魔法少女リリカルなのは これがメイドの歩む道 作:クラッチペダル
次の話あたりで突入させます。
乗員が慌しく動き回るアースラ。
そんな中、クロノはエイミィから見せられたあるデータを見ていた。
「……これは間違いないのか? 機器の誤作動と言う線は……?」
「向こうも何度も計測したけど、結果は変わらなかったみたいだから、それはないと思うよ。数回やって数回全部誤作動だなんて、さすがに気づくだろうし」
「だが……この結果は……」
そう呟くクロノの前には、ある情報が表示されたモニターがある。
そのモニターに表示された情報とは……
「リンカーコアがないのに、魔力反応はある……か。そんな話、聞いたことがないぞ」
「それもかなり大きい。いったいどういうことなんだろ……」
しばらく、モニターのデータを眺めてたクロノは、しばらくの後モニターから視線をはずし、頭を抱える。
「彼女……フェイト・テスタロッサと言ったか、彼女の使い魔から情報を得ることが出来たから、今から突入しようって時に、こんな情報が出てくるなんてな……」
彼らが見ていたデータは、乗り込んでから行った魔力測定をかねた検疫のデータだ。
モニターに表示されているのは二つのデータ。
それぞれのデータにはデフォルメされた人型が映し出されており、一つの人型には、心臓に当たる部分にリンカーコアを模した光る球体が映っており、もう一つにはそれがない。
光る球体が映っているデータはなのはのデータ。
そのが人型の脇には、AAAというアルファベットが。
そしてもう一つはセナのデータ。
そこには光る球体が映っていない人型と、AAAと言うのアルファベットが表示されていた。
「普通、魔力はリンカーコアから発せられる物を測定してるから、リンカーコアがない人の魔力なんて計測できるはずがないんだけど、リンカーコアがないにも関わらずセナさんはAAAランクの魔力って結果が出てる……」
「……とりあえず、このデータは提督に提出しておいてくれ。提督の意見も聞きたい」
「分かった。……このこと、セナさんには?」
「……いや、此方としても事件解決に専念したい。今すぐ彼女の身体に重大な障害を及ぼすのなら話は別だが、そういうわけでもないんだろう?」
「うん、そういう傾向はないみたい」
「なら、事件が終わった後でも伝えるのは遅くないだろう」
エイミィの問いに、クロノはしばらく無言で悩む。
しかし、伝えずともいいと言う判断を下し、そのことをエイミィに伝える。
それを聞いたエイミィは、データが表示されていたモニターを消し、別のモニターを用いて先ほどのデータをさらに纏め上げる。
そしてそのデータをリンディが現在いるであろう艦長室の端末へと送信しようとしたとき、件のリンディがブリッジへと入ってきた。
「これこれ。プレシア・テスタロッサ。」
そして、そのデータをリンディがいるであろう艦長室へと送信しようとした矢先に、件のリンディがブリッジへと入ってきた。
「私が席をはずしていた間、特に変わった事はない?」
「ええ。我々が時の庭園でしたか、そこに近づいているというのに、今のところ特に何も……ですが、提督に一つ伝えたい情報が……エイミィ」
クロノがエイミィに指示をし、先ほどのデータをリンディへと見せる。
それを見たリンディは、その目つきを徐々に険しいものへと変えていく。
「……これは間違いないの?」
「はい、間違いはないそうです。何度やってもその結果にが出る、と。ただ、今のところ特に問題が起こっているわけではないとの事です」
「そう……でも、こんなデータ、見たことがないわ。いったいどういうことかしら……」
「見えました! 時の庭園です!!」
そのデータをじっくりと見ていたリンディの耳に、オペレーターの報告が入り込む。
データへ向けていた視線を正面へ戻すと、まさに真正面に、それは広がっていた。
それはまるで宇宙空間に漂う小惑星の様でもある。
しかし、ところどころに見える宝石のような球体。
そしてあちこちからもれる光が、それが小惑星のような、自然に発生したものではないという事を知らしめている。
「あれが……時の庭園……」
「アルフを呼び出してくれ。確認させる」
クロノの指示を受け、オペレーターの一人が艦内放送でアルフを呼び出し始めた。
※ ※ ※
「……呼んだのはアルフだけだったんだが……いや、まぁいいが……」
放送でアルフを呼び出してから数分後、アルフはブリッジへとやってきた。
ただし、後ろにフェイト、なのは、セナ、ユーノを引き連れて。
