あいもかわらずふよふよと空を飛ぶ上海。今幻想郷は夏である。夏の猛暑は人間妖怪神様何でもかんでもだらけさせる。
その暑さから逃れようと、多くの者がこの湖に集まってきた。
その中で一人。湖の畔で蹲っている少女が居た。青い服を着た少女は
「出来た!カエルの凍り漬け!!」
カエルを凍らせて遊んでいた。しかもこの娘
「ふふん!やっぱりアタイは天才ね!次はこの湖中のカエル全部凍らせてやるんだから!」
バカである。
そのバカを上海は上から見ていた。
「ん?そこにいるのは誰?」
バカが上海に気づいて顔を上げる。だがちょっと遅かった。
既に上海は上からバカの頭目掛けてダイブした所であり、そのタイミングでバカは顔を上げたため着陸地点が丁度バカの顔面になる。さらに運が悪いのか偶々上海の手がバカの眼に入り、
「目がああ・・・目がアアアアアアアアアアアアアア!」
この様に目を押さえて転げまわっている始末である。
「だ、誰よ・・・私の顔にぶつかってくる奴はッ!?凍り漬けにしてやるんだから!!」
「シャンハーイ。」
「んん?」
と、視力が回復したチルノは目の前に上海に気が付く。
「なにこれ?人形?」
「シャ~ンハ~イ」
そう言うといつも通りにバカの頭に乗る上海。
「ははぁ~ん。そうか、あんた私の部下になりたいのね!」
誰もそんな事は言っておらん。
「いいわ!あんたあたいの部下にしてあげる!」
誰もそんな事は頼んでおらん。
「ふっふっふ・・・まずはこの湖のカエルすべてを凍らせるわよー!!」
やめろ。
「・・・・・・・と言ったはいいものの・・・。もうここ等辺にはカエルは居ないわね。」
「しゃんはーい・・・。」
当たり前だ。カエルだって冷凍されたくないからとっくの昔に逃げている。
「カエルが居ないんじぁしょうがないわね・・・。他にカエルの良そうなところは・・・。」
「しゃーんはい。しゃーんはい。」
「ふっふーん。そんなにあたいの技が見たいのね!いいわ。見せてあげる!!」
そう言うとバカは懐から一枚のカードを取り出すと
――凍符『パーフェクトフリーズ』
そう宣言した途端、バカの周りからとてつもない冷気が発せられる。
その冷気は、空気中の水分を、湖の水を凍らせる。
「どーよ!あたいに掛かればこんなものたやすいんだから!」
「・・・。」
「ってあれ?どうしたのよ?」
返事が無い事に違和感を感じて上に居た上海を見上げる。するとそこに居たのは
「・・・・(カキーン)」
何とも見事に凍り漬けになった上海の姿なのであった。
上海が凍りついてしばらく、日当たりの良い所に置いておいたら丁度いい具合に氷が解けていた。
「しゃ・・・しゃん・・・はい・・・。」
どうにかこうにか解凍されて生還した上海は、ただいまバカの頭の上で日にあたっていた。
「ご・・・ごめんなさい・・・。」
そう言って謝るバカ。きちんと頭を下げて謝るのは良い事だが、頭の上に上海が乗っている事を忘れている。
おかげさまで上海はそのまま頭から転げ落ちた。
「お礼にあたいのとっておきの技を見せてあげる!」
そんな事はつゆ知らずバカは勢いよく立ち上がる。
またもやどこからか取り出したカードを宣言する。
「――――――――――――――――――」
すると、バカの周りに大きな氷の塊が6つ出来上がった。その氷塊は空高く舞い上がりそしてパキンッという音が起ちひびが入る。
上海や、湖に集まっていた他の妖怪達が見上げる中。氷塊のひびはどんどん大きくなっていき、砕け散った。
細かく砕かれた氷は、太陽の光をキラキラと反射させながら降り注いできた。
湖に居た全員が見とれていた。
「ふっふん!どうよ!」
この日、夏の幻想郷の湖に雪が降った。