子連れ番長も異世界から来るそうですよ?   作:レール

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今回は説明会+べるぜバブ組フラグなので一週間空ける必要はないかなと連日投稿させていただきました。


異世界への説明

自己紹介をしてから少し経ったが、それから動かない状況にそれぞれ愚痴を漏らし出す。

 

「で、呼び出されたはいいけど何で誰もいないんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?」

 

「そうね、何の説明もないままでは動きようがないもの」

 

「・・・この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思う」

 

(全くです)

 

もっとパニックになってくれれば飛び出しやすかったのだが、場が落ち着き過ぎているので出るタイミングを計れない黒ウサギである。

 

(まぁ、悩んでいても仕方が無いデス。これ以上の不満が噴出する前にーーー)

 

「ウサギ、ゲットだぜ‼︎」

 

「ダーッ‼︎」

 

「フギャ⁉︎」

 

男鹿にウサ耳を掴まれて捕まってしまった。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを‼︎ 何でいきなり黒ウサギは捕らえられているのですか⁉︎」

 

「そこにウサギがいたから」

 

「貴方はウサギハンターですか⁉︎」

 

黒ウサギにとってとても理不尽な理由であった。

 

「・・・仕方がねぇから隠れている奴に話を聞こうとしたんだが」

 

「辰巳君が捕まえてくれたわね。というか貴方も気付いていたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いてる奴も気付いていたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でも分かる」

 

「・・・へぇ?面白いなお前」

 

理不尽な招集を受けた腹いせに軽く殺気を籠めた視線を向ける三人と、少年の様な好奇心の目を向けている男鹿とベル坊。

そんな視線に晒されている黒ウサギは、冷や汗をかきながらもなんとか笑顔を浮かべて言葉を発する。

 

「い、いやですねぇ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?えぇ、えぇ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じて此処は一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

 

「断る」

 

「却下」

 

「お断りします」

 

「どうでもいいが、この耳ってどうなってんだ?」

 

「アー?」

 

「あっは、取りつくシマもないですね♪ ていうかそろそろ離しません?」

 

バンザーイ、と降参のポーズを取りながら男鹿の手から逃れ、場を和ませようと明るく振る舞う黒ウサギ。

しかし、その裏では全員を値踏みするように密かに観察していた。

 

(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。まぁ、扱いにくいのは難点ですけども)

 

そんな風に考えている黒ウサギの背後から、不思議そうな顔をした耀が近付き、

 

「えい」

 

「フギャ‼︎」

 

ウサ耳を力いっぱい引っ張った。

 

「ま、またですか⁉︎ 触るまでなら黙って受け入れますが、初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとはどういう了見ですか⁉︎」

 

「好奇心の為せる業」

 

「自由にも程があります‼︎」

 

「へぇ?やっぱりそのウサ耳って本物なのか?」

 

「・・・じゃあ私も」

 

ウサ耳を引っ張る耀の反応を見て、十六夜と飛鳥も興味を示した。

十六夜が右耳を、飛鳥が左耳を掴んでさらに引っ張ろうとする。

 

「ちょっと待っ、そちらの御方様‼︎ 黒ウサギを助けて下さい‼︎」

 

自分では対処しきれないと判断して参加していない男鹿に助けを求める黒ウサギだったが、

 

「ちょっと待てよベル坊。こういうのは順番だからな」

 

「ダッ」

 

教育的には良いことを言っているが黒ウサギ的には悪いことを言って三人が引っ張り終わるのを待っていた。というより黒ウサギも一番最初に襲ってきた男鹿に助けを求めるのは判断ミスだと言わざるを得ない。

結局助けてはもらえずに黒ウサギの耳は引っ張られて言葉にならない悲鳴を上げ、その絶叫は近隣に木霊したのだった。

 

 

 

 

 

 

「あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」

 

「いいからさっさと進めろ」

 

