魔法少女リリカルなのは これがメイドの歩む道 作:クラッチペダル
そんな話の書き方を目指しています。
ようはメリハリがある小説にしたいな思い話を書いてます。
「始めまして。僕はユーノ・スクライアと言います。……そして、あなた方の家族を危険に巻き込んだ張本人です」
その言葉を聞いた士郎と恭也の目つきがまるで刃物のごとく鋭くなる。
それも当然だろう。
なにせ、今しがたユーノと名乗ったフェレットはなのはを危険に巻き込んだと自ら宣言したのだから。
しかしその瞬間の感情に任せて何かをしでかすと言うことはしない。
まずは聞き出すことを聞き出し、それからどのような対処をすればいいか考えても遅くは無いのだ。
「……その危険な事というのが、なのはが夜に家を抜け出した原因かい?」
「はい。本来なら僕一人で事態を収拾させなければならなかったんです。ですが今の僕ではそれが出来なかった。だから魔力を持っている彼女に助けを求めたんです」
「魔力? それってゲームとかであるあの魔法使うのに必要なあれ?」
「おおむねそう考えていただいても問題ありません」
そこまで言ったユーノはしばらく黙った後、再び口を開く。
「これから話すことは紛れも無く本当の話です。その事をまず覚えておいてください」
そんな前置きの後に語られたことは一般人であればおおよそ信じれないであろう事柄。
世界は一つではなく、次元空間と呼ばれる空間に隔てられ複数存在するということ。
そしてそれら次元世界の司法を引き受けている機関である『時空管理局』と言う物があるということ。
そしてそれらの根幹を成す技術、魔法の事。
「……にわかには信じられない事だな」
「恭也様、何を隠そうなのはお嬢様こそがその魔法とやらを使えるみたいなのでありますよ」
「何!?」
それは本当なのかと言う思いを込めた視線をなのはに向ける恭也。
いきなりそんな視線を向けられたなのはは思わず方をビクつかせる。
助けを求めるようになのははセナに顔を向けるが。
「お嬢様、いっそここで変身しちゃったらいいと思うであります。それで全部説明できるでありますし。それに私もお嬢様を激写できるであります」
顔を輝かせてそんな返答を返した。
その手には真新しいカメラが。
よほど先ほどの光景を撮影できなかったという失態を気にしているようだ。
「う~……」
完全に他人事といった様子のセナを見て思う。
---セナさんって、ほんとに私のメイドなのかなぁ……
自分の友人二人のうち片方の家にいる二人のメイドと自分のメイドを脳内で比較してみる。
友人のメイドはもうちょっと主人を敬っていたような……
「お嬢様、その考えははなはだ心外であります。この行動はひとえにお嬢様への愛がほとばしったゆえであります」
「ナチュラルに心読まないでください!!」
「一流メイドは主の心の内を読めるものなのであります」
胸を張るセナに思わず大きなため息をつくなのは。
かれこれ5~6年の付き合いだが、セナのこういうところは未だに慣れないなのはだった。
「……あの、説明のほうは……」
ちなみにユーノはその間話に割り込んでいい物かを非常に悩み、しばらくたった後にようやく割り込むことを決めたらしい。
ユーノの言葉で全員がこの集まりの本来の目的を思い出す。
セナを含めた高町家全員がいそいそとたたずまいを直し、代表として士郎が改めてユーノに説明の続きを促した。
※ ※ ※
「は~、疲れたぁ」
なのはは自身の部屋につくと寝巻きに着替えることすらせずにベッドにダイブする。
ちなみにユーノは高町家の面々にまだ説明することがあるためリビングで高町家と話している。
なのはがかなりの勢いでダイブしたにもかかわらずベッドからは埃一つたたなかった。
もちろん理由はセナが毎日毎日布団を干しながら布団たたきで埃を叩き落しているからである。
その際についでに太陽の光をいっぱい吸収した布団はふんわりとした柔らかさとほのかな暖かさでなのはを包み込み、先ほどの説明やら説教やらで疲れ果てたなのははその心地よさに徐々に眠りへと誘われていく……
「お嬢様、本気なのでありますか?」
しかし、そんななのはをセナが引っ張りあげる。
セナの声になのはは緩慢な動作で上半身を起こしセナを見る。
「うん、本気だよ。私はユーノ君のお手伝いをしたい」
