魔法少女リリカルなのは これがメイドの歩む道 作:クラッチペダル
それもこれも全てプロジェクトクロスゾーンってゲームのせいなんだ……
美依さんの「見えそで見えな~い!」の台詞に不覚にもいろいろ想像させられながらプレイしてます(遠い目
今回は会話文が多めかもしれません。
それではどうぞ
「レイジングハート! 行くよ!!」
『All right, my master』
なのはがカノンモードのレイジングハートを暴走体に向け、ためらい無く引鉄を引く。
先ほどと違い、無関係な人間にばれないように威力調整をする必要が既に無くなり、その桜色の光線は太さと輝きの強さをは先ほどの物とは比べ物にならない。
そしてその光線のすぐ隣を、セナは駆け抜ける。
ともすればすぐ横にある光線に自らの体が触れてしまいそうなほど近くを、しかし当たるかもしれないという恐怖など感じていないと言わんばかりに、その目はまっすぐ暴走体を見据えていた。
なのはの放った砲撃を暴走体はその場から飛びのくことで回避することに成功したが、しかし暴走体の着地点の近くには暴走体の回避を目にした瞬間着地点の目測を付けそこへと移動していたセナの姿があった。
着地寸前の暴走体の右足をセナは足払いの要領で蹴りつけ、着地の為に伸ばしていた足を払われた暴走体はそのまま無様に腰から地面に落ちる事となる。
そしてセナは暴走体に追撃としてマウントポジションを取り、そのまま顔面に向けて拳を繰り出す。
しばらくは殴られるがままになっていた暴走体だが、刃物状に変えていた手を普通の人間の手に戻すと、セナの拳を受け止める。
片方の拳を受け止められたセナは、もう片方の拳を振るうがそれも受け止められる。
「……っ!」
ぎりぎりと音が出るほど拳を握られる痛みに顔をしかめるが、それでもセナは攻撃の手を緩めない。
両手が止められたのならと自身の頭を胸ごとそらし、そのまま勢いよく暴走体の頭へ自身の頭を振り下ろす。
両手がふさがっていた暴走体はその頭突きを何の防御も無くくらい、その際の痛みと衝撃で動きが鈍り、セナの手を握る力も弱まる。
暴走体の手を振り払ったセナは、そのままもう一発暴走体の顔面に拳をお見舞いすると、その場から飛びのく。
そして立ち上がろうとした暴走体を桜色の光線が襲った。
「ナイスタイミングであります、お嬢様」
「レイジングハートが教えてくれたから簡単だったよ」
『Not really』
ほめられて謙遜するレイジングハートにセナも改めて礼を言うと、暴走体が居るはずの場所を見やった。
なのはのあの砲撃を食らったら、以前の事件の時のようにジュエルシードを封印直前の状態まで持っていけているはずなのだが……
「……ちっ、やはりそうそう簡単に事は運ばないでありますか」
そう呟くセナの目に映るのは、晴れていく煙と、その中にぼんやりと見える人型の影。
その影が腕を振るうと、その部分から煙が吹き飛んでいく。
暴走体は腕を振り切った体勢のまま再び手を刃物状に変える。
「---------!!!」
口を持たぬ暴走体が、声にならない声で咆哮をあげる。
そしてそのまま景色に溶け込むようにその姿を消した。
セナはその様子をため息交じりで見つめると、隣に居るなのはに視線を向けた。
その視線を受けたなのはは、始めのうちは何で見ているのかと言う怪訝そうな表情をし、しかしやがて得心がいったような表情を浮かべる。
そしてアイコンタクトで通じ合った二人はそのまま言葉無く頷きあう。
そんな二人の背後で、何かが削れるような音がした。
「なるほど、背後からですか……あまりにテンプレすぎでありますな」
暴走体の刃とこすれあい、火花を散らすプロテクションを見てセナはそう呟く。
そして、なのはがプロテクションを解除したと同時にセナはその拳を暴走体の腹に叩き込んだ。
「ですが……いい加減うぜぇでありますよ。人の服さんざん切り刻んでくれやがりまして、さすがの私も堪忍袋の緒がプツリといったであります」
セナの拳で吹き飛ばされた暴走体は、再び立ち上がろうと地面に手を付き、しかし立ち上がることは出来ずに横たわった。
そしてその姿を見たなのはは容赦なく暴走体に砲撃を放ったのだった。
※ ※ ※
「……で、こいつが今回暴走体に取り込まれた奴でありますな?」
