風雲の如く   作:楠乃

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 タイトルや作品中に出てくる『三船村』はフィクションです。
 実際に存在する地名や人物とは一切の関係がありません。



三船村

 

 

 

 この『三船村』に拠点を置いて、半月が過ぎた。

 

 未だに村の人々からの完全な信頼は得てはいないみたいだが、徐々に仕事は舞い込むようにはなった。

 そのほとんどが妖怪退治、もしくは護衛であったりする。

 他には力仕事を手伝えやら、農作業を手伝えとかもあったりする。

 村長からも許可を得て仕事をしているし、空き家を少しばかり借りて生活している。

 たまにお隣から海産物が届く。これがまた新鮮な物ばかりで美味い。単に好き嫌いで嫌なものも来たりするが。

 

 だらだらと現状を述べてみたが、何気にこの村はかなり心地が良いというだけの事である。まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けてくれ!!」

「おい! 起きてくれ!!」

 

 仕事が舞い込んできた。玄関でドンドンと叩かれる音。

 うつらうつらと寝惚けていた頭がその声で覚醒し、毛布から跳ね起きる。

 

 急いで玄関に向かう間に、耳を澄まさなくても聴こえてくる、ゴウゴウと鳴り響く風の音。

 やけに風が強いようだし、天気も悪いようだ。

 こりゃあ、漁の関係かね?

 

「嵐で船が流された!! その船に子供が乗ってんだ!!」

「美鈴が今助けにいった! アンタも手伝ってくれ!!」

「了解!」

 

 この村の良い所は、

 妖怪でも良い奴はいる。と認識している事だ。

 ……まぁ、そこが心地よいと感じている所でもあるんだが。

 

 

 

 時化(しけ)で荒れている海に、村人に連れられて到着した。

 嵐で海岸には近付けないし、子供の姿も見えない。美鈴も居ない。

 

「くそッ!! なんであいつら、こんな嵐の中飛び出て遊びやがった!!」

「……もう、駄目なのか……」

 

 ……どいつもこいつも、諦めが早すぎるんじゃないか?

 いや、それが海の恐さを知っている本物の漁師。って事かね? 来たばかりの俺には分からない境地って事か。

 

「とりあえず子供を探す! お前らは下がっててくれ!!」

 

 そう彼等に叫び、一気に鎌鼬に変化する。

 いきなり姿が消えた事に驚く奴もいるが、この変化の事を知っている奴が説明をしている。

 

 まぁ、そんな事はどうでもいいのだ。

 問題は、俺が泳げない。という事である。

 もし子供が潮にさらわれていても、俺に助ける術はない。

 

 まったく。こういう時は本当に自分が情けなくなる。

 

 

 

 とりあえず沖に飛び出して、嵐を鎮める。

 これでも俺は風を操る神の一柱である。

 海の時化を抑える事は出来ないが、暴風を消し去る事は出来る。

 微妙に雲も散らばり、視界も拡がった所で美鈴の姿を見付ける。

 

 ……生身のままで飛べれるようで、実に羨ましい限りである。

 

 まぁ、そんなくそどうでもいい事は心のゴミ箱にポイしながら、美鈴に話し掛ける。

 美鈴は姿が見えないにも関わらず俺の存在に気付いていたようで、特に驚きもせずに言葉を返してきた。

 ……もしかしたら気配に関する索敵能力では、俺は美鈴に負けているんじゃなかろうか? 初めてこの村に来た時もそうだったし……。

 

 閑話休題。

 

「子供と船は?」

「まだ見付かっていません!! そちらは!?」

「さっき風を抑えた! 視界も拡がった筈だがこっちも見付けてない!!」

 

 こういった話をしている間も、俺等の真下では波がぶつかり合って渦が出来ている。

 大雨が降って傘を差している訳でもないのに、波や嵐の音で互いの声も上手く聞こえやしない。

 まぁ、そこは俺の能力を使えば音を届かせる事が出来るので問題ではないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ居ました!! アレです!!」

「!!」

 

