台 詞 で 創 作 1 0 0 の お 題   作:まかみつきと

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三人娘目線で和州の乱を思う◆交わす視線が信頼の証


||4|| 言葉にするぐらいなら目で語れ。 (つながるのは、強い思い)

進むべき道は、一つしかない。

 

他を選んでしまったら、幾万もの民をも巻き添えにしてしまう。

負った責は途方もなく、それを降ろすすべはない。

逃げることは死ぬこととおなじで、闇雲に進むことすら危うくて。

ただひたすらに前を見つめ続けることの、なんと苦しいことか。

 

 

 

 

道は芳から恭へ。柳を辿り、雁に、そして慶。

 

最初はただ生き永らえるために。

その次は逃げるため。

捕らえられ、嘲笑われて、根本から否定された。

突き落とされた奈落の底で、自分自身というものを初めて見つめた。

けして楽しいばかりではないそれも、きっと自分には必要なことだった。 

 

 

 

 

流れ着いたのは慶。巧を歩き奏を巡り、行きついたのは才。 

 

惑い、怯え、ただひたすら下を向くだけの百年。

そこから逃げ出すことは、おのれの死を意味したから。

でも、逆らうことを選んだのは、結局自分。

同じ道を戻る旅で、かけがえのない出会いをした。

それは、あまりに悲しい別れに続いていたけれど。

 

 

 

 

仲間、というものを持ったのは、あれが初めてだった。

 

血を分けた兄弟でもない。

ずっと昔から一緒だった友人でもない。

ただ志を同じくしたというだけの、不思議な繋がり。

 

 

わが身の立場や命をかえりみず、見ず知らずの誰かに差し伸べる手。

己の故郷でもない立場で、義憤を感じ立ちあがる勇気。

今までの自分には、なかったもの。

 

 

しんどいんだ、とその人は言った。 

誰かが苦しんでいるのを見るのはしんどいんだ。

だから戦うんだと。

そこには高尚な理由などない。

他人の悲嘆を負って、受けなくてもいいはずの傷を受けるために立つのだ。

 

 

だからこそ。

 

 

武器をやろうか、と笑んだ不敵な顔と。

つかまれ、と引き上げてくれた腕の強さを。

共に戦うか、と差し出してくれた銀の輪に。

 

 

戦うことが出来た。

信じることが出来た。

頷くことが出来た。

 

 

それは、命の繋がり。

 

 

誰かの血が流れても、倒れ伏し立ちあがれなくなっても、その心を継ぐ仲間がいる。

視線を交わしあうそれだけで、進む力をくれる相手がいる。 

その(つよ)さに、自分の足で立つことの難しさと、大切さを教えられた。

 

 

一人じゃないこと。

信じること。

思いをわけあうこと。

 

 

絆は剣よりも強く、血よりも温かい。

 

 

互いを支えるものは血統でも、生まれた場所でも、育った環境でもない。

天に背くことなく、ただまっすぐ顔をあげられる心。

虐げられる者をいたわる優しさ。

それだけが互いを繋ぐ。

 

それを忘れなければ。

 

きっといつまででも、走りつづけることができる。

 

 

 




楽陽だと思った人、ごめんなさい。

和州の乱のメンツは皆好きなんで他のも出したかったんですが、
三人娘視点で終始してしまいました。残念ッ!


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