真剣で私に恋しなさい!-きみとぼくとの約束-   作:chemi

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『有名人(※西日本に限る。東はこれから)』

 朝のHR。凛は歓迎会の目処がついたことに、改めて感謝の言葉を口にする。

 

「それにしても本当に助かった。大和もクリスもありがとな」

 

「何度もお礼を言いすぎだ。もう十分受け取ったぞ」

 

「クリスの言うとおりだ」

 

 そんな凛の態度に、苦笑しながら答えるクリスと大和。

 

「こら! 夏目。HRは始まっているんだぞ! 静かにせんか!」

 

 話し声を聞き取った梅子から、教育的指導が入る。手首のスナップをきかせた鞭が、まるで生きている蛇のように凛に向かっていく。

 

「うっ! すいません! 以後気をつけます!」

 

 指導を甘んじて受けた凛は、体育会系のノリで謝罪をした。梅子はそれに頷きを返すと、教室の後ろのドアが空いていることを目敏く見つける。そして、この場でまだ来ていない生徒は一人のみ。彼女の鞭が、こそこそ移動する標的に向かう。

 

「わかればいい。福本―! こそこそ入ってきているのは、わかっているぞ! なぜ素直に遅刻を告げにこない!」

 

「はうっ! うっ! 痛気持ち……すいません。実は――――」

 

 そこまでは、いつもと変わらないHRの時間だった――。

 しかし、2人の生徒が校庭に現れたのを切欠に、静かな朝が途端に騒がしくなっていく。退屈そうに外を見ていた岳人が卓也に話しかける。

 

「なんかモモ先輩のクラスがゾロゾロと出てきたぜ」

 

「どうしたんだろうね」

 

 その騒ぎに、2-Fの生徒たちも校庭を気にし始めた。まだHRが終わっていないため、窓際の生徒しか外の様子を確認できない。

 梅子が窓際に寄り、校庭の様子を確認しながらつぶやく。

 

「おかしいな。今朝は決闘を行うなど聞いていないが」

 

「先生! ここから見学してはダメでしょうか?」

 

「ふむ。……まぁいいだろう。伝えたいことはもうないからな。見たい者は、移動しても構わんぞ。他はHR中だから、外に出ることは許さんぞ福本―!」

 

 梅子は挙手した生徒に許可を与える。しかし、外に出ることは許されず、鞭で拘束される育郎。他の生徒たちは、即座に窓際へ移動を開始した。

 一子が姉の姿を見つけ、声をあげる。

 

「あっお姉様ともう一人……誰かしら?」

 

「ん? あれは屋上で出会った美少女」

 

 大和は百代の隣を歩く対戦相手と面識があったようだ。岳人が校庭から視線をはずし、後ろを振り向く。

 

「なんだよ! 大和はもう知り合いか!? 後で紹介頼むぞ!」

 

「大和、また知らない女の人とフラグ立ててる」

 

 それに続いて、京が外の様子を伺いながら口を尖らせた。クリスが、いつぞやの騒ぎを思い出し笑う。

 

「初めて見る顔だな。でも、こうしていると凛の転校初日を思い出すな」

 

「すごい衝撃だったもんね。まさか同じような展開になるのかな?」

 

 卓也もそのときのことを思い出し、今回の相手にも期待する。川神の生徒の多くが、彼と同じ期待をもっているだろう。その間も校庭では、さらなる動きがあった。

 

「ねぇねぇ見て。武器がたくさん並べられているわ。もしかして、全部使うのかしら?」

 

 一子の言葉通り、校庭の中央にたつ女生徒の後方には、様々な武器が置かれていた。どうやら、彼女が使うようだ。ルーが2人の間に立ったことで、戦いがもう始まるとわかった生徒たちは、固唾をのんで見守る。

