ネタ短編集   作:龍牙

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仮面ライダー響鬼〜神鬼の指針〜 第一話-1-

その日、月詠学園の前に到着する。

 

 

その影は二つ、一つはモスグリーンのコートに身を包んだ引率者らしい男。引率者の立場に有る事から考えると、年齢は二十歳を超えているだろうが、外見だけなら、まだ十代といわれても通るほど若い印象を与えている。

 

 

「着いたよ。ここが『月詠学院』。きみが一年間、お世話になる学校だよ。」

 

 

若い印象を与える外見とは裏腹に、引率の教師は落ち着いた声で後に続いていた少年…『草薙 八雲』へと告げる。

 

 

丁度、そこの月詠学園側から女性教師らしい人物が近づいていく。茶色の髪と派手なファスナーの付いた上着と、とても教師らしい格好には見えない。八雲が引率の教師へと視線を向けてみる。彼の見せている反応から考えて知り合いなのだろう。恐らくだが、教師に間違いは無い。

 

 

「ようこそ、月詠学院へ。学院長の『姫宮 伊織』です。」

 

 

その女性は二人の前に近づくと、軽く頭を下げてそう名乗る。八雲の推測は半分正解、半分間違いと言った所だろう。

 

 

流石に『学院長』と言うのは予想外だったのだろう。驚いて呆然としていると、引率の教師が八雲の脇を突いた。反応からして引率者は当然ながら知り合い出会ったのだろう。

 

 

「天照館高等学校執行部顧問、『若林 誠』です。」

 

 

引率の教師『若林 誠』は落ち着いて頭を下げる。

 

 

「何よ改まって、知ってるわよ。立ち話もなんですから、中へどうぞ。」

 

 

随分と砕けた様子で『行きましょう』と告げられて学院内へ入る。学園の中に入ると、八雲は思わず溜息をつく。

 

 

(…なんだか、すごい所だな…。)

 

 

外の事を知っているとは言え、飽く迄それは外部から着た師を通しての事なので、想像でしかない。それに外部の人間の知り合いで自分と年が変わらないのは一人しかいないのだ。

 

 

街の様子が違うのにも圧倒されたが、学校の様子にも圧倒されていた。正面玄関を潜った先に有る完全に舗装された道と、中央に噴水が置かれた中庭。その西側に有るテニスコート。それ以外にも様々な施設が一通り揃っているその環境は、東京都内でも特に整った環境と言えるだろう。さらに、設備の全てに手入れが行き届いている。

 

 

 

 

 

校舎を移動して学院長室に入ると再び圧倒される。白を主体として、置かれているのは『事務用品』ではなく、一目見ただけで高価だと言うことが解るオーダーメイド製の『家具』の数々、カーテンや部屋に飾られた調度品まで含めたら果たしていくらになる事か?

 

 

「月詠学院に来るのも久しぶりですが、ずいぶんと様子が変わりましたね。校舎も建て替えられたようですし。」

 

 

「大変だったわよ。」

 

 

誠の言葉に姫宮は頭を抱えながらそう答える。

 

 

「森のおっさんが、メチャクチャにしてくれたからね。登記やら、引継ぎやら、お金の問題やら……。」

 

 

二人の会話の中に出てくる男『森』は姫宮の前任者の名前で、その頃、月詠学院と天照館高校は互いに反目し合い、様々な問題が起きたのだ。

 

 

八雲は彼女の言葉を聞きながら、内心『お金が問題なら、何でこんな部屋を?』等と考えてしまっているが。

 

 

「ああ、ごめんなさい。愚痴になっちゃうわね。」

 

 

そう言って謝罪すると、仕事に戻る為に書類を取り出す。

 

 

「さてと、まずは書類の確認を。君の名前は……。」

 

 

手渡された書類に八雲は自分の名前を書き込む。

 

 

 

『草凪 八雲』

 

 

 

あまり聞かない名前に、姫宮はウンと頷く。

 

 

「『草凪八雲』くんね。うん、良い名前じゃない。じゃあ、次は誕生日と血液型ね。」

 

