子連れ番長も異世界から来るそうですよ?   作:レール

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今年初の更新になります‼︎
今回は少し走り気味の内容となっているかもしれません。

それではどうぞ‼︎


魔遊演闘祭・予選開始

嫉妬の魔王と名乗った“七つの罪源”レヴィアタンは、部屋に備え付けてあったティーセットで黒ウサギ達にお茶を入れていた。ベルフェゴールは部屋にあるソファの一つで寝たままだ。

黒ウサギ達は出されたお茶を飲みながら祭りに来た経緯を説明した。

 

「大魔王の奴、箱庭に戻ってくるのが面倒くさいからって押し付けたんだろうな」

 

「ま、まぁその前からソロモン商会とは関わってましたし、結果的には援助してもらえて助かってます」

 

レヴィアタンは基本的に気さくな性格の人物のようで、黒ウサギ達もそこまで畏まらずに話をしている。

 

「なぁレヴィアタン。さっきそこのベルフェゴールが“七大罪が二人来ている”って言ってたんだが、本当か?」

 

黒ウサギが一通り事情は説明し終えたので、今度は十六夜が質問をぶつける。

 

「あぁ、本当だぞ。マモンとレヴィアタン、確認してるのはその二人だ」

 

「特徴は?」

 

「マモンの方は知らないな、契約者って言う奴しか見てない。丁度お前くらいの男だったぞ」

 

どうやら既にマモンは契約してしまっているらしく、鷹宮と同じで相手次第では敵対することになるかもしれない。

 

「レヴィアタンは未契約って言ってたな。特徴は「すみませーん、罪源の人いますかー?」うん、こんな奴だ」

 

レヴィアタンの説明中に扉が開き、女性の明るい声が響き渡る。そこに現れたのは紫髪でセミロングの女性ーーー七大罪のレヴィアタン(レヴィ)だ。

 

「おーい、逆廻達もいるかー?」

 

その後ろに続いて現れたのは別行動をしていた男鹿達だ。黒ウサギ達からすると何故少し姿を消していただけで七大罪と一緒に来ることになったのかが疑問で仕方ない。

 

「よかった、上手く合流できたな」

 

「レティシア様、そちらはいったいどのような経緯で今の状態に?」

 

最後に入ってきたレティシアに別行動となった後のことを確認する。レティシアは男鹿から聞いた内容を伝え、その後に黒ウサギも別行動となった後の事を話した。

 

「すごい偶然・・・なのでしょうか?この地に半数の七大罪が集結しているなんて」

 

「私としては、そのベヒモスと名乗った老人の方も気になるな」

 

「と言うと?」

 

「今、我々が探しているのがベヒモスなのだ。ギフトゲームのヒントとして名乗っているならばまず間違い」

 

そう言って黒ウサギに“契約書類”の内容を見せ、十六夜にもレティシアの解釈があっているかどうか聞いてもらう。

 

「なるほど、確かにその解釈じゃ八割だな。でもそこまで気にする必要はないと思うぞ?」

 

それを聞いた十六夜はレティシアの解釈に少し意見を加えていく。

 

「レヴィアタンが造り出されたのは旧約聖書の“創世記”にある天地創造だが、レヴィアタンが登場するのは何もそれだけじゃない。同じ旧約聖書の“ヨブ記”では元々レヴィアタンは雌雄で二頭存在していたんだよ。しかし気性が荒くて危険と判断されたレヴィアタンは、これ以上繁殖しないように雄が殺されちまうんだ」

 

「つまり、その時点で世界の終末に神へと捧げられるはずの供物が欠けてしまっている、ということか」

 

「ああ。だから“契約書類”の最後にある“欠かさず供物を探し出せ”っていうのはレヴィアタンとベヒモスの二頭じゃなく、欠けてしまったレヴィアタンも含めて三頭集めろってことだな。いや、三頭というより三人って言った方が正しいか」

 

十六夜は目線を逸らして二人のレヴィアタンを眺める。ベヒモスも判明していることだし、ギフトゲーム攻略の鍵はほぼ出揃っている。

 

「それに捧げる神についても、文面から分からなくても何となくは予想できてるしな」

 

「む、文面から分からないのにどうして予想できるのだ?」

 

「あくまで予想だが、それを言ったらつまらないだろ?でもまぁ、ベヒモスと男鹿達が話をすれば自ずと分かるはずだぜ?」

 

“あいつらのリアクションが楽しみだ”、と言いつつ話を打ち切る十六夜にレティシアの頭は疑問でいっぱいだった。

 

 

 