 ――――この気配……まさか納豆小町?もとい燕姉。こんな時期に西から?銀子ばあちゃんからは何も聞いてないぞ。

 合図がかかった瞬間、女生徒の闘気が大きくなる。凛はその外見と闘気に心当たりがあったが、とりあえずはその2人の戦いを見守ることにした。

 始まった戦いは、どこか凛と百代の組み手を想起させるものだった。一つ違うのは、その女生徒が拳ではなく、武器を見事に扱っていることである。彼女はヌンチャクを使っていたか思うと、今はもう薙刀を掴み振っていた。

 卓也がその姿を見て、首をひねる。

 

「僕どっかであの人見たことあるな。なんだっけ?」

 

「納豆小町だろ?」

 

 即座に凛が答えを示す。卓也は、そのキーワードにピンときたようで、携帯を取り出した。

 

「そうだ! 西の有名人! 凛は京都にいたんだもんね。えっと……これだ」

 

 素早く検索を行って、納豆小町のポスターを画面に表示させた。それを岳人が、横から覗き込む。

 

「うおぉー可愛いじゃねぇか。それくれ! 携帯に送ってくれ! ハァハァ」

 

「自分で検索してとればいいのに」

 

 2人がそんなやりとりをしている間にも、女生徒の武器は弓矢へ、そして次に槍に変わる。ここで、梅子がその女生徒は3-Fに転入してきた松永燕――黒髪黒目の京都美人。大きな目が陽気さを感じさせる。腰には武器でも入りそうな装備がある――だと紹介し、その技の豊富さに賞賛を送った。

 大和は戦いから目を離さないまま、感心する。

 

「凛に続いて、二人目の姉さんを相手どれる人物が現れるとは……」

 

「うはぁやべぇなー。なんなんだよ川神学園! すげぇ奴等がどんどん集まってきてるぞ!」

 

 翔一が熱気にあてられテンションをあげ、クラスメイトも彼同様、その戦いぶりに見入っていた。

 みなが注目している中、燕の武器は次々と変わる。太刀に鞭、三節昆、スラッシュアックスとそのすべてを使いこなし、魅せる戦いをしていたが、それは長く続かなかった。

 

「あれ? 松永先輩が武器を下ろしたわ。どうしたのかしら?」

 

 熱心に見ていた一子が、京に話しかける。

 

「HRももう終わりだからじゃない?」

 

 その疑問に京が答えた瞬間、HR終了のチャイムが鳴った。そして、2人が互いの健闘を称えあい握手をすると、それを見学していた生徒から歓声があがる。他のクラスも2-F同様に観戦していたようだ。その歓声を聞いた燕が、ルーへと近づいていく。

 

「ん? なんか松永先輩がマイク握ったぞ」

 

 生徒の一人がつぶやいた。

 燕がマイクを持ち、「あーあー」とマイクテストを始めると、歓声をあげていた生徒たちは、空気を察し静かになっていく。

 ――――あーきっと宣伝するんだろうな。こうゆうチャンスは逃さない人だし。商魂たくましいところは、銀子ばあちゃんも気に入ってたしな。

 凛は、燕がなぜマイクを握ったのか大方の予想がついた。そして、彼の予想通り、彼女は声援に感謝したあと、自身が売り出している松永納豆の宣伝を行う。健康に良いのは言わずもがな、自分がここまで粘れたのはこれのおかげ、試供品もあるからと生徒に向かって売り込んだ。そんな彼女に対しても大きな歓声が沸き起こる。

 

「松永納豆、西ではかなり有名だからな。ポスターと一緒に」

 

 凛の言葉に、育郎が千花へ提案する。

 

「そりゃこれなら俺も買うわー。スイーツもこんな感じで飴を売り出せばいいんじゃね」

 

「そ、そうかな。」

 

 案外まんざらでもなさそうな千花。

 

「メスの魅力はアタイと互角ってところかー?」

 

 羽黒の発言は、静かな教室によく響き渡った。皆は1限目の授業をするべく、席へと戻っていく。

 そして昼休み。凛と大和、翔一はプールサイドでご飯を食べていた。なぜこんな場所で食べているかというと、理由は単純――昼から急に蒸し暑くなったのである。涼みスポットに移動したはいいが、それでも暑いのか、3人とも時折服をパタパタとさせて、風を送りこんでいた。

