今日は彩目はお留守番ッ!!
いや、別にいいが……どうしたんだ急に?
んー、知り合いの妖精に逢ってくるー。
知り合いの……妖精?
という訳で留守番頼むねー? まぁ、別に何処かに行ってても良いんだけどね。
どっちだよ……まぁ、了解した。
行ってきまーす♪
ああ、行ってらっしゃい。
霧の湖。チルノと大妖精がいる場所だ。
最後に逢ったのはいつだっけな……?
「おーい!! チルノー!!」
虚しく声だけが、湖だから、反響しない。チクショウ。
今は晴れているけど、しばらくしたらまた曇って霧が出るだろうなぁ……。
参ったなぁ……ん?
「また弾幕かいッ!? っと!!」
晴れてて良かったよ。気付くのが遅かったら、また直撃してた所だし。
横へ前転する形で弾幕を避けて、地面へと叩きつけた足で衝撃を操り、体勢を立て直す。
発射した方向を確認。
まぁ、予想はついてるけどね。弾幕も似た感じの色彩や配置だったし。
「……ハァ、ここは来る度に弾幕を撃つ習慣があるのかな?」
「……。……~♪」
「ハハ、久し振り妖精ちゃん。私の事覚えててくれてる?」
「……!!」
「ふふふ、そんな怒らなくてもさ?」
いつぞやの妖精ちゃんだった。
どうやら妖精も記憶力が悪いとはいえ、大事な事は覚えてくれるのかな?
「チルノや大ちゃんは?」
「……。……?」
「また探さないといけないかな?」
「……、……♪」
「……またついてこい。って?」
また違う所を無駄にぐるぐる回るのはいやなんだけど……。
まぁ、無駄な旅路も時には風流、ってか。
「いっか。テキトーに歩こっか」
「♪」
それからしばらく歩いていると、
「ッッ!?」
「……!!」
足元から後ろの腰まで、表面だけだけども凍らされた。
一気に体温が下がるのが分かる。寒いったらありゃしない。
いや、
「……チルノ~? 影から狙い撃ち、ってのは卑怯じゃないかな?」
「油断する方が悪い!」
「え、えと……チルノちゃん。それは……」
まぁ、丈夫で私の妖力でカバーしてる着物だったから良かったものの……これが普通の服だったら、何処かの薬味みたいな事になってたじゃないか。
「……ま、何はともあれ。久し振り~♪ チルノ、大ちゃん♪」
「待ってたよ! ライバル!!」
「あ、お、お久しぶりですッ」
変わらないねぇ、二人とも。
まぁ、妖精がそんな急に変わったら、それは環境の急激な変化が起きているという事で、それはそう、まさしく私が住んでいた現代の地球温暖化やオゾンホールや森林伐採による酸性雨とか、そういった事象にも関係ある話で、でもそういえばここは輝夜と志鳴徒との会談による、とある一つの予想によれば、ここは私の住んでいた世界の未来な訳で、とするとやっぱり第三次世界大戦とか核が世界中で爆発したとか神々と悪魔の大戦に巻き込まれたとか東京受胎したとかノアで有名な大洪水が起きて全て流れたとかどこかの征服者が無理やり統治を初めて自滅したとか、まぁ、とにかく世界が滅亡したのかな? それで何千何万、いやいやもしかしたら何億年も経ってここまで地球は回復したのかな? そうしたらやはり人間は地球からすれば侵略者みたいな者で、となると自然に活きている妖怪や妖精がこう人間を管理すべきなのかな。あぁ、そういうゲームだったAZELやりたいな。となるとここにいる妖精達は地球を救う救世主みたいな存在に、あれ? でも妖怪はどちらかと言うとCHAOSなんだけど? あ、でも妖精はN‐Nだっけ。ピクシーが一番有名じゃん。という訳でチルノや大ちゃんや妖精ちゃんは地球にとって大切な存在な訳で、でもまぁ、結局は、
「私の持論なんだから、どうでもいいんだけどね」
「アンタの言いたい事は分からなかったけど、最後ので台無しになったのは分かったわ」
「え、えぇ……と、つまり……?」
「
「は、はぁ……?」
「……?」
「妖精ちゃんも分からなかったかー」
「……アンタは分かってんの?」
「……どうだろ?」
「ええー……?」
まぁ、そんなこんなで、お久し振りの挨拶は終了。
「……あれも、挨拶の内だったんですか……」
「なはははは!!」
ヒトを惑わすって、楽しいね!!
