魔王生徒カンピオーネ!   作:たけのこの里派

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二ヶ月後に更新予定とか言っておきながら一ヶ月後に更新。
アレェ?
まぁ更新できたから良いや。

ここで再度、一話の前書きにある注意事項を御確認ください。
追加して、過剰なまでの独自設定が存在します。ご注意ください。
それを踏まえて、読んで頂ければ。





第十七話 落下した叡智の残滓

 魔法世界(ムンドゥス・マギクス)

 

 火星に存在する異世界であり、約2000年前に造物主によって創造された、火星の大地を触媒にしてその上に重なり合うように存在する幻想世界である。

 総人口12億人。人間種の総人口は約5億人で、()()はメガロメセンブリアの総人口6700万人の魔法使いが存在していて、いくつかの国に分かれている。

 勢力図は亜人による南の古き民『ヘラス帝国』と、小さな人間の国々が統合している北の新しき『メセンブリーナ連合』。そして中立を謳う独立学術都市国家アリアドネー。

 

 南は元々この世界に住んでいた亜人種が多かったことに対し、 北は旧世界――――地球から移住して来た人間種が多かったことが起因していた。

 人間と亜人や魔法世界人と呼ばれる者達の最大の相違は、亜人は造物主によって創られた存在であり、人間は旧世界─────地球からやって来た人間であるという点だ。

 

 亜人は人間と違い、明らかな容姿の違いがある。

 様々な種族が存在し、人とは違った固有の能力を持ち、人よりも長い寿命を持つ。

 両者は、特にメセンブリーナ連合側は古くから様々な確執を持っていた。

 当然だろう、人間は肌の色の違いだけでも人を差別し、戦争にすらなる。

 

 魔法世界には魔法が公然と存在するが故に、地球よりも科学技術の発展が遅い。勿論、ソレを補って余りある魔法技術が存在するが。

 だがソレ故に現代の地球より文化が遅れている。

 

 亜人は人を、人は亜人を差別し、果てには家畜扱いする者もいた。

 亜人の中には身体的部位が高価な妙薬になる種族も存在する事なども、それを助長させた。

 

 その両者の嫉妬と鬱憤が爆発したのが、1981年に勃発した魔法世界全土を巻き込んだヘラス帝国とメセンブリーナ連合による『大分烈(ベルム・スキスマティクム)戦争』。

 

 そこには人間と亜人の確執のツケも確かに存在し、原因となった。

 だがソコに魔法世界の創造主である造物主が介入していたことが明るみになり、最終的に両勢力にとって共通の敵が出現し、両者の同盟によってこれを討ち果たしたことにより終戦した。

 

 その戦争で劣勢だったメセンブリーナ側で参戦。

 破竹の如き快進撃で互角まで持っていき、裏で戦争を操っていた組織『完全なる世界』の企みを暴露、そして南北連合軍と共に撃破した、『千の呪文の男(ナギ・スプリングフィールド)』を筆頭にした英雄達。

 人は英雄達の所属名『紅き翼(アラルブラ)』を称えた。

 

 劣勢極まりない状態にあった連合の勢いを盛り返し、終わらない戦争の裏に存在していた組織を突き止め、その首領の撃破を達成した英雄達。

 

 尤も、戦争の全てを極めて客観的に知っているとある魔王は「お前ら居なかったら、もっと早く戦争終わったんじゃね? て言うか造物主の事情とか鑑みるに余計な事しかしてなくね?」と身も蓋もない不粋な事実をぶっ込んでくるだろうが、それは言わぬが花というもの。

 ソレを言ったら戦争だろう。

 

 さて、長々と魔法世界について述べたが此処で本題と入ろう。

 

 ここで本題となるのが、この世界の特徴として挙げられる─────「まつろわぬ神が出現した事がない」という一点。

 

 何故かは解らないが、魔法世界の歴史上まつろわぬ神が出現したという記録は存在せず、それ故にカンピオーネ─────神殺しの魔王が誕生したという記録も無い。

 火星という神話の基盤の一つとも呼べる重大なファクターの上に、最低二千年存在している世界にも拘わらず。

 

 それは何故か。

 単純に考えるのならば、創造者である造物主が何らかの細工をしたと考えるのが自然である。

 

 そもそもまつろわぬ神が顕現する要因は、極論神話世界である『不死の領域』から降りてくるからだ。

 