 

指示された項目を確認しつつ、記入漏れが無い事を確認して書類を姫宮へと返す。

 

 

「よしっと、これで以上ね。情報の入力も完了。」

 

 

用済みとなった書類をシュレッダーへとかけて処分すると姫宮は改めて八雲へと顔を向けた。

 

 

「さてと、八雲くん。あらためて、月詠学院へようこそ。天照館高校からの交歓学生として歓迎するわ。聞いてはいると思うけど、交歓学生という制度は表向きは、この月詠学院と君の母校、天照館高校の間の友好と、互いの教育課程の内容向上のためということになってるの。」

 

 

そう本来の目的はそこではなく別の所に有るのだ。

 

 

「でも、その真の目的は、『天魔』討伐の鎮守人養成機関同士の情報交換ね。」

 

 

ある種これも裏の中での『表』とも言えるのだろうが、そこにはあえて触れないでおく。

 

 

『天魔』『鎮守人』…『魔化魍』『鬼』『猛士』と呼ばれる自分の亡き両親に関係する言葉とは違い、はっきり言って縁の薄い言葉だ。そう、過去形ではなく、現在進行形でである。こうして現在に至った今でも縁は薄いのだ…。

 

 

「その辺りの詳しい話、したほうがいいかしら?」

 

 

「はい、お願いします。」

 

 

「そうですね。」

 

 

八雲が姫宮の言葉にそう答えると誠が続いてその理由を補足説明する。

 

 

「彼が能力、『験力』に目覚めたのは、ごく最近のことです。」

 

 

そう、鎮守人になる為に不可欠な才能である『験力』に目覚めたのはごく最近なのだ。時々、交流の一環として天照郷にやってくる『鬼』の師によって鍛えられてはいたが、鎮守人の方の才能は無いとあきらめていた矢先での覚醒である。

 

 

「天照館高校執行部も、僅かな時間しか在籍していませんので。詳しい説明をしてもらえると助かります。」

 

 

「わかったわ。」

 

 

『元々説明するつもりだったし』と言葉を続けながら、説明に入る。

 

 

「この月詠学院のSGコース、退魔班も、あなたの在籍していた天照館高校執行部というのも、『天魔』と呼ばれる存在との戦いが目的で作られた組織です、本来は『鎮守人』と呼ばれる退魔のプロを育てる育成機関でしたが、6年前にあった大きな戦いと、それにまつわるゴタゴタと、二年前の大災害で『鎮守人』の数自体が少なくなり、われわれが実戦に出ることも少なくありません。」

 

 

『大災害』…『オロチ現象』と呼ばれている自然的な魔化魍の大量発生の事を指しているのだろう。実際、大量発生した魔化魍に対して死者一名で済み、見事にオロチ現象を鎮めた猛士とは違い、鎮守人には多くの犠牲者が出たのだ。

 

 

その理由として挙げられるのが、魔化魍が音撃と呼ばれる清めの音でしか倒せない事と、『天魔』とは違い魔化魍には験力が無力だと言うことが上げられる。

 

 

そして、犠牲が多かった理由としては、不幸な事に…犠牲になった多くの鎮守人は魔化魍と天魔を誤認して無謀にも戦いを挑んでしまった事と、天魔に対しても清めの音は極めて有功である事が上げられるだろう。

 

 

六年前……その当時、八雲は小学生だった。何か大人達が騒いでいるとは感じたが、それ以上の感想はなかった。そして、二年前は尊敬していた鬼の一人であるザンキがオロチ現象で発生した魔化魍との戦いで亡くなった事も聞いているのだ。そちらの方が彼にしてみれば印象は強い。

 

 

だが、当事者にとっては、その感想はまったくの別物なのだろう。

 

 

「たしかに、大きな戦いでした。天照も月詠も大きな代償を支払った。」

 

 

誠の言葉からは過去に起こった事の重さを感じさせる響きがあった。その言葉に込められている意思はオロチ現象の起きた当時の事を師の一人から聞いた時と同じ響きがあった。

 

 