「そうそう。今日なんで逢いに来たかと言うとだね?」
「アタイと戦いに来たのね!!」
「いや、微妙に違う」
「……」
……黙ってしまった。
まぁ、チルノには関係あるんだけどね。
「でもって、チルノ? 貴女って氷を自由に創れるかな?」
「へ? ……うん、出来るよ? 余裕」
「じゃあ、ここに物凄い大きい氷って創れる?」
「ちょっと湖に水を取りに行かないと無理かな……」
ふぅん? 能力で何もない所から創れないのかな?
……私も何かしら勢いがないと衝撃を創れないから、当たり前なのかな? まぁ、そこらの研究はまた後で。
「じゃ。お願いしていいかな?」
「いいけど、何をするの?」
「『サッポロ冬の氷祭り』」
「……なにそれ?」
「まぁまぁ、いいから! 最強なチルノちゃん、貴女の力を見せてよ! ねっ!?」
「見せてやるよ!!」
扱いやすッ!
そう言うなり、湖に向かって青くて透明な羽を動かして、湖上に飛んでいった。実にあの羽根が綺麗だ。
……良いなぁ……飛べるって。
「で、こんなので良いの?」
「……デカっ」
私の目の前には、高さ三メートルはあろうかという程の氷山が、出来ていた。
チルノ曰く、コレぐらいなら時間さえあれば楽勝との事。氷精パネェ。
「アンタは何をしようとしてんの?」
「……まぁまぁ、とくとご覧あれ♪ そうだね、お題は『チルノ』にしよう」
「へ? アタイ?」
「いでよ竜巻!!」
氷山を取り込み、凄まじい速度で氷を削る。
ブリザードみたいだなぁ、融合技みたいな感じでやったら面白く出来そうじゃないかな?
後は、小出しに風を出して細かい所を削って……と!
「完成ッ!! どうよ!?」
「アタイだ!!」
「すごーい……大きなチルノちゃんの像だ~」
「! ……!!」
うん、我ながら良い出来だ。
ただまぁ、髪の毛がどうしてもフィギュアのようなベッタリした感じになるのがなぁ……。
まぁ、でも彫像で髪の毛を再現するのが無理なんだろうし……。
「まぁ、いっか」
「スゲー! さすがはアタイのライバルね!!」
「んじゃ次は……そこの妖精ちゃんと大ちゃんを一緒に作ろっか」
「ほ、ほんとにですか!?」
「……!!……♪」
「という訳で、チルノ。ヨロシクゥ♪」
「……またアタイが用意するのね」
「いやぁ、私じゃ出来ないからさ~? それはその道のプロに頼まなきゃねぇ~?」
「待ってろ。今すぐ用意してやる!」
おぉおぉ、飛んでった。
「……扱いやすっ」
「ええー!?」
大ちゃんが何か『今までの素晴らしい話は一体……』みたいな具体的な顔をしているけど……まぁ、どうでもいい事なんだよ。ウン。
「ゼェ、ハァ、つ……疲れた……」
「お疲れ~」
「だっ大丈夫チルノちゃん!?」
「へ、へへ。大丈夫だって……」
まぁ、縦二メートル横三メートル幅二メートルの特大の氷を作るのはキツいだろうなぁ……。
……お願いしたの私だけど、よくやるよ。
「さて、と……『マハガルーラ』!!」
範囲中級衝撃魔法『マハガルーラ』
……そろそろパクり技も止めようかな……?
いやでも私、ネーミングセンスゼロだし……。
まぁ、何にせよ、大ちゃんと妖精ちゃんの氷像が完成した。
真ん中にでかいチルノ像を置いて、両側に二人の像を置けば、
「完成ッ!!」
「「おぉ~!!」」
「どうやら気に入ってくれたかな?」
「……!!」
「綺麗! だってさ」
いやはや、誠に嬉しい言葉である。
お、曇って来たからかな? また雪が降ってきたよ。
本当に『雪祭り』になった。
「……代わりに霧も出てきたけどね」
「詩菜……さん?」
……大ちゃんからの呼び名はそれなのね。ちょっと新鮮だよ。さん付けは。
「んじゃ。私は帰るよ」
「えっ、もう帰るの!?」
「霧が出たら私も迷っちゃうしね。また来るよ」
「ん~、分かった。次こそは勝ってみせるからね!!」
「あっ、また来て下さいね!」
「……!」
「アハハハ! んじゃーねー」
ま、その次がいつかは分かんないけど、これならあの三人は私の事を覚えててくれそうだな。
楽しみが増えた。善きかな善きかな。
詩菜が出掛けていった。
知り合いの妖精達に逢いに行くんだとか。
……本当にアイツの交遊関係はどうなっているんだ?