「差し出がましいようでありますが、非常に危険であります。本日であった暴走体のような輩とこれから戦わなければならないのですよ?」
先ほどの説明が全て終わった後、なのはは家族に向かってこう言ったのだ。
「ジュエルシードを集める手伝いをしたい」と。
当然、それは家族の猛反対にあう。
しかしなのはは断固としてその考えを曲げることは無かった。
結局は高町家の面々の方が先に折れ、条件付でそれを許可したのだ。
なのはに問いかけたセナはいったん口を閉じ、一拍置いた後に言葉を続ける。
「私は高町家のメイド、なのはお嬢様のメイドであります。ですから極端な話をしてしまえば、『高町家以外の人々はどうでもいい』のでありますよ。ですから、その『どうでもいい方々』のためにお嬢様が危険に身を投じると言うのは、私は承服しかねるのであります」
「う~ん、確かに誰かを助けたいって言う思いもあるんだよ? でもどっちかって言えばこれは『自分のため』でもあるの」
「自分の……ため?」
セナが呆けたようにそう問い返す。
それに対しなのはは一回頷き、言葉を続けた。
「私ね、昔から誰かのために何かしたいってずっと思ってた。お父さんが入院してるときもずっと思ってて、でもその時は私は何も出来なかった」
自らの手を見下ろし、なのはは小さな手のひらを握ったり開いたりする。
「それがね、すごく悔しかったの。この小さな手がすごく嫌いだった。何も出来ない手が嫌いだった。でもそんな私が誰かのために何かを出来るんだよ? それがすごくうれしくて……だから、これは私のため。『誰かのために何かをしたいって思ってる私』のために、私はユーノ君のお手伝いをするって決めたの」
「お嬢様……」
なのはの言葉をそこまで聞いたセナはなのはに近づき、その小さな手をそっと握る。
「セナさん?」
「……子供と言うものは、思う以上に成長が早いものでありますな。ついこの間まではまだ誰かに導かれなければならないほどの子供だと思っていたでありますが、今では確固たる自身の考えをもっているのであります」
「セナさんのおかげだよ。セナさんがいろいろ教えてくれたから、私はこうしてちゃんと自分の考えが持てるの」
「恐縮であります。もっとも、さきほどのあの考え方は9歳児の考えではないでありますがな」
セナはそう言ってなのはに笑いかける。
なのはが大好きな、優しい笑顔だった。
「ですが、そんないろんな意味で年不相応な考えでも、お嬢様が考え、そして導き出した考えであります。ならば不肖このセナ、お嬢様に従い、どこまでもそばにいるであります」
「うん、ありがとう、セナさん」
なのはの決意に反応したかのように、なのはの首にかけられているレイジングハートがキラリと輝いた。
※ ※ ※
翌日。
なのは達を見送った士郎と桃子はセナをリビングに呼び出して昨夜家族で相談し決めたことを伝えていた。
「……と言う訳だからセナ、なのはの事、しっかり頼んだよ」
そう、昨夜なのはに条件付でユーノを手伝いを許可した士郎だったが、その条件がこれだった。
絶対に一人で行かないこと。
何かがあったときのため、必ずセナと一緒にジュエルシード集めをするというものだった。
「まったく、俺達ももっと何か出来ればいいんだが、あいにくユーノ君に俺達は魔法は使えないときっぱり言われてしまったからね」
「リンカーコアでありましたか、それが無ければ魔法は使えないでありますからな」
昨夜の説明の際、なのははレイジングハートを起動し、魔法の存在をしっかりと高町家に証明した。
その際、自分も魔法が使えないのかと高町家の面々はユーノに聞いたのだが、結果は全滅。
もちろんセナも。
高町家で魔法が使えるのはなのはだけと言うことだった。
何でも、魔法を行使するにはリンカーコアと言う魔力器官が必要であり、それはたいてい先天的なものであるので後天的に発生することはまず無いとの事だ。
ただ、セナの場合はリンカーコアは無いものの、何故か魔力の残滓が体内にあるとはユーノの弁。
もっとも、あるのはあくまで残滓であり、結局魔法は使えないことに変わりは無いのだが。
ちなみになぜセナと一緒なのかと言えば、家族が満場一致で『セナなら問題ない』と判断したからである。
ユーノも最初はそれはさすがにと思ったのだが、実際封印は出来なくても暴走体を相手どって余裕だったと言う光景は見ていたため、結局は納得した。