犠牲は出たのだろう…彼等にも、彼等に近しい人から。

 

 

「そうね。うちは、組織が根本からぶっ壊れた状態だったわ。結局、どうしようもなくて、姫宮家が学院を丸ごと買い取るってことで力ずくで解決したんだけどね。」

 

 

「え゛。」

 

 

『学園を丸ごと買い取る』…思わずその言葉を聞いて呆れてしまう。学園一つを丸々買い取って解決など、どれほどの財力があれば可能なのか、到底考え付くことは出来ない。

 

 

「あなたが学院長になると聞いたときには、すこしびっくりしました」

 

 

誠の笑みには、やはりイメージではないと言う言葉が隠れている。それは等の姫宮本人も理解している所に、更に若林から言われたのだから、思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 

 

「まぁ、とにかく今は『天魔』に対抗できる力を再編中ということなの。あなたの派遣も、天照館高校から月詠学院への援助ということになるわ。そ・れ・に…最近になって確認された魔化魍と戦っている『猛士』の関係者という点でも、期待してるわよ。」

 

 

顔はクスクスと笑っているのだが、その言葉に本気が含まれているのは確かだ。『猛士』との連携…場合によっては猛士側の戦士である『鬼』の人達と戦闘時に協力関係になる事もあるのだから、顔見知りである自分が間に立つ事の意味は大きいのだろう。

 

 

「それじゃ、他に質問があるかしら?」

 

 

ならば、そう言ってくれるのだから疑問に思っていることを全て聞いておくべきと判断し、一つ目の質問をあげる。

 

 

「じゃあ、先ずは天魔について、教えていただけますか。」

 

 

「そうね……ちょっとむずかしい問題ね。古来からモノノケ、荒神、悪霊、そういう超自然的な存在が語られてきたけど、それらの総称に近いわ。その多くが人間への敵意を持ち害を成そうとしている。っていうのが、我が月詠学院の考え方なんだけど、その辺りはあなたの天照館とは意見を異にするところね。

 

 

そう語ると姫宮は誠の方へと向く。

 

 

「そうですね。天照では、天魔を一方的に敵視はせず、討つのではなく鎮めるという考えです。ただ、どちらにしても普通の人たちが敵う相手ではありません。天魔に対抗できるのは、ごく限られた力を授かった者のみ…とされてきたんですが。」

 

 

苦笑を浮かべながら誠は八雲へと視線を向ける。その辺りのことは自分も知っている。『猛士』の『鬼』の存在の事だろう。

 

 

「そして、その力、『験力』を持つ者はあまりに少ない、八雲くん、あなたはまだ力に目覚めてから時間がたっていないようだから、実感はないだろうけど、その力は貴重なものなのよ。」

 

 

「じゃあ、験力って言うのは何ですか?」

 

 

実感こそ沸いていないが、実際の話、八雲の持つ験力は弱くないと評価されている。それに加えて元々目指していた事も有って、鬼として鍛えられた身体能力。

 

 

「天魔に唯一対抗できる力のことだったんだけどね。それは超能力のような術であったり、時には武道の達人の技であったりと、人によって種類は異なるわ。そして、験力の源と言われているのが『魂神』だけど……。」

 

 

そこまでいうと、言葉を濁して黙った。魂神についても聞きたい所だが、簡単に答えるべき事ではないと判断して、それ以上追及するのを止める。

 

 

「では、最後にその鎮守人というのは?」

 

 

「鎮守人は天魔と戦うための特別な力を備えた者たちよ。あなたの先輩と言ってもいいわ。その多くは全国各地に散らばり、人知れず天魔との戦いや、御封地と呼ばれる聖地を守る任についているわ。」

 

 

「うん。ものわかりが良いみたいでうれしいわ。それじゃ、一年間よろしくね。」

 

 

「はい、こちらこそ、よろしくお願いします。」

 

 

天魔との戦いを差し引いても、まったく見ず知らずの土地でありながら、知人もいるこの地での生活が実に楽しくなりそうな予感に八雲は笑顔を浮かべながらそう答える。

 