花に害を与える者には容赦しない花妖怪とも知り合いなのだから、恐ろしいものだ。
何せあの花妖怪を討伐する為だけに隊が組まれる位で、そしてその数千人を超える大軍を一人で蹴散らしたものだから、それは有名になって当然だ。
そんなの、能力を持っていても私に倒せる訳がないだろ……。
はぁ、憂鬱だ…。
「お邪魔するわよ詩菜~♪ って彩目ちゃんだけかしら?」
その前に、このとんでもない妖力を持った大妖怪が先だ。
「ッッ…!?」
なんでこうアイツの知り合いは常識外な存在が多いんだ!?
いや、アイツも常識外だが……こう、常識的な範囲で常識外な友人、ええい! 自分でも言っている事が良く分からなくなってきた!
「あらあら、そんなに警戒しなくても大丈夫よ? 私は貴女に危害を与えるつもりもないわよ」
「……し、詩菜は妖精に、逢いに行った。ここには、居ない」
そしてその妖力で私を圧迫するのを止めてくれ。むしろ帰ってくれ。
頼むから、帰ってくれ。帰らないのなら、私に厄災を押し付けないでくれ。
「ふぅん? 妖精に逢いに行ったねぇ。彼女らしいわね……はぁ」
「……?」
私はこの時、溜め息をついて悩ましげに眉を潜めた大妖怪に、ちょっとした共感を覚えた。
いや、それは天魔殿の時も感じた事だったのだが、
この二人とも、詩菜に振り回されたりしたのではないか? と。
「まぁ……待ってたら来るわよね」
「……それまで、待つ。と?」
「ええ♪」
……なんてこった。
ああ、威圧感が……本人は出してないつもりかも知れないが、身体に重くのし掛かっていく……。
「貴女から見て、詩菜はどういった人柄かしら?」
「えっ……?」
唐突に問い掛けられた質問だった。
何せ私はずっとこの妖怪と机を挟み、無駄に謎を含んだ笑みを向けられて、困惑していた所だったのだから。
「……どんな人柄、ですか?」
「そう♪ 妖怪だからこの場合は妖怪柄かしら」
知るか。
等とは口が裂けても言えないが。
ふむ、アイツの人柄……か……。
「お節介……ですかね?」
「あら、どうしてかしら?」
「……誰彼構わず、救える奴なら救う奴。だから……?」
『詩菜』『志鳴徒』は救えるならば救う。という奴ではない。
むしろ気に入った者しか救わないといった性格だ。
つまり、私は嘘を話した。
しかし、最近の私がアイツから受けた印象『お人好し』には、ピッタリと合致している。
アイツの弟子にしたってそうだ。
妖怪と人間が愛し合う話はよくある。
よくある話だが、オチはいつだって同じだ。
『妖怪』は生き残り『人間』は死んで消えていく。
妹紅だとか名前は言うそうだが、それを拒絶しておいてまだ近くに居ようとする。そこが志鳴徒の甘い所で『優しすぎる』所なのだ。
「……なるほど。御節介ね」
その言葉で急に世界に戻る。戻ってきたような気がする。
どうやら質問に答えを返し、その返した答えを自分で解釈している内に、私は自分の世界に没頭してしまったようだ。
……いかんな。実戦であれば即座に首や胴体がちょん斬らていれた所だ。治さねば。
「……そういう貴女は、どうなんですか?」
気が付けば、こういう返答を返していた。
言ってから気付く。私は何をしているのだと。
「うーん、私は……『理解不能』かしら?」
「……はい?」
「これは私が詩菜から受けた第一印象の話になるけど、どうもおかしいのよね。人間を助けて神と仲良くなって妖怪を討伐して、能力が無かったらいつ死んでてもおかしくなかったのに。これも能力がピタリと型に入ったからかしらね? 貴女もそうよねぇ。眷属になると『嫌ってはいけない』『好いてしまう』という強制力が働くそうだけど、貴女達は仲良くなりすぎて家族以上の関係性になりそうよね。その辺りも私には到底、理解出来そうにないわ」
次々と放たれる言葉。
私が知っている詩菜にも結び付くような点が大量にあった。
予想外にこの妖怪は饒舌だったようだ。
だが、最後の部分。
それは……、
「眷属の心情。理解出来ないなら紫も作ってみたらわかるんじゃない?」
「あら、詩菜ちゃん。おかえりなさい」
「……ここは私の家なんだけど?」
「お邪魔してるわよ♪」
「「……」」
二人揃って沈黙。
親子揃って、心の声は同じに違いない。
……なんだこの妖怪は。