「ともかくお任せください旦那様、奥様。きっちりしっかりお守りするでありますよ」
迷い無く、セナは桃子に対してそう宣言する。
そう、迷うことなどあるわけが無い。
彼女は高町なのはのメイドなのだから。
※ ※ ※
その日の夕方、セナは人がまだまばらであるが歩いている道を全力疾走していた。
その手に今日の夕飯用の食材が入ったかばんを持っていながら自分の体はおろかそのかばんさえも人にぶつからないように人の間を縫って走る。
ちなみにそんな風に走り去るセナを、町の人は「あぁ、セナさんか」で済ませている。
なにせこのように彼女が走り去るのは今回が初めてではない。
むしろ1年前に友人と一緒になのはが誘拐された際はもっとすごかったのだから。
閑話休題
なぜ彼女が走っているのかと言えば、なのはからジュエルシードを見つけたとの連絡を受けたからだ。
どうやらなのはは律儀に家族との約束を守っているようだ。
その際、夕飯用の食材の買出しをしていたセナは買出しをいったん中断。
すぐさまなのはの元へと向かっていると言うことだ。
「お嬢様、遅れて申し訳ないであります!」
「あ、セナさん!」
セナがなのはとなのはの肩に乗っているユーノを視界におさめると同時に、なのは達が先ほどまで顔を向けていた方向から強い光が放たれる。
それを見ながらなのはたちの近くにたどり着いたセナは前に踏み出していた左足をでブレーキをかける。
その際、かなりの砂埃が舞ったことから相当な速度で走ってきたと言うことがうかがい知れる。
「それで、この上でありますか? 今のは……」
「えぇ、ジュエルシードが発動したみたいです」
「申し訳ないであります。私がここへ来るのが遅れたばかりに……」
「別にセナさんが悪いわけじゃありませんよ。いつ発動するかなんて、僕にだって分からないんですから」
セナが自身の失態に顔をしかめながら見上げたのはかなりの段数がある石段。
その果てには鳥居が見えることから、神社なのだろう。
「そうでありますね。発動してしまったのならこれからの行動で汚名返上であります。人が来る前に封印してしまうであります」
セナはそういいながら石段の近くに買い物の荷物を置き、手首足首を回し、ストレッチを開始する。
「確かに、早く封印に移ったほうがいいですね。結界魔法が使えればいいんですが、今の僕は魔力を回復させないと……」
ユーノの言葉と同時にストレッチを終えたセナは、腰を低くする。
「それではお嬢様、一足お先に行くであります」
「え? あ、私も行きます!!」
「その前にレイジングハートの起動などの準備を。準備無きままでは危険でありますからな」
そういうとセナは石段に向かって駆け出す。
そしてそのままの勢いを維持したまま石段を複数段飛ばしで駆け上がっていく。
セナがなのはにああいった理由はもちろん言葉の額面どおりの意味もあったが、その裏にはなのはを危険に晒さないようにと言う理由もある。
あわよくばなのはが来るまでに暴走体を行動不能までに追い込み、なのはは封印のみに集中させれるのではと思ったからだ。
確かになのはがジュエルシード集めをすることには納得はした。
しかしそれとあらかじめ出来る限りの危険を取り除かないと言うこととはまた別の話だ。
セナがそう内心で思いながら石段を駆け上がる。
をして石段の上までたどり着いたセナが見たのは、以前の何をモチーフにした姿なのかが分からない暴走体と違い、明らかに犬、ないし狼をモチーフにしたであろう姿をしたジュエルシード暴走体だった。
しかし、犬ないし狼をモチーフにしたというだけでそのものと言うわけではなく、そのサイズは普通の犬や狼に比べても大きいものだった。
「なるほど、今度は犬でありましょうか? それとも狼? ……いえ、どうでもいいでありますな。どちらにせよ、あなたが私にのされ、お嬢様に封印されると言う結末は変わらないでありますから」
その言葉と同時にセナは駆ける。
そして、駆けてくるセナに反応した暴走体が振り上げた前足と、暴走体へ向かっている最中に握り締め、振りかぶっていたセナの拳が交差した。
終わりがなにやら少年漫画的な展開に……
背景にでっかい夕日であれば完璧に少年漫画ですね。
今回の話ではちょこっと伏線っぽい物をペタリ。
忘れないようにして、いずれちゃんと回収しないと……