「いや、最初は呼ばれてるの私だけだし、私だけで行こうって思ったんだけど、フェイト置いていくのあれだし、その時丁度部屋になのは達がいたし……」
アルフのやや慌てながらの言葉に、クロノは頭を抱える。
が、アルフの言葉が正しければ、なんの事前説明も無に母親の魔法を食らわされてやや情緒不安定なフェイトを、慣れ親しんだ人物であるアルフから離して放置しては何が起こるかは分からない為仕方ないと考え直し、アルフに目の前に広がる光景を見せる。
「それで、あれが君の言っていた時の庭園で間違いないかい? 一応、座標は合っているが」
「……あぁ、間違いないね。あれが時の庭園だよ……糞忌々しい鬼婆の住処さ」
アルフが、見るのもごめんだといわんばかりの表情で、しかししっかりと見据えてそう吐き捨てる。
「エイミィ、例の情報は?」
「はいは~い、なんだか便利屋みたいに使われてる気がしないでもないエイミィさんだけど、ちゃんと調べてあるよ。プレシア・テスタロッサ。かつては次世代型のエネルギー炉の研究をしてた科学者で、おまけに大魔導師って呼ばれてた人だね。今まで消息が分からなかったけど、まさかこんなところに居たとはね」
「プレシア・テスタロッサも、この事件の重要参考人よ、彼女に呼びかけて。……話が聞ければいいのだけど」
「呼びかけには応答しませんね……っ!? 時の庭園内で、魔力反応増大!!」
オペレーターの言葉に、ブリッジ内に緊張が走る。
そして、時の庭園から一瞬何かが撃ち出されたかと思った瞬間、アースラが揺れた。
「っ! 状況を!!」
「次元跳躍攻撃です! アースラの航行システムがダウン! 復旧には時間がかかります!」
「此方の呼びかけは聞こえていたはず。それでも攻撃してきたって事は、さすがに捨て置けないわね! 武装局員を招集して、時の庭園へ転送で突入させるわ!」
「了解!!」
リンディの指示により、一気にブリッジが慌しさを増す。
その様子に、さすがのなのは達もどうすればいいものかと考え込む。
これからどうなるかが気になるという欲求のまま、とりあえず邪魔にならない隅っこにいれば良いのか?
それとも、ここを立ち去れば良いのか?
そしてフェイトは急に慌しくなったブリッジに驚きながらも、誰かを探すようにブリッジを見渡す。
そんな彼女の元へ、クロノが駆け寄ってきていることに気づくと、フェイトもクロノの元へと駆け寄る。
「さっきの衝撃で怪我はないか?」
「大丈夫です……でも、あの、母さんは……」
「プレシアか……さっきまでなら話を聞かせてもらう程度だったんだが、攻撃されたとなれば此方もそれ相応の対応をとらざるを得ない……多分、君はここを出たほうがいい。見たくはないだろう? プレシアが……その……」
クロノがその言葉を濁す。
さすがに、娘の前で母親を逮捕しますと正直に言うことははばかられたらしい。
なんと言ったものかと脳を回転させる。
しかし、フェイトはしっかりと首を横に振る。
出て行く気はないと言う意思表示だ。
「でも、私は母さんの娘だから……ちゃんと見てなきゃ駄目だと思うから……」
「しかし……いや、君が決めたならそれで良いが……本当に大丈夫か?」
再び頷くフェイト。
そんな彼女の様子を見て、クロノはため息をつきながらもそれ以上は何も言わなかった。
『突入部隊、準備完了しました!』
準備を終えた突入部隊から報告があがる。
それを聞いたリンディは、普段浮かべている優しげな微笑を消し、部隊に指示を出す。
「それでは、突入開始! 目標はプレシア・テスタロッサの身柄確保です!」
『了解!』
リンディの指示に部隊員が返事をすると同時に、部隊は時の庭園内へ転送される。
転送された隊員の内、一人が魔法を発動し、魔力スフィアを作り出す。それと同時にアースラでは魔力スフィアとアースラの通信システムをリンクさせ、スフィアを通して突入部隊の様子を映像で見ることが出来るようにする。
「これが時の庭園……?」
「なんつーか悪趣味。ラスボスの棲家ってかんじでありますな」
なのはとセナがそのような感想をこぼしている内に、突入部隊がある扉の前へと到達し、足を止める。
そして扉を蹴破るかのような勢いであけると、部隊員全員がデバイスを構えた。
その部屋は、まるで城の玉座の間のような部屋だった。
部屋の入り口から真正面の奥には玉座が設置されており、その傍らにはテーブルが一つ。
しかし、調度品の類はあれど、肝心のプレシアの姿が見えない。
『いない……? 既に逃げた後か?』
『隊長! ここに隠し階段が』