 数分程、高速で飛び回っていると美鈴が船を見付けた。

 急いで駆け付けると、子供は波が被らない船の中央に縮こまっていた。

 

「大丈夫!?」

「……ふぇ? めーりんお姉ちゃん!?」

「どこにも怪我はないみたいね……良かった……!」

 

 

 

 ……いや、

 

「美鈴、早く子供を連れて村に戻れ」

「ッ妖怪の襲来!?」

 

 海面から異様に長い手足を持つ異形が顕れた。

 片方は両腕が、もう片方は両足が、それぞれ身長の三倍程もある。

 

 やれやれ、こんなにもまだ海は荒れているというのに、奴等普通に湯船から上がるように海上へと出てきやがる。

 

「行け!!」

「……くっ!」

「ウケケケケケ!! ニガスカヨォォ!!」

「オイシイニンゲンダァアア!! クカカカカ!」

 

 美鈴が子供を担ぎ上げ、船から離れようとしたその背中に、伸ばされた片手が迫る。

 

 まぁ、そんな事を許す筈もないので、手刀で思いっきり叩き折る。

 

「ア? アアァァアアアァア!?」

「うるせぇ野郎だなぁオイ」

 

 ようやく妖怪達の眼が俺を捉える。

 ……うん、今のは隠れているつもりだったから、まぁ、当たり前なんだが……やっぱ美鈴の索敵能力がおかしいんだよな……俺の隠形が下手になった訳じゃないよな……。

 

「キサマァァ!? ジャマヲスルキカァア!?」

「邪魔なんて、そんなつまらない事はしないさぁ」

 

 スキマから、最近の御気に入りである扇子を取り出す。

 骨・要から扇面まで全て黒に染まり、扇絵は中央に血痕のように紅い液が二、三滴垂れている。

 紫から貰った扇子を一部アレンジしたものである。主に血痕だけなのだが。

 ……残念ながら紫からは『趣味悪いわね』と一刀両断されたがな!

 

 まぁ……今は、そんな事などどうでもいいのである。

 パンッ! と勢い良く開き、妖怪共に対して構える。

 

「お前等を、虐殺するのさ♪」

「ウガァァアァアァァァ!!」

「コロス!! コッローッス!!」

 

 大切な足場である船を神力で補強する。

 この船が沈没すると、俺は戦えなくなるからな!!

 

 チラリと後ろを振り返り、美鈴達の様子を見る。

 ……よしよし、どうやら無事に船から離脱出来たようだな。このまま海の上で襲われなければあいつらも我が家へと辿り着けれる。

 

 手長足長が船に完璧に乗り込んだ。

 頭の悪そうな彼等は、もう子供の事など覚えていないだろう。

 まぁ、これで奴等の興味をすり替える事には成功した。

 

 手長が折れていない方の手で、俺を掴もうとする。それと同時に足長が俺を踏み潰そうと足を伸ばす。

 まず手を避けて掴み引き寄せ、足に踏み潰させる。

 

「イガアァァァ!?」

「オォオォォ!?」

 

 手長の叫びに驚いて行動が止まった足長の、足を強化した扇子で刈り取る。

 風の刃は勢い良く肉を切り裂き、そのまま足を切断した。

 

「ゥウガア!? オレノ、アシガ!?」

 

 刈り取った足を『衝撃』を操って蹴り、手長の顔面にぶち当てる。

 蹴った物体の『衝撃』も操り、顔に直撃した際の刈り取られた足にかかる衝撃も、手長に反射させるようにしたからか、手長の頭はそのまま粉微塵になった。グロい。

 更に頭を失った長い腕を、これまた刈り取って足長の顔面にシュートしてやる。これも上手く顔面が爆裂した。

 

 しかしこれでも死なないのが妖怪クオリティ。

 命令を下す筈の頭が無くなっても、手長の腕は俺に向かって伸びてくる。片腕は途中でスッパリと途切れているというのに。

 もう片方の折られた手は、折れた骨をナイフ代わりにして刺殺しようと伸びてきた。

 

 

 

 ああ、もう、めんどくせぇ……。

 

「《トルネド》!!」

 

