ネタ短編集   作:龍牙

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仮面ライダーオーズ~満たされぬ者~ 前編

『トリプル・スキャニングチャージ!』

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

 

 

『オーメダル』の封印が解かれ、800年の眠りから目覚めた怪人たち『グリード』が街中へと逃亡。

 

 

 

胸部に赤い鷹、黄色の虎、緑のバッタの三種類の生物の顔が描かれた巨大な円形のプレート『オーラングサークル』を持ち、その絵が教えている様に赤い鷹をイメージさせる頭部、折りたたまれた爪を両腕に持つ黄色い虎をイメージさせる体、緑色の下半身を持った仮面の戦士『仮面ライダーオーズ』が大型剣『メダジャリバー』を振るう。

 

 

強化された剣戟『オーズバッシュ』が空間もろとも、巨大な昆虫の様な怪物『トコブシヤミー』を一閃の元に切り裂く。ビルや他の建造物も切り裂かれたが、標的となったトコブシヤミー以外は時間が逆行した様に修復される。

 

 

そして、トコブシヤミーは爆発し、周囲に細胞の様に怪物の体を構成していたメダル『セルメダル』を撒き散らせていく。

 

 

「おしまい。っと、次の時の為に少し持っておかないとな。」

 

 

周囲で飛び散ったセルメダルを回収している右前腕部だけの怪物『アンク』と機械の鷹『タカカンロイド』の姿を一瞥もせずに次の戦闘に必要になりそうな分だけ集めている。

 

 

「おーい、時間前に集めろよ~。」

 

 

「だったら、お前も手伝え!!!#」

 

 

「ヤダ。オレが必要な分は集めたから。」

 

 

面倒そうに手を振りながらバックルを外し、全身を包んでいたスーツが消えた青年は赤、黄色、緑のメダル『コアメダル』を抜き、近くで倒れていた男性の右前腕部に宿り尚もセルメダルを集めているアンクとタカカンロイド達を近くにあるベンチに座りながら眺めている。

 

 

 

何の因果か本来グリードが存在していたグリード達は異世界である『ミッドチルダ』で復活してしまった。特に彼にオーズの力を託した鳥型のグリード『アンク』は現在、自身のコアメダルの大半を持たない為に右前腕部のみの姿になってしまっているらしい。

 

 

 

「ふぁ~…眠い。」

 

 

「おい、ソウマ!!!」

 

 

「お、メダルは集まったか、アンク?」

 

 

彼、『神凪(かみなぎ) 総麻(そうま)』はからかう様に笑いながら、#マークを頭に貼り付けているアンクに手を振っている。

 

 

 

偶然、その現場に居合わせた元管理局員、現フリーの魔導士『神凪 総麻』はグリードの一人『アンク』と出会い、契約の元、共にヤミーと戦う事になった。

 

右前腕部だけの状態の彼は人間社会で行動し易くする為に、ヤミーに襲われ重傷を負った管理局員の体を利用している。

 

長時間彼が離れると命が危ない彼はアンクにとって総麻に対する人質になるはずだったが、例外を除き管理局の人間を嫌っている総麻にとっては名も知らぬ一般局員は『救う意味の無い命』とされて、今ではすっかりアンクにとっての行動の為の器になり、総麻のペースに乗せられている状況である。

 

 

 

「アンク、契約は『オレがヤミーを倒す。お前はその為の力をオレに与えてくれる。ただし、お前との契約に反しない範囲ならオレはオーズの力を自由に使って良い。』だろ? メダル集めはお前の役目だ。」

 

 

「貴様…。」

 

 

「そう怒るなって、今度アイス奢ってやるからさ。まあ、メダル集めの手伝いも契約内容として追加しても良いけど、その時は、こっちの条件も飲んで貰うぞ。」

 

 

「ふん、考えておいてやる。」

 

 

「まあ、オレはオレでその時の追加条件も考えておくさ。ギブ・アンド・テイク、契約って奴だ。」

 

 

「オレはテイクは好きだが、テイクは嫌いだ。」

 

 

「じゃあこう言い換えようか…お互いに利用し合えるだけの交換条件って。じゃ、早く帰って来いよ。」

 

 

面白く無さそうに言い捨てるアンクと分かれながら総麻はバイク『ライドベンダー』に乗り、自宅へと向かってその場を走り去っていく。

 