それぞれ自己紹介が終わり、人が増えて少し狭くなった部屋で話は続けられる。

 

「そういえば、あんたらは明日から始まるメインのギフトゲームには出るのかい?」

 

「俺は出る」

 

「俺もだ」

 

レヴィアタンの問い掛けに男鹿と鷹宮は即答する。

 

「お二人はギフトゲームの内容をご存知なのですか?」

 

黒ウサギはギフトゲームの内容を知らないので即答した二人に聞いてみる。

 

「殴り合う」

 

「・・・そ、そうですか」

 

男鹿からの当てにならない答えを聞いて黒ウサギは口元をヒクつかせている。本当に男鹿が知っているのはそれだけなのだ、よく即答したものだと思う。

 

「あまり私向きのギフトゲームではなさそうね。今回も応援かしら」

 

「だったら今回は私も応援に回ろうかな」

 

少し不満気に呟く飛鳥。ディーンを使用すれば戦闘にも対応できそうだが、祭りという形式上どのように立ち回ることが必要か分からないのでその巨体では臨機応変に対応できない。耀も今回は“火龍誕生祭”の時ほど参加意欲はないようで、飛鳥と一緒に応援に回ると言っている。

 

「まぁ多少はそういう側面もあるが、全部がそうじゃないし内容もチーム戦だ。戦闘とそれ以外で活躍できる組み合わせで挑むこともいいと思うぞ。優勝じゃなくても景品はあるしな」

 

参加に消極的な二人に、主催者の一人として楽しめるように提案する。

 

「どうせなら“箱庭の貴族”にそのギフトゲームの審判を頼みたいんだが、どうだろうか?」

 

“箱庭の貴族”に審判をされたギフトゲームは箔付きのゲームとして箱庭中枢に記録される。どうせならそういうゲームにしたいというレヴィアタンの要請に、黒ウサギは申し訳なさそうにする。

 

「すみませんが、黒ウサギは“サウザンドアイズ”の専属ジャッジとして契約していますので、許可なく引き受けるわけにはーーー」

 

「あぁ、言い忘れてた。白夜叉には許可はもらってるんで後はあんたのやる気次第だ」

 

追加でレヴィアタンから齎された情報に黒ウサギの言葉は遮られてしまう。しかもその内容は黒ウサギにとって初耳ものだった。

 

「白夜叉様もこの地に来ているのですか?」

 

「少し前からな。今はギフトゲームに参加する前に連れと祭りを回ってるんじゃないか?」

 

その言葉に真っ先に反応したのは古市だ。

 

「はぁ⁉︎ 白夜叉さんも出んの⁉︎」

 

古市は白夜叉のデタラメ加減を話として聞いているので彼女のギフトゲーム参加に戦々恐々としていた。

そんな古市の反応にレヴィアタンは呆れたように返す。

 

「出すわけないだろ、出るのは連れだけだ。仮に霊格を落としてる白夜叉であっても勝とうとしたら“罪()()王”でも()()()()()()必要があるからな。あんな化け物に今のまま勝てる可能性があるとしたら俺らの中じゃサタンだけだろう」

 

「霊格を・・・増やす?」

 

聞き慣れない言い回しに古市は疑問で聞き返す。

 

「いやまぁ、今そのことは関係ないな。話が逸れた、それで審判の件はどうだろうか?もちろん金銭も払うぞ?」

 

しかし今は長々と説明するつもりはないようで、古市の疑問は脇に置いて黒ウサギに審判を引き受けてくれるかどうかを確認する。

 

「分かりました。そういうことでしたらこの黒ウサギ、慎んで審判の役目を承らせていただきます」

 

許可が出ている以上は黒ウサギに断る理由はない。彼女の了承を確認してその場はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

翌日、“ノーネーム”+レヴィは再び運営本部の城を訪れていた。今日は挨拶ということではなく、ギフトゲームの集合場所として他の参加者も集まっている。

目測では百人近くの参加者がいるのだが、恐らく個人で参加している者は少なく参加チームはその半数以下だろう。

 

ちなみに“ノーネーム”は少しでも景品を手に入れようと三つのチームに分かれており、

 

①男鹿&レティシア

②鷹宮&飛鳥&耀

③十六夜&古市

 

という組み合わせになっている。

まずバランスよくチームを組むためにメンバーの中で戦闘力の高い三人、魔力を扱える三人をバラけさせた。この時点で③が決定、レティシアも王臣として力を何時でも発揮できるように①が決定、残りは消去法だが戦力を整えるという意味でも三人で②が決定した。

黒ウサギは審判、ジンとレヴィは観戦に回っている。

 