 造物主は魔法世界を創る際、まつろわぬ神が侵入できない様に細工したのだろう。

 つまり、魔法世界はある種独立した世界─────幽世と呼ばれる世界と考察できるだろう。

 造物主をまつろわぬ神だとし、人に倒されるレベルの神祖に落ちぶれるまで力を使って、幽世から隔絶させ造り出した世界。

 

 ─────そして、魔法世界は恐らく失敗なのだろう。 

 

 それは造物主の正体と、魔法世界の崩壊が近付く際に創った組織の名から見ても明らかだ。

 まつろわぬ神と魔王が存在しないよう造られたのは、恐らく造物主は両者を嫌ったのではないだろうか。

 ()()()()()()()()に、まつろわぬ神や魔王など異物以外の何物でもないと。

 

 まつろわぬ神が存在しなければ、内的原因で魔王が魔法世界で誕生することはない。

 そして魔王は神の権能でなければ、ほぼ全ての魔法や魔術、呪術を弾くほどの魔法抵抗力を基本性能として有している。

 

 地球から魔法世界を行き来するゲートの惑星間移動を、魔王達は行うことは出来ない。

 勿論、方術と武術両方の奥義を極めたかの羅濠教主のような例外もいるが、そうした例外的存在が態々魔法世界に来ようとしない限り、魔法世界に外的要因で魔王が現れる事はない。

 何より魔法世界が認知されたのが最近(数百年単位)であるため、その事例は魔法世界誕生からついぞ起こり得なかった。

 

 故に魔王が魔法世界に行くためには、惑星間転移ゲートの『流れ』を利用して瞬間移動する『縮地神功・神足通』に類する術を使用出来なければならない。

 

 では、それ以外の方法は無いのか?

 先程見も蓋もない発言をするであろうと述べたある魔王は、こう答えた。 

 

 

「─────権能(チート)って便利だよね。うん、やっぱりインドは頭おかしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十七話 落下した叡智の残滓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「インド神話の科学力は世界一ィイイイイイッ!!!」

 

 皐月は『黄金とエメラルドで構成されていた船首のあるUFO』と形容できる、雲を裂いて現れた空中戦艦の艦内から、魔法世界の大地を見下ろしながら叫んでいた。

 皐月一行は、既に魔法世界に到着していたのだ。

 

 ちなみに一行といっても、今回刹那とこのかは居ない。

 まずヴィマーナの乗員限界があり、また魔法世界に関連を持っていない二人はまだ行くべきではないと考えた故。

 今から向かうのは魔法世界の深奥。先入観を与えてしまうのを恐れた。

 

 茶々丸も彼女達の護衛役を命ぜられた地球組。

 ここにはいない。

 

「今更だろう」

「せやね。乗員オーバーだった事は否めないね」

 

 権能によって改造に改造を重ねて出来上がったこの『ヴィマーナ』。大気圏突入から宇宙航行、更には異界突入までこなす化物である。

 

 正式名称────『天翔る黄金の戦輪(プシュパカ・ラタ)』。

 インド神話における空を翔ける戦車、あるいは宮殿とも言われ作成者ヴィシュヴァカルマンより創造神ブラフマーに贈られ、ブラフマーよりクベーラに譲られ、クベーラから羅刹の王ラーヴァナに略奪され、最終的にはラーヴァナを討った英雄ラーマの手に渡った宝物。

 クベーラとヴィシュヴァカルマンの習合した毘沙門天を殺し、その権能を奪った皐月に作れない訳が無い。

 

「特殊な術式や方法を取らずとも、普通に往き来する方法があった訳だ」

「慢心してマジカル☆フレアで墜ちそうだったけど」

「そんなアスナの心配も無問題! 攻撃手段と引き換えに装甲と移動性能に極振りしてある!! 例え極大呪文が二・三発直撃しようが航行には何の問題もないィ!」

 

 万が一攻撃を受けようとも、直ぐ様修復する事の出来る(魔王)が居るため、問題も無く無事火星異界である魔法世界に到着したのだ。

 

「す、凄まじいですね、皐月様の御力は」

 

 実質、皐月の権能を分かりやすい形で観るのは初めてだったりするアカリは、終始呆然としていた。

 一行を乗せたヴィマーナはあっという間に上空を翔け、目的の物品がある旧オスティア王都跡地に訪れた。

 

 ─────魔法世界最古の王国ウェスペルタティア。

 

 オスティアは千塔の都と称えられた浮遊する空中都市。

 魔法世界に唯一存在する神話、初代王女アマテルのパートナーの伝説と、それによる魔法世界の文明発祥の地とされている国である。

 