砲撃による砂煙がはれたあと、セナとなのはは先ほどまで暴走体が居た場所で大の字に気絶している男を見下ろしていた。
その顔つきは穏やかそのもので、気絶しているというよりむしろ寝ているといったほうが正しいかもしれない。
そのい表情の穏やかさやるや、先ほどまで死闘を繰り広げていたセナ達が若干イラつくほどだ。
実際にセナは額に井桁を出現させながら大の字で寝ている男の頬をつま先でグリグリと踏みつけている。
なのはは男のそばに転がっていたジュエルシードを封印したのち、レイジングハートで男を突いている。
学校であんな騒ぎを起こした原因であるくせに穏やかな顔をして寝ているというのはさすがのなのはでも許容出来なかったようだ。
レイジングハートがコアを点滅させながら自身をつつくための道具にしている事に対して文句をなのはに言ってはいるが、なのはの耳には入っていない。
しかしそこまでされて起きないほうがおかしい。
男はしばし唸った後、その目を開けた。
そして自分の視界に居るなのはとセナの顔をしばらく寝ぼけた様子の顔で見た後、やがて目を見開いて驚いたような表情になる。
かと思えば突然男は血走った目つきでなのはに飛び掛ってきた。
「うおっ、あぶねぇであります!」
男の手がなのはに触れるか否かといった瀬戸際で、セナが男の顔面を蹴り飛ばし、なのはは事なきを得た。
そして男はと言うと、せっかく起きたというのに再び気絶する羽目になった。
「び、びっくりしたぁ。ありがとう、セナさん」
「当然であります。しかし、この男はなぜいきなり飛び掛ってきたのでありましょう……?」
そこまで呟きセナはふと何かを思い出したかのような表情をすると、男の顔をしげしげと眺める。
そしてしばらく男の顔を眺めいたセナは、ポツリと呟いた。
「この男……別の町の学校に侵入して生徒や教職員に傷を負わせたとか言う事件を起こした奴にそっくりでありますな」
セナの頭の中では最近のニュースであげられた犯人の顔写真が浮かんでいる。
そしてその顔写真と目の前で気絶している男は非常によく似ているのだ。
写真よりは顔が腫れている気がしないでもないが、それは恐らく先ほどのセナの蹴りのせいであろうからそこは脳内で補正をかけておく。
「その事件って、最近ニュースでやってるあの? ……だとしたらどうしよう、この人」
「ふむ……とりあえず、警察のお力を借りるでありますよ」
※ ※ ※
聖祥大附属小の校門近くに大量に止まっているパトカーや救急車を横目に、セナは友人二人にもみくちゃにされている自分の主を見た。
「こんの! なのはのばかばかばかぁ!!」
「すごく心配したんだよ!? なんとも無い!? 怪我して無いよね!?」
「アリサちゃん、すずかちゃん、ちょ、くるし……」
ちなみに、先ほどからなのははセナにアイコンタクトで助けを求めているのだが、心のそこからなのはのことを心配している二人を引き剥がすという事をするわけにもいかないため、結局苦笑を返す事しか出来なかったりする。
そんなセナのそばに、士郎が静かに近寄ってくる。
「お疲れ様、セナ」
「旦那様、これぐらいどうと言うことは無いであります……と、言いたいでありますが、今回は疲れたでありますよ、正直」
そういうと、セナは肩をまわし始める。
「姿を消すわ手を刃物に変えるわそもそも耐久力が今までの暴走体に比べて高い気がしたわで、骨が折れたであります。いったい何を願ったのやら……」
「さぁ、それは本人にしか分からないな。碌な事ではないという事ぐらいはわかるが」
士郎とセナは校門前から走り去っていくパトカーを見送った。
そのパトカーの後部座席には、あの男が手錠をかけられた状態で乗っているのだろう。
遠ざかっていくその車体を見ながら、士郎は呟いた。
「セナ、今回の件で考えたんだが……」
「無理であります」
「……まだ何も言ってないんだけどなぁ」
自分の言葉を途中で遮られた士郎が少々寂しそうな表情をする。
そんな士郎の顔を見て微笑を浮かべたセナは、そのまま未だに友人二人にもみくちゃにされているなのはを見やりながら口を開く。
「言いたいことの予想は付くであります。おそらく、お嬢様にこの件から手を引くように説得して欲しいということでありましょうか?」