“何で半分も女子がいるのに俺は逆廻となんだよ‼︎”という誰かの抗議が出ていたのは余談だ。

 

そうこうしているうちに、長身に赤い長髪の男性が設置されていた壇上出てくる。

 

「“七つの罪源”憤怒の魔王・サタンだ。遠方から来た客人も含めて“魔遊演闘祭”を楽しんでくれているか?今回も俺達の行楽みたいな祭りに参加してくれて感謝する」

 

今挨拶をしていることと昨日のレヴィアタンの言葉から恐らくサタンが“七つの罪源”のトップだと思われるものの、見た目で言えばレヴィアタンよりも体格は細い。まぁこの箱庭において見た目で相手を判断することは愚の骨頂と言えるだろうが。

 

「長い話ほどつまらないものはないのでさっそくギフトゲームの説明に入る。今から集まってもらった諸君には四つのグループに分かれて予選を行ってもらい、そこで開催されるゲームをクリアした二チーム、計八チームが本戦に出場だ」

 

サタンが説明をしている傍ら、ベルフェゴールが怠そうにしながらもその隣へと進み出る。

 

「ギフトゲームへの登録用紙を参考に、最低限同コミュニティで同グループに分かれないように配慮しているので頑張ってくれ」

 

話の終わりを合図にベルフェゴールから魔力が迸り、参加者の四分の一がその場から姿を消した。“ノーネーム”からも男鹿とレティシアが消えている。

その事に参加者の動揺が広がっていくが、すぐにサタンから説明が入る。

 

「今消えた参加者は別空間に造ったゲーム盤へとベルフェゴールに転送してもらった。ベルフェゴール」

 

「おっけ〜」

 

ベルフェゴールの気の無い返事とともに周囲の空間に幾つもの亀裂が入り、そこから別の空間が映し出された。

そこは鍾乳洞のような天井が特徴的な巨大地下都市とでも呼べる空間で、天井から垂れている無数の鍾乳石の中にはロープが吊るされているものが無数にある。

 

大多数はその光景に釘付けだが、少数はベルフェゴールの圧倒的な力に息を呑んでいた。別空間の視認に別空間への跳躍、千里眼と瞬間移動。個人の力としても脅威的だが、さらにチーム戦であればその力がどれ程の脅威になり得るかは想像に難くない。

 

「それでは、あとの事は特別審判に来てもらっているのでよろしく頼む」

 

「はい、任されました‼︎ それではここからの進行及び審判は“サウザンドアイズ”の専属ジャッジでお馴染み、黒ウサギがお務めさせていただきます‼︎」

 

突然の“箱庭の貴族”の登場に参加者は先程とはまた違った喧騒に包まれていく。感激で騒ぐ者もいれば、己の欲求を叫んでいる者もいて“箱庭の貴族”の人気が窺える。そんな中でもさらに目立って騒いでいる者がいた。

 

「黒ウサギィィィィィィ何故モコモコの服装で審判をしておるのだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! それではお主のエロエロな肢体が隠れてしまって我々には夢も希望もないではないかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

何処かの駄神の魂を震わせる咆哮が響き渡る。来ているのは知っていたが、登場早々にいったい何を叫んでいるのだろうか。

 

「残念ですが白夜叉様、あの服装はあくまで白夜叉様の開催するギフトゲームの時に常備を任ぜられたものですので今回は自由。もう諦めて私服としても使用していますが、防寒のギフトがあってもわざわざ好き好んで雪国でもあんな薄着になりたくないです」

 

黒ウサギから淡々と告げられた事実に、白夜叉は膝から崩れ落ちて悔しそうに地面を叩いている。

 

「くそぉぉぉぉせめて参加者ではなく貴賓としてこの場にいればどうとでもできたものを・・・!!!! 私としては久しく責務のない参加者の身だからとその状況に甘んじるべきではなかったッッッ!!!!」

 

もう白夜叉の後悔の仕方が本気過ぎて周りが少し引いているが、それでも気にせず慟哭している。

 

「え〜、お馬鹿様はさておき。それでは第一予選、“蜘蛛の糸・極楽を目指せ”を開始します‼︎」

 

黒ウサギの宣言とともに参加者の前に“契約書類”が現れ、本戦出場の幕が開ける。




次回からようやく第三章の本編とも呼べる内容に突入です‼︎

ですが残念な事に明日からテスト、それが終われば実習と投稿する時間がなくなってしまうため更新が停滞してしまいます。
こんな小説を楽しみにしてくださっている方には申し訳ありませんが、しばらくの間はお待ちください。

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