 しかし現在、魔法世界にはウェスペルタティア王国は存在しない。

 かつての大戦の折り、広域魔法消失現象により多くの浮島が墜ち、女王は国民の命を繋ぐために奴隷制度を敷かざるを得ず、更に大戦の裏で潜んでいた組織の責任を、当時メガロメセンブリア元老院全て被せられ処刑された。

 現在王国災害復興支援の名目でメガロメセンブリア軍により吸収され、数百万の民は難民となって、周辺各国に流出。

 一部は現在奴隷として生きている。

 

「懐かしい……」

「フン。帰郷感でもあるのか、アスナ」

「……」

「重いんですけど空気ィ!!!」

 

 エヴァンジェリンにとって、怨敵の居た住処。

 アスナにとっては百年間拘束された牢獄の象徴にして始まりの場所。

 アカリにとっては、魔法世界そのものが敵地同然の認識だ。

 

「人選ミスったか? 関係者だけ連れてきたのが仇となったか?」

「馬鹿やってないでさっさと行くぞ」

 

 こうして一行は初代女王の墓を中心とした霊廟、原作ラストダンジョンこと墓守の宮殿跡に到着した。

 

「私が道案内。色々崩れてるけど何となくイケる気がする」

「そんな曖昧な記憶で案内するな。皐月に権能使わせればすぐ済む」

「皐月様御一人の方が良かったのでは……?」

 

 皐月の権能『知覚超過』。

 超視覚と超聴覚によって齎される情報で未来予測を可能にする神の知覚。

 常時使用されるその権能は、意識的に行えば未来予測に加え迷宮や遺跡のような入り組んだ場所でも、まるで3Dの背景グラフィックの様に把握することが出来る。

 

「まずは反響定位でのソナーいくか────来れ(アデアット)

「アーティファクト?」

「流石に透視までは出来んからな」

 

 皐月の持つアーティファクト『道化の飛翔靴(スレイプニル)』。

 有する能力は全面歩行。

 重力を無視し、あらゆる角度でも足場を形成して歩行可能にする魔法の靴だ。

 

「でもコイツの形状的に何かあんのかねぇ、と試行錯誤してみた結果、コイツは魔力を込めることで振動波をゼロから生み出したり、運動エネルギーや振動を回収、増幅機能もあった」

 

 超々高能率エネルギー回収・増幅機構。

 それが『道化の飛翔靴(スレイプニル)』のもう一つの能力だった。

 

「フンッッ!」

 

 ダァンッ!!! と地面を踏み締める。

 その衝撃によって生じた、有って無い様なほんの僅かな足への負担が権能として機能する。

 

 ロキの第一の権能『激痛の慟哭(アースクェイク・ペイン)』によって発生した振動エネルギーを回収、増幅し使用者の望むだけの振動を出力する。

 

 振動波は旧オスティア跡地を網羅するほどに広がり、反響で建物内内部の構造を神の知覚で掌握する。

 

「おー、大体把握」

「お見事です」 

 

 暢気に事を成す魔王に、まるで長年連れ添った忠臣の如き所作で皐月を褒め称えるアカリ。

 

 そんな様子を見て、エヴァンジェリンとアスナは思った。

 捜索役と戦闘役、更に道具作成まで兼任できる、TRPGで絶対出してはいけないバランスブレイカーだ、と。

 

「早いな。で? 目的のブツは見付かったか?」

「幼女でも見付けた?」

「いい加減にしろ幼女(アスナ)。ネタに走らんと死ぬ病にでも掛かっているのか己は」

 

 最近ヨゴレキャラが定着しているアスナ。

 もう皐月も諦めているのか、ボケに反応しない。

 エヴァはそう思っていた。

 

「……あぁ、居たねそういえば」

「どうした?」

「いや、マジで幼女見付けた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ、御待ちください!」

 

 皐月の先導に従い墓守の宮殿跡を進んでいくと、アカリの警戒の声と共にローブを頭から被った小柄の少女が、一行を出迎えた。

 

「─────主が自ら此処へ足を踏み入れるとは、予想しておらんかったぞ。黄昏の姫御子」

 

 彼女は墓所の主。

 歴代のウェスペルタティア王家の墓である墓守の宮殿の守人である。

 

「この墓所の主か……、確かウェスペルタティアでは墓守を務める一族が居たそうだな。その生き残りという訳だ」

二股(おもしろ)眉毛……!」

「しッ! 指差しちゃ駄目でしょうがッ!」

 