 天候操作、竜巻。

 

 船の真下に、上空どころか天国にも届きそうな程の、超小型強力竜巻を造り出す。

 竜巻によって船が上空に吹き飛ばされ、その衝撃に耐えれず転がっていく手長足長。

 それでもまだ俺を狙って蠢く様はゾンビかグールか、ヴェータラかビシャーチャか。はたまたヨモツイクサかガキかヤカーか。

 

「もうすぐ、最上階で御座います。外道の方々は衝撃にお備えください♪」

 

 俺は船に思いっきり脚を降り下ろし、それと同時に能力で発生させていた竜巻を消し去り無理矢理上昇を停める。

 いきなり上昇を止められた事で、俺と手長足長が上空に打ち上げられる。

 

「襲い掛かった相手……その後ろにいる奴が悪かったな。ふふん♪」

 

 扇子を一凪ぎ。

 すると竜巻が扇子の凪ぐ動きに合わして飛び回り、何百もの風の刃が妖怪を粉末状に切り裂いていく。

 その粉をさっきの《トルネド》が二度と再生できないように彼方へと運ぶ。

 

 こうして、悪は去っていったのである!!

 まぁ、客観的に見たら俺の方が随分と酷い事をしていると思うがなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 打ち上げられた船はそのまま『風』に流されて、三船村の最寄りの海岸まで吹き飛ばされた。

 無論、着地の衝撃で船が大破などしないように能力とかの補強はしていたので壊れたりする事なく、持ち主の元へとそのまま戻っていった。

 子供も無事に親元へ戻ることができ、依頼を完遂する事が出来た。

 

 今回の依頼のように、妖怪である俺と美鈴に人間では出来ない物事をなんとかして欲しい、という依頼が来るのはそれほど珍しい事ではない。というか大半がそんな感じの依頼である。

 お陰でというかなんというか、まぁ、出逢った時のような悪い雰囲気にはならなくなってきた。

 仕事を一緒にするのに、連係が巧く出来なけりゃ意味がない。ってな♪

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 そしてまた月日が流れる。

 時期としては俺がこの村に来て三ヶ月目。もうすぐ冬が始まろうとしていた。

 

 

 

「志鳴徒さん!! 妖怪が出た!!」

 

 真夜中にいきなり玄関をドンドンと叩く音で目が覚めた。

 戸を開くと息も絶え絶えな人々が、冒頭の言葉を繰り返し叫んできた。

 ……そんな近さで、しかも大勢でいきなり叫ばれても困る。

 

 戸を開けて良く良く見てみれば、俺の家の前に村中から人々が集まっているようだ。

 ふむ……これは、異常事態だ。

 幾ら妖怪が周りから襲ってきても、門番もしている美鈴が大抵退治をしてしまうのだ。

 それなのに、村人全員が俺の所に避難している。これはおかしい。

 

「……何が起きた?」

「鬼だ!! 鬼がやってきたんだ!!」

「でっけぇ妖怪だ!! オイラ五人分くらいあったど!?」

「あの腕が美鈴ちゃんを吹き飛ばしてんだ!! アンタ助けてやっとくれ!!」

 

 ……なんだ、鬼か。拍子抜けである。いやまぁ、それは鬼とよく接していたからだとは思うけど。

 これほど大騒ぎになって美鈴が苦戦するほどだと言われると、ガシャドクロとか九尾の狐でも出たのかと思ったわ。

 

 ふぅん、鬼ねぇ……。

 美鈴が苦戦するほど、となると相当の修羅場でも潜ってきた歴戦の鬼なのかねぇ。

 鬼の四天王とやらは妖怪の山にいる筈だし……となると野良の鬼なのか?

