台 詞 で 創 作 1 0 0 の お 題   作:まかみつきと

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雁国バカバナシ。


||49|| 老若男女を問わず美人は何時だって大歓迎。(雁国)

 自室にいないと思えば、だいたい脱走中。

 遁走先は十中八九が関弓で、そのうち三割の確率で博打に負けてただ働きしていたりする。

 そんなに大金をもって出ているわけでもなし、万が一にも正体が露見すれば外聞が悪いどころの話しではない。

 だが後で回収に来た誰かが払ってくれるのを見越してでもいるのか、本人にはからきし危機感というものがなく、賭け事には弱いのだから博打なんぞやるな、と口を酸っぱくして言っても、効果のあった試しはない。

 男ぶりだけは文句なしにいいから、どこの妓楼に行っても妓が放っておかないし、本人もそれをわかってあちこちに馴染みを作っている様子。

 放置しておいたらいつまでたっても帰ってこないそれを回収に行くのは、もっぱら気心の知れた側近で、近しいだけに応酬も手荒くなるのは必定。

 かくて、たまの息抜きと称する遁走劇から連れ戻された王には、盛大な小言と嫌味とツケが押し寄

せるわけである。

 これを一言で言い表すと、自業自得、とこうなる。

 

「だいたい、女の尻をおいかけまわす王など、みっともないことこのうえないだろうが!」

「心外な。のべつまくなしに女を漁っているわけではないぞ。ちゃんとした妓楼の、それもいい(おんな)をえりすぐってだな……」

「なお悪いわこのたわけ!」

「王に向かってたわけはないだろう」

「きさまなぞ、たわけでも誉め過ぎだ!」

 頭の血管が切れそうなほど顔を真っ赤にする説教役の腕を、小さな手が叩いた。

「帷湍帷湍」

 なんですか、と目線も険しく振りかえった男に、六太は手を振ってみせる。

「尚隆の女好きはビョーキみたいなもんなんだから、今更何言ったって無駄だって」

「そうやって甘やかすから、いつまでたってもこの阿呆の悪癖が治らんのだ!」

 まなじりをつりあげて帷湍が叫べば、尚隆もそのわきから顔をしかめる。

「病気とは失敬な。女性を見たら、まず口説くのが男の礼儀というものだろう」

「そんな礼儀があるか!」

「きさまの意見など聞いておらん!!」 

 左右から張り倒さんばかりの剣幕で怒鳴りつけられても、男にこたえたふうはない。

「博愛主義、と呼んでくれ」

 しゃあしゃあと胸をはる主に、やはり玉座に据える人選を間違えたかと冷たい目を向けた六太である。

「そりゃ博愛じゃなくて好きモノの間違いだろ」

「いかんな、子供がそんな言葉を使っては」

「誰のせいだ誰の!」

「仮にも王と宰輔が、そんな下品な物言いをするなぁ!!」

 玄英宮の夜は、おおむねこんなふうに過ぎてゆく。

 

 

初稿・2005.03.11




帷湍と延主従だけって珍しいですかね?
お題がお題だけに、シリアスにもラブラブにもなれない模様です・笑
オトナなお題は小松様に一任してみたり。
ところで、雁国三人衆のうち朱衡と成笙はOKなんですが、あと一人の存在が希薄でして。海神読み返さなきゃか・
ちなみに初稿ではうっかり帷湍を成笙と取り違えて書いてました。サイテーorz

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