IS学園特命係   作:ミッツ

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今回は監視カメラの密室の解決編です。
かなりの長文で説明しています。読みにくかったらごめんなさい。
あと、トリックにはあんまり期待しないでください。


密室の解

「本当に大丈夫っすか?彼女を連れてきたりして。」

 

「ええ、心配しなくても大丈夫ですよ。すでに寮の方の承諾はとってあります。少し門限を過ぎることになりますが責任をもって僕が届けると。」

 

「いや、そういうことを言ってるんじゃなくてですね。」

 

 亀山は頭を抱えるようにして後ろを振り返った。そこにはニコニコと笑顔を湛え手を振ってくる楯無の姿があった。これから殺人現場に行くなどとは微塵も感じさせない様子である。亀山はまさか杉下が彼女を捜査に同行させるなどとは夢にも思わなかった。警察官としての常識はこの人にも備わっていると思っていたのだが。

 

(すっかり忘れてたよ…。この人は警視庁きっての変人だってことを…。)

 

 大体いくら相手が裏の世界に通じる人間とは言え楯無は15歳の少女である。最悪、殺人犯と相対することもあり得る状況でわざわざ人質になりえる人間を現場に連れていくなどふつうは有り得ない。まあ、何度も人質になっている亀山が言えたことではないかもしれないが。もしや、この変人上司は彼女が事件の解決に役に立つと思っているのだろうか。

 

「おや、ここが事件現場のようですねえ。」

 

 とそんなことを考えているうちに事件現場についたようだ。現場はモノレール駅の目の前。周囲には駅以外に目立った建物はなく人の気配はあまりなかった。ただ、現場であろう場所には血の跡のような染みがいまだついており、そのそばには誰かが置いたであろう花束が添えてある。杉下たちはそこで手を合わせると静かに黙祷をした。一刻も早く犯人を逮捕することこそ、死んだ生徒と花束を供えた人へに報いることになると信じて。

 黙祷を終えると亀山はポケットから現場の状況を記した図を取り出すと、実物と見比べながら現場を散策し始めた。図に記された監視カメラの位置が果たしてあってるのか。これこそ亀山が考える密室を解く糸口である。ISに利用することが否定された以上犯人は監視カメラの眼を潜り抜けて被害者を刺殺したことになる。だが、亀山は念入りにカメラの角度や位置を確認したにも拘らず、カメラに映らずに被害者に近づくことのできる抜け道はついに見つからなかった。

 

「もしかしたら、犯人はマンホールから出てきて被害者をさしたのかもしれない。それなら、カメラに映らずに犯行が可能なんじゃ…」

 

「被害者の近くにマンホールなんてないじゃない…。それに、刃物を持った人間がいきなりマンホールから出てきたりしたら私でも声を上げて逃げるわよ。」

 

 楯無は先程から亀山の横について亀山が持つ図を横から覗いたり、亀山が思いつきで口に出す推理に突っ込みを入れたりしている。時々顎に手を当てて考え事をしている様子から楯無も彼女なりに事件を考察しているようだ。

 

「うーん。だったら、監視カメラにハッキングして映像を移し替えるとか…。」

 

「ここの監視カメラって市や駅が管理しているやつよね?そんなところにハッキングを掛けれるとしたら犯人はかなり優秀なクラッカーになるわ。それならわざわざこんなところに被害者を呼び出し手まで密室を作らなくても他にもっと楽な方法があったんじゃないかしら?」

 

 そう言われると亀山はぐうの音も出ず頭を掻くしかなかった。

 

「そもそもなんで犯人は現場を密室にしたのかしら?」

 

 楯無はそうつぶやく。密室を作る場合、理由としてまず挙げられるのは被害者を殺害されたのではないと偽装するためである。他に誰も部屋にいない状況で人が死んでいる状況を作り、警察に病死か事故、あるいは自殺だと思わせるのである。だが今回の事件はこれ等が当てはまらない。被害者は監視カメラによって作られた密室で確実に誰かに殺されたのだ。そこに事故や自殺の可能性を考える余地はない。つまり、この密室は殺人であることを偽装するために作られたものではないということだ。だとするならば…

 

「犯人にとって密室になったのは予想外の出来事だったんじゃ…。」

 

 そうは考えたもののいったい何があってこんな不自然な密室ができたのか?結局のところ犯人がどうやって被害者を殺害したのかが分からなければどうしようもないように思えた。横では亀山が監視カメラをにらみながら考え込んでいる。ふとその時、楯無はあることに気が付いた。

 

「あれ、そういえば杉下先生は?」

 

 あたりを見回すと花束が供えてあるあたりでじっと遠くを見つめる杉下の姿が見つかった。

 

「右京さんも何か手がかりがないか探してくださいよ。正直俺らじゃ手におえない感じなんすよ。」

 