 彼女の正体は皐月も知らない。

 純粋に、原作において描写されていないというだけであるが、そのアスナに酷似したその容姿がウェスペルタティア王家の人間であることを示していた。

 

「しかも─────我が末裔に、よもや未完の叡智(・・・・・)を連れて来るとはな。二千年の時の果てが、また繰り返す事になるのじゃろうか」

「何……?」

 

 彼女はアカリと、何よりエヴァンジェリンを見て、確かにそう言った。

 エヴァンジェリンが詰め寄ろうとする前に、皐月を見て墓所の主が驚愕に目を見開く。

 

「貴様は……まさか神殺しの魔王か! ははははは!!! ただの失敗作だと思えば、これならば其処な『境界(・・)』が上天に至り(・・・・・)救済者(・・・)』に辿り着く事も、あの盲目(・・)めを退けることも出来うるやも知れぬな!!」

 

 解らない。

 エヴァンジェリンは彼女が何を言っているのか理解出来なかった。

 彼女は天を仰ぎ、何か此処には居ない存在に対して嘲る様に嗤う。

 

「これは滑稽だ! 貴様は失敗しておいて、こうして叡智は魔王の手を借りて自ら至ろうと(・・・・)しているではないか!!!」

「貴様! 先程から何を言っている!!」

 

 しかし、本能的にエヴァンジェリンは理解する。

 彼女の言っている事が、自分の起源であると。

 

「不満、幼女は幼女でも合法。ババア口調のロリならテオドラで既に間に合っている。昔のエヴァみたいに程好いあざとさを身に付けてから出直して」

「………………」

「えー……」

 

 お前が出直せ。

 皐月と激昂していたエヴァンジェリンは冷水をぶちまけられた様に熱が引き、寸の所でその言葉を呑み込んだ。

 シリアスな空気をネタで台無しにするのは勘弁なのだ。

 ちなみにアスナが言及したかの第三皇女は、現在ならば皐月の好みの属性持ちのナイスバディ美女となっているのだが、アスナはまだソレを知らない。

 

「クククッ……すまんすまん。しかしお主も随分と変わったな黄昏の姫御子。まぁ直に解ること、焦ることはない。主等は『鍵』を欲して来たのじゃろう? 何処に埋まっておるか解らぬが、姫御子が居るなら直ぐに見つかるじゃろう。寧ろ居らねば見付かりはせぬがな」

 

 これ以上は言うことはないと言わんばかりに、道を譲るように身を引く墓所の主。

 言いたいことだけ言われて、こちらの質問には一切答えない。

 

 歯軋りして彼女を見るエヴァンジェリンと、不穏を感じ完全に殺しのスイッチが入ったアカリの二人が墓所の主を睨み付けながら渋々奥に進む。

 

「ダウジングダウジング」

「アスナさんや、君はそれで良いのかい?」

「私はゴーイングマイウェイを地で行く」

 

 ポニーテールを触手の様に操り続くアスナに、悟りを開いたような声でツッコんでいく魔王がいた。

 

 もしこの奔放振りが百年間縛られ続けた反動なのか。

 皐月は、だとすれば降霊でもして縛り付けた連中を燃やしたくなる衝動に襲われる。

 アスナも二人の後を追った時、皐月一人が顔を覗かせた。

 

「なぁ墓所の主さんよ、一つ聞いて良いか?」

「何なりと。神殺しの堕天使」

「─────アンタ誰よ?」

 

 皐月の問いに、彼女は一片の後悔も無い声色で答えた。

 

「なに、ただの愚かな過失者(・・・)じゃよ」

 

 その声は、何かを遺せた老婆の様なモノだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は伏線回でしたので、あんまり進んで無いですね。
墓所の主が喋っていた事の大半が伏線です。
ていうかサブタイトルも伏線です。
これで墓所の主の正体と、エヴァに対する魔改造の内容が解ったら天才ですね。

次回か次々回で初等部編終了予定です。
その場合一気に中等部までキングクリムゾンする予定ですので悪しからず。
というか早く麻帆良の魔法生徒、教師と絡めたいです。ロリを一掃したいです。


ラーマへの嫌がらせは自分の理解不足から間違えた表現をしてしまい、修正の為丸ごとカットしました。
指摘感謝です。


それではまた次回に。
修正点は随時修正します。
感想待ってます!(*´∀`)

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