ネタ短編集   作:龍牙

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The Knight Of DRAGON外伝『騎士-ナイト-』 壱章

契約モンスター『ダークウイング』に掴まり、悲鳴の聞こえた場所に急ぎながらカズヤは回収しておいた天魔鏡に視線を向ける。

 

 

「どういう事だ?」

 

精霊とか言うキョウの言葉とダークウイングが現れた事から考えて、間違いなく『それ』は鏡であるはず…だが、その鏡はカズヤの姿を映していなかった…。正確には鏡であるはずなのに何も映していないその鏡に対して疑問を持ちながらも優先すべき事はその疑問に対する答えを出すことではないので頭から疑問を消し、手持ちの荷物の中で鏡の代用品に成る物はないかと探してみる。

 

 

「……腕時計とか有ればな……。っと、これが有ったか…。」

 

ポケットの中に手を入れてみる…そこからカズヤが取り出したのは一本のペーパーナイフ…しっかりとその金属部分が彼とダークウイングの姿を映し出している。

 

 

(…これなら、鏡の代わりになるか…。)

 

 

視界の中に目的地を収め、素早くカードデッキをペーパーナイフの刀身に向ける。

 

 

「変身!」

 

 

二つの像がカズヤへと重なり、ダークブルーのスーツとプロテクターに包まれ、騎士の甲冑を思わせるフルフェイスの仮面に顔を包まれた騎士へと姿を変える。

 

 

その名は『騎士ナイト』…13ライダーズの一人『仮面ライダー騎士-ナイト-』

 

 

「ダークウイング。」

 

変身したナイトはダークウイングへと指示を出す、それに従いダークウイングはナイトの背中に装着し、翼へと変わる。

 

腰に有るレイピア型のカードリーダー『ダークバイザー』を抜き、ベルトのカードデッキから一枚のカードを抜き出しそれを差し込む。

 

『ソードベント』

 

機会音が響き、ナイトの手の中にダークウイングの尾を象った槍、ウイングランサーが現れる。

 

「悪いが…その子は助けさせてもらうぜ…化け物!!!」

 

仮面ライダーの強化された視力が正確にターゲットを捉える。人数は三人、一人は少年(彼が一番年下に見える。byカズヤ)、残り二人は女の子(二人とも中々可愛い。byカズヤ)、そして、そのうちの一人、蒼に近い髪の少女を捕らえている醜悪な人型の化け物の姿。

 

ナイトの武器は主に槍とレイピアと、斬る事よりも突き刺す事の方が向いているのだ。ならば自分がするべき行動は、すぐに判断できる。

 

手の中に出現した愛槍を視界の中に捕らえた敵を狙う。力任せにウイングランサーを獲物である少女を喰らおうとしている人型の化け物に向けて投擲する。

 

 

 

 

 

「ぐがぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

突然、腕に突き刺さったウイングランサー、その痛みに思わず問え得ていた少女を放してしまう。

 

「え?」

 

呆然としている少女達を後目に化け物はウイングランサーを投擲した方向を向く。

 

「だれだお、おれさまにこ、こんなもの「黙れよ、化け物。」。」

 

化け物の言葉を遮り、その化け物から放たれる威圧を受け流しながら、森の中からナイトがその姿を現す。

 

「しかし…ミラーモンスターの出来損ないと言うのもおこがましい醜悪な顔だな。まあ、いいさ…オレは女の子を襲う奴には容赦しない事にしてるんでな…。」

 

(…しかし、外見はともかく、人の言葉を解するだけ有って…それなりに知能は有るのか…? 何処からどう見てもそうは見えないけどな。)

 

軽口で挑発しながらも、ライダーバトルの中で磨かれた分析能力が先ほどの様子から相手を分析する。

 

元々、ナイトのデッキは龍騎の様な強力な攻撃力で戦うパワータイプのデッキではなく、様々な特殊なカードを使い戦うテクニカルタイプのデッキなのだ。

 

的確にカードを使い確実に戦いを進めて行かなければ敗北は必至、『サバイブ―疾風―』のカードと言う切り札を手に入れたとは言え、それでありながら、最後の戦いまで勝ち残った彼の能力は経験と共に磨かれているのだ。

 

「な、なにを。」

 

「貴様に発言を許可した覚えは無い。」

 

周囲に他の敵は居ない、相手が僅かに自分に対して警戒心を持って動かずに居るのならば、先手を打つまでと判断し、カードデッキの中から一枚のカードを引き抜き、それを展開させたダークバイザーの柄の中に差し込む。

 

 

『トリックベント』

 

 

機械音が響くと同時に幾つものナイトの分身を作り出す。分身といっても実体が無い存在ではなく、ナイトと同じ姿をした実像を持った分身達なのだ。

 

後方に立つナイトが本体と言う事を表す様にダークブルーのマントを纏い、分身達に指示を出す。

 

「は、はや…ぐは!」

 

ナイトの分身トリックナイト達のダークバイザーの刃が縫い止める様に次々と化け物の全身に突き刺さる。

 

「ああ、そうそう…オレの槍ウイングランサーは返してもらうぞ。」

 