 我慢できなくなった凛が大和にお願いする。

 

「蒸し暑い! 大和、なんか涼しくなる魔法唱えてくれ」

 

「そんなもの習得した覚えがない!」

 

 そして、再度服をパタパタさせる大和。そこに、翔一が勢いよく立ち上がった。

 

「仕方ねぇなぁ。凛! 俺が! この苗字に風の入った風間翔一が風をよんでやるぜ!」

 

 ビシッとポースを決めると、翔一は一人うなり始める。

 

「さすがキャップ! 人の出来ないことをさらっとやってのける。そこに痺れる憧れる!」

 

 凛がやんやと声援をおくった。大和はそんな2人を保護者のような目で黙って見守っている。

 そして、ついに完成したのか、翔一が天へと両手を振りかざした。

 

「ぬぬぬぬ。俺の眷属たる風よ。吹けぇ!」

 

「吹き荒れよ風。カモン、ストーム!」

 

 凛も座ったまま、雲ひとつない空へと両手を上げる。

 

「……なんかキャップの台詞は与一っぽいし、風吹かないし。凛のはあれか? 台風呼ぼうとしてるのかな?」

 

 すかさず大和は2人にツッコミを入れた。それに同じ言葉を返す2人。

 

「「ま、これは時間差で効果が出るんだよ」」

 

「なら、期待しとくか。…………って、凛のはダメだろ!」

 

 またもツッコむ大和だったが、当の本人たちはやりきった顔をして、食後のデザートに夢中だった。

 

「というか、このロールケーキおいしいな」

 

「川神ラゾーナのロールケーキだ。凛も気に入ったか? しかし、量がないのが残念だ。ぐぬぬぬ…………よし買ってくる!」

 

 翔一は思い立ったが吉日と言った様子で、すぐに行動を開始し、2人の言葉を聞かずに、柵を飛び越えて姿を消す。するとそれを合図にしたかのように、プールサイドに風が吹きだした。

 凛は翔一が消えていった方向を向いて叫ぶ。

 

「おお、本当に風吹いてきた。涼しい。キャップーーーありがとーーー」

 

「いやもう聞こえないだろ? 一つ確認しておきたいけど、嵐の方は冗談だよな?」

 

「……」

 

「なんか喋れ! 無反応とか何気に怖いだろ!」

 

 凛は、噛み付く大和をなだめ、2人はそのままゴロンと寝転がる。そよ風にふかれるプールサイドは、心地よい空間になっていた。

 凛がどうでもいい話題を振り、大和は携帯をいじりながら、適当な相槌をうつ。だらけていた。そこに――。

 

「やや。また会ったね。そして、お久しぶりだね凛ちゃん」

 

 燕が出入り口から現れず、柵を飛び越え現れた。太陽を背に風にゆれる黒髪の美少女は、とても絵になっている。

 寝転がったままの凛が目を細める。

 

「あら、どうも奥さん。……すいません冗談です。久しぶり。燕姉」

 

「あれ? 2人は知り合い? というより、今度は俺が言う番だが、凛に姉さんいないよな?」

 

 凛の呼び方に疑問をもつ大和。もちろん、彼も起き上がっていない。百代ならば、ここでイタズラなど、何かしらのアクションを起こしそうである。

 

「ああ。一応、燕姉は俺の兄弟子にあたるんだ。それで出会って数日後、『私は君の兄弟子だ。つまりお姉さん。だから今日から姉さんと呼ぶように』と訳分からないこと言われて、今に至るというわけだ」

 

「中学1年の凛ちゃんは可愛かったからねー。身長も今ほど伸びてなかったから、もうマスコットって感じでさ。それにほら、私って一人っ子だったし」

 

 燕は凛の言葉にうんうんと頷いて、大和のほうへと体を向ける。

 

「そういえば、ちゃんと自己紹介してなかったね。私は松永燕。よろしくね」

 