五人は黒ウサギの前の岸辺に座り込み、彼女の話を聞くだけ聞こうと言う程度には耳を傾けている。

 

余談だが、男鹿は黒ウサギを捕まえる時に触っていたので順番待ちしていたのはベル坊のみであり、ベル坊は撫でるように触っていたことが唯一の救いである。

“この中で一番まともなのが赤ん坊なのでは?”と考えてしまった黒ウサギは悪くないと思う。

 

「それではいいですか、皆様。定例文でいいますよ?・・・ようこそ、箱庭の世界へ‼︎ 我々は皆様にギフトを与えられた者達だけが参加できる“ギフトゲーム”への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです‼︎ 既に気付いていらっしゃるでしょうが、皆様は普通の人間ではございません‼︎ その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。“ギフトゲーム”はその恩恵を用いて競い合うためのゲームです」

 

確かに男鹿の力は悪魔、それも魔王からの力なのでその説明に疑問はないが、“与えられた”というよりは“押し付けられた”というのが男鹿の認識としては正しいだろう。

 

「貴方の言う“我々”とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「Yes‼︎ 異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある“コミュニティ”に必ず属していただきます♪」

 

「嫌だね」

 

「属していただきますッ‼︎ そして“ギフトゲーム”の勝者はゲームの“主催者(ホスト)”が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」

 

「・・・“主催者”って誰?」

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏から、力を誇示する為に独自開催するグループもございます。前者は参加自由ですが命の危険もあるでしょう。その分見返りも大きいですが。後者はチップを用意して参加し、敗退すれば“主催者”に寄贈されるシステムです」

 

「後者は結構俗物ね・・・チップには何を?」

 

「それも様々ですね。金品、土地、利権、名誉、人間・・・そしてギフトを賭けあうことも可能です。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然ご自身の才能も失われるのであしからず」

 

「要するに、喧嘩して勝てばなんか貰えんだな」

 

話が長くてよく聞いておらず、一言でまとめた男鹿だった。

 

「確かに戦って“力”を示すものもありますが、謎解きなどの“知”を競うものもあります」

 

そんな“ギフトゲーム”を男鹿が受けてしまえば、“ベヘモット三十四柱師団”のケツァルコアトルとのゲームの時と同様に開始二秒で心が折れてしまうだろう。

 

「・・・つまり“ギフトゲーム”とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

お?と驚く黒ウサギ。

 

「ふふん?なかなか鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも金品による物々交換は存在しますし、ギフトを用いた犯罪などもってのほかです・・・が、しかし‼︎ “ギフトゲーム”の本質は全くの逆‼︎ 一方の勝者だけが全てを手にするシステムです」

 

「そう、なかなか野蛮ね」

 

「ごもっとも。しかし“主催者”は全て自己責任でゲームを開催しております。奪われるのが嫌なら初めから参加しなければいいだけの話でございます」

 

黒ウサギは一通りの説明を終えたのか、一枚の封書を取り出した。

 

「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。ここから先は我らのコミュニティでお話をさせていただきたいのですが・・・よろしいです?」

 

「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」

 

今まで黙っていた十六夜が軽薄な笑顔を消して黒ウサギに問う。

それに対して黒ウサギも構えるように聞き返した。

 

「・・・どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」

 

「そんなことはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。オレが聞きたいのはたった一つ・・・この世界は面白いか?」

 

他のみんなも無言で返事を待つ。

彼らを呼んだ手紙には『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と書かれていたのだ。それに見合うだけの催しがあるかどうかが重要なのである。

男鹿に関しては知り合いに次元転送悪魔アランドロンがいるので、“ベル坊命”の侍女悪魔ヒルダが何とかするだろう、としばらくは面白そうだしこちらにいるかと考えている。

 

「Yes‼︎ “ギフトゲーム”は人を超えた者達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」




今回はここまでです。
次からはオリジナル展開をちょくちょく入れていきますので予定通り一週間に一話投稿となります。
また来週にお会いしましょう‼︎

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