激痛に化け物が悲鳴を上げるがそれを無視し、化け物の腕に突き刺さっていたウイングランサーを引き抜く、それと同時に彼の知る生物の物とは違う、緑色の血液が化け物から噴出す。

 

「そんなも、ものがおれさ、さまにきくとでもお、おもってるのか~!?」

 

「思ってるよ。」

 

『ファイナルベント』

 

敵が一体しか居ない以上、早く戦いを終わらせようとして、カードデッキから引き抜いたカードをカードリーダーの中に差し込むと同時に電子音が響く。

 

「はっ!」

 

背中のマントが翼へと変わり、闇ダークの翼ウイングを纏い、ナイトは天高く舞い上がる。それが彼の持つ必殺技ファイナルベントなのだ。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

ウイングランサーを相手に向け一直線に落下する途中で翼がマントへと変わり、彼の全身を包み、一つのドリルの様に変わる。それがナイトの持つ必殺技ファイナルベント…

 

「飛翔斬!!!」

 

ナイトの一撃が化け物の体を貫き、その余波で上半身を粉々にした。ダークウイングの翼に付く、化け物の肉片を不快に思いながら、思ったよりも呆気なく勝利してしまった事に呆然としながら、ベルトからカードデッキを外す。

 

それと同時に鏡の砕け散る音共にナイトはカズヤの姿へと戻り、この化け物に襲われていた二人の少女とおまけの少年に視線を向け。

 

「それで、君達…大丈夫だった?」

 

そう問いかけた。

 

「あ、ありがとうございました。」

 

「ああ、気にしなくてもいいよ、女の子を助けるのは、騎士ナイトの役目なんでね。」

 

綺麗な長い黒髪の少女からの我に返りながらの感謝の言葉に、そんな軽口で返す。思わず、どれくらいの間言っていなかったであろうか分からない、その言葉を懐かしく思ってしまう。

 

 

 

 

「あの、あなたは?」

 

黒髪の少女、伊万里は軽口で答えた自分と(外見上)そう歳が変わらないであろう見た事も無い服の少年カズヤに対して警戒を浮かべながら、そう問いかけた。

 

初めはその姿を見た時、上級の魔人とも思っていた。低級とは言え魔人を倒し、自分と乳姉妹の上乃と弟分の仁清を助けたとは言え、敵で有るならば状況はもっと悪くなっただけなのだから。

 

もっとも、そう思われているとも知らず、カズヤにしてみればミラーモンスターよりも弱かったと言う考え方しかしていなかったが…。

 

カズヤはそんな伊万里の心境を知ってか知らずか、何処か能天気な笑顔を浮かべて答える。

 

「オレは、カズヤ。ただの通りすがりの正義の騎士ナイトだよ。」

 

(…二人とも結構美人だよな~…助けたお礼に…って、よく考えたら厄介事を一つ持っているんだったよな…。)

 

伊万里の彼を警戒する心情など知らず、彼の言葉の中にあったこの国には無い言葉『騎士ナイト』の意味に少し混乱している彼女達を後目にそんな事を考えていた。

 

何処かそんな彼を見ていると、警戒しているのがバカバカしくなる伊万里だった。実際、カズヤにしてみれば必要が無い限り、女の子(それも美人)とは敵対する気も無く、ダークウイングも付いているのだ、必要以上に警戒する必要もない。

 

「カズヤさん…。」

 

(さん付けも悪くないな。っと、そんな事考えてないで、届け物をさっさと片付けさせてもらうとするか…。)

 

『そうしないと自由に動けない』と気絶しているキョウの入ったポケットの中の天魔鏡を軽く握りながら、後ろを降り向く。

 

「他に奴の仲間は居ないようだけど、気をつけくれ。似た様な者が他に居るかもしれないからな。」

 

「え? ど、どこか行くんですか?!」

 

伊万里が慌てて問いかけると、カズヤはそれを聞き後ろを振り返る。

 

「どうした?」

 

「いえ、でもどちらへ? その、もし決まっていないのでしたら私達の里へ来ませんか?」

 

遠慮うがちに誘ってくる彼女に対してカズヤは

 

「ああ、ちょっと、用事が有ってね。まあ、縁があったらまた合おう…君たちの名前はその時教えてもらうよ。」

 

微笑を浮かべながら、その視線を伊万里から上乃へと移しながら、そう答える。初めから、完全に仁清はカズヤの言う『君達』の中には入っていないのだろう。

 

そんなカズヤに対して顔を紅くしながら呆けている伊万里と上乃とは対照的に、彼の言葉に意味を理解したのだろう…仁清が不機嫌そうに彼に視線を向けている。

 

「じゃあ。」

 

そう告げて、暫く歩いた所で後ろから伊万里が声を掛ける。

 

「また、会えますよね?!」

 

「ああ…。縁があったら…いや、必ずな。」

 

彼には予感があったのだ…必ず再会の時は訪れるという…そんな予感を胸に、軽く手を振りながら、彼は歩いていった。

 

 

 

 

 

 

なお、余談だが目を覚ましたキョウがカズヤの『お前のお蔭で二人の美人とお近づきになれるチャンスを逃した』と言う言葉と指示により、『腹減ったら食っていいぞ』と言うコメント共にダークウイングに咥えられながら連れて歩かれたそうだ。

 


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