「2-Fの直江大和です。よろしくお願いします」

 

「礼儀正しいね。いい子いい子。ふふっ」

 

 穏やかな笑みを浮かべる燕を見て、凛が体を起こし大和へと即座に忠告する。

 

「気をつけろ大和! おまえは、もうロックオンされている!」

 

 そんな凛を無視して、顎の下に手をあてた燕が、大和に問いかける。

 

「類は友を呼ぶって感じなのかな。大和くんってさ、年上に好かれたりしない?」

 

「どちらかというと、そうかもしれません」

 

「わかるわかる。なんか可愛いもんね。凛ちゃんは、ちょっと生意気になっちゃったからなぁ」

 

 燕が横目で凛を捉える。彼は胡坐をかいて座りなおした。

 

「別に構いませんけど? 大和が可愛がられても、全然……。ええ、ぜんっぜん構いませんけど」

 

「やだ、この子拗ねてるの? 可愛い」

 

 そう言いながら燕が、凛の頭に手を伸ばす。彼は別に避ける様子もなく、彼女の好きにさせていた。彼女は、ニコニコしながら撫でている。

 わずかな沈黙のあと、撫でられていた凛が、寝転ぶ大和に向かって話しかける。

 

「どうだ大和? 燕姉のスカートの中は覗けたか?」

 

「おま!? 何言ってんだ? そ、そんなわけないでしょうが」

 

 図星をつかれたのか、大和はバネでも仕掛けられているように跳ね起きた。燕は、獲物を狙う目つきで彼を見据える。

 

「大和君も可愛い。ねぇ、年上に飼われたい願望とかある?」

 

「!? ……もう飼われてます。ていうか、それに近い関係で姉御分がいるんです」

 

「あれま。へぇ……面白いね大和君。……温厚そうに見えるけど、やるときはやるぞって感じがする。うん、いいね!」

 

 それに続いて、凛がごますりのポーズをしながら、大和を褒める。

 

「大和は本当に頼りになるよ。優良物件ですぜ姉御」

 

 大和は2人から褒められ、少し照れたのか話題を変える。

 

「初対面で飼うって言葉が出てきたりするのが凄い」

 

「気に障ったらごめんね。思ったこと言っちゃうの。嘘とか言えないタイプでさ」

 

「わーこの人、初対面の人に嘘ついて……いたいっ」

 

 燕は、凛の言葉をチョップで遮った。百代のデコピンほどではないが、それでも地味に痛みが残る頭をなでる彼。その隣では、彼女が大和の顔を真正面から見つめ、顔を近づける。

 

「んー私も初対面の人にいきなり飼うなんて言わないんだけど、なんでだろ? ……本当に気に入ったからかな……なーんて」

 

 大和の瞳に燕が映るのではないか、というくらい近づいたかと思うと、彼女はヒョイと体を起こし距離をとった。彼は翻弄されているのか、反応が鈍い。

 

「え……」

 

 燕はそのままくるりと反転すると、今度は出入り口へと向かい、姿を消す前にもう一度2人の方に向き直る。

 

「んじゃ私転入初日で忙しいから、またね」

 

「松永先輩……」

 

 大和が自然と燕を呼ぶ。それが聞こえた彼女は微笑んだ。

 

「燕先輩でいいよん。よろしく。凛ちゃんもまたね」

 

 凛はそれに手を振って答え、燕は軽やかに去っていった。大和が、彼女の弟分に尋ねる。

 

「あれって冗談?」

 

「さぁ……でも気に入ったのは本当……かな?」

 

「ああ! 凛の知り合いって言われると納得だ」

 

 大和が頭を抱えて悩む隣で、凛が髪をファサッとかきあげながら彼に問う。

 

「なに? 俺が魅力溢れてるってこと?」

 

「もういい。そろそろ戻ろう」

 

 先に立ち上がって歩いていく大和を凛が追いかける。

 そして放課後の多目的ホール。そこでは、明日にむけての会場の設営が進んでいた。

 

