ!」
穂香が元気よく手を振りこちらを見ている。
「ああ。頑張ったな」
褒められると嬉しそうに顔を笑顔にする。
そのあとナイフを取り出し解剖を始めた。
「あれなら安全にコアを探せるということですね」
「ああ。なかなかいいのうりょ「パパ、見て!」」
走ってくる穂香。
今回のオスに血は通ってなかったらしく血はついていない。
手には水晶のような玉がある。
「これなら売れるんじゃないか?」
「…だいたい2~3万たりね」
「穂香ちゃんすごいね」
「えへへ…」
穂香が大事に玉を抱える。
「とりあえず、その子の力は分かったわ。じゃ、正影、次はあなたの番よ」
「ああ、期待に応えられるよう、善処しよう」
さて、ようやく戦闘再開です。
正直、正影はこの物語ではチート並みの力を持っているのでどうやって扱っていくべきか少し不安です。
これからも読んでもらえたら幸いです。