 

 

 

 まぁ、いいや。

 天狗なら兎も角、鬼なら倒すか追い払うかするとしますか。

 

「分かった。様子をみてくるから、皆この家に入ってくれ」

 

 何故か分からないが、この借りている家は三階まであり、全員が収まる程のスペースが無駄にあったりする。

 そんな大容量を誇る借家に、全員が収まった事を確認して結界を張る。

 神力を充満させた結界だ。生半可な妖怪などが触れば、たちまち重度の火傷を負うし衝撃で弾き飛ばされる効果も付いている。

 更にその結界自体に能力を付加する。

 『衝撃を反射する』属性を追加してやる事で、破壊するのはかなり難しくなる筈だ。

 いや、萃香とか紫から見てみれば簡単にぶち壊せれる結界かもしれないが……まぁ、壊されそうになったら俺に知らせが来て分かるだろうし、しばらくは大丈夫な筈。

 

 これで村人は恐らくは安全だ。

 更に余計な目撃者も居なくなった。善きかな善きかな♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美鈴が鬼と交戦していると聴いた場所へ向かう。

 

 予想通り、美鈴と鬼はまだ戦っていた。

 だが、彼女はどうやら何処かを負傷したらしく、腹の辺りを抑えて必死に攻撃を避けている。

 

 ……さっきの証言は事実だったのかね? 吹き飛ばされたって奴は。

 

 

 

 さーてさてさて、

 

「めーりーん、交代しよっかー?」

「志鳴徒さん!? 痛ッッ……!」

 

 どうやら骨が折れてるのかね? その骨が筋肉を突き破っているとか?

 

 ……取り敢えず、今の美鈴じゃ倒せないな。

 強大な力を持つ妖怪と敵対する時は、その強大な力をそのまま返せれば倒せる。昔からの王道ですな。

 

「ま、そういう事で交代だぜそこの木偶の坊」

「あぁ!? テメェも妖怪の癖に人様を護ってるってのか!?」

 

 うし、注意をこっちに逸らせた。その隙に美鈴が下がって俺が前に出る。

 

 

 

 ……さてさて、予想と博打が当たればよいのだけどね。

 

「ちょいと鬼の兄さん。すまないが一つ質問だ。『長徳二年』に『大江山』に居たか?」

「……テメェ、何であの事を知っていやがる?」

 

 ビンゴ。博打もどうやら成功のようである。

 こいつも大江山の酒呑童子討伐の時に、毒でやられた鬼の一人だ。

 

「じゃあ詩菜って奴を知っているかい?」

「ふん、『裏の四天王』って奴だろ。アイツがどうかしたのか?」

「……」

 

 

 なんか……聞き捨てならない言葉が聴こえたような気がしたんだけど……?

 え……裏の……四天王? 何その厨二設定……。

 

 

「志鳴徒さん……! のんびりしている暇なんてありませんよ……!!」

「……うん、まぁ、そだね。そんな事は後で調べればいっか」

「ん……志鳴、徒…?」

 

 ボーっとしている私に美鈴からの激励が飛んできた。

 後で……そうだなぁ、萃香辺りに問いただしてみるかね。覚えていればだけど。

 

 さてさて……相も変わらず無意識に切り替わる自分の言葉遣い。

 

「んじゃあ鬼さんは」

 

 

 

 変化、詩菜。

 

 

 

「その『鬼殺し』に、どう立ち向かうのかな?」

「お前はッ!?」

 

 いやぁ、この姿になるのは久し振りだなぁ。

 三船村に来てからはずーっと志鳴徒で過ごしていたし、誰にもこの姿の事は言ってないからねぇ、フフハハハ!

 

 

 

「……志鳴徒……さん?」

 

 当然、美鈴にもね♪

 

「やっ。初めまして美鈴。私は『詩菜(しな)』っていうの。ヨロシク」

「……そうか、テメェあの時の陰陽師か!!」

「もう遅いよ」

 

 うーん、やっぱり詩菜の身体の方がしっくり来るなぁ。

 身体の隅々まで妖力が行き渡って、力がどんどんみなぎってくる気分だよ。

 んまぁ、志鳴徒と詩菜で妖力の回路が違ったりするなんて事はないんだけどね。

 

 肩をグルグルと回し、体調を確かめる……うん、快調快調!

