風雲の如く   作:楠乃

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我が家

 

 

「さーて、埃だらけだなぁ……」

「……まぁ、私が最後にここを来たのが三ヶ月前だしな」

 

 無事に我が家に到着。

 急げば一日もかからない距離を、のんびり三日もかけて来た。

 

「……無駄な事を」

「無駄じゃないでしょ? こう、彩目との友好を深めるという必要性があってだね……」

「ハイハイ。じゃまずは掃除だな」

「無視かチクショー」

 

 

 

 まぁ、この大木を繰り抜いただけのログハウス。

 別に重要な物も置いてないし、置く気もないし。

 なんか、紫みたいな隠せる倉庫があれば良いんだけどね……そんな技術もないし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まー、ようやくのんびり出来るってこったー……」

「ふぅ、そうだな」

 

 ごろりと寝転がる事が出来る空間って大事だよね。

 

「……それで、ここに来てどうするんだ?」

「ん? 私は友人(ども)に挨拶しに」

「どもかよ」

(ども)だよ。そんなに居ないしね……言ってて悲しくなってきた」

「そうかい」

 

 あれぇ? こんなにこのヒト、キツかったっけ?

 ……まぁ、いっか。

 

「……さて、ちょうど来たようだし。酒ってあったっけ?」

「? ……あるが、誰が来たんだ?」

「てんちゃん」

「……はぁ?」

 

 

 

「帰ってきたのか詩菜ッ!?」

「ほいなー♪ 久し振り~♪」

「おぉ、おぉ! 帰ってきたんじゃなッ!?」

「また行くけどねー」

「……まぁ、いつもの事じゃな。とりあえずは」

「一杯。でしょ?」

「ハハハハハハ、じゃな!」

 

 コイツもなんか性格変わったような……?

 

「それで、そちらの方は誰なんじゃ? ……この前にも見たような気がするが」

「ああ、この大木を教えてくれた時に背負ってたヒトと同じだよ」

「フム? そのわりには…妖怪なのか?」

「ほら、自己紹介しな」

「……彩目、と申します……えーと」

 

 その時、彩目の顔がニヤリ、と笑ったような気がした。

 

 

 

 そして、その予感は見事に的中した。

 

「……どうやら『母親』が色々とご迷惑をお掛けしたようで……『娘』共々、謝罪致します」

 

「「ゴフッ!!」」

 

「彩目ぇぇ!! 何を暴露してんだぁ!? それも嫌な感じに!?」

「え? だって元から言うつもりだったんだろう?」

「そうだけどさぁ!?」

 

 『母親がご迷惑をお掛けしました』って!

 明らかに狙ってるだろ貴様!?

 

「ッ!? てっ、天魔!? 天魔がまた口から何か白いものをッ!?」

「……うぉ、この酒強いな……」

「のんびり呑んでる場合じゃないからね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仕切り直して。

 頑張って仕切り直して。

 

「めんどくさがった私が悪かった。この子は『彩目』で、半妖で能力持ち……まぁ、私の血が混ざってるだろうし契約も結んであるから、都合上『家族』になってる」

「……それでもかなり驚くような内容なのじゃが……」

「では、改めまして。彩目と申します」

 

 はぁ……いきなり変な風に暴露するから、おかしくなったじゃないか……。

 

「……お主の血が混ざっとる。とは?」

「ん……ん~、私が強制的に半妖にさせた」

「あぁ、なるほ──はぁ!!?」

 

 ……まぁ、驚くよね……普通。

 

 妖怪っていう憎むべき存在に落としたのに、仲良くしてるんだから。

 契約っていうシンパシーが働いてるとしても、仲が良すぎるもんね。

 

「ああ、それにつきましては既に清算しましたので、ご心配には及びません」

「……まったく、お主にはいつも驚かされてばかりじゃ……」

「ハハハ。ま、呑も呑も!!」

「……いや、そちらの御方が誰なのか聞いてないのだが?」

「天魔だって」

「いや、だから……どういう御方で?」

「おぅ、そうじゃったな。儂は『天魔』天狗の長をやらさせて頂いておる」

「てっ天狗の長ッ!?」

 

 ……なんだその『コイツの交友関係は何なんだ!?』的な視線は。

 

「まぁ、初めて逢ったのが天魔じゃ無かったら、今頃生きてないだろうねー」

「お主はあの時から既に強かったじゃろ?」

「いやいや、あれは能力と運だけだって。今でも妖力は追い付いてないんだし?」

「フフ。そう簡単に追い付いてもらっても困るからのぅ?」

「まぁねー」

 

 彩目ポカーン。口開いてますよ。

 まぁ、仕方のない事かね?