「1年生から人手はどんどんだすからな」

 

 紋白の号令で1年生は率先して動き、その中に一緒になって動く彼女の姿があった。その中に凛も加わり、近くにいた由紀江に声をかける。

 

「まゆっちありがとう。明日の料理のヘルプにも入ってくれるんだってな」

 

「頑張って覚えたことがお役に立てるのは、嬉しいです。お友達を作るチャンスでもありますし」

 

 凛の言葉に、由紀江はひきつった笑顔でこたえた。

 

「顔がこわばってるぞ。リラックスリラックス。松風もまゆっちにアドバイスだ」

 

「オラがついてんだ。まゆっちは大船に乗ったつもりで構えとけー! 料理を介して、みんなのハートを鷲掴み☆」

 

 その横には、由紀江と同じクラスの女の子――大和田伊予がいる。彼女は、由紀江の同年代の友達第一号であった。

 凛が、由紀江の横から顔を出して、伊予にも感謝を伝える。

 

「そうそう。伊予ちゃんもありがとな」

 

「いえ、まゆっちのことも心配ですから」

 

「三国一の友達やで……」

 

 由紀江と松風は、その言葉を聞き感動していた。そんな彼女を落ち着かせながら、伊予が凛に話しかけてくる。その口調は、かなり熱心なものだった。

 

「ところで昨日の投球フォーム見させていただきました! 夏目先輩、野球に興味があるんですか?」

 

「ああ、ちょっと感化されちゃってな」

 

「で、では……その好きなk……」

 

「おーーーい。凛、ちょっとこっち手伝ってくれないか?」

 

 伊予の質問が終わる前に、凛に声がかかる。彼自身、中心の生徒として動いていたため、あっちこっちに引っ張りだこであった。

 その声に返事を返すと、凛は2人に断りをいれる。

 

「ごめんな。ちょっと呼ばれたから、向こう行くわ。まゆっちも伊予ちゃんもあとよろしく」

 

 会場の方は着々と準備が整っていく中、清楚と彦一が現れる。彼女は、華やかな飾りつけと活気溢れる雰囲気に、「わぁ」と声を上げながら、周りを見渡していた。凛はその2人の姿に気がつくと、足早に近寄っていく。

 凛に気づいた清楚が、声をかけてくる。

 

「こんにちは」

 

 それに続いて、彦一が口を開く。

 

「来たぞ夏目。書いて欲しい文字はなんだ?」

 

「こんにちは。先輩方、わざわざありがとうございます」

 

 凛が軽く頭を下げる。

 

「可愛い後輩の頼みだ。無下にすることもできん」

 

「なんですか、京極先輩? 新しい扇子が欲しくなりましたか? 銀子ばあちゃん御用達の店のものでいいですか?」

 

「そんなつもりで言ったのではない。おまえも相変わらずだな」

 

 冗談を交えながら、会話を続ける凛と彦一を見て、清楚はクスッと笑うと彼らの輪に混じる。

 

「仲がいいんだね。京極くんと夏目くんは」

 

「それなりに付き合いがあるからな」

 

「京極先輩にはお世話になってます。それより、今回の歓迎会に清楚先輩が含まれてなくてすいません」

 

 申し訳なさそうにする凛に、清楚はいつもと変わらぬ笑顔を向ける。

 

「大丈夫だよ。私は3-Sのみんながやってくれたからね」

 

「また今度俺の腕をふるい、京極先輩の家で歓迎会でもやりましょう。モモ先輩とか喜んで来るだろうし」

 

 ムンッと力瘤をつくる凛。それに彦一が扇子を閉じ、嘆息をもらした。

 

「何勝手に話を進めているんだ。文字を書くんだろう?」

 

「ふふっ楽しみにしてるね」

 

 賑やかな会場設営は、その後も順調に進んでいく。途中、息をきらせた準が現れ、遅くなったことを紋白に泣いて詫びていたりする一面もあったが、日が暮れる頃には会場は見事にできあがり、ひとまず解散になった。

 


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