 

「さて、それでも殺るかい? 殺るんならとことんぶん殴るけど?」

 

 スキマから扇子を取り出し、扇子を持った右手を鬼に真っ直ぐ伸ばしてバッと開く。

 

「……勇儀の姉御が負けたのに、俺が勝てる訳がねぇ……死にたくもねぇし、退散するよ」

「あららら、そりゃあ残念」

 

 そう言って、帰ろうとする鬼。

 となると、私が妖怪の山で鬼達と戦って負けた事は知らないのかね。

 ふぅむ、毒の件以降で集団から別れたはぐれ鬼……何かあったのかね?

 

 ……ふむ。ま、そんな事は置いといて。

 

「暇なら『妖怪の山』に行きな。あそこに勇儀や萃香もいるからね」

「……ふん、気が向いたらな」

 

 そう言って、今度こそ鬼は退散した。

 むぅ……久々の全力ってのを試してみたかったのになぁ……。

 

 

 

「……去っていったんですか?」

「ん? うん」

 

 鬼が去っていくのを見送っていると、美鈴が恐々話し掛けてきた。

 ……こんな幼女に恐怖する格闘家ってどうよ? いや、自分の事を幼女って言うのもアレだけど、ってコレも何度言った台詞だか。

 

「さて、皆に安全だって教えてきな。不安だろうしね。その間私は見張りをしてるから」

「……分かりました」

 

 そう言いつつ、明らかに私を警戒しながら去っていく美鈴。

 私は……まぁ、この村では詩菜の姿は見せずに志鳴徒の姿で過ごす。って決めたし。

 朝が来るまで、何処かの屋根でのんびり月見酒と洒落込もうかね。

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 村人がそれぞれの自宅に戻り、命の危機が去った事に安心したからか熟睡を始めた頃。

 具体的には夜明け直前の午前四時。

 

 漁師がそんな怠慢で良いの……?

 いや、妖怪に村が襲われたからって言うのは分かるけどさぁ……なんて言うか、人間だけでも警戒するとか……。

 ……この村に来てから思ってる事だけどさ。

 

 

「……ここに居たんですか」

「お、来たね」

 

 自宅の上でそんな事を考えつつ、月見酒をしている所へ美鈴がやってきた。

 まぁ、来るだろうと思ってたし、色々と準備は万端さ~。

 

「ほれ」

「あ……ど、どうも」

 

 隣の彼女に杯に差し出して、それに酒を注ぐ。

 

「……ふぅ」

「一息吐けたかい?」

「……随分と性格が変わりますね。志鳴徒さんとは」

「んー、そうかな?」

 

 二重人格とか多重人格って訳でもないんだし、性格に差が出る筈がないんだけどねぇ?

 差が出るとしたら……言葉遣いか他人への接し方とか……もしかして皆が言っているのって、それか?

 

 ああ、いかんいかん。また自分だけの考えに没頭する所だった。

 

 ……冬の始まりだからか、空気が澄んでいる。お陰で星空が良く見える。

 しかし私はそれほど星座に詳しくもないので、アレとアレが繋がっているのかなぁ? とか夢想するだけだが。

 

 ……お? 流れ星? 珍しいこった。

 

 

 

「……貴女は……何者なんですか?」

「んむ? 名前は詩菜(しな)って呼ばれてる。能力は『衝撃を操る程度の能力』。二つ名に『鬼ごろし』『中立妖怪』があるね」

 

 でもまぁ、最近は『鬼ごろし』しか聴かないなぁ。

 中立も何も『妖怪の山』に居住地があって、『妖怪の大賢者』の式神になっているから、かなり妖怪側に立っていると思う。

 

 つーか、自分からは『鬼ごろし』しか名乗ってなかったような気がする……。

 ……まぁ、どうでもいいや。

 人からの呼び名なんて、自分で管理出来る筈もないつってね。

 

「……」

「まぁ、明日からも志鳴徒のままで過ごすから、別に深く考えなくていいよ。あの鬼を退散させる為に変化しただけだし」

「……分かったような、分からないような……」

「ハハハ。ほい」

「ふふ、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのまま、陽が昇り始めるまで、

 私達は、小さな宴会を続けた。

 

 

 


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