 

 

『神凪 総麻』は『高町 なのは』、『八神 はやて』と同じ、第97管理外世界『地球』の出身。『PT事件』の際に巻き込まれる形で魔法に関わり、この事件を解決。後に起こった『闇の書事件』の解決後、デバイスを返して管理局と関わらずに生活していたが、ほぼ中学卒業後、某人物によって強制的に管理局に入局する羽目になった。

 

 

だが、その不満から気に入らない命令への命令違反や命令無視、気に入らない上司への暴行(男性限定)等が多く、問題児扱いされ出世とは縁がなかったが、当の本人はその事は一切気にもせず、寧ろ、毎日の様に上司への嫌がらせかと思えるほどに辞表を贈り続けていた。

 

 

そして、目出度く管理局を辞める事が出来たのは丁度半年前、アンクのコアメダルの一つを拾った事で、グリードの存在を知り、オーズの力をアンクより渡され、『仮面ライダーオーズ』となり、時にオーズの力を利用して傭兵紛いの仕事をしているフリーの魔導士として日々を送っている。

 

 

時々、オーズのメダルをロストロギアと判断(ある意味、間違いなく一種のロストロギアだが)し、ヤミーとの戦いの後に現れる管理局員にタイミング良く現れるグリード(昆虫系グリードのウヴァ)を嗾ける為に一枚消費し、総麻達に武器やバイク等の装備を提供する巨大企業『鴻上ファウンデーション』との取引で手に入れたメダルの60%を提供する事になり、メダルの集まりが悪く思いっきりアンクの機嫌が悪いが、総麻にしてみれば、コアシステム等の装備の提供とは別に住居と最低限の生活費を提供してもらう契約も結んであるので、損は少ない。

 

ある程度、鴻上ファウンデーションは時空管理局にも影響を与える事が出来るらしく、最近はメダルを狙う局員も、犯罪者扱いもされずに済んでいる。

 

 

なお、付け加えておくとウヴァの標的にされた哀れな局員(主に地上ではなく本局の方の局員らしい)達は総麻達が逃げている間、ウヴァを相手に戦う羽目になっている。…幸いにも死人は出ていないようだが、再起不能だけは続出している様子だ。………総麻にしてみれば、『死んでないなら、知ったこっちゃ無い』そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲッ。」

 

 

自宅の近くでライドベンダーを止めて、自宅へと視線を向けると…見知った顔が居た。管理局を頑張って辞めてアンクと出会い、オーズとなってからは疎遠にしている知人…古代ベルカ式の使い手『最後の夜天の王』と呼ばれている『八神 はやて』。

 

 

(またか…。)

 

 

そう思って思わず目の前の光景に頭を抱えてしまう。

 

オーズとしてのヤミーやグリード達との戦いを始め、傭兵紛いのフリーの魔導士を始めてから、鴻上ファウンデーションの用意した彼の自宅には管理局に戻るようにと一部を除く知人達がよく説得に来る。

 

彼女、はやてはその中でも特に熱心に説得に来る相手の一人でもある。総麻としては、『仕事はいいのか?』と一度聞いてみた程である。

 

 

(今度、会長さんに頼んで引っ越すかな…。いや、あまり頼りすぎるとセルメダルを取られて、アンクが機嫌を悪くするか。)

 

 

タダでさえ契約の元に60%もヤミーを倒して手に入れたセルメダルを持っていかれている。総麻だけの都合でのオーメダルの出費は、アンクの機嫌を余計に悪くしてくれるだろう事は間違いない。交換条件でコアメダルまで取られた日には………はっきり言って契約解消かもしれない。

 

 

「(少し、その辺を廻って来るか。…帰って来たアンクの奴と鉢合わせする事は………無いだろうな、多分。まあ、カンロイドで連絡しとけば大丈夫だろう。)……少し時間を潰してくるか……。」

 

 

暫く如何するべきかと迷いながら、そう考えて結論付け、ライドベンダーを反転させ、その場から走り去ろうとした時、

 

 

「あっ、帰って来たんやな、総麻くん。」

 

 

「チッ。」

 

 

そう声をかけられて思わず舌打ちをしてしまう。迷っていたのが拙かったのか、帰ってきた事を彼女達に気付かれてしまっていた。

 

 

仕方ないと覚悟を決めてライドベンダーから降りるとそのまま彼女達を一瞥もせずに自宅の前へと立つ。

 

 

「実は…「管理局には戻らないぞ。」ちょ、ちょっと、総麻くん」

 

 

有無を言わせず『話は終わりだ』とばかりに手を振りながら、さっさと鍵を開けて入ろうとした時、再び呼び止められる。

 

 

「それも理由の一つやけど、もう一つお願いが有るんや。」

 

 

「お願い?」

 

 

「そっちは、フリーの魔道士としての総麻くんへの仕事の依頼なんやけど。」

 

 

その言葉に僅かに考え込むと、

 

 

「分かった。話を聞こうか?」

 

 

「実は、あと二週間後に私が隊長を務める部隊の『機動六課』が始動するんや。六課は少数精鋭主義なんやけど…。」

 

 

「少数精鋭ね? 他のメンバーは大半が身内と友人…ただ、ランクから考えて前線の戦闘要員の何人かは能力は有っても新人で集めて鍛えて強くするって考えか? それでも、身内にはリミッターを付けられるって事にはなるだろうけどな。」

 

 

「そうなんや、それで…今は管理局に所属してない総麻くんに協力をお願いしたいんやけど。」

 

 

「それで、オレはどれだけの期間雇われていれば良い? 依頼金額は?」

 

 

「契約は機動六課の稼動期間の一年の間、依頼金額はこれくらいでどうや?」

 

 

「っ!? 一年間の長期契約は兎も角、依頼金額は結構魅力的だな。」

 

 

描かれている額はフリーの仕事の報酬よりも遥かに高額で、金銭的な面では確かに受けた方が良いだろう。だが、

 

 

(…でも、下手に一年も動きを縛られるとヤミーやグリードと戦うのに支障が出るよな。第一、そんな事になったらアンクの奴が煩そうだし。)

 

 

「それほど、総麻くんを買っとるちゅう事や。」

 

 

「悪いが、少し考えさせてもらう。」

 

 

「え!? で、でも、これはうちでの総麻くんにとってもええ話なんや! 働きによっては管理局に戻るのにも「何度も言わせるな。オレは戻る気はない。」………。」

 

 

はやてからの依頼に暫く考え込むと、溜息を吐き。

 

 

「兎も角、その依頼を受けるか受けないかについての返事は来週にさせて貰う。」

 

 

「分かった。それじゃあ、また来週此処に来ればええ?」

 

 

「…連絡をくれれば、此方から出向いても良い。」

 

 

総麻の言葉に明らかに気落ちした様子で立ち去っていくはやてを尻目に総麻は家の中に入り、そのままソファーへと座り込む。

 

 

だが、一週間考えるとは言ったが、答えは最初から『NO』で決まっている。既にアンクや鴻上ファウンデーションとの長期契約を結んでいるような物なのだし、ヤミーへの対処にも遅れが出てしまうと考えられる。

 

寧ろ、オーズの正体やオーメダルの事を知られると言う危険を考えると受けない方が正解だろう。そもそも、『考える』と言ったのも、六割ほどが粘られても迷惑なので彼女を追い返す為の方便でしかない。

 

 

如何考えても、機動六課とか言う管理局の一部隊への協力はオーズとしての総麻にとって行動を制限されると言う点においてマイナス点が大きく、最悪はオーズの力を取り上げられる危険も有る。考えられる限りメリットがなく、デメリットばかりの依頼だ。

 

 

「考えるまでもないか。…まあ、アンクや会長さんにも相談しておこう…一応、オレの雇い主の様な者だしな。」

 

 

そう考えを纏めながらドアに触れた瞬間、総麻の肩に緑色の機械仕掛けのバッタ『バッタカンロイド』が飛び乗る。

 

 

「…アンクか?」

 

 

『おい、何処で遊んでる!?』

 

 

「いや、家の前だけど。大体、こっちも『遊んでる』って言われるほど楽しい思いはしてねえよ!」

 

 

通信機としての機能を持つバッタカンロイドを通じて聞こえてくる苛立ちも感じられるアンクの声に対して思わず荒立てながら返事を返す。

 

 

『総麻、ヤミーだ!』

 

 

「了解。…って、今日は二度目じゃないのか?」

 

 

『そんな事は知るか。』

 

 

「はいはい、直に行くよ。」

 

 

通信機越しに聞こえるアンクに対してそう答えると、トコブシヤミーと戦った時に回収しておいたセルメダルの一枚を取り出し、自動販売機形態『マシンベンダーモード』のライドベンダーの投入口にセルメダルを入れ、バイクモードの『マシンバイクモード』に変形させ、

 

 

「さあ、怪物退治と行きますか。」

 

 

ライドベンダーに乗り込み、笑みを浮かべながらバッタカンロイドに先導されながら走らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、アンク! ヤミーは?」

 

 

バッタカンロイドに先導されライドベンダーを走らせて、アンクと合流する。

 

 

「あそこに居る。」

 

 

「あいつが?」

 

 

そう言って異形の腕の本体で指差す先には妙な姿の暴れまわる一体のヤミーがいた。だが、その姿はこれまで戦って来たどのヤミーとも共通点がない。体からは獅子の印象を与えられるが、頭部の部分からは鷲、体の部分にはライオン、そして、手足の部分には蛇の印象がある。

 

 

「…グリードの間違いじゃない?」

 

 

「ふざけるな! あんな、頭の良い悪い通り越して、獣そのもののグリードが居るか!?」

 

 

総麻の疑問も無理は無いだろう。グリードには本来、鳥類系、昆虫系、猫系、重量系、水棲系の五つの系統が確認されていて、その姿はその系統に属する三種類の生物の印象を持つ。

 

例を上げるならば、昆虫系グリードのウヴァはクワガタの顎上の角、カマキリの鎌と複眼、外骨格に覆われた体を持ち、バッタの様な俊敏性、跳躍力を持つ。また、それぞれのグリードが生み出すヤミーはそれぞれの系統に属した物を誕生させる。

 

 

だが、目の前に居るのは鳥類に属する鷲、猫系に属するライオンと言った別系統の生物の合成獣(キメラ)の様な姿からはグリードともヤミーとも呼べない怪物だった。だが、アンクが言うにはヤミーであることは間違いないらしい。

 

 

「考えるのは後だな。」

 

 

総麻はベルトをつけ、バックルの両端に鷹の描かれた赤いメダルと、バッタの描かれた緑のメダルを装填。そして、最後に中央の部分に虎の書かれた黄色のメダルを入れ、バックルを斜めにして傾ける。

 

 

「変身!!!」

 

 

そして、腰についた『オースキャナー』でメダルをスキャンしながら腕を交差させ、力を与える言霊を叫ぶ。

 

 

 

『タカ! トラ! バッタ! タ・ト・バ!♪ タトバ!♪ タッ・トッ・バッ!♪』

 

 

 

ベルトから軽快な音楽が鳴り響き、総麻の姿がオーズの基本フォーム『タトバコンボ』へと変身し、メダキャリバーを構える。『仮面ライダーオーズ・タトバコンボ』へと変身するとその場からジャンプし、ヤミーの前へと降り立つ。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

 

「ッ!?」

 

 

斬り付けられたヤミーらしい怪物は悲鳴を上げて交代する。更に追撃を加えようと距離を詰めるオーズに対して背中から翼を出現させ、そのまま上空へと飛翔し、オーズの剣戟から逃れる。

 

 

「なに!? うわぁ!?」

 

 

そのまま上空からヤミーが腕を振るうとヤミーの腕がオーズへと向かって伸び、無防備に叩きつけられる。

 

 

「ぐっ!」

 

 

そして、そのまま距離を詰めるとヤミーはライオンの様な俊敏性でオーズとの距離を詰め、彼の体を腕から伸びた爪により切り裂く。

 

 

 

「なにやってんだ、総麻!? だが、あのヤミー、なんだ?」

 

 

アンクは二枚のコアメダルをオーズへと投げ渡す。

 

 

 

「サンキュー! さて、一気に決めるぜ。(それにても、このヤミー…まるでグリフォンの様な奴だな…。)」

 

 

アンクに礼を言いながらベルトのトラのメダルをカマキリの描かれた緑のメダルに、バッタのメダルを黄色いチーターのメダルに変える。

 

 

 

『タカ! カマキリ! チーター!』

 

 

 

体が緑色の前腕部にブレード上の武器『カマキリソード』が付随した『カマキリアーム』に、下半身が黄色い『チーターレッグ』へと変わる。

 

これがオーズのフォームチェンジシステム『コンボチェンジ』。それは亜種形態の一つ『タカキリター』。

 

 

「さあ、行くぜ!!!」

 

 

カマキリソードを持ちチーターレッグの生み出す加速力で一気に距離を詰め、『グリフォンヤミー』と呼ぶ事にしたヤミーにソードによる連続攻撃とチーターレッグによる連続キックを打ち込んでいく。

 

攻撃を受けた部分はセルメダルとなって崩れ落ちていく。

 

 

「オォォォォォォォォォォォオ!!!」

 

 

顎を蹴り上げ、

 

 

「ハァ!!!」

 

 

浮き上がった瞬間にソードによる斬撃を打ち込み、

 

 

「おまけ!!!」

 

 

そして、最後のトドメとばかりに、今まで攻撃していた箇所に向かって回し蹴りを打ち込む。

 

 

「ギィャャャャャャャャャ!!!」

 

 

オーズ・タカキリターの連続攻撃を受けて悲鳴を上げて吹き飛ばされるグリフォンヤミーに対して、オーズがトドメを刺そうと更に攻撃を叩き込もうとした時、オーズの攻撃を受けた部分から、人の腕が伸びる。

 

 

「な!?」

 

 

思わず驚愕して攻撃を止めようとして足を止めるが、勢い余ってグリフォンヤミーの居る場所から離れた所に止まる。

 

グリフォンヤミーの体から地上本部の制服を着た男が完全に外に出てくると、グリフォンヤミーはそのままメダルとなって崩れ去って行った。

 

 

「アイツ、寄生型だったのか? 悪い、アンク、逃げられた。」

 

 

グリフォンヤミーが落としていったセルメダルを拾い上げながらアンクへと謝罪の言葉を告げる。

 

 

「やれやれ。だが、あのヤミー…今まで見た事の無い奴だったな。」

 

 

「確かに。あの姿はまるで『グリフォン』だ。」

 

 

「グリフォン?」

 

 

近づきながら言葉を交わしていたアンクはオーズの言葉に疑問の声を上げる。

 

 

「ああ、伝説上の怪物の名前だ。」

 

 

あえて言うならば先ほどのグリフォンヤミーは『幻獣系』と言えるヤミーだろう。

 

 

謎のヤミーの存在に暫く考え込む二人だが、オーズはアンクへと顔を向けて。

 

 

「って、拙い、こんな所でのんびり考えてる暇はなかった。」

 

 

 

『タカ! トラ! バッタ! タ・ト・バ!♪ タトバ!♪ タッ・トッ・バッ!♪』

 

 

 

慌ててコアメダルの組み合わせを変えタトバコンボの姿へとフォームチェンジすると、カマキリメダルをアンクへと投げ渡す。

 

 

「アンク、急いでここを離れるぞ!」

 

 

「ああ。あの連中か? 油断してメダルを取られるなよ。」

 

 

「お前こそ、油断して、標本にされるなよ。」

 

 

停めてあったライドベンダーに乗り込みその場を走り去るアンク、そして、オーズも別のライドベンダーを見つたが、

 

 

 

「時空管理局です。大人しくしてください。」

 

 

ライドベンダーを変形させようとした時、後からそんな声が響く。

 

悪い事に周りには破壊の痕、足元には倒れた地上本部の局員らしき男がいて、武器を持った正体不明の仮面の男。…………悪者扱いされるのは誰かと問われれば、状況からオーズだろう。

 

 

「(…おいおい、高町や八神じゃなくてフェイトかよ…。)ったく、ここは他所の縄張りじゃないのかよ…ここは? え、執務官さん?」

 

 

オーズは振り返った先に居る金色の髪と黒いBJの女性『フェイト・T・ハラオウン』へとそう問い掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…オーズか…。」

 

 

フェイトと対峙しているオーズの姿を眺めながら一体の異形の怪物がそう呟く。

 

 

「…物事には障害があった方が面白い…。そして、それが困難であれば有るほど面白い。」

 

 

言葉を話す、その様子から与えられる印象はヤミーではなくグリード。竜の印象を持った頭と両腕、背中からは炎の翼を持った『幻獣のグリード』はその表情に愉悦に歪めながら呟いた。


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