朧はプルートを倒したあと、霞桜を影へ仕舞って一息吐く。
「……うん、やばい」
龍神に新生された体と、さっきの合体の経験に加えて今まで集めていたオーフィスの『蛇』があって初めて発現することができた
その効果は今のところ単純な『強化』であるのだが、倍率が
(これで理論上は全盛期のオーフィスの三分の一程度なんだから、驚きだよな……)
オーフィスの性格があれでなかったら、今頃世界は滅んでいるだろう。
「さて、と」
朧は先ほど投げて、今フワフワと降りてきたオーフィスを受け止める。すると、穏やかな寝息を立てていたオーフィスが目をパチリと開いた。
「……朧、髪伸びた?」
「あー、ちょっとね」
その違和感を確認しようと思ったが、今度は手鏡を必要とはしなかった。なぜなら、視線を下に向ければ地面に着くほどまで伸びていた黒髪が外套の如く広がっていたからだ。全然ちょっとどころじゃなかった。
「……俺の戦闘力は髪の長さに比例するのか?」
(というかここまで長いと逆に邪魔だろう)
そう思って髪をひと房手に取ってみたところ、その髪は蛇のようにうねうねしていた。朧は無言で別の髪を手に取ると、それもまた蛇のようだった。というか、『蛇』そのものだった。
「――メデューサか!」
(
発現後の
「んー……さて、レイナーレたちでも探しに行きますか」
朧は背伸びをすると背後に悪魔とドラゴンの両翼を出現させ、再びオーフィスを抱えて飛び立った。
「ふっ、
道中で
「早くレイナーレたち見つけて帰りたい……ていうか、先に帰ったりしてないよな?」
飛んでいると目立つため、建物の隙間をこそこそと歩いていた。
今は身に覚えのある気配に向かってこそこそと移動中である。
「近いかなー? 遠いかなー? ぶつかる気配が大きすぎて細かい所まで判別付かないなー?」
戦っているのは一誠と曹操なのだが、朧の捜索の邪魔になっているので、朧は彼らを叩き潰すために
ちなみにオーフィスは朧の背中でおやすみ中である。オーフィスのみに安眠をお届けする低反発朧枕です。
「ったく、早く家に帰りたいというのに……あいつらも一緒にいたらいいな。いなかったら……クフフっ」
いなかったらどうなるのかは、誰も知らなかった。誰も知りたくはない。
「あれ、いない?」
朧が一誠と曹操が先ほどまで戦っていたと思われる場所にたどり着くと、周りの建物が損壊している以外に目立っている所はなかった。
「んー……レイナーレたちは居ないみたいだし。他探そうかな?」
戦闘も一段落着いたようなので今では朧の捜索の邪魔にはなっていない。
「でもどっちが勝ったかは……大体予想がつくな。せっかく
秘密兵器というのはサマエルの血液入りの弾丸のことであり、蛇の髪を持つメデューサの目を移植した曹操には効果があるはずだ。
「確かに、弱点が増えるかもと思ってメデューサの目移植したのは俺だけど……何がどうなるか分からないから人生だよねー。もう人間じゃないけど」
オーフィスにドラゴン化された朧はついに人間の看板を下ろした。
「さて、どうしたものか……ん?」
周りを探っていた朧は気になるものを見つけた。
「ヘラクレスとジャンヌだ。倒れてるということは……負けたか」
近寄って確かめると、ヘラクレスもジャンヌも気絶した状態で拘束されていた。
「でも、何でジャンヌは全裸なんだ……って、考えるまでもなかったな」
そんな事をする者など一人しかいないと納得し、朧はそこでようやく立ち上がり、近くにいたオカルト研究会の面々が
「黒縫くん!? 生きていたのね……」
「そんなに驚くことがありますか? イッセーが生きていた時点で分かっていたでしょうに」
朧は叫び声を上げたリアスに視線を向け、すぐに逸らした。
「失礼ですが、衣服の乱れを整えてもらえますか? 年頃の娘がはしたない」
そう言われてそそくさと胸をしまうリアスから目を背けつつ、朧は質問をした。
「ところで、レイナーレたちがどこにいるか知りませんか?」
「彼女たちなら、今はグレモリー城よ」
着衣の乱れを直したリアスの返答を聞いた朧は目礼する。
「それでは、迎えに行きますか。ああ、その前に――」
「
振り返りざまに放たれた白刃がヘラクレスとジャンヌに向けて振るわれた。