部屋を捜索していた一人の隊員が玉座の後ろの壁に隠し階段を発見する。
まるで人を闇へといざなうかのように下へ向かってのびているそれを見て、部隊長は隊員たちに目配せする。
それに対し、隊員は全員頷き返した。
隊長が先頭になり、階段を慎重に下っていく。
次第に玉座の間からの明かりが届かなくなるが、魔力スフィアを明かり代わりに彼らはどんどん下へと降りていく。
やがて、進行方向に明かりが見えてくる。
その明かりを頼りに階段を降りきると、そこに広がっていたのは何も入っていない培養槽の列だった。
『これは……?』
『少なくとも真っ当な用途の代物ではないだろうな……奥にプレシアがいるのか……?』
周囲を経過しながらも、部隊は奥へと進んでいく。
そしてたどり着いた先には……
『なっ! これは!?』
「……なに、これ」
「ふぇ、フェイトちゃんがもう一人!?」
『それ』には、突入部隊員だけでなくアースラで突入部隊の様子を見ていた誰もが驚きを隠せなかった。
そして、アースラの面々は映像に映るそれとブリッジにいるフェイトを見比べる。
部隊が発見したもの。
それは培養槽の中で、まるで胎児のように身体を丸めた状態で漂う、フェイトにそっくりな少女の姿だった。
いや、よく見ればその少女の方がフェイトよりなお幼いということが分かるが、この際それはどうでもいいことだ。
『この子は……生きているのか? それとも……』
『アリシアに近寄らないで!!』
予想外の物に、隊員もそれをどう扱ったものかと困り果てる。
とりあえずそれが何なのかを詳しく調べる為に、一人の隊員が培養槽に近寄る。
しかし、培養槽に近寄った隊員は、培養槽を挟んだ奥から放たれた紫色光を放つ射撃魔法に射抜かれ、その場に倒れ付した。
培養槽の後ろから現れたのは、プレシア。
『……ずいぶん早いご到着ね。もう少し遅れてくればここを廃棄して何処かへ行けたものを』
『くっ、プレシア・テスタロッサ! 管理局所属船舶への攻撃の罪で逮捕する! さらに、今回のジュエルシードの件についてもあなたの関与が認められる。その事に付いても詳しく話を聞かせてもらおう!!』
『あら、仕事熱心なのね。そんな仕事熱心な貴方達への返答はこう……『お断りよ』』
隊員がいっせいにデバイスを向けてきているにもかかわらず、プレシアはひるみもしない。
それどころか、自身へデバイスを突きつける隊員達を見下しているかのようでもある。
『まったく、数ばかり揃えたって……どうにかなる物でもないでしょう!?』
隊員達を見下したまま、プレシアはデバイスを掲げる。
それを見た局員が魔法によりプレシアを行動不能にしようとするが、その魔法が発動する前に、プレシアの魔法が発動した。
一瞬、映像が白く染まる。
映像が元に戻ると、そこには倒れ付した隊員達と培養槽の前に立っているプレシアの姿があった。
「隊員たちをアースラに収容して! 早く!!」
「さすがかつて大魔導師と呼ばれたプレシア・テスタロッサ……隊員たちが一瞬で……」
クロノが部隊全滅の結果を見て驚愕する。
危険な場所へ突入するために集められた人員と言うことで、決して突入部隊員は弱くはない。
むしろ、並みの局員よりは実力はあるのだ。
しかし、そんな彼らが一瞬で行動不能まで追い込まれてしまった。
プレシアの魔導師としての実力がどれほどの物かが良く分かる。
『時間がないのよ、邪魔をしないで頂戴……』
「時空管理局提督、リンディ・ハラオウンです。貴方には現在管理局所属船舶への攻撃という罪があります。邪魔をするな、と言うのは聞けない話ですね」
『あら、わざわざこんなところまでご苦労様。でもね、貴方達は絶対私の邪魔をするわ。だから邪魔されないように攻撃したのだけれど……まさか耐え凌ぐどころか土足で入り込んでくるとはね』
「プレシア・テスタロッサ! フェイト・テスタロッサがジュエルシードを回収していたのはお前の命令だったようだが、いったい何をたくらんでいる!?」
耐えかねたように、クロノがプレシアへ向かって叫ぶ。
それに対しプレシアは自身の背後にある培養槽に縋り付くように寄りかかり、言い放った。
『何を……? 決まっているじゃない、取り戻そうとしているのよ……たった一人の私の娘、アリシアを』
「……え?」
プレシアの言葉に、フェイトが固まった。
伏線をばらまけー!!
と言うわけで、またもや伏線っぽい情報を放り投げてみました。
セナさんから感じる魔力が最初の頃より増えているという情報。
これが何を意味するのかは、これから先で明らかにします。