台 詞 で 創 作 1 0 0 の お 題   作:まかみつきと

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祥瓊&鈴◆岡目八目、と言いまして


||14|| 要するに愛しちゃってるワケよ。 (外野から見た楽陽見解)

 どん、と華奢な手が卓子(つくえ)を叩いた。

「あれって、どう見ても両想いだと思うわけよ」

「どう見なくても、そう思うわよ」

 肩をいからせる鈴の合い向かいで、祥瓊は疲れたように茶碗を口に運んだ。そんな仕草でも実に様になるあたり、美人というのは得である。

「問題は、二人がどうにもならないくらいの晩生(おくて)だってことよね……」

「晩生というより、自分で気がついてないように見えるんだけど」

 しみじみと首を振る女史に、女御である少女が冷静に突っ込む。

「当人からして友達だとか言ってるし」

「だって、お互い親友扱いだもの」

「まして陽子は日頃から女らしい恰好を嫌って(ほう)で出歩ってるから、ぱっと見なんてまるで兄弟みたいよね」

「また楽俊が鼠姿になると子供みたいだし」

「……あの姿、可愛いもんね」

「桂桂が初見で懐くわけよね」

 それはじめた話に、咳ばらいした祥瓊が軌道を修正する。

「だけど、陽子にせよ楽俊にせよ、相手をすごく大事にしているのは間違いないのよね」

「端から見れば、りっぱに両想いなのにねえ」

 なのになんの進展もなさそうなのは、なぜなんだろう。

 慶国の女王に仕える少女たちは、そろって溜息をついた。

「まあ、陽子は王としてはまだまだこれからだし、あの生真面目さじゃ(まつりごと)だの勉強だので精一杯でしょ。それに予王のこともあるから無意識に目を逸らしているようなんだけど」

「官も、先代を忘れてはいないものね……」

 慶を傾けた短命の女王。

 その失道の原因は恋着で。

女王を疎う官吏どもが、王が変わったとてそれを見逃そうはずもない。

直接口にするわけではないが、執務だけしていろと言わんばかりの態度には、そういう裏もあるのだろう。

例外は陽子をよく知る近しい者たちだけである。

 茶菓子がわりの干し棗をつまみながら、鈴が眉をしかめた。

「そういう意味ではむしろいいのかもしれないけど、人生仕事仕事じゃ潤いがないもの」

 ここまでくると温かい友情などというよりも野次馬の気配が濃いが、邪魔者を蹴り飛ばすのはむしろこの二人のほうで。

「とにかく見ていて歯痒いのよね!」

 力説する鈴に、祥瓊も大きく頷く。

 それにしても、と二人の口から大きな吐息が零れた。

 (らん)を受け取ったときの、陽子の顔を思い出す。

 あんなに嬉しそうで幸せそうな表情、滅多に見ない。

「やっぱりどうみても」

「愛しちゃってるわよねえ」

 堂々巡りの溜息は、当分解決されそうにないのだった。 

 

 

初稿・2005.01.18




初投稿当時。
完成稿ヲ、別稿デ上書キ保存致シマシタ

いま、どんな下書きでもしつこいほど保存とバックアップを取ります。
かなりのトラウマになってるんだなあ……。

ちなみに、初稿時はもっとシリアスな話でした。
もはやかけらも思い出せませんが……。

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