 私としても、どうしてこんな御偉方と交友があるのか、たま~に分からない事があるしね。

 

「なら、今から試合でもしてみぬか?」

「めんどくさい」

「じゃろうな」

「……一体何者なんだ貴様は……」

「私は私さー」

「……はぁ」

 

 溜め息つかれても、これが真実だっての。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そういや、三人組は?」

「おお、奴等もすっかり成長しての。今じゃかなり礼儀正しくなっておるぞ? 実力も上がっておるし」

「……なんだ、また弟子か?」

「……まぁね。こっちはほとんど何も教えてないけど」

「教えてやれよ……」

「あんなにうざいとやる気が失せる」

「……そんなに五月蝿いのか?」

「初期はかなり酷かったのぅ」

「いきなり私の家に三人突っ込んで来るんだよ?」

 

 無論、その後メッタメタにしてやったけどね。

 それでも来るもんだからねぇ。困ったもんだ。

 

「……あぁ……それはうざい」

「なんだと貴様!?」

「そうだぞ貴様!!」

「誰なんだ貴様!!」

「何故そんな所に座っている貴様!!」

「どうしてそんな姉御の隣に居るんだ貴様!!」

「羨ましいだろうが貴様!!」

「「「変わってくださいお願いします!!」」」

 

「ちなみに右端が弥野、真ん中が縞、左端が作久です。彩目の実力ならば勝てると思うので、お好きにどうぞ。殺すなよ?」

「はーはーうーえーにー、何近寄ってんだごらぁぁぁ!!」

「上等じゃ!!」

「かかってこいや!!」

「我らの実力を見せてやるわ!!」

「おい。そこの馬鹿弟子天狗共」

「「「はい!!」」」

「私の娘、泣かしたら……解るよね?」

 

 ニッコリ。

 幽香大先生、貴女のどSな笑顔は誰にも通用しますので、大変重宝致しますですぅ。

 

「「「……は、はいィィ!!」」」

「おーい、さっさと殺ろうぜー? そこの変態共」

「「「貴様!!」」」

「……オイ?」

「「「解ってますから!! ね!? その神力しまってください師匠!?」」」

 

 

 

「よし。これで無問題」

「……鬼じゃな」

「最近の二つ名は『鬼ごろし』だよ」

「……まぁ、八雲に付けられたのか?」

「いんや。鬼に付けられた」

 

 そういう勇儀は何をしてるかなー?

 ……まぁ、今度行ってみよっか。どうせまた喧嘩になるだろうけど。

 

「……お主が常軌を逸しとるのはいつもの事じゃな……」

「何その非常識人みたいな物言い」

「え、違うのか?」

「……ハァ、はいはい。分かりましたよ非常識人ですよ私は」

「それにしても、お主と娘御は仲が良いのぅ」

 

 露骨に話変えやがったよコイツ。

 ……まぁ、ノッてやれ。

 

「やっぱ、そう見えるよね」

「……むしろ近親そ……いやなんでもない」

「いいよ、その(ネタ)は。一昨日したしさ……」

「したのか!?」

「え、なんでそんな食い付くの!? 違うからね!? 話としてね!? 実際にした訳じゃないからね!?」

「……なんじゃ。詰まらん」

 

 

 

 ……コイツも修正が必要かな……?

 鉄拳制裁がお必要ですか?

 

「まぁ、そう怒るな」

「その話をしたのはアンタやろ」

「何故に方言……いやな? 仲良いのも考え物じゃぞ?」

「?」

「半人半妖。寿命は長く肉体は強靭かも知れぬが、半分は人間なんじゃぞ? 老衰もあり得る」

「……」

「その時に、お主はどうするか。見送るか、更に血を与えるか…」

「……なるほどね」

 

 半妖だとしても、老けてく訳だ。

 半分人間ならば、半分の速度で老けていく……ってか。

 

「ま、今はその時期ではないじゃろうし。お主が出すべき答えじゃ」

「……だね。でも、前もって知れて良かったよ」

 

 まぁ、初めて逢った時の彩目や……妹紅みたいな失敗はしないようにするよ。

 

 

 

「……まぁ、呑もうかの」

「そだね。あの彩目達の勝負を酒の肴にしながら、ね」

「……鬼め」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンッ! 一昨日来やがれッ!!」

「……畜生!!」

「くそがッ!!」

「……チッ!!」

「ふむ……我等天狗の敗けじゃな。お主等は里に戻れ。良いな?」

「「「……了解」」」

 

 中々にボロボロな彩目、互いに肩を貸しながら飛んでいく弟子天狗達。

 彩目は()(どき)をあげるように刀を掲げ、天狗達はそれを恨めしそうに帰っていく。この山じゃあそうそう見れない光景である。っていうか見れないね。絶対。

 

「よーしよし、彩目よくやった次は花妖怪だ」

「いやッ、無理無理無理無理!? あんな妖怪は相手に出来ないって!?」

「まぁ、今度行くから、その時にねー?」

「アレも知り合いなのか!?」

 

 彩目、アレって言ったら殺されるから。せめて風見さんか幽香と呼びなさい。

 そうでなくとも、友人を『アレ』呼ばわりされたら私も怒るよ?

 

「……ま、まぁ、分かったよ……」

「となると、すぐにここを出るのか?」

「いや、一ヶ月くらいはここを基点(ホーム)とするから、ここから移動する形になるかな」

「ほぅ」

 

 ……藤原氏とキャラ被るんだけど……っていうか被ってるんだけど?

 主に口調が。特に口調が。というか口調が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まー、明日以降の予定は明日考えましょ」

「いや、それは何かおかしくないか?」

「儂もそう思うが…」

「今を楽しむべきなのさ。時は待たないからねー」

「……まぁ、考え方によればそうじゃが…」

「さぁ、彩目!! 布団は一つしかないよ!?」

「嬉しそうに見えるのは気の所為か!? 違うよな!?」

「天魔、ここからは女子だけの空間だよ。男子は出てけ。さっさと立ち退きたまえ」

「「いや、お前(お主)もだろ(じゃろ)」」

 

 私はいいのさ~。

 

 

 

 


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