 

「あら、ずいぶんとカワイイ顔をするのね。そういう素直な子、お姉さん好きよ。」

 

 

「お姉さん?」

 

 

「お姉さんよ!」

 

 

誠の方を睨みつけながらそう言い返し、黙らせる。

 

 

「お姉さんです。」

 

 

それ以上逆らっては危険と本能的な部分で判断したのか、誠もすぐにそう返事を出す。

 

 

「それじゃ、説明を続けるわよ。あなたはここでは、2年B組に編入されるけど、その他に、SGコースの生徒でもあるということになるわ。」

 

 

「さっき言われた…退魔班のことですね?」

 

 

「そう。SGコースは、能力開発カリキュラムの実験クラスってことになってるの。実際には天魔討伐のための組織だけどね。」

 

 

「天魔の存在や、それと対抗する鎮守人の存在は鎮守人の存在は秘密にされています。草凪くんが、所属していた天照館高校執行部もその実体は学生退魔組織ですから、それと同じだと思っていいですよ。」

 

 

誠は姫宮の言葉を補足説明する。考えてみれば、一種の養成所みたいな物だろう。実際に『猛士』では鬼の後継者問題に悩んでいるようだが、こう言う施設などを作ればある程度は改善されるのではと考えるが、それは直に間違いだと思い直す。

 

 

鬼の武器は戦う魔化魍に合わせるように多種多様、空を飛ぶ相手には『管』の鬼や、固い甲羅の鎧や皮膚に守られている相手には自分も分類される事になるであろう『弦』の鬼が専門的に戦う事となる。下手をすれば、一つの分野から偏った人数が出るかもしれないのだ。それを考えるならば、今の体制はベストではないが、ベターといえるだろう。

 

 

(でも、確かに魔化魍とか、天魔とか験力とか、普通の生活をしてたら縁のない話だよな。)

 

 

そう、鬼に対しても言える事だが、秘密にしておかないと、無駄に混乱が広がるだけだ。

 

 

「ですので、SGコースの実際の仕事については一般生徒には秘密ということになるわ。装備や、あとの詳しいことは、教官から聞いてもらうとして。まずは、身体能力のテストをさせてもらうわね。」

 

 

『ついてきて』と促され、八雲と誠の二人は姫宮に案内されて別の部屋に案内される。

 

 

 

 

 

 

二人が案内されたのは、三面を大型ディスプレイに囲まれた部屋だった。

 

 

「ここは?」

 

 

誠もその部屋に案内されたのは初めてなのだろう、姫宮へと問い掛ける。

 

 

「SGコースの特別教室。いろいろと入り込んでいるけど、一番の目玉は、VRトレーニングね。」

 

 

「VRトレーニング?」

 

 

八雲は背伸びして、『入り込んでいる』と表された機材へと視線を向ける。恐らくだが、その機材を使ったトレーニングだろう。

 

 

「いろいろな状況を想定した訓練が可能。その間に、各種数値の測定もできるわ。とりあえず、これで身体能力のテストをさせてもらうわ。」

 

 

姫宮はそう言うと、八雲を半分地下になっている空間へと案内する。合図があり、鬼を象ったカバーの付いたリストバンドに触れて、天照郷から持ってきた武器である木刀を構える。

 

 

『弦の鬼』の武器は剣に似た武器を操って戦うのだ。故にそれについて鍛えられた八雲が一番使いやすい武器は剣なのだ。

 

 

八雲が準備を整えると目の前に現れた半透明な『鬼』が現れる。それを見て彼は一瞬だけ不快感を表すが、それを直に頭の中から消す。

 

 

そして、今から行うテストの事を理解する。ようするにコンピューターによる模擬戦闘なのだろう。

 

 

相手の動きは無く『好きにしろ』とでも言っているような半透明の鬼に一太刀を入れる。実体のない立体映像のはずなのに、その手に感じたそれは確かに『物を切った手応え』だった。

 

 

(なるほど…。)

 

 

 

『要領はわかった? このまま、次のテストに入るわよ。』

 