「そうですか。ところで亀山君ここからIS学園まで大体どのくらい距離があると思いますか?」

 

「え?そうっすね。たぶん普通に歩いても10分はかからないから1㎞はないと思うんすけど。」

 

「まあ大体700から800ってとこね。けれどそれがどうかしたんですか?」

 

「ええ、少し気になったもので。」

 

 杉下はそういうと被害者が倒れていた場所、近くの監視カメラ、そしてまたIS学園の方角を見ると何やら考え始めた。

 

「楯無さん。ISのことについてひとつ質問をよろしいですか?」

 

「私に?…ええ、かまいませんけど…。。」

 

「ありがとうございます。では実際にISについているハイパーセンサーを使ってみてどのような感覚でしたか?」

 

「ハイパーセンサーですか?…そうですね、すごく思考がスムーズに行えるというか、周囲の情報を高速で処理できるんです。あとは感覚が鋭くなって広範囲の状況を理解できるようになったりしますね。」

 

「なるほど。では普通なら識別できないほど、遠くにあるものを識別することも可能だと。」

 

「?…はい、距離にもよると思いますけど。」

 

「右京さん、それがいったい何だっていうんすか。犯人逮捕につながるんですか?」

 

 右京の質問の意図が分からず亀山はしびれを切らしたようにそう尋ねる。すると右京は、顔の前で人差し指を立てるとわずかに口の端を上げ答えた。

 

「ええ、そうです。あくまで過程ではありますが犯人がどうやって高原詩織さんを殺害したのか解ったかもしれませんよ。」

 

 

 

 

「い、いったいどんなトリックが使われたっていうんすか。ハイパーセンサーってのはISの装備でしたよね?てことはやっぱり、犯人はISを使ったってことじゃ…。」

 

「待って。前も言ったけど学外でISを使うことは不可能よ。どうしたってIS反応が出る以上、それを誤魔化すことはできないわ。」

 

 亀山と楯無の言葉を聞いても杉下はどこ吹く風。冷静な面持ちのまま自分の推理を語りだした。

 

「まず最初に、先ほど楯無さんがこの密室は犯人が意図して作り上げたものではないといいましたが、おそらくその通りでしょう。この事件で犯人が密室を作って得をすることはありません。むしろ現場の不自然さを際立たせることにしかならないのです。

 

 ではなぜこのような状況になったのか?僕は犯人が事件当時現場にいなかった証拠を作りたかったからではないかと考えます。つまりアリバイ工作です。犯人は現場から離れた場所から高原さんを殺害しようとした。そのために殺害の瞬間が写らないように入念に現場を調査しこの死角を見つけたのでしょう。

 

 ところが、監視カメラの死角以外の場所、本来逃げていくはずの経路にはそれらしい人影が一切映っていなかった。これは犯人が犯したミスです。その結果このような密室ができてしまったのだと思います。では、いったい犯人はどうやって高原さんを殺害したのか?それを解く鍵はISです。いえ、もちろん犯人は学外でISを起動させいていません。犯人がISを起動させたのはIS学園の中です。

 

 事件当日、犯人は高原さんをIS学園に呼び出したのでしょう。その際時間も指定します。指定した時間になり高原さんが駅に着く頃になるとISを起動させ、学園の上空に飛翔します。そして、ハイパーセンサーで高原さんの姿を確認すると例の死角に彼女が入った瞬間、用意していたナイフを高原さんの胸に向かって投げ飛ばしたんです。ええ、そうです。犯人は学園内から高原さんに向かってナイフを投げ込んだんです。

 

 はい?ありえないですか。亀山君、確かににわかには信じられない事でしょう。しかし、考えてもみてください。ISは単騎で戦艦を真っ二つにすることのできるほどの能力を持っているんです。約800m先にある的にナイフを当てるのが果たしてありえない事でしょうか?当然、犯人も事前に何度もシュミレーションをしたでしょうし可能性は十分にあると思いますよ。それと、凶器にできていたというひびは投げる際にISで力を込めたためにできたものと考えられます。

 

 しかしながら、この推理には決定的な証拠がありません。証拠がない以上これは推理ではなく妄想と言ってしまった方がいいものです。ただ、もしこの妄想が正しかった場合、犯人は事前にISの利用申請を学園に出しているはずです。なので楯無さん、学園にもう一人いるという更識家の関係者に連絡を取って調べてもらってもよろしいでしょうか?事件のあった日、誰がISを利用していたのかを。」

 

 




すっごい雑で突っ込みどころ満載のトリックですけど、ドラマでも冷凍イカとか使っていますしギリギリ大丈夫ですよね……。
展開は意識して早くしていますので、事件もようやく佳境へと入っていきます。
この調子で一つ目の事件をさっさと完結させていきたいですね。

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