「そこまで分かっているなら話は早い。今回の件でよく分かったよ。ジュエルシードは危険すぎる。話で聞いて危険だとは分かっていたが、それはあくまで『分かっていたつもり』だったと思い知らされたよ。今回はこれで済んだとしても、これから先どうなるか……!」
士郎の顔には子を心配する親の思いが浮かび上がっていた。
そしてそんな士郎の顔を見て、しかしセナは士郎に言う。
「確かに、今回の件はこれまで無いほどに危険なものでありました。下手をすればもっと被害が大きくなっていたかもしれないでありますしな。ですから、旦那様の考えも私はもっともだと思うのでありますよ」
「だったら!」
「そして旦那様が思ったことはお嬢様も重々承知でありましょう。それでいながら、しかしお嬢様が説得に応じることは恐らくないであります。一度決めたことは決して曲げないお方だということは、旦那様もよく分かっていらっしゃると思うであります」
「……それは」
「そして私はそんなお嬢様の従者であります。確かに、お嬢様が事の危険度などを知らずにこの道を行かれると言われたならば従者としてそれは体を張ってとめるであります。しかし、お嬢様は既に理解していらっしゃる。そして覚悟していらっしゃる。その上でその道を行くと決めたのであれば……私がすべきことはその道の障害を適度に排除することしかないでありますよ」
セナの目は、まっすぐなのはを見ている。
その目に揺らぎは一切無く、自身の考えを曲げることは無いとその瞳が言葉無く語っていた。
「というわけでありますゆえに、申しわけ無いでありますが、その提案は受け入れられないであります」
「……だったら、もしこれから先、ジュエルシードを集める際になのはの身に危険が及んだら? なのはの命に危険が及んだらどうするつもりだい?」
士郎の言葉に、セナは驚きの表情を見せる。
そしていぶかしげな表情で士郎の顔をじっと見つめだした。
「……失礼でありますが、旦那様、熱がおありでありますか?」
「どうしてそういう考えにいたったのかな!?」
「いえ、その……旦那様があまりに分かりきった答えの問いを今更ながらなさったので、つい」
体ごと士郎に向き直り、セナはまっすぐ士郎の顔を見ながら口を開く。
それは彼女がなのはに雇われたときから変えることのないひとつの誓い。
そしてこれからも変わらない誓いだった。
「助けるであります。あらゆる障害、脅威からお嬢様をお助けし、そして二人で無事戻ってくるであります。お嬢様を狙う物あらば、私が排除するでありますし、お嬢様の命を狙おうものならばその考えを後悔させてやるでありますよ。そしてそのような危険な状況から私はお嬢様と一緒に大手を振って帰還してやるであります」
セナの行動の原点。
セナの行動のあらゆる理由が、その言葉には込められている。
『全ては主のために』
それが、セナと言う少女なのだ。
セナの答えを聞いた士郎は、はじめは驚いた表情をし、やがてその表情を徐々に崩す。
そして肩を震わせたかと思うと、急に笑い出したのだった。
「ははは!! そうか、そうだったね。今更俺は何を聞いていたんだろう! どうやら、あまりに当たり前すぎて忘れてしまっていたようだ」
一頻り笑うと、士郎は笑った際に崩れた表情を元通りにし、セナを見る。
「……セナ、これまでどおり、なのはのことは頼んだよ。そして、君も無事に帰ってくるように」
「当然でありますよ」
話を終えた二人がなのはに声をかけようとして思わず絶句してしまった。
なぜなら、今の今まで親友二人に抱きしめられ続けていたなのはの口から白いもやのような何かが出ていたのだから。
「ちょちょちょ!? アリサちゃんすずかちゃん! さすがにもうやめてあげて欲しいかな!?」
「ストップ! ストップであります! バニングス嬢! 月村嬢!」
思わずなのはたちの元へ駆け寄る二人。
それを見ていたユーノは、ため息をつきながら肩をすくめていた。
というわけで、今回のオリジナル展開はこんな感じで締めとなりました。
正直、ほんとにオリジナル展開かは疑問が残っております。
でもオリジナル展開はこれだけじゃないので、これがオリジナル展開だと納得できない方は後の展開に思いをはせてお待ちください。