 

 

その放送と同じに新たに先ほどと同じ鬼が二体、少しだけ離れた場所に現れる。だが、その二体の鬼は先ほどの物とは違い、攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「ッ!?」

 

 

八雲は後に大きく跳び、二体の鬼から一気に距離をとる。突然の事に反応が遅れてしまったが、幸いな事に攻撃を受ける事だけは避けられた。安全性は確保されているのだろうが、流石に簡単に受けたくはない。

 

 

再び近づいてきた鬼の攻撃を木刀で受け流し、斜めに切り裂く。そのまま後方にいるもう一体へと近づき、一太刀にて切り捨てる。

 

 

「はぁ。」

 

 

二体の鬼を切り捨てた後溜息を吐く。息も乱れておらず余裕そのものなのだが…世間一般に言われている『悪い鬼』のイメージで作られた立体映像とは言え、『鬼』を切るのにはやはり抵抗が有る。

 

 

 

 

 

 

「フフッ。」

 

 

モニターを通してVTルーム内の八雲を見ている姫宮は楽しげに笑う。剣術だけしか見せていないが、攻撃を受けることなく葬っていく、それは全力でもないのだろう。当然ながら、レベル設定は裁定にしてあったのだが、彼の実力にはそんな気遣いは無用だろう。

 

 

彼の全力…それに興味があるとその表情には表れていた。そう、報告にだけ聞いて実際に見た事の無い『猛士』の『鬼』の力を見てみたいと言う感情を押さえながら、姫宮が端末を操作した。

 

 

「次で最後だから、全力でやってみてね。」

 

 

『はい。』

 

 

 

 

 

 

『次で最後だから、全力でやってみてね。』

 

 

「はい。」

 

 

聞こえてきた放送にそう答える。相手はまだ純粋に剣術だけで勝てるレベル。実力を見せるレベルのテストならそれくらいなのだろう。新しく離れた場所に二体が表れる。

 

 

距離を詰め様と向かってくる二体の鬼。その姿は隙だらけと言えるだろう。

 

 

(遅いよ。)

 

 

相手の動きに合わせて、床を蹴る。『椿姫』と名づけられた『技』…筋力を活かした飛び込み上段斬り。鬼の額を叩き割りその勢いのまま、木刀は床へと叩き付けられる。その一瞬の隙に二体目の鬼の拳が迫る。だが、

 

 

木刀を始点に両腕の筋力と床を蹴る脚力を利用し全身を持ち上げ、その勢いを利用し木刀を中心に回転し、蹴りを鬼の頭へとたたき込む。

 

 

それにより後退した時を逃さず木刀を抜き取り、全身の力を利用した渾身の突きを放ち、鬼の体へと木刀を突き刺す。そのまま木刀を楽器に模して弦楽器を弾くような体制へと移るが、直に木刀から伝わってくる手応えが消える。

 

 

 

 

 

 

 

「おつかれさま。」

 

 

端末の電源を落としながら姫宮は八雲へとそう告げる。一撃も受ける事無くテストを消化する彼に対する評価としては、最後の行動こそ理解不能だったがその結果は高評価を与えてもいいくらいだろう。しかも、それら全ては純粋に剣だけで出した結果である。

 

 

「それじゃあ、僕はこれで帰ります。」

 

 

誠はそう言うと、機器室の方へと戻ってきた八雲の肩に手を置く。

 

 

「新しい生活になれるのは大変だろうけど、がんばるんだよ、草凪くん。」

 

 

「はい。」

 

 

「大事な天照郷の鎮守人候補ですからね、責任もって預からせてもらうわ。」

 

 

姫宮は『クスクス』と笑いながら彼の肩に手を置く。

 

 

「それじゃあ、誰かに校内を案内させて……。」

 

 

と、そう言った時、VTルームに新しい入室者が現れる。

 

 

「はいはい、オレがやりまーす。」

 

 

「亮?」

 

 

聞き覚えが有る声に驚き、振り向いてみるとその声の主は八雲の記憶通りの相手だった。

 

 

 

 

 


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