ネタ短編集   作:龍牙

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ハイスクールV×D ライド12

「断る」

 

 答えは即答だった。木場の言う魔剣とは四季の持つ超兵装ブラスター・ダークの事だろう。

 飽く迄超兵装ブラスター・ダークは本来の持ち主であるブラスター・ダークに変わって預かっているだけであり、

 

「どんな代償でもと言われても、お前から欲しい物なんて何も無い……神器も含めてな」

 

 はっきり言って木場に何を支払われても四季には手放す意思は無いし、木場の所持している物……宿している 神器セイクリッド・ギアや命を含めて釣り合う物を持っているとは思えない。何より、

 

「あの剣はオレの“覚悟”の証だ。何が有っても手放す気は無い」

 

 超兵装ブラスター・ブレードが勇気の証ならば、全てを賭して愛する人を守ると誓った覚悟の証。それを生きている限りそれを手放す気は無い。

 

「木場、お前マジで最近変だぞ?」

 

 四季の言葉に無言のまま立ち去ろうとする木場を一誠が肩を掴んで呼び止める。

 

「君には関係ないよ」

 

 立ち去ろうにも立ち去れない空気が漂う中、一誠と木場の会話で四季の推測が正しいと確信できる一言『聖剣エクスカリバーを墓するのが戦う意味だ』と言う言葉を木場が告げる。

 

(やっぱりな)

 

 だからと言って何かする気は無い。四季にとって木場は名前を知っている程度の他人。友人やクラスメイトですらない相手だ。……そんな相手に己の覚悟の証を貸すほどお人よしではない。

 

「詩乃、行こうぜ」

 

「ええ」

 

「ちょっと待てよ!」

 

 流石に寒くなってきたので教室に戻ろうとする二人……正確には四季を呼び止める。

 

「よく分からないけど……木場の奴に貸してやる位良いじゃないのかよ?」

 

「……はぁ」

 

 一誠の言葉に思わず溜息を吐く。……せめて木場が手にしようと思っている剣が彼の元に有れば少しは良い方向に代わるのではと考えての、仲間を思っての事はなのだろうが、仲間でもない四季にとっては、

 

「悪いけど、アイツが欲しいと思っている剣はオレの覚悟の証だ。そんな物をノート感覚で貸すほど……オレの覚悟は安くない」

 

「木場も代償も払うって言ってただろ!?」

 

「重ねて言うが、あいつの持ち物で欲しいと思うものは何も無い」

 

 四季が超兵装を天秤に掛けるとすれば、それは『より強力な詩乃を守る為の力』だろう。四季の持つ超兵装を聖剣を破壊する為に求めている木場では絶対に支払う事の出来ない対価だ。

 

「二本も有るなら一つくらい貸してやったって……」

 

「兵藤一誠、お前は……腕は二本有るからって一本貸せるのか?」

 

 確かに四季は光の超兵装を同時に所持している。だが、残念ながら二つの超兵装だけでは、今の四季では四季が望んでいる力には届いていない。故に二つの超兵装、そのどちらも手放せない。

 

「確かに大切な者を傷つけられれば、何が有ってもそいつの事は許せない。そう言う気持ちだけは分かるし、虐げられた者が復讐するって言うのも有る意味当然の権利だ。……それを理解した上でこう言わせて貰う」

 

 そこで一呼吸置くと、

 

「知ったことか」

 

「それって、どう言う意味だよ……お前に木場の何が分かるって言うんだよ!」

 

「それは部室で言ったと思ったぞ。これはお前達の問題だ、自分達の王様にでも教えてもらえ」

 

 そう言い切って四季は詩乃を伴ってまだ何か言いたそうな一誠に背中を向けて立ち去って行く。そんな四季に対して今にも殴りかかりそうな視線で睨みつけていた。

 

 

 

 

 

「随分冷たい言い方ね」

 

「いや、あの変態の事嫌いだし」

 

 グレモリー眷属の問題に必要以上に関わる気は無い。人が守れるのは自分以外にはあと一人だけ。必要以上に手を広げて一番大切な者を守れないのはゴメンだ。

 

「リアス・グレモリーは別の生き方をして欲しい……とでも思ってるんだろうけどな」

 

 だが、それでも新しい生き方を選択するには何かしらのケジメをつけなければならない……そう言う事だろう。恐らく、木場にとってそれはエクスカリバーを超える事なのだろう。

 

「だけど、それはオレには関係ないな」

 

 超兵装ブラスター・ダークを貸し与えたために、木場のケジメに手を貸したために詩乃を守れなかった……等と言うオチはごめんだ。

 

「とは言え、オレ達はどう動くかな」

 

「もう関わっているのよね」

 

 思わず二人揃って溜息を吐く。……依頼はエクスカリバーの奪還、または核だけを残しての破壊。盗んだのが堕天使の過激派だとすれば次の動きはこの街にいる二人の魔王の妹になる可能性は高い。

 エクスカリバーの強奪で天使側に、魔王の妹とその眷属の命を奪う事で悪魔側への宣戦布告代わりにする。……天使側は兎も角、悪魔側は魔王の身内を殺されては簡単に止まれないだろう。結果、最低でも堕天使と悪魔の間で戦争は確定してしまう。

 堕天使側の思惑としてはその事態の阻止、そこに有るのだろう。

 

「まあ、木場には悪いがオレ達の賞金の為にエクスカリバーは破壊させない」

 

「そうね。でも、他に目的が有るんでしょう?」

 

 四季の考えを読んだ様な詩乃の言葉に一度言葉を止め……

 

「最悪の場合の破壊は……核毎完全破壊する」

 

 エクスカリバーはカリバーンを打ち直したが故に エクスカリバー(カリバーン改)とされていると言う説も有る。カリバーンは主が卑劣な行いをした為に自ら折れる事を望んだとされる。ならば……望まぬ血を大量に吸わされている今のエクスカリバーもまた被害者。ならば……

 

「開放してやろう、エクスカリバーを」

 


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