ネタ短編集   作:龍牙

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ハイスクールD×A 鋼翼の反逆者 その5

「なあ、何が有ったんだよ……ライディーンになったって?」

 

「ああ。反逆の天使達の羽(ライディーン・フェザーズ)は本来『ゴッドフェザー』と呼ばれる羽10枚の集合体。だけど、それは正式な所有者が誕生するまでの一時的な管理に過ぎない。……やろうと思えば、後天的にライディーンに変えることも出来るんだ」

 

 そもそも、ゴッドフェザーは神器(セイクリッド・ギア)であって神器(セイクリッド・ギア)ではない。ライディーン達が聖書の神を討った際に入手した神器(セイクリッド・ギア)の情報から作り出したイレギュラーな代物。通常の物とは異質であっても仕方ないだろう。

 

 今回勇気がゼノヴィアを新たなライディーンへと変身出来る力を与えた事もその一つだ。同時にゼノヴィアが12の『ゾディアックオーブ』の一つを管理する事となったのだが、其処までは話すことは出来ない。

 

「それじゃあ、例えばオレでもライディーンになれるのか?」

 

「無理だな」

 

 即答だった。

 

「そもそも、ライディーンへの転生は人間からしか出来ないらしいからな」

 

 転生悪魔と言っても悪魔であることには変わりなく、天使や堕天使からのライディーンへの転生は、元々天使なので無理……と言う訳だ。

 

「デュランダルの使い手が仲間に居るのは、頼もしいわね」

 

「まあ、デュランダルの使い手……と言う点はオレとしてはどうでも良いけどな」

 

 手の中に現れるのはイーグルソード。ライディーン達の武器はライディーンへと変身していなくても、元々並の聖剣や魔剣を遥かに超える代物だ。『天使族の勇者』『最強の戦闘天使』と謡われた力の一部だ。

 各々のライディーン達の力によって生み出された専用武器……特にイーグルソードは『斬れぬ物無し』と豪語できるほど……過去の戦いの折にはドライグの体を切り裂いた強力な武器でも有る。

 

 ……そんな訳で勇気が取り出したイーグルソードを見て一誠の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の中で結構本気でドライグは怖がっていたりする。龍殺しすら宿していないが……龍殺しでもない武器で切り裂かれて負けたのだからかもしれないが。

 

「そうなの。私も彼女を眷属に誘ったんだけど、残念ながら振られちゃったわね。彼女が眷属になってくれれば『騎士』の駒で祐斗と共に、剣士の二翼が誕生したんだけど」

 

「……つい最近会ったばっかりのオレが言うのもナンたけど……ゼノヴィアって騎士よりも戦車の方が向いてないか?」

 

 何気なく言った勇気の一言に……場の空気が凍りついた。……そう言われてリアスは会った時からのゼノヴィアの戦い方、及び言動を思い出してみる……。

 

「………………確かに戦車の方が向いてそうね……」

 

「理解してもらえて幸いだ」

 

「失礼だな!」

 

 内心、『パワーバカ』と言うフレーズが浮かんで来る中、そんな会話を交わす二人に若干涙目で怒るゼノヴィア。

 

「と……ところで、イリナは?」

 

「イリナ?」

 

 初めて聞く名前に思わず聞き返してしまう。そもそも、勇気が参戦したのはコカビエルとの決戦のみで、それ以前の事は知らない。

 

「ああ、『紫藤イリナ』。オレの幼馴染で、ゼノヴィアと一緒にエクスカリバーの奪還に来たんだよ」

 

「……エクスカリバー? ああ、あの有名な……教会の連中のせいで血塗られた聖剣にされた哀れな剣か。まったく、飼い主が下衆なら犬も似るな」

 

「一応、天使なんじゃないの?」

 

「あいにく、ライディーンは裏切り者なんで」

 

「確かに裏切りたくもなるな。あんな奴を信仰していたとは、本当に今までの人生を無駄にした気分だ」

 

 吐き捨てる様に言い切る勇気にリアスが苦笑しながら言うと、勇気の言葉に同じくライディーンの知識からライディーン達が戦った聖書の神の事を知ったゼノヴィアも同意する。リアス達としては、彼等の知っている聖書の神がどんな者だったのか心底気になるところだ。

 まあ、複雑な表情をしているアーシアについては気付いていない様子だが……。

 

 そして、勇気としてはエクスカリバーに対してはかなり同情的である。

 かつて、アーサー王が騎士道に反する行為をした事で折れた『カリバーン』を打ち直した物が『エクスカリバー(EXカリバーン)』と言われている。ならば、聖書の神が手にして折れたのは……意に沿わぬ者に使われた事に対する抵抗だったのではないかと考えている。

 だが、教会によって複数の聖剣として作り直されたエクスカリバーは望まぬ多くの血を吸わされた。仮にエクスカリバーに意思と言うものが有るのならば、既に気が狂うほどの絶望を味わっているのかもしれない。

 

「そうそう、イリナなら私のエクスカリバーを合わせた五本とバルパーの遺体を持って本部に帰った。破壊はしたものの、奪還の任務には成功したわけだよ。芯が有れば錬金術で再び聖剣にできるからね」

 

(哀れな聖剣の解放のために……その内天界なり教会なりに乗り込んで、エクスカリバーの核を完全破壊するか)

 

 誰も知らないところで、かつての最強の戦闘天使(ライディーン・イーグル)による天界&教会の襲撃が確定した。そんな、勇気の内心は知らず、ゼノヴィアがソファーに座ると勇気も促される。

 

 飽く迄リアス達が主となった一件なので、ある意味報告を受ける立場であるソーナも黙って彼等の会話に耳を傾けていた。

 

「エクスカリバーを返して良いのか?」

 

「一応アレは返しておかないとマズい。デュランダルと違い使い手は他に見繕えるからね」

 

(何処までも玩ばれてるか……。昔から見たら、比べ物に成らないほど落ちぶれているよな)

 

 一誠の問いに答えるゼノヴィアの言葉から、騎士王を選定する剣から使い手を見繕えると言われている今のエクスカリバーの姿に心底同情する勇気だった。

 

「今の私にはデュランダルと……ライディーンの武器があれば事足りる」

 

「まあ、そっちは剣じゃないから、特訓は必要だけどな」

 

「ああ。使い方は先代の知識が教えてくれているが、やはり使いこなすにはまだ掛かりそうだ」

 

 そう、ライディーンの中で剣を武器にして居るのはイーグルとクロウだけだ。そして、クロウのゴッドフェザーは勇気の元には無い。……それから分かる事は、既にクロウが覚醒していると言う事だ。

 

「てか、教会を裏切って良いのか?」

 

「あちらに神の不在を知った事に関して述べたら、何も言われなくなったよ。私は神の不在を知った事で異分子になったわけだ。教会は異端を酷く嫌う。たとえ、デュランダルの使い手でも見捨てる」

 

 既に聖書の神の信実を知っていたとしても、長く使えてきた教会に見捨てられたと言う事は、彼女の心に深く突き刺さっているのだろう。勇気は、沈んだ表情をしているゼノヴィアを元気付けるように撫でる。

 

「ところで、彼女のことは話さなくて良いんですか?」

 

「……そう言えば、ゼノヴィアにも話した方が良かったな。……オレが会長に世話に成っている理由……オレの幼馴染の事について」

 

 取り合えず、落ち込んでいるゼノヴィアに対して気遣う意味を込めて話を一時変えることにする。話題としては丁度良い。

 

「幼馴染?」

 

「ああ、一誠は知ってるだろ? 一年の頃から休んでいる女の子の事……オレの幼馴染、『御園 千莉』の事を」

 

「ああ、あの子……あの子がお前の幼馴染だったのか!?」

 

 勇気が話すのは彼の幼馴染『御園 千莉』(外見は大図書館の羊飼いの同名キャラ)の事。

 

「ライディーン達が神器のシステムを利用して封印した物を宿してしまったため、その力が発動する条件が揃ってしまった為に眠り続けている……オレの幼馴染だ」

 

 彼女が宿しているのは『双子座のゾディアックオーブ』。ゾディアックオーブの中で唯一神器としての機能を付加されて封印された品だ。……それが力を発動する条件は二人以上のライディーンの正当な継承者の誕生で有る為に、イーグルとクロウの誕生が彼女が眠り続ける状況を作った。

 

「既に一年も眠り続けているのに、筋力の衰えも無く眠っている異常な症状……。目を醒ませば直ぐに今まで通りに生活できる状態を維持している。その信実は、ゾディアックオーブの力でそうなっているんだよ。……当然、目覚めさせる方法も知ってる」

 

 方法も、理由も知っている。だが、それを実行することはできない。

 

「だったら、早く起してやればいいだろ、何でしないんだよ?」

 

「イッセー……お前はオレに……何も知らない、罪も無い女の子を一人、殺せって言うのか?」

 

 信実を知らないが故の一誠の問い。簡潔にその理由を言い放つと場の空気が凍りつくのだった。

 

 

 




アニメ版超者ライディーンの宮坂瑠璃の立ち居地としてのオリジナルキャラです。まあ、大図書館の羊飼いの同名の彼女をイメージしてください。まあ、終盤まで眠り続けているので出番は少なめです。

なお、双子座のゾディアックオーブは神器(セイクリッド・ギア)として、魚座のゾディアックオーブは宝石として、他のゾディアックオーブはゴッドフェザーと共にライディーン達が管理していると言う設定です。

序でに勇気君、エクスカリバーに対しては同情的です。

なお、本作での聖書の神のイメージは超者ライディーンの超魔のボスのルーシュ・デモンですので、原作の聖書の神とは一切関係はありません。ゴッドライディーンの悪